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上級魔法

上級魔法は難しい

「ルート様、中級魔法までは取得出来ましたが、上級魔法が上手くいきません…」


シュンとした様子のニーナ。安心しろ、みんなそうだ。


「上級魔法は術式が複雑すぎるからな。まずはサインを組み込まずに上級魔法そのものだけで練習してみろ」


俺がそう言うとはい、と返事をしつつもしょんぼりしたニーナ。可愛いな、お前。


「大丈夫、お前は素養がある方だよ」


むしろこの短期間で中級をマスターするとか天才の域だ。


「ふふ、はい!」


ニーナはちょっと元気が出たようだ。


「…じゃあやってみます!」


そう言うと魔法陣を俺の作った魔導師入門書を見ながら展開するニーナ。不安げな表情も愛らしい。魔力を魔法陣に注ぎ込むまでの時間はかなり早い。


「ルート様!どうでしたか?」


「うん、出来てる出来てる。やっぱり最初は無理にサインを組み込まない方がいいな」


「はい!頑張ります!」


「…ふ。ニーナ」


「はい!」


「お前、可愛いな」


沈黙が流れる。なんだ?


「る、ルート様…」


「なんだ?」


「照れちゃいます…」


「…!」


しまった、また本音が!


「…すまない」


「…は、はい」


き、気まずい…。


「…」


「…」


沈黙が痛い!お互い顔が真っ赤なのも居た堪れない!


「…え、えっと、みてくださってありがとうございます、ルート様!」


「あ、ああ!上級魔法もマスターしたら見せに来い!いつでもみてやる!」


「ありがとうございます!頑張ります!」


…なんかもう色々居た堪れない。寝よう。


「…じゃあそろそろ休むぞ」


「…はい、ルート様」


「寝る前にいい夢が見られるように呪いをかけてやる。こっちに来い」


「…は、はい」


俺はそっと近づいて来たニーナの額に、魔力を込めてキスをする。


「うう…なんだか恥ずかしいです…」


「俺もだ…。さあ寝るぞ」


「は、はい。おやすみなさいませ…」


「…おやすみ」


照れてなんていない。真実だ。…断じて照れてなんていない。



「…それで、ニーナ嬢は上級魔法はマスター出来たのか?」


「…それがなぁ。やっぱりどうも難しいらしい。上級魔法はサインを組み込まずに魔導師入門書を見ながらじゃないと使えない」


「まあまだ魔導師に成り立てだもんな」


困った。ニーナを魔導師にする気は無い。でもニーナが頑張る姿は応援してやりたい。


「あまり魔導師として育てたくは無いんだが…俺はどうすればいいと思う?」


「好きにさせてやればいいんじゃないか?」


「それしかないよなぁ」


「あんた、もしかして初恋か?」


シュテルは意地悪くそう言うと、にんまりと笑った。


「…初々しいなぁ」


「やっぱり意地悪いなお前」


「あんたはやっぱり素直だな」


「…わかったわかった。俺なりに頑張るよ」


「ああ、その方がいい。大丈夫さ。人生なんとかなるもんだ」


「じゃあそろそろ帰る」


「そうか。またな」


「お邪魔しました」


俺は移動魔法を発動する。そして城に帰って来た。


「あ!お帰りなさいませ、ルート様!」


「ああ、ただいま。ニーナ」


自分の方に駆け寄ってきたニーナの頭を撫でる。


「上級魔法はどんな具合だ?見せてくれるか?」


「はい!もちろんです!」


…ニーナは頑張り屋さんで可愛らしいな。困ったものだ。

頑張れニーナ

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