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【完結】虐殺者の称号を持つ戦士が元公爵令嬢に雇われました  作者: オオノギ
革命編 七章:黒を継ぎし者

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男達の決闘


 マナの大樹()から出て来たウォーリスはその猛威を外に居る者達に奮う中、エリクの対抗に遭い負傷する。

 到達者(エンドレス)としての能力(ちから)を持つ二人の攻撃は不死に近い再生能力が無効とされ、互いにその状況を確認して慎重に向かい合っていた。


 しかし膠着した状況に現れたのは、ウォーリスと同じくマナの大樹()から現れたアルトリア。

 生成したマナの実を用いて復活した身体を得たアルトリアは、対峙する二人を見ながら声を向けた。


「――……ウォーリス、悪足掻きをまだ続ける気?」


「……ッ」


「アンタの野望(のぞみ)は潰えた。そして大事にしてる女性(もの)も、私の手の内にある。……そんな状況で、何をしようっての?」


「……創造神(オリジン)さえ手の内にあれば、計画の再興は可能だ」


「だから今回は逃げて、またやり直そうって? ……もう一度アンタの茶番に付き合う気なんて、私には無いわよ」


 創造神(オリジン)を抱えて再起の為に逃亡しようとするウォーリスの言動を確認し、アルトリアは嫌悪の表情を向けながら身構えようとする。

 しかしそんな二人の言動を見ていたエリクは、アルトリアに決意の声を向けた。


「アリア、待て」


「エリク?」


「奴は、俺が倒す。君は手を出すな」


「!!」


 突如として聞かされるエリクの言葉に、アルトリアだけではなくウォーリスも驚きの表情を浮かべる。

 しかしその真意を理解できなかったアルトリアは、敢えて訝し気な表情を向けながらエリクに問い掛けた。


「どういうつもり? エリク」


「……」


そいつ(ウォーリス)をここで逃がすと、また同じような事を起こすわ。それを確実に防がないといけないのよ」


「分かっている。……だが俺は、奴と戦わなければならない」


「どうしてよ?」


「……それが俺の、俺達の戦いだからだ」


「!」


 エリクはそうした言葉を向けながら、ウォーリスを鋭い眼光で向ける。

 それに応えるように青い瞳を向けたウォーリスは、僅かにその目を見開きながら鋭い視線を返した。


 エリクが語る『俺達』という言葉が向かい合う二人である事を理解したアルトリアは、瞼を閉じて表情を(しか)める。 

 しかし呆れるような溜息を漏らしながら、エリクのその言葉に対して返答を伝えた。


「はぁ……。……分かったわよ。貴方の気が済むようにしなさい」


「ああ」


「でも、一つだけ言っておくわ。――……そんな奴に負けたら、許さないわよ」


「ああ」


 そう言いながら腕を組んだアルトリアに、エリクは真剣な表情で応える。

 しかし二人の会話を聞いていたウォーリスは、逆に困惑した表情と声色をアルトリアへ向けた。


「私に慈悲でも与えたつもりか?」


「勘違いするんじゃないわよ。エリクが負けたら、次は私が相手をしてあげる。……まぁ、負けたらの話だけど」


「……随分と自信があるようだが。例え鬼神の能力(ちから)を使えているとしても、奴は少し前まで一国の傭兵だった男だ。今の私に及ぶはずがない」


「それはどうかしら?」


「……あの男が私に勝てると思っているのか。その根拠のない自信、何処から来ている?」


「決まってるじゃない。エリクは、私が認めた英雄(ヒーロー)だからよ」


「!」


「アンタみたいな軟弱な奴に、私の英雄(エリク)が負けるはずないじゃない。……なんだったら御望み通り、エリクに勝ったらアンタが創造神(オリジン)を連れて逃げても見逃してあげるわ」


