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【完結】虐殺者の称号を持つ戦士が元公爵令嬢に雇われました  作者: オオノギ
革命編 八章:冒険譚の終幕

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楽園の真実


 一時的に止めただけに過ぎない循環機構(システム)の自爆を再び起こさぬ為に、アルトリアとケイルは自分達と同じ『創造神(オリジン)の欠片』と呼ばれる者達を探す。

 そして判明している四名を除く残り三名を探す為に、二人は『青』がいる秘密基地(アジト)へと訪れた。


 すると『(かれ)』が保護している生まれながらに『聖人』の子供達に、二人は『欠片』の可能性を見出して会う事を選ぶ。

 『青』の先導で秘密基地(アジト)内部の転移魔法陣から移動した三人は、未来でシルエスカ達が見た楽園(ちか)へ訪れた。


「――……ここは、外か?」


「いいえ。魔鋼(マナメタル)で生み出した地下空間よ」


「地下って、空や森まであるのにか。……ってかお前、来たことあんのかよ?」


「ええ。だって未来であの子供達を管理してたのは、私だし」


「!?」


「まぁ、それも放置してたようなものね。ここはあの子達だけの自給自足で事は足りるし、従属させてたミネルヴァに世話は任せちゃってたから」


「――……行くぞ、二人とも」


「あ、ああ……」


 転移で飛ばされた先に広がる森と太陽が見える空に、ケイルは困惑染みた様子を浮かべる。

 逆にアルトリアは平然とした様子を見せながら、この場所について知識がある事を話した。


 そんな二人に付いて来るよう促す『青』は、森の中を歩きながら再び先導する。

 それに従う二人は共に歩き始め、森の奥へと入っていった。


 するとそんな彼等の目に、様々な動物達が視界に入る。

 しかも動物達は入って来た三人が近付いても警戒心も抱かず、平然とした様子で過ごしていた。


 そうした奇妙な動物達を目にし、ケイルは訝し気な声を向ける。


「……なんだ、ここの動物。こんだけ近くにいるのに、アタシ達をまったく警戒してねぇぞ。……おいっ、アレって肉食の熊だろ? なんで鹿や兎が一緒に居て襲われないんだよ」


「あの動物達は、『聖獣』と呼ばれる存在だ」


「せいじゅう?」


「動物の進化は二通りある。一つはお前達が良く知るであろう、魔力を得て進化した『魔物』や『魔獣』。そしてもう一つが、我々のような『聖人』と同じく純粋進化した『聖獣』だ」


「!?」


「『聖獣』は自然環境に適応した、原種(オリジナル)に最も近い存在。聖人と同じように何百年と生き、食事も最低限しか必要としない。故に捕食の必要性を失い、他動物と争う必要がなくなった無害の獣だ」


「……そんな動物、いや『聖獣』なんてのがこの世に居たのかよ。聞いた事も無いぞ」


「当たり前であろう。そもそも『聖獣』は、過去の人間大陸で絶滅し、現在の人間大陸で新たに生まれた記録は無い」


「!」


「動物は短命だからこそ、本能として食事と繁殖を強く必要とする。だが食事を必要とせず長く生きられる故に、それ等の本能を消失してしまった『聖獣』は繁殖する事がほとんど無い。しかも人間や魔獣の繁殖により、『聖獣』はそれ等の糧となり続けた。『聖人』と同様に、膨大な生命力(エネルギー)を持つ食糧となるからな」


「じゃあ、ここにいるのは……」


「儂が絶滅前に発見し保護している『聖獣』達だ。それ故に彼等は他者を見ても外敵と判断せず、争う事はない。……『聖獣(それら)』と違い、同じ人間や『聖人』は争うのにな」


「……『聖獣(コイツら)』だって、襲われたら反撃くらいするだろ」


「いいや、『聖獣』は反撃をしない」


「えっ!?」


「身体能力も高く治癒力も高い為に、生存本能が薄れてしまっているのだ。だからほとんどの『聖獣』は、襲われた場合に逃走を選ぶ。……仮に反撃する『聖獣』がいたとすれば、そうするだけの理由が有るか無いかの差であろうな」


 人間や『聖人』に対する皮肉を含んだ言葉を話す『青』は、森に棲む『聖獣』達について話す。

 それを聞いたケイルは驚愕しながら平然と横を通り過ぎる『聖獣』を改めて目にし、自分の知る生物とは異なる法則で生きているのだと理解させられた。


 そんなケイルを見ながら、アルトリアは言葉を発する。


「それは、『聖人』の子供にも言えることよ」


「!」


「生まれた時から『聖人』の子供達には、人と同じように生きる為の本能がほとんど無くなってる。成長も遅いし、食事や睡眠すらもあまり必要としないせいで、ほとんどの人間はそういう子供を化物扱いするわ」


