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【完結】虐殺者の称号を持つ戦士が元公爵令嬢に雇われました  作者: オオノギ
革命編 七章:黒を継ぎし者

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突破の入り口


 五百年振りに再始動した『創造神(オリジン)』の計画を阻止すべく、ウォーリスの策に応じたアリアは『神兵』の肉体を用いてマナの大樹()から脱出する。

 そして『創造神(オリジン)』自身に計画を止めさせるべく、彼女が眠っている場所を目指そうとしていた。


 そこに合流したエリクは、鬼神(フォウル)能力(ちから)を使い『神兵』達を排除していく。

 二人は現状を打開する術を創造神(オリジン)にある事を理解しながら、妨害する『神兵』達を退けながら突き進み始めた。


「――……オォオオッ!!」


「ハァアッ!!」


 エリクが放つ赤い斬撃が正面を囲もうとする『神兵』達を襲い、その包囲網を切り崩す。

 その斬撃に数体の『神兵』達が飲まれるように消失しながらも、それを回避しながら二人に襲い掛かろうとした。


 しかし討ち漏らした『神兵』達を、アリアが両手を翳し向けながら重力系の魔法を用いて地面へ圧し伏せる。

 それによって動きが僅かに鈍った『神兵』を相手に、斬り込んだエリクが容赦なく首や身体を切断しながら身体ごと大剣を振り回した。


 到達者(エンドレス)である鬼神フォウルの能力(ちから)を使えるエリクが『神兵』を排除し、アリアはそれを補助(サポート)する。

 即席ながらも互いに息を合わせるような連携は、長い時間と多くの経験を共に経た相棒(パートナー)を思わせる動きだった。


「また来るわ! エリク、次もお願いっ!!」


「ああ!」


『ったく、人使いの荒い嬢ちゃんだ』


 創造神(オリジン)側とマナの大樹()側から再び迫る『神兵』達を確認し、アリアは走りながら頼む。

 それに応じるように並走するエリクに対して、その精神内部(なか)ではフォウルが悪態を漏らす声が響いた。


 そうして幾度も押し寄せる『神兵』達を撃退する最中、エリクは奇妙な表情を浮かべる。

 それは今まで戦っていた『神兵』達の動きが、最初に比べれば異様に鈍くなっているように感じたからだった。


神兵達(やつら)の動きが鈍い。これも君がやったのか、アリア」


「癪だけど、私じゃないわ!」


「なに?」


「とにかく今は、創造神(オリジン)が居る場所に向かうわよ!」


「ああ、分かった!」


 敢えて説明を省きながら目標である創造神(オリジン)を目指すアリアに、エリクは応じる形で追従する。

 この時に『神兵』達の動きが鈍るよう弱体化している原因は、マナの大樹()内部に残るウォーリスにあった。


 循環機構(システム)を経由し製作される『神兵』の肉体のエネルギーを、ウォーリスは大幅に軽減させている。

 特に再生能力と反応速度を大幅に低下させ、新たな肉体を生み出す生成速度が大幅な時間を必要とするようになり、その脅威は大幅に消失したと言ってもいい。


 それでも『神兵』は、到達者(エンドレス)を模した強力な兵器である事に変わりはない。

 だからこそ『神兵(それ)』を破壊できる能力(ちから)を持った到達者(エリク)の存在が居ればこそ、この状況は成り立っていた。


 こうした形でウォーリスの援護を受けている事を知らないエリクは、アリアの補助(サポート)を受けながら『神兵』達を撃破していく。

 そうした中で、アリアは創造神(オリジン)を囲む『神兵』達を自身の視界に捉えた。


「呑気にまだ眠ってるのねっ、アイツ!」


「!」


 苛立ちを含んだ声で創造神(オリジン)を見るアリアは、そのまま飛翔を開始する。

 それに反応するように創造神(オリジン)の周囲に居た『神兵』達が押し寄せ、アリアを仕留めようとそれぞれに攻撃を放とうとした。


 そうした状況でも即座に反応できたエリクは、身体を振り回すように黒い大剣から赤い斬撃を飛ばす。

 更にアリアは風属性と重力系の魔法を用いて、『神兵』達の回避行動を妨げた。


 それによって大きく纏められた形で撃破された『神兵』達を突破し、二人は創造神(オリジン)の傍まで辿り着く。

 そこには創造神(オリジン)とアルトリアの死体、そして左腕を切断されたケイルが意識を失ったまま倒れており、それを結界の外から見たエリクが表情を強張らせながら呟いた。


