#ホ:【喋るな】
女士と白い鎧を着た亜人の戦闘によって被害が拡大すると判断し、周囲へ被害対応と避難を指示はしておいた。
だが、このままでは、さらに被害が大きくなると思っては、女士に一言をと思い立ち向かったが……
結果は、あの姿を見せられたら、否が応でもわからせられた。
存在その物が違うと。
あれは、こちらが何を伝えたとしても、"暴力"という名の力で全てを覆してくる存在であると。
周囲の状況から察すれば、あの亜人が消え去らない限り、この戦闘は終わる気配は無いだろう……
「純血種よ!!男爵!!アナタは最高の仕事をしてくれたわ!!」
その場を去る間際、敷地内にあいた穴の底から、いきなり女士の言葉が響く。
だが、周囲の状況を察すれば、その場を離れるのは凡人の動作だといえただろうが、それは仕方がない事だ。
とにもかくにも命が優先と考えるのは、生きているモノのサガかもしれない。
敷地の被害がどうなろうとも、戦闘が終わった頃合いを見て戻ってくればいい。
屋敷や設備は、また、やり直せれる……と、見切りをつけて。
女士に見切りをつけては、召使い共々に這う這うの体で、街を見下ろせる位置にある丘の上の領主敷地から、小川を越えてはここまでくれば……とへたり込んで振り返った矢先、白柱が先ほどまでいた敷地を覆いつくしていった。
「た、助かった……逃げていなければ、今頃、あの中に巻き込まれて……」
助かった。
そう安堵したのだが、そのつかの間、その白い柱が徐々にこちらにも広がってきた。
「に、逃げろ!このままでは、ここも巻き込まれるぞ!!」
「「は、はい!!」」
その白柱が徐々に広がりは、逃げようとした自分たちを、その白い光の中へと……
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「こ、これでどうかしら?」
肩で息を切らしながら、穢れの象徴である亜人に神力その物をぶつける術式を発動した。
魔法や魔術を無効にする鎧を着ていようが、神力を使う術には一切関係がない。
"森羅万象の法"
その法の理を司る内容にそって使用するのが神術と言われるものと、その下位である法術が存在する。
そして、その神術や法術の中には"罰を裁く"法がある。
いま、目の前で行った術式も、その法術ではなく神力による"裁きを下す"術の一つ。
この世界の何れも、その"裁き"を覆される事はない。
いかにあの鎧が"古代の宝具"であろうともだ。
「これを使うのは、大変なのよね。あら、2対も損耗しちゃったじゃないの、もぅ」
背後にあった、4対の翼が欠け2対へと減っていた。
それほどまでに、この"裁きの法"は──
"それで、何がしたかったのダ?"
「!?」
どこからともなく声が聞こえる。
声の主を探すも、周りには何も見えないし、何もいない。
「ど、どこにいるのよ!出てきなさい!!卑怯にも隠れてるなんて!!」
"卑怯?眼前に、居続けているだろう?"
「何を……言って……」
言われて意識した時"ソレ"が存在していた事を認識した。
その背には七色の光輪を携えていた。
その左腕には、淡く白い透明な薄い光輪の盾を近くに浮かせていた。
そして、先ほどまで無かったはずの右腕が元に戻ってもいた。
そして、どうしてこの存在が眼前に居続けていたのに、認識ができていない、と?
こんな存在そのモノが、馬鹿げているにも程があるぐらいの存在感があるものを?
それよりも"天の裁き"を受け付けもしていない……そんな法を無視する事があるのか?!
いや、違う、コイツは"何か"をしたはずである!そうでなければ……そうでなければ……
「や、やはり、受けなかったのね?出なければ……」
「"受けてはいた。が、何も起きなカった様ダぞ"」
「そ、そんな、嘘よ……あれは、神の力、神の裁き、誰もがその神の名の元に裁かれる奇跡なの……よ」
そう、誰もが神の裁きには逆らえない。
裁きに逆らえるとしたら、神そのモノか、神に異議を唱えることができる救世の導き……
「う、うそよ……ウソヨウソヨウソよ!救世は我らが行っている!亜人がそうだとかいうの?冗談じゃないわよ!!今までの亜人だって……亜人だって……」
そういえば、亜人に対して、天の裁きを使う事はなかったと、そこまでの相手でもなかった……
ただ、反逆するだけの、下種な存在であり"森羅万象の法"の力を行使するのも烏滸がましいと。
「"キサマは、不要なモノだ。"」
「違う!ワタシは!十二翼の一つ!選ばれた民を人を助ける救世の存在よ!!」
「"いいや、不要な存在だ。このワタシが、そう決めタ"」
「そ、そんなの!横暴じゃないの!!」
「"【喋るな】"」
「うぐっ!?」
強制的に、口が開けない、言葉を発せない。
まずい、このままではまずいと、脳内の警鐘が強くなり始める。
これは、ワタシ一人の問題ではなくなった。
このことを、十二翼に伝えなければならない。
だけれども、身体が、いう事を効かない。
恐怖の為に身動きが出来ないというソレとは違う、畏れ多くて動けないという干渉にかられる。
(動きなさい、動きなさいワタシ!!このままでは、とてもまずい事になるわ!!)
「"剣は得意ではないのだが"」
目の前の亜人は、腰から剣を抜き出す。
その剣も、白く神々しく輝いていた……
(殺される?!このワタシが?!なぜ!!なぜ殺されなければならない?!ふざけないで、ふざけないで、フザケナイデ!!)
(ワタシが、どれほどまでに神の為に捧げたと?始祖様からのお告げとともに、どれほど貢献してきてい……「"亡せろ"」)
その剣がゆっくりとひと薙ぎされると、真っ白な何かに包まれ、意識が遠のいて……
ワタシが……
消える?嘘でしょ?
そんな、そんなのって、そん……
最近、流行り(?)のダブスタ クソ オヤジの台詞を言わせたかっただけ。
※1:なお"白い鎧を着た亜人"の目撃者は、誰も居ない事になる。
(巻き添え含めて)
※2:評価、ブックマーク、いいね、ありがとうございます。
この場を借りて、感謝の意を伝えておきます。
本作では、返信は行いませんので、その点はご了承ください。
※3:誤字報告、ありがとうございます。
勢いだけで書いているので、ご変換やら抜けが多い点は申し訳ありません。