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聞き込み


 宿部屋を借りたアリアとエリクは、その日は何事も無く就寝する。

 そして次の日、起床した二人は朝食を下の階で済ませた。


 すると次の目的地である南の国へ向かう為に、乗船できる商船を探すことになる。

 それに疑問を持ったエリクは、港に行く道中でアリアに問い掛けた。


「――……商船? 南の国に向かう定期船を探すんじゃないのか」


「定期船はダメ。多分、追っ手が見張ってるもの」


「そうなのか?」


「南の国に私達が行くのがバレてるなら、定期船に乗り込む人間を見張るのは当たり前よ。迂闊に私達が定期船の受付を済ませに来たら、私達を取り押さえに来るに決まってるわ」


「そうか、だから商船なのか?」


「そうよ。個人で船を所有してる商船、あるいは商船団を捜して乗せてもらうの。建前上は護衛として雇われた傭兵としてね。駄目なら、お金を払って頼むしかないわ」


「商人は疑り深い。俺達を乗せてくれるだろうか?」


「そうだけど、そうする以外に南の国に行く手段が考えられないの。とにかく、交渉するしかないわ」


「何か、当てがあるのか?」


「あるにはあるんだけど、私が知ってる商人や商団に対しては既にお父様達が手を回してるはず。迂闊に頼れないわね」


「じゅあ、どうする?」


「とにかく怪しまれない程度に聞き込み開始よ。ただし私達が一緒に行動して聞き込むとバレるだろうから、別れて探しましょう。貴方一人で出来る?」


「いいのか?」


「ええ。成長してる貴方なら、きっと大丈夫よ」


「そうか、分かった」


 商船に乗って南の国に行く方針を固めた二人は、港に到着してから二手に分かれる。

 そしてエリクの成長を感じていたアリアは、今回の情報収集を一人でやらせてみた。


 すると二人は港に居る人々に話し掛け、南の国に向かう商船を所有する商人を探す。

 幾度か条件が合致する商船と商人を見つけた二人だったが、その交渉は全て断られてしまった。


 断られた理由としては、既に傭兵は雇い済みの商船や、突如として乗り込みたがる怪しい者を信用できないということ。

 それに対して反論の余地すらない二人は再び合流し、夕日が落ちる港で赤く染まる空と海を眺めながら溜息を吐き出した。


「――……ハァ、ダメね」


「ダメだな」


「やっぱり前触れもなく売り込みに行って雇ってくれるような商人や商船は、そうそういないわよね。……どうしよう、このままだとここで足止めされちゃう」


「そうだな」


「はぁ、何か良い方法とかないかしら……」


「……」


 南の国に向かう手段に悩むアリアは横目に、エリクも思考しながら沈黙を浮かべる。

 すると今まで得た情報と自身の経験から、ある疑問が浮かび上がりながらアリアに問い掛けた。


「……あの商人達は、どうやって護衛の傭兵を雇うんだ?」


「え?」


「王国で傭兵(おれたち)を雇う時は、依頼人が来るか国の兵士から依頼が出されていた。ここでは、どうやって傭兵に依頼しているんだ?」


「……そういえば。元々から抱えてる護衛の他にも、南の国から来ていないような傭兵達がチラホラ雇われていたわよね」


「他の傭兵(やつら)は、どうやって商人達に雇われたんだろうか?」


「……そうよ、つまりあるんだわ。何処かに傭兵を紹介して雇わせる、仲介所のような場所が……!」


「なら、そこに俺達も行けば」


商船(ふね)に乗って南国(マシラ)に向かう依頼を受けられるかも!」


 エリクの疑問をきっかけとして、傭兵を雇う際に経由する仲介所が存在する事にアリアは結論として辿り着く。

 次に探すべき目標(ばしょ)を見つけたアリア達は、新たな聞き込みを開始した。


 そして思ったり簡単に、傭兵に依頼を仲介している場所の情報を得る。


「――……傭兵の仲介所? それだったら傭兵ギルドでやってるだろ」


「傭兵ギルド?」


「知らないのか? 傭兵をやってる奴が集まってる組織だよ。お前さん達、ギルド所属の傭兵じゃないのか?」


「実は、まだ村から出たばかりの駆け出しでして」


「駆け出しね。ならそれこそ、傭兵ギルドで色々と聞けるさ。町の中央通りに行ってみるといい、看板も立ってる」


「はい、ありがとうございます」


 情報を得られた二人は、初めて『傭兵ギルド』なる組織の存在を知る。

 それは帝国や王国には無い組織であり、南の国マシラを始めとした諸外国で普及し認められている組織らしい。


 その情報を知ったアリアとエリクは、傭兵ギルドのある場所へ向かった。


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