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【完結】虐殺者の称号を持つ戦士が元公爵令嬢に雇われました  作者: オオノギ
螺旋編 五章:螺旋の戦争

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神に挑む者


 アリアとエリクに関わりがあるセンチネル部族の末裔と思しき青年によって、箱舟(ノア)二号機の周囲は結界で守られ、黒い人形達の進攻を阻む事に成功する。

 黒い人形の黒剣に貫かれても即座に修復する結界は、箱舟(ノア)や都市に設けられた結界装置より遥かに性能は高く、生き残った同盟国軍や闘士達の被害を防いでいた。


 こうして箱舟(ノア)の状況は好転したかに見えたが、全体の状況が覆ったわけではない。


 黒い人形達は更に増え、生命が多く居る都市東部に二千以上の黒い人形達が押し寄せている。

 そうした中で奮戦する事が叶っているのは特記戦力であるケイルやマギルスを含んだ聖人や魔人達だけだが、破壊できず永遠と押し寄せる黒い人形達に疲弊を強いられていた。


 この状態が一時間も続けば、確実に疲弊した聖人や魔人達の中にも死人が出る。

 そして箱舟(ノア)の周囲を守る結界もどれだけ維持できるか分からず、傷付いた者達の方が多い箱舟内(せんない)の兵士や闘士達は緊張感を維持したまま外の様子を窺うしかなかった。


 この状況を覆す、一縷の望みがあるとすれば。

 それを考える者は、都市中央の上空で繰り広げられる光景を遠目に見る。


 それはこの状況で都市上空で元凶である『神』と対峙している、七大聖人(セブンスワン)聖紋(サイン)を二つも受け継いでいた青年。

 元ガルミッシュ帝国皇子、ユグナリス=ゲルツ=フォン=ガルミッシュだけだった。


「――……ハアァアッ!!」


「チィッ!!」


 そのユグナリスと『神』は、赤い夜空の中で凄まじい接戦を繰り広げている。


 赤と緑の魔力を纏わせ上空を流星のように飛翔するユグナリスは、『神』より素早い神速で剣を薙ぎ突く。

 瞬発的な速度で遥かに上回るユグナリスは、『神』が放つ魔法の光球や砲撃を容易く回避し、更に背後や死角を突いた攻撃を可能にしていた。


 それを辛うじて自身の周囲に張る結界で防ぐ『神』は、激しい舌打ちを鳴らしながらユグナリスに対抗する。

 魔法で撃墜が出来ず苛立ちを深める『神』は、再び背後の結界に剣を喰らい突かせたユグナリスを見て呟いた。


「――……消し飛べ」


「!」


 ユグナリスは『神』の呟きを聞き、僅かな変化に気付く。

 『神』の体内に膨大な生命力(オーラ)が生み出され、同時に結界の表面に赤い魔力(マナ)が充満しつつ事に気付いたユグナリスは、結界から剣を離し即座に後方へ飛び退いた。


 その洞察は正しく、『神』は再び肥大し膨張した生命力(オーラ)魔力(マナ)に因る混合エネルギーでの自爆攻撃を決行する。

 『神』を中心とした半径百メートル以上が白と赤が混じる極光に瞬時に覆われ、退いたユグナリスに追い付き飲み込んだ。


 そして極光が(しず)まり赤い夜空に戻ると、当然のように無事な『神』はユグナリスが逃げた方向を見る。

 しかしそちらの方角にユグナリスが飛んでいる様子は無く、『神』は怪訝な表情を見せた瞬間、自身の背中に走る衝撃に気付いた。

 

「……ッ!!」


「――……さっきの攻撃、一時的に結界を解除しないと出来ないんだな」


「……まさか、あの距離から避けて背後に回るなんて……」


()ったぞ、アルトリア」


 ユグナリスはあの自爆攻撃を神速で飛び避け、そればかりか極光に紛れて『神』の背後へ素早く回り込み突く。

 そして『神』の心臓を背後から一突きし、通常の生命体(いのち)であれば致命傷の傷を与えた事になった。


 しかし『神』は、既に普通の生命体(いのち)では無い。

 それを証明するように、胸の傷からは一滴の血も流れること無く、『神』は口元をニヤリとさせて述べた。


「……ふっ。心臓を貫かれたくらいで、私が死ぬと思ったわけ?」


「いいや、思わないさ」


「!」


「『到達者(エンドレス)』。今のお前は、そうなんだろ?」


「……!」


「『到達者(エンドレス)』は『到達者(エンドレス)』でしか殺せない。……だが、到達者(エンドレス)も無限の再生ができるわけじゃない」


「……」


「お前はあと何回、殺せば死ぬんだろうな?」


「ッ!!」


 ユグナリスが刺し貫く剣を一閃するように薙ぎ、『神』の胴体を真っ二つにする。

 しかし『神』は血を流す事も無く、『神兵』ランヴァルディアより速く瞬く間に肉体を再生させ身に着けた衣服も修復し、剣を離したユグナリスに杖を薙いで迎撃した。


 それを容易く回避したユグナリスは再び距離を取り、『神』と対峙する。

 忌々しい視線を見せる『神』は、ユグナリスに苛立ちの声を向けた。


「――……小賢しい知恵を付けて……ッ!!」


「俺は、本物の到達者(エンドレス)を知っている」


「!」


「お前は到達者(かれら)とは似て非なる存在。――……偽物だ!」


「このッ!!」


 『神』は忌々しい表情でユグナリスに杖を向け、瞬時に展開した数百から千に満ちる光球を撃ち放つ。

 それをユグナリスは余裕を見せながら神速で回避し、逆にその隙間を縫いながら『神』の間近に迫った。


「!」


「もう、お前に負ける俺じゃないッ!!」


 ユグナリスは赤い柄の宝剣を振り、白銀の刀身に生命力(オーラ)と魔力の炎を纏わせ『神』に斬り掛かる。

 それを結界で防ごうとした『神』だったが、完成したはずの結界はユグナリスの剣によって瞬く間に斬り裂かれ、神の身体を袈裟懸けに斬り抜いた。


 更に抜けた背後から剣を戻し、背中を合わせるように再び背後から『神』の心臓を貫く。


「……クッ!!」


「不死身だろうと、お前を何万回だって殺す。……殺された者達の痛み、思い知れッ!!」 


「この……赤蠅(あかばえ)がッ!!」


 そうしてユグナリスは再び剣を薙ぎ、『神』の胴体を二つに裂く。

 それに憎々しい声と表情を向ける『神』は、再び肉体と服を瞬く間に修復しユグナリスに攻撃を加えた。


 それから戦いは、『神』の防戦一方に陥る。

 ユグナリスは三十年前とは比べ物にならない実力を得て、『神』を脅かす存在へとなっていた。


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