#拾:oh,jesus...
ラーマです。
かなり頭にきてたのは自覚していたので、このまま怒りに任せて殴ると、ちょっとだけ……いや、かなり爆散しかけてしまう気がしたので、それならばと斬る事を選択したのですが、斬れませんでした。
"斬れなかった"というより、その、正確にいいますと、剣の具合を確かめるべく、あと予防線を張るために"得意ではない"ことを主張し、その後は台詞の練習も兼ねて"失せろ"と軽く振った程度だった。それだけなのに……
その切っ先から極大な真っ白いビーム球みたいなのが飛び出していった。
その極大な光球に、パンイチマッチョオカマオネエエンジェルが包まれたと思ったら、しばらくすると霧散するかのように何も無くなっていた。
何これ、怖い。
自分、いろんな感情を含めて「は?」という言葉が出てしまい、一気に怒りゲージがゼロになるぐらいにドン引きした。
そして"これ、元はオトンからもらった、普通のバスタード・ソード(改)だよな?"と、マジマジと見直したぐらいである。
あと、何気に『パンイチ・マッチョ・オカマ・オネエ・エンジェル』という、なんだこのパワーワードの組合せ羅列の集合体みたいなの、言葉で表すと変態度が上限を突破してるな、この表現。
ま、まぁ?とりあえずは、うっとうしい胸囲は……元い、脅威は去ったので、彼女の近くに行ってみると、ちゃんとバリアは効果あったようで、彼女の周辺だけは無傷状態で残っており、無事でホッと一息です。
というかですかね、近づいた此方に気づいた途端、丁寧な土下座をされまして……
……なんで?
* * *
彼女を連れ出す格好で場所を変えました。
とかく、先ほどの殺風景な場所となったところで、頑なに土下座やめないんですよ?この子。
なので、無理やり、お姫様抱っこをしては連れ出す格好で移動です。
そして、ちょうど良さげ場所がないかなと、跳躍しながら移動したんですが、森の中に湖畔らしきところがあったので、とりあえずそこで話をすることにしました。
「"先に謝る。大丈夫と言った矢先に、君に傷を負わせた事に"」
「と、とんでもございません。卑小な身を御救い頂いた事、誠に……」
「"そういうのは、いいから。そんな話し方はしなくていい"」
「そ、それは、不敬に値するかと思いますが」
「"大丈夫……という言葉は信用ないか。けれど、普通に話してくれる方がうれしいかな"」
何か畏まりすぎて、儀礼的な扱いという風にしか見えなくなるので、
「私は、何故、生かされたのでしょうか?」
「"ん?"」
「私は、誰からも必要とされずに生きてきました。なれば、生きている価値は無かったと……」
そうして、語りだされた身の上話。
なんでも、肌が違うからと腹違いから種違いへと、母親と扱いが酷くなって入ったが、それでも一緒に幸せだったといえる生活を送っていたと。
そして、正妻とその実子の息子たちからも、蔑まれた生活を送っていったと。
ただ、母親が無くなり、さらに忙しさが高まってきたときに、病に倒れてそのまま売られたと。
父親だった人の最後の言葉が、娘のプレゼント代にもならないとか何とか……
そうして売られた先で静かに寝かされていたが、しばらくしたら再び無理やり連れ出され、後はあの牢の様な場所にいたと。
……アレ?
第三者だからか、なんか変だなと。
「"すまないが、その、女の子は他にもおられたのかな?"」
「新たに誕生したとも聞きませんでしたが……」
意識が混濁した時の記憶だから、ぼんやりとしてたのだろうか。
本人は気づいていない。まるで、それが当たり前かの様にも。
蘇生する際に、死という事象に引き摺られると、記憶の混濁やら欠落やら、そういう記憶に関してが色々と起きるのは野盗犯罪者集団で確認済み。
確認がてらに、今こうして語っている分から、だいぶ回復は出来たかもしれないが……混濁してる雰囲気があるな……いや、これは……呪いの影響が残ってもいそう?
