召喚魔法と属性魔法
魔法。現代に住む私たちには胡散臭くも心ときめく単語―――。
自分が異世界にいるのでさえなければ晶も飛びついていただろうが、残念ながら今の晶には忌々しいものでしかない。
さて、その魔法について、実はこの1年で晶は一通り《塔》の蔵書(恐らく晶の召喚者の物だったと思われる)を使い、習得していた。求めたものは勿論送還魔法であり、RPG感覚で基礎から習得すればいつかは、という思想に基づいた行動だった。
しかし、その努力はレルーの台詞によって粉々に打ち砕かれた。
『いつ言おうか迷ったんですけど・・・その、属性魔法を習得しても送還魔法は使えません、よ?』
その時の晶の心情を一瞬で表すならこうだ。
( д) ・ ・
その後、レルーを揺さぶり脅し蹴り倒し属性魔法を使い倒して事実を語らせた結果、わかったのは晶の思い込みの間違いとその努力の無駄さだった。
・召喚魔法と属性魔法は、あえて言うならば真水と血くらい違うものである
・召喚魔法は世界の”扉”を自身の魔力のみを使ってこじ開け、そこから自身の魔力に見合ったものが出てくるのでそれらと契約を交わし、以降常に傍にいてもらうものである。
・属性魔法は精霊の力を借り、魔力を代償にして落雷や鎌鼬などの”現象”を任意の場所に引き起こすものであり、精霊魔法と言っても差し支えない。使えば使うほど精霊との友好度が上がるため、威力の上昇や詠唱の短縮が可能である。
・送還魔法はカテゴリ的には召喚魔法にあたり、使い魔を使って己の通れるほどの空間を扉に作り自身の魔力と感覚で送還先の座標を定めて行うものである。
・送還魔法に必要な使い魔は最低でも5体。1体召喚するだけでも普通は全魔力を使うので、伝説の召喚魔法士フェルベリー以外になしえた人間はいない。
晶は落ち込んだ。それはもう落ち込んだ。
基本の属性魔法を覚え精霊も手懐けそろそろ外に出ようかなーとすら思っていた説明前の上昇気分は完全に下降し、以来、引きこもっていじけつつ精霊との仲を深めていた晶に、今回のレルーの台詞が来るわけである。
「魔力がかなりあるって・・・どれくらい?!」
「フェルベリーにはかなわないまでも、今の宮廷魔法長くらいはありますぅぅぅぅぅ・・・!」
ガックンガックンと揺らされながら答えたレルーに、晶はにっこりと、それはもうにっこりと微笑んだ。
「そういうことはもっと早く言ええぇええええぇ!」
晶の全力の揺さぶりに、レルーは途中で力尽きたのだった。
主人公、光明を見出しました