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【完結】虐殺者の称号を持つ戦士が元公爵令嬢に雇われました  作者: オオノギ
革命編 七章:黒を継ぎし者

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神兵の起動


 最愛の女性であるカリーナに説得を受けるウォーリスは、自らの望みである世界の変革を止めようとする。

 しかし契約した悪魔ヴェルフェゴールが口にする言葉を聞き、差し伸べたアリアの手を跳ね除けるように循環機構(システム)を再び再稼働させようとした。


 それを阻止しようと迫るアリアは、精神体ながらも相反する生命力(オーラ)瘴気(オーラ)を合わせ混ぜた攻撃を放つ。

 すると現実世界にもその結果が影響を及ぼし、マナの大樹が白い光に包まれた。


「――……なんだ、今度は何が起こった……!?」


 それが見える位置に待機していたエリクは、創造神(オリジン)の身体とアルトリアの遺体を抱え持ちながら光り出すマナの大樹()を見つめる。

 すると僅かな瞬間で広がった光の後、マナの大樹に変化が起き始めたことに気付いた。


「……マナの樹が……!?」


 エリクが見たのは、銀色の幹と葉に覆われたマナの大樹が虹色の光に変色する光景。

 今まで銀一色に染まっていた大樹の変色は、エリクに明らかな異変を悟らせた。


内部(なか)で、何があった……。……アリアは、循環機構(システム)を奪えたんじゃないのか……!?」


 この事態に陥った事で、改めてエリクは新たな異常がマナの大樹()に起きた事を理解する。

 しかしその事態が何を意味するのかだけは分からないまま、創造神(オリジン)の周囲に展開されている結界に守られながら様子を窺うしかなかった。


 すると次の瞬間、虹色に輝いていたマナの大樹()が再び銀色に戻る。

 そして抱え持つ創造神(オリジン)やアリアを意識の無いケイルの傍に置くと、エリクは立ち上がりながら訝し気な視線を向けて言葉を零した。


「……何か、来る」


『――……分かるか、テメェにも』


「ああ。……っ!?」


 不意に零した言葉に応じるように、自身の内側から聞こえる声にエリクは驚く。

 そして聞き覚えのある声の主に対して、エリクは問い掛けるように話し掛けた。


「……まさか、フォウルか?」


『あぁ? それ以外に誰がお前の(なか)()るってんだ』


「だが、どうしてお前の声が……」


『言ったろ、お前は俺の血を飲んでんだ。しかも俺の魔力を使って、お前の生命力に置き換えてる。それで適合し始めたっつぅことだろ』


「適合……? どういう事だ」


『いいから、あの大樹()に集中しろ。――……来るぞっ!!』


「!」


 精神内部(うちがわ)から話し掛ける鬼神フォウルの呼び掛けに、エリクは再び意識を戻す。

 そして見上げる程に高いマナの大樹()へ視線を向けると、その僅かな変化に気付いた。


 それは銀色の幹に及ぶ、僅かながらも小さな波紋。

 まるで波打つように小さな波紋が広がるマナの大樹()を見て、エリクは悪寒を感じながら黒い大剣を握り締めた。


「……なんだ、アレは……」


『そういえば、テメェは知らなかったな。――……いいか、マナの()はそこらへんに生えてるような植物じゃない』


「なに?」


『言ってみりゃ、アレは膨大な生命力(オーラ)魔力(マナ)を内包した(ほし)そのものだ。……テメェに分かり易く言うなら、あの大樹()魔鋼(マナメタル)みてぇな生きる鉱物だと考えろ』


魔鋼(マナメタル)だと……。……なら、まさか……!?」


 マナの大樹()魔鋼(マナメタル)と同じ構造物だと知ったエリクは、想定する事態の中で見知った記憶を思い出す。

 それに呼応するように銀色の幹に波紋を広げるマナの大樹()から、突如として人の手が飛び出して来る光景がエリクの視界に入った。


 しかも一つや二つではなく、数え切れない程に多くの手が飛び出しながら幹の中を蠢く。

 エリクはそれを確認し、創造神(オリジン)の張っている結界の範囲から自ら踏み出して身構えた。


「……やはり、そういうことか……」


『想像通りだ。――……(アレ)と戦るのは、これで二度目だな』


「……神兵(かみのへいし)……!」


創造神(オリジン)が作った、最強最悪の兵器だ』


 エリクとフォウルは互いに同じモノを視界に捉え、それをそう称す。

 二人はまるで金属のように滑らかに動く銀色の幹から這い出て来る、男の姿をした銀色の人々を目撃した。


 それこそまさに、創造神(オリジン)天界(エデン)を守護する為に作り出した兵士達。

 かつてランヴァルディアが模造品(レプリカ)を用いて辿り着いた、通称『神兵』と呼ばれる不死身の兵士だった。


 しかもその神兵達の顔を見て、エリクは驚愕を浮かべる。

 それは肌や髪の色こそ異なりながらも、少し前に自分が戦っていたウォーリスと全く同じ外見をしていたのだった。


「……ウォーリスと同じ姿の、神兵(しんぺい)……。……しかも、どうしてあんなに沢山……!?」


野郎(ウォーリス)が作り出してるに、決まってるだろ』


「だが、あの赤い光を止めたのに……!」


『次の手段()って事だろ。……それより、今は意識を自分に集中させとけ。今度こそ死ぬぞっ!!』


「!!」


 怒鳴りを向けるフォウルの声で意識を視界に戻したエリクは、幹から這い出て来る『神兵』達が中空に浮かび留まる光景を目にする。

 すると全てが伏せていた顔を緩やかに上げると、銀色の肌で閉じられた瞼を開き、赤い眼球を晒しながら全員が一箇所に視線を集めた。


 それが自分に向けられている視線だと気付くエリクは、戻り始めた生命力(オーラ)を再び身に纏いながら構える。

 そして次の瞬間、大量の『神兵』達が一斉にエリクに向けて上空(そら)を翔け地面を蹴りながら襲い掛かって来た。


「……オォオオッ!!」


 明確な意思も見えず話し合う余地すら見えない『神兵』達の来襲に、エリクは躊躇なく生命力(オーラ)を纏わせた大剣を振り被る。

 そして全力の気力斬撃(ブレード)を叩き撃