うーん……確かめてみるか。
「"いいか、よく思い出しなさい。君が、一番忘れたくなかった事を"」
「忘れたくなかった事……?」
「"そう、静かに目を閉じて……思い出してごらん"」
目を閉じた事を確認してから、ファンタジー力を緩やかに込めて、彼女の頭へと載せておく。
あ、今気づいたけど、サラサラ髪なんだ……いい匂いもしそうだな
# # # #
『"サグア"には、必ず光が当たるわ。そう、温かい光を差し伸べてくれる方が必ず現れるから。『・・・・・・・・』』
お母さんの言葉、優しく抱きしめてくれて……
いまでも思い出しては・・・…あれ?何か忘れている事がある様な?
灰色の砂嵐が流れる。
『"サグア"には、必ず光が当たるわ。そう、温かい光を差し伸べてくれる方が必ず現れるから。『ああ、・・・だ・』』
再び、思い出が流れる。
先ほどとは違う場所と、違う構図で。
そこには、誰かがいた。
再び、灰色の砂嵐が……白い暖かな光にかき消される。
『"サグア"には、必ず光が当たるわ。そう、温かい光を差し伸べてくれる方が必ず現れるから。『ああ、そうだな』』
そこには、もう一人の人物が映し出されていた。
母に抱かれる私の頭を、その優しい目をして撫でてくれている。
今の様に……
思い出した。思い出した。
何で今まで忘れていたのだろうか、何で今まで……
「お父さん……?」
そうだ、正妻に娘なんて誰も居ない。
娘はお母さんの子である私だけ。
なのに、娘のプレゼント代と言っていた……
正妻様や、お爺様たちも含めて、その場に立ち会ってもいた。
『魔人族の亜人ですか?勉強させてもらいますかね……。保護・越境と兼ねてこれぐらいでどうでしょうか?』
『これが娘のプレゼント代になるのか、まぁいいだろう』
思い出した。
こぼれ落ちたペンダントを見て、悲しい顔をしていたことを、
ワタシを抱きかかえてつぶやいた言葉を、"すまない、守り切れなかった"と、
小さく声をかけてきてくれて、"幸せになってくれ"と願ったことを……
なんで、忘れたのか
なんで、忘れていたのか……
けれど、はっきりと、今は思い出せれる。
父がこっそりと会いに来ては遊んでくれた日々を、
母といっしょに誕生日を、こっそり祝ってくれた日々を、
『『愛している』』と、言ってくれていた日を、
このネックレスも……
「あ、ネックレス……」
「"あ、ああ、すまない。君の無くした臓器の代わりとして、そこに使わせてもらった"」
と、空いている手の指先で、胸元をトントンと叩いた。
はっきりと見える位置にはないが、手で触れてもわかるものが、そこに埋め込まれていた。
意識をそこに集中すると、暖かくも優しい火照りを感じる事が出来る。
何もかも思い出す。
死の間際の事も、思い出もすべて……
自分の命が一度は無くなってしまったが、両親の想いによって生命を紡いだと理解した。
悲しい事の記憶だけで"死"を迎える事でもなく、ちゃんと愛されていた事を伝えて"生"を与えてくれた御方がおられると知った。
私は、この御方に救われた。
神の御業によって。
そう、神の御業───
幼いころ、伝承の一節と同じ事が起きて───
御降臨なされていたのだと知った
私の"生"は、この御方の為に存在する事だったと
優しき、暖かな光を頂戴される、この御方に出会う為だったと
その御方の名は、確か───……
# # # #
「すべて、すべてを思い出せました。ありがとうございます」
「"そ、そうか。良かった"」
記憶の欠落や混濁によって、精神に異常をきたす事があるから、対処療法とでもいう感じでファンタジー力で何とかならないかなと対応をしていたんだが……
何とかなったようである。
さすがファンタジー力、万能すぎです。さすファン力。長いな、"さすファ"か?
ただ、途中、うめき声と共に泣き出して焦ったけれど、その後、急に落ち着いたりして、傍から見てたら、情緒不安定この上ないなと。
そして、手をどけてみると、今度は目を開けてこちらを見上げる視線には、なにかこう力強い意思を感じる格好のち、こんどは急に跪つかれて告げられた。
「これから私"サグア・アシャ"は、御身を"我が主"として御遣いさせて頂きとう御座います」
「"わっつ?"」
「『シロキ・シン様』」
その発言を聞いた時、やっちゃった感に苛まされた。
「"……おぅ、じぃざす"」
何かやっちゃいました?的な、"なろ〇的なオヤクソク"を書きたかっただけ。
なぜバッソなのか?
えるでんりんぐ とか しらない(すっとぼけ