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【完結】虐殺者の称号を持つ戦士が元公爵令嬢に雇われました  作者: オオノギ
革命編 七章:黒を継ぎし者

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相打つ者達


 マナの大樹()に存在する循環機構(システム)を用いて、アルトリアは自らの身体を生き返らせる。

 そして現実世界に出たウォーリスを追う為に、精神体である未来のユグナリスと鬼神フォウルを伴い現実(そと)へ出る事を選んだ。


 一方その頃、現実世界において再び戦闘を開始したウォーリスは『到達者(エンドレス)』としての本領を見せる。

 それをゲルガルドを凌ぐだろう脅威(ちから)である事を見抜いたエリクとマギルスは、最初に対峙した時以上の警戒を見せながら身構えた。


 しかし創造神(オリジン)を右手に抱えたままのウォーリスは、自身の上空(うえ)にあるモノを出現させる。

 それは黒い時空間の穴であり、その中から落ちて来る物を左手で拾いながら掴み持った。


 するとそれを見ていた周囲の三人は、更に警戒心を強める。

 そうした中でエリクだけが、僅かに驚きの表情を浮かべていた。

 

「!」


「あの剣は、あの時の……」


 ウォーリスが引き出した黒い長剣を見て、エリクは同盟都市で戦った時の事を思い出す。

 あの時にもウォーリスは同じ武器(けん)を使い、膨大な生命力(オーラ)を纏わせながら強力な気力斬撃(こうげき)でエリクを撃退して見せた。


 それを思い出していたエリクは、あの時の衝突によって自分の大剣(ぶき)と同じ魔鋼(ざいしつ)で造られている武器だと察する。

 『青』もまたその長剣(ぶき)を一目で理解し、自分の持つ錫杖(つえ)を構えながら言葉を向けた。


魔鋼(マナメタル)で造られた剣か。……完全に物質化している魔鋼(マナメタル)ならば、創造神(オリジン)も無効化は出来ぬという事だな」


「そうだ。……お前達は、この魔鋼(マナメタル)がどうして創造神(オリジン)が造り出したか知っているか?」


「なに?」


「それは、自分を殺す為だ」


「ッ!!」


 淀みの無い口調で言い放ったウォーリスは、左手に握る魔鋼(マナメタル)の長剣を回し握りながら刃を創造神(オリジン)に向ける。

 それを見て創造神(オリジン)を殺害しようとしたのだと考えた『青』やマギルスは、咄嗟に身体を動かしウォーリスを止めようと襲い掛かった。


 しかしその瞬間、ウォーリスは二人の動きを素早く目で追う。

 そして最初に迫って来たマギルスに対して真っ先に対応するように動き出し、振り下ろされる大鎌の刃よりも先に、自身が持つ長剣の刃を突き向けた。


「うわっ!!」


「チッ」


 捉えきれないウォーリスの突きを反射神経と勘だけで僅かに掠めて避けたマギルスは、胸部分に僅かな血を流血させながら飛び避ける。

 一撃でマギルスを無力化できなかったウォーリスは、突いた長剣を薙ぐように動かしマギルスの胴体を切り裂こうとした。


 それを大鎌の柄で受け止めたマギルスは、凄まじい衝撃を受けながらその場から吹き飛ぶ。

 しかし地面へ噛み付くように大鎌の刃を喰い込ませると、百メートルほど飛ばされながらも踏み止まる事に成功した。


「う、うげ……っ」


 それでも次の瞬間、マギルスの身体が崩れるように傾き膝を地面へ着ける。

 先程の攻撃でマギルスの両腕は折られ、しかも掠めただけの攻撃が胸部の骨を粉砕する程の衝撃を有している事に遅れて気付いた為に、マギルスは立ち上がる事が困難になっていた。