「あの光はもう無いのに、まだ目覚めていないのか……!?」


「――……自分で否定できない限り、理想(ゆめ)から醒めることもできないのよ」


「!」


理想郷(ディストピア)が魅せたケイルの理想(ゆめ)は、かなり根深く彼女を蝕んだみたいね。……だから、今も目覚めない」


「そんな……。……まさか、このまま目覚めないのか?」


「だからこそ、自力で目覚めてくれるのを祈るしかないわ。――……今の問題は、創造神(こっち)よ」


 目覚められないケイルから視線を逸らしたアリアは、厳しい視線を向けながら見下ろす。

 そこには意識の無い創造神(オリジン)の寝姿が見え、アリアはその周囲に張られている結界へ手を触れさせた瞬間、阻まれるように弾かれた。


「ッ!!」


「アリア!?」


「やっぱり、神兵()肉体からだだと触れられないみたいね。……エリク、貴方はどう?」


「……!」


 尋ねるアリアの言葉を聞いたエリクは、それに応じる形で創造神(オリジン)に手を伸ばす。

 するとアリアが弾かれた結界に対して、エリクの手は素通りするように通り抜けた。


「これは……?」


「恐らくその結界は、外界(そと)から発せられた力場(ちから)や害意を持つ相手を拒むような特殊な結界(もの)なのよ。だから貴方は通り抜けられて、私は弾かれる」


「君が、創造神(オリジン)に害意を持っているということか?」


「これからしようとする事を思えば、当たり前でしょう。……エリク、創造神(オリジン)に触れられる?」


「あ、ああ」


 そう語るアリアの言葉に再び応じたエリクは、身を屈めながら右手で創造神(オリジン)に向ける。

 すると特に拒まれる事も無く、エリクの手は創造神(オリジン)の腕に触れた。


 それを見たアリアは、エリクの左手側に回り込みながら自分の手を触れさせる。

 すると創造神(オリジン)を通じてエリクの左手に凄まじい波動が発せられ、アリアの手を拒むように火花が散った。


「ッ!!」


「アリアッ!?」


「……エリクの肉体(からだ)を通じて、私の精神(たましい)創造神(オリジン)に送り込もうとしたんだけど。どうやら、それも失敗ね」


「なら、君は……創造神(オリジン)に触れられないのか?」


「いえ、もう一つだけ試したい事がある。……エリク、今度は私の死体(からだ)に触れて」


「!」


 そう伝えるアリアの言葉を聞き、エリクは創造神(オリジン)に触れていた右手を死体となっているアルトリアへ振り向ける。

 何の拒絶も無く触れられたアルトリアの死体を確認した後、アリアは再びエリクの左手に触れた。


 すると次の瞬間、アリアが依り代としていた『神兵』の肉体が崩れるように崩壊する。

 それに驚くエリクだったが、更に続くように死体だったアルトリアが瞼を開けて状態を起こした事に驚愕を浮かべた。


「!?」


「――……よし、これで結界()の中には入れたわね」


「アリアか。……もう死体(そっち)に入ったのか?」


「ええ。貴方と繋がってる回線(パス)を通してね」


「そうか。……だが、その状態の君でも触れられるのか?」


「それはもう、既に実証済みよ」


「!」


 そう言いながら上体を起こしたアリアは、口元を微笑ませながら右手を創造神(オリジン)に伸ばす。

 すると先程と同じように創造神(オリジン)から白い閃光が放たれ、接触したアリアの右手を拒絶するように弾こうとした。


 しかしそれに怯まずに触れられたアリアに、エリクは再び驚きながら問い掛ける。


「どういう事なんだ?」


「死んだ人間が、痛い程度で怯むはずがないでしょ。さっきの神兵(からだ)は仮にも生体反応があったから、滅茶苦茶に痛かったけどね」


「そ、そうか。――……むっ!」


「来たわね。エリク、神兵達(あいつら)の相手を御願いっ!! 私は、創造神(オリジン)精神(なか)に入るわ!」


 再び迫る『神兵』達に気付いたアリアは、そうエリクに頼みながら火花を散らしつつ創造神(オリジン)の肉体に精神を移そうとする。

 それを請けたエリクは結界の外側へ離れ、大剣を構えながら押し寄せる『神兵』達と相対した。


 その背中を見送ったアリアは、瞼を閉じながら自身の精神を創造神(オリジン)へ移す。

 すると憑依していたアルトリアの死体は力なく地面へ傾き倒れ、再び結界内部で三人の女性が倒れる光景だけが見えるようになった。


 こうして創造神(オリジン)まで辿り着いたアリアは、自分の死体(からだ)を介して創造神(オリジン)の精神へ侵入する。

 そこに待ち受けるのは、憎悪という感情に満たされた創造神(オリジン)の意思そのものだった。


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