「……だから、その『聖人』の子供も保護してるってわけか」


「ええ。でも、それだけが理由じゃない。彼等の中には、特異な能力を持つ子供達がいる。そうでしょ? 師匠」


「特異な能力……?」


 前を歩くアルトリアの言葉に、『青』は反応する。

 そしてケイルに疑問に答えるように、彼は子供達が持つ能力(ちから)について教えた。


「……生まれながらに、彼等は無意識の内に能力(ちから)を扱えるようになった。始めはアルトリアもそれと似た状態かと思ったが、詳しく調べれば彼等が使うのは『人間(ひと)』が忘れたはずの古代魔法だ」


「古代魔法……?」


「『統一言語(エスペラント)』と呼ばれる言葉を歌のように発し、それを現世(このよ)へ具象化し反映される。儂はその能力(ちから)を、『願いの言葉(エクスワード)』と名付けた」


「……聞いた限りじゃ、現代魔法ってのと同じようなもんなんだろ? 魔力を取り込んで、詠唱して……」


「いいや。発した言葉が、そのまま反映されると言ったであろう。確かに現代魔法の詠唱も類型の言葉を発するが、魔力を用いた魔法とは根本的に法則が異なるのだ」


「……よく分からねぇな。どういう事なんだよ?」


「つまり彼等が『死ね』と願いながら歌えば、その言葉を向けられた相手は有無を言わさずに死ぬ」


「!?」


「逆にどんな重傷者や重病人も癒す事すら可能とし、失った肉体すら復元させる事が可能だ。……ただ現世には既に無いモノ、輪廻に赴いた魂を現世に呼び戻して死者蘇生するなどという事は出来ないがな」


「……そんなヤベェ能力が、創造神(オリジン)権能(ちから)以外にもあるってのか?」


「そうだ。だからこそ彼等を隔離し、そうした能力を用いる必要が無い環境が必要だった。そこで、『聖獣』達を保護している、この地下空間で保護しているわけだ」


「……何人くらい、その子供達は居るんだよ?」


「今は三十人程だな。……そういえば、お前達に言い忘れていた事がある」


「?」


「彼等もまた、『黒』に選ばれている」


「!?」


「どのような理由で『(やつ)』に選ばれたかは、その理由は口留めされているようだが。しかし確実に、未来の記憶を持っているのだ。……つまり、彼等はお前を知っている。アルトリア」


「……ッ」


「お前は未来で、彼等ごと我々を害そうとした。それを覚えていれば、お前を見た子供達は恐怖を抱くだろう。……もしそれが害意となれば、死の言葉を向けられるかもしれん。例え創造神(オリジン)権能(ちから)を用いたとしても、古代魔法は古代魔法でしか対抗できない。……三十名以上の『統一言語使い(エスペラント)』と、敵対する覚悟はあるか?」


 改めて足を止めた『青』は、振り向きながらアルトリアに警告を向ける。

 そして自分達と同じようにあの未来を知る子供達がいると聞き、改めてケイルは危機感を抱きながら彼女へ焦りの声を向けた。


「……お、おい。アリア……!」


「分かってるわよ。私も一応、古代魔法(それ)は使えるわ。あの子供達程じゃないけどね。……それでも、私はあの子達に会わなきゃいけないの」


「そうか。……分かった、お前の意思を尊重しよう」


 そう言いながら再び前を歩き始めた『青』に、二人は緊張感を高めながら追従する。

 すると十分ほど歩いた先に、森の中に混在する村が三人に見えた。


 更にその視界に、三十人前後の十歳未満から十三歳前後の少年少女達が待っている。

 まるで自分達の来訪を知っていた子供達は、若い姿の『青』に声を向けた。


「『――……先生、待ってたよ!』」


「『お前達、どうして?』」


「『そろそろ、神様も来る頃だと思ったから!』」


「……!」


 子供達は古めかしい言語で、『青』に同行しているアルトリアへ視線を向ける。

 彼等は未来と同様に彼女を『神様』と呼ぶと、訪れた彼等に新たな言葉を向けた。


「『もう一人の神様が教えてくれたんだ』」


「『過去に戻ったら、また神様が会いに来るって』」


「『その時には、神様に協力してあげてって御願いされたんだよ』」


「『そうしたら、優しい神様に戻ってくれるって!』」


「なんと……」


「……これも、『黒』が予知してた状況ってことね。輪廻(このまえ)の時といい、何処まで視えてたのよ……ッ」


「……何言ってるか分からねぇ、説明しろよ……」


 無動作で彼等の言語を翻訳できる魔法を施したアルトリアは、彼等が『黒』によって自分の来訪を教えられていた事を知る。

 『青』もまたそれを初めて聞いた驚きを浮かべ、ケイルは彼等の言語を理解できずに首を傾げるしかなかった。


 こうして『楽園』へ訪れたアルトリア達は、聖人の子供達に迎えられる。

 彼等もまた『黒』の能力(ちから)と予言によって、この場所まで導かれるであろう神様(アルトリア)に協力する姿勢を見せていた。


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