 そうして三人の包囲網を崩したウォーリスは、強者である彼等の認識以上の素早い動作で次の行動を始める。

 すると『青』に向かって迫りながら、彼を仕留めようと長剣を突き向けた。


「ヌッ!!」


「ほぉ、魔法以外には脳が無い魔法師かと思えば……!」


 しかし予想外にも、『青』は自身が握り持つ錫杖(つえ)でウォーリスの長剣(つき)を防ぎ止める。

 多くの叡智を有し魔法を得意とする『青』が近接戦にも対応できる事を知ったウォーリスは、意外な驚きを零しながら互いの武器で鍔迫り合いを始めた。


 更にウォーリスは、『青』が握る錫杖(つえ)の材質にも気付く。


「貴様の杖も、魔鋼(マナメタル)か」


「……クッ!!」


「だが、やはり技量不足のようだ――……!」


 押し込む長剣が圧倒する形で『青』の錫杖(つえ)を肩口に押し込めると、形勢は一気にウォーリスへ傾いた事が分かるようになる。

 そのまま押し込む長剣の刃で『青』の首を斬り取ろうとしたウォーリスだったが、その背後に悪寒を感じさせた。


 すると次の瞬間、ウォーリスの背後に飛び掛かる黒く巨大な人影が存在する。

 それは大剣を振り被ったエリクだと一瞬で理解したウォーリスは、『青』の腹部を右足で蹴り飛ばしながら振り返った。


「ぐっ!!」


「邪魔だっ――……エリクッ!!」


「オォオオオオッ!!」


 蹴り飛ばされた『青』は森側まで吹き飛び、その先で衝撃音が響く。

 しかしそんな事に構う様子も見せないウォーリスは、大剣を振り下ろすエリクに敵意を持った表情を向けて長剣を振り抜いた。


 そして次の瞬間、エリクとウォーリスの武器が衝突する。

 互いに膨大な生命力(オーラ)を込めた一撃を衝突させると、地面を割れ砕くような衝撃が周囲に響き渡った。


「ヌゥウッ!!」


「オォオオッ!!」


 全ての力を乗せるようなエリクの一撃と、創造神(オリジン)を抱えたまま片手で対処するウォーリスの一撃は意外にも互角に見える状況を生み出す。

 しかし上段(うえ)から振り被る形で押し込んでいるエリクと、創造神(オリジン)を抱えたまま下段(した)から切り上げる形になったウォーリスとでは、態勢的な違いが有利の差が見えていた。


 そうした自身の不利を察したのか、ウォーリスはすぐに武器同士の力押しを切り替え、左手を器用に曲げながらエリクの大剣を受け流す形で地面に衝突させる。

 受け流されたエリクは(りき)んだ身体の硬直を解く前に、地面へ衝突した余波から逃げるように飛んだウォーリスの右足が襲い掛かった。


「グッ!!」


「!」


 するとエリクは敢えて大剣を手放し、大きく上体を仰け反らせながら右側前頭部に迫るウォーリスの右足を回避して見せる。

 更にウォーリスが右足を引かせる前に、今度は上体を戻しながら右拳を握り締めて逆に相手(ウォーリス)の顔面へ殴りつけた。


「ガハ……ッ!!」


「ァアアッ!!」


 右頬にエリクの右拳が直撃したウォーリスは、その場から吹き飛ぶ。

 しかし敢えて創造神(オリジン)を抱き締めるように守りながら、地面へ衝突する状況から守ろうとした。


 そして地面を大きく跳ねた瞬間、ウォーリスは空中で身を捻りながら姿勢を戻す。

 すると落ち着いた着地を見せて立ち上がり、左頬と口から血を流しながらエリクと数十メートル程の距離を開いたまま再び向き合った。


「やはり、鬼神の信仰(ちから)によって到達者(エンドレス)に覚醒していたか。……エリク」


「奴の傷が、治っていない。……今の俺なら、奴を倒せる」


 以前は瞬く間に治癒していたウォーリスの傷が再生し治癒する様子が無い事を確認したエリクは、神兵同様に自分の攻撃が到達者(ウォーリス)にも有効だと気付く。

 しかしそれを予想していたウォーリスもまた、左手の甲で顔や口から垂れる血を拭いながら長剣を構えた。


 エリクも斜めに突き刺さった大剣を地面から引き抜き、ウォーリスに向けて身構える。

 到達者(エンドレス)同士の攻撃が互いに有効打となる現状を理解した二人は、僅かに緊張を走らせながら向かい合った。


 そんな時、対峙している二人の視界に突如として大きな光が舞い込む。

 それはマナの大樹()から発せられている光であり、二人はそちらに視線を向けながら目を見開いた。


「……来たか」


「なんだ……!?」


 突如として光るマナの大樹()を見て、エリクは僅かに警戒を抱く。

 しかしウォーリスだけはその事態を予想していたかのように、その光の中から現れる者の姿を見た。


 エリクもまた光の中から降り立つ存在を確認し、緊迫していた雰囲気に驚きと喜びが入り混じる表情が浮かび上がる。

 するとその喜びの声を向けながら、彼にとって馴染み深いに名前を呼んだ。


「アリアッ!!」 


「――……待たせたわね、エリク」


 マナの大樹()から次に現れたのは、血の気を戻した身体だと分かる姿。

 それは死体でも無ければ精神体でもなく、正真正銘の生きた肉体を持つアルトリア本人であった。


 一方で、ウォーリスも横目を向けながらアルトリアを見る。

 しかしその表情はエリクと異なり、敵意と憎悪が僅かに込められていた。


「アルトリア……」


「アンタも待たせたわね、ウォーリス。――……今ここで、決着をつけてやるわ」


 そう言いながら歩み寄って来るアルトリアに、ウォーリスとエリクは奇妙な存在感を感じ取る。

 それは今までに無いアルトリアが放つ圧力であり、それが自分達の持つ能力(ちから)と似た雰囲気を感じ取った。


 するとアルトリアもまた、生き返った肉体を僅かに白い輝きを浮かべる。

 それは溢れ出る程の生命力(オーラ)であり、それを理解したウォーリスは苦々しい言葉を漏らした。


「奴も、なったと言う事か……。……我々と同じ、到達者(エンドレス)に……」


「アリア……この力は……」


 こうして甦ったアルトリアに対して、ウォーリスとエリクは自分達と同じ到達者(エンドレス)へ至った事を感じ取る。

 しかしアルトリア本人はそれを喜ぶ様子や誇る様子も無く、ただ憮然とした表情でウォーリスへと向き合っていた。


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