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限られた時間


 現実世界において復活したマギルスと合流したエリクとケイルは、共に『神兵』達の猛攻を耐え凌ぐ。

 そんなエリク達から場面は移り、マナの大樹()内部に視点は変わった。


 ケイルの手によってマナの大樹()に運ばれた創造神(オリジン)とアルトリアの肉体は、その中に吸収される。

 しかし光の粒子となって吸収された創造神(オリジン)とアルトリアの肉体は、その内部で原型(すがた)を保ちながら激しい生命力(エネルギー)の中を流れていた。


 すると二人の肉体は、ある場所に行き着く。

 それはウォーリスが循環機構(システム)を操作し制御している、一面が白に包まれた精神世界の一画だった。


「――……来たか」


 自身が居る一画(ばしょ)に二つの光が現れた事を確認したウォーリスは、投影されている操作盤(パネル)を下げながらその場所へ歩み向かう。

 その先には、白い床に倒れている創造神(オリジン)とアルトリアの肉体が在った。


 それを見下ろすように確認していたウォーリスは、創造神(オリジン)の方へ視線を動かす。

 すると創造神(オリジン)の肉体から三つの光が出現し、それぞれが人の姿へ変わりながらその場に現れた。


 その変化する光の一つに対して、ウォーリスは言葉を向ける。


「待っていたぞ」


「――……別に、アンタなんか幾らでも待たせてよかったんだけどね」


 変化する光はそうした声を発し、その姿を現す。

 それはアルトリアの精神体であり、ウォーリスに対して悪態を漏らしながらも応えた。


 すると他二つの光も姿を変え、その全容を見せる。

 鮮やかな赤い光は未来のユグナリスとなって姿を現し、濃い赤の光は鬼神フォウルとなってその場に出現した。


 そうして集められた二人だったが、ウォーリスに対して敵意を持つ眼光を向ける。

 それはウォーリスに対する信頼の無さと、彼に対する遺恨が少なからず関わっていた。


「ウォーリス……ッ」


「ユグナリス皇子か。……そしてそちらが、エリクの(なか)に居た鬼神フォウルだな」


「ケッ」


 未来のユグナリスは自身が死闘の末に倒したウォーリスと同一の存在が目の前に居る事に、明らかな不信感と敵意を抱く。

 そしてフォウルもまた自身の依り代(エリク)に深く関わるウォーリスが精神体ながらも健在である事を理解し、気に喰わない様子を示した。


 そうしてウォーリスと向き合いながら牽制する二人に対して、アルトリアは強い口調で言葉を向ける。


「言ったはずよ。アンタ達には手伝ってもらう事があるってね」


「……だが、この男は……っ」


「ええ、コイツがやった事は許しちゃいけない。でも今は、コイツの知識と腕が必要なのは確かよ。それが納得できないって言うつもりなら、アンタは邪魔しないように隅っこにでも立ってなさい」


「……分かった」


 ウォーリスを睨む未来のユグナリスに対して、アルトリアはそうして無理矢理に協力させる事を納得させる。

 すると今度はフォウルに顔を向け、同じ事を問い掛けた。


「そっちもいい?」


「別に構わん。――……それより、こっからどうするつもりだ?」


「その説明を、コイツがするのよ」


 そう言いながら指を向けるアルトリアに応じるように、二人の視線も再びウォーリスへ集まる。

 するとウォーリスは瞼を閉じた後、その青い瞳を再び明かしながら説明を始めた。


「私が彼女(アルトリア)に二つの策を伝えた。その一つ目は、創造神(オリジン)の自我を制御して計画を停止させる策。……しかしそれは、どうやら失敗したようだな」


「まぁね」


「そして二つ目が、創造神(オリジン)の肉体を循環機構(ここ)に取り込ませること。しかし肉体をエネルギーとして吸収はさせず、彼女(アルトリア)がここに来た時と同じように肉体と魂を分けて接触させ権能(ちから)を発揮させる」


「その手段、成功すんのか?」


「それも、彼女次第だ」


 ウォーリスはアリアに伝えていた策を、その場にいる三名にも伝える。

 その策に対して疑問を呈したのは、腕を組んでいるフォウルだった。


 ウォーリスはその返答を述べながら、アルトリアへ視線を向ける。

 すると他二人の視線もアルトリアに集まり、その口から解答が出された。


「まぁ、『(あいつ)』も言ってたと思うけど。普通にやったら失敗するでしょうね」


「!」


「お、おい……アルトリア……!?」


 平然とそうした事を言うアルトリアに、一同は驚愕した面持ちを浮かべる。

 その言葉に対して強い動揺を示す未来のユグナリスに対して、アルトリアはそう述べた理由を説明した。


「肉体の外部(そと)から接触して権能(ちから)を使うのは、天界(ここ)では鍵以上の役割を果たせない。それが『(あいつ)』には分かってるから、手段として教えるつもりが無かったんでしょうね」