「……それを信じるとでも?」


「信じられないなら、誓約(せいやく)でも結んであげるわよ」


「!」


 アルトリアは自らそうした提案を向けると、目の前に右手を向ける。

 すると人差し指から光の粒子が溢れ出し、それで虚空に文字を書き始めた。


 そこで書かれた文字には、先程のアルトリアが述べた提案がそのまま書き込まれる。

 すると留められた文字がアルトリアの肉体へ吸収され、その身に刻まれるように『制約』が施された事をウォーリスは動揺した面持ちで確認した。


「これで『誓約』は成された。アンタが勝ったら、私は今後アンタ達に手を出さない。ついでに大事にしてる女性(カリーナ)も返してあげるわ」


「……正気なのか?」


「アンタよりもね。……でもそれは、エリクの申し出にアンタが応えたらの話になるけど」


「……」


 自らが施した制約の内容を伝えるアルトリアに、ウォーリスは信じ難い表情を向ける。

 そして睨み見るエリクに視線を向けると、大きな息を一つだけ吐き出しながら返答を告げた。


「……いいだろう。お前達の提案、受けよう」


「だ、そうよ。エリク」


「……ああ」


 ウォーリスは二人が申し出た言葉に応え、エリクと戦う事を受け入れる。

 すると右手で抱えていた創造神(オリジン)を地面へ降ろし、両手を自由にした形で前に歩み出た。


 そして三メートル程の空間(あいだ)を挟み、ウォーリスとエリクは向かい合う。

 互いに持つ武器(けん)を強く握り締める様子が確認した後、アルトリアは腕を組んだまま張り上げた声を発した。


「――……勝負、開始よっ!!」


「ッ!!」


「オォオッ!!」


 アルトリアの言葉が戦いの始まりとなり、二人は凄まじい速度と勢いで踏み込み剣を振る。

 それが衝突しながら地面を削り割るような衝撃が響き、二人が発する生命力(オーラ)魔力(マナ)が何もかも飛ばすような風を吹き荒れさせた。


 更にその内部で発せられる怒号のような剣戟が響き、それ等が大気すら破裂させる音を発し始める。

 その衝突がマナの大樹()から遠ざかるように動き出すと、アルトリアは溜息を零しながら歩み始めた。


「まったく、男って馬鹿ばっかりよね。……アンタもそう思うでしょ?」


 アルトリアは歩み寄りながら屈んでそうした言葉を向けたのは、倒れている創造神(オリジン)

 彼女はその中で見ているであろう『(そんざい)』に話し掛けると、そのまま創造神(オリジン)の身体を抱え持って二人が激突している場所へ歩み始めた。


 そんな折、アルトリアの視界に倒れている者達の姿が映る。

 マギルスを始めとしてユグナリスや『青』達が戦闘不能になっている姿を確認すると、再び深い溜息を吐き出しながら呟いた。


「はぁ、世話が焼けるわね。ここにいる男共は……」


 そう言いながら負傷している者達を見るアルトリアは、ただ視線を向けるだけで治癒の光を降り注がせる。

 何の動作も無く行われる権能(ちから)は瞬く間に彼等の傷を修復させ、五体満足な姿に戻した。


 創造神(オリジン)を抱えたままそうした能力(ちから)を行使するアルトリアは、更にユグナリスへ視線を向ける。

 そして自らの肉体から赤い光を向け放つと、それをユグナリスに取り込ませるように注ぎ込んだ。


「アンタの身体なんだから、アンタを仮宿(やど)にしておきなさい。――……さぁ、行きましょうか」

 

 冷たい表情を言葉を向けながらそうした言葉を漏らした後、創造神(オリジン)を抱えたままアルトリアは歩き出す。

 そして二人の後を追い、その結末を見届けようとしていた。


 こうして創造神(オリジン)を賭けた戦いが、エリクとウォーリスによって行われる。

 それを提案したアルトリアは、自らが始めた旅の果てに続いた彼等の決着を見届けようとしていた。


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