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道中


 北へ進み森を抜けたアリアとエリクだったが、夜も更ける時刻となってしまう。

 本来ならば夜の内に追っ手を完全に振り切れるよう移動したいアリアだったが、そんな彼女を諭すようにエリクは夜営を提案した。


「――……夜間の移動は、君はしないほうがいい」


「大丈夫よ、まだ足は動くもの」


「歩き疲れたところに、追っ手が来たらどうするんだ?」


「それは……」


「俺が戦えても、君が疲れていたら逃げる事も難しい。護衛としては、ちゃんと君に休んでもらいたい。いざという時には俺を捨てて、逃げる体力は残して――……」


「ちょっと待って。私、エリクを見捨てて逃げないわよ」


「し、しかし……」


「貴方を見捨てて逃げるくらいなら、貴方を私の騎士に召抱えて一緒に連れて帰るわ」


「……その、俺は王国で罪人にされているんだが……」


「そんなの、私がお父様達に我がままを言えば済むわ。そういうの、滅多にしないんだけどね。帝国は帝国で優秀な人材は欲しいから、貴方の冤罪(こと)を話してこっそり召抱えるくらいの器量は、お父様やお兄様にはあるわよ。無いなら生涯ずっと、あの二人を蔑みながら恨みを込めて生きることにするわ」


「そ、そうか……」


「でもさっきの話を進めると、最終的に私は馬鹿皇子と結婚させられる嵌めに合うから、それは本当に最後の手段。私の希望は、貴方と一緒に帝国からも王国からも逃げることよ」


「……分かった。ならやはり、今日は休もう。しっかり休んでから、朝に移動だ」


「はーい」


 説得に成功したエリクは、罪人扱いの自分を召抱えてまで生かそうとするアリアに驚く。

 そして簡素な野営を行い、二人は森の中で休んだ。


 次の日、明け方前に起床した二人は森を出る。

 そして草原地帯を歩みながら、北港町(ノースポート)に続く街道を目指した。


 その道中、小さな牧場がある農村をアリアは見かける。

 そこに立ち寄って食料と水を手持ちの金銭で購入し、村の馬を購入できないか尋ねた。


 しかし村で育てられた馬は既に買い手がおり、ある程度の成長をした馬は領主に売る契約をしているらしい。

 それを理由に牧場主に断られ、残念がるアリアは渋々と村から出た。


 その際に、エリクは疑問を浮かべてアリアに問い掛ける。


「――……そういえば、君はあの森まで歩いて来たのか?」


「いいえ。途中までは馬だったわ。でも、馬が倒れてしまったの」


「倒れた?」


「私の馬だったんだけどね。……その馬は看取って、埋めたわ」


「そうか。それは、不運だったな」


「そうね。……でも、貴方に逢えた」


「!」


「無事に王国まで辿り着けたとしても、潜伏しつつ王国の貴族達を探りながら亡命先の貴族家を探して過ごすには、お金も乏しかったでしょうし。仮に亡命できたとしても、キナ臭い王国内でローゼン公爵家の長女(わたし)が亡命してきたら、荒れた挙句に人質として扱われて、最後にはヤバイ相手と結婚させられたり、最悪あの馬鹿皇子の下に送り返させる可能性も高かったわ」


「そ、そうなのか」


「そうなの。だからエリク、貴方にあの森で逢えたのは私の幸運よ」


「……そうか、なら良かった」


 そう会話しながら歩く二人は微笑みを浮かべ合い、徒歩のまま北港町(ノースポート)を目指し歩き続ける。


 その道中、(およ)そ五日間。

 所々にある民家や農家の家を訪ね、その都度に必要な消耗品を得ながら、二人は北港町(ノースポート)手前にある街道まで辿り着いたのだった。


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