「な、なら……」


「でも、『鍵』として開く事は出来る。その意味が分かる?」


「え?」


「……創造神(オリジン)の命令によって封じられている、循環機構(システム)の機能を開けるということだ。皇子」


「!」


 アルトリアが述べる言葉の意味を理解し損ねていた未来のユグナリスに対して、ウォーリスは解答を伝える。

 それに頷くアルトリアは、腕を組みながら自分達がやるべき事を伝えた。


「私が創造神(オリジン)と接触して循環機構(システム)の『鍵』を開く。そして創造神(オリジン)の命令によって動いてる天界(エデン)の機能を、ウォーリスが書き換えるのよ」


「!」


「ただ書き換える際に、『神兵』達と同じように循環機構(システム)の防衛機能が内部でも動くはず。それを防ぎながら私達を守るのが、アンタ達の役目ってわけ」


 そう伝えるアルトリアの策に対して、二人は自分達の役割が単純ながらも重要である事を理解する。

 そしてウォーリスは異論を挟まず、一つの操作盤(パネル)を開きながら表示されている時間を三人に伝えた。

 

「早速だが、時間が無い。……既に世界を破壊されるまで、残り十分の猶予しかない」


「!!」


「それまで循環機構(システム)を書き換え、創造神(オリジン)の破壊計画を止めることになる。書き換えまでどの程度まで掛かるか、実際にやってみなければ分からないからな」


 残された時間を伝えたウォーリスに対して、アルトリアやフォウルは異論を挟まない。

 しかし不信感を拭えていない未来のユグナリスだけが、強い口調で彼に問い質した。


「ウォーリス、お前に聞きたい」


「……なんだ?」


「お前の目的は、世界を滅ぼす事だったはずだ。……なのに何故、創造神(オリジン)の計画を止める必要がある?」


「……それは、少し違うな。皇子」


「なに?」


「私はただ、大事な者を害そうとする世界を破壊したかっただけだ。……しかし創造神(オリジン)の計画は、私の大事な者すら破壊してしまう。それは私の本意ではない」


「大事な者だと……!? 自分の娘を……リエスティアすら道具のように扱うお前が、どの口で……っ!!」


「その点を否定するつもりはない。だが今は、こうした形で世界が壊される事を私も望んではいない。それは本心だ」


「……ッ!!」


 淡々とした面持ちでそう述べるウォーリスに対して、未来のユグナリスは苛立ちを深めていく。

 しかしそうして対立する二人に対して、横からアルトリアが口を挟む形で強く言って退()けた。


「揉め事は後よ。今は創造神(オリジン)の計画を止めるのが先決だわ」


「……分かった」


「ならば、始めてくれ」


「ええ。――……それじゃあ、行くわよっ!!」


 二人の口論を止めたアルトリアは、精神体(からだ)を屈めながら創造神(オリジン)の肉体に手を触れさせる。

 すると金色の光が輝くと同時に、その周囲に今まで存在しなかった操作盤(パネル)が幾つも開かれた。


 それを見たウォーリスは、その一つの近くに歩み寄りながら操作盤(パネル)を扱い始める。

 三人はそれを眺め見ていると、周囲に起きる異変に真っ先に気付いたのは鬼神フォウルだった。


「……来たな。防衛機能って奴がよ」


「!」


 白い空間の上空に黒い亀裂が生じ、その中から姿こそ人型ながらも顔の様相が無い白い姿をした異形が現れる。

 しかもそれ等には手足の他に二枚や四枚の翼が生えており、それを見たフォウルが悪態を漏らすように呟いた。


「チッ、天使モドキか」


「アレが天使……!?」


「本物じゃねぇ。俺達と同じ、精神体で模ってるだけだ。――……来るぞッ!!」


「ッ!!」


 亀裂から出現した天使モドキ達は、循環機構(システム)を書き換えているウォーリスに身体を振り向ける。

 そして翼を広げながら迫り、ウォーリスを排除しようとそれぞれに精神体で形成した武器を握りながら迫った。


 それに対してウォーリスの背中を守るように、フォウルは拳を握る。

 ユグナリスもまた『生命の火』を纏いながら聖剣を握り、向かって来る天使モドキ達と対峙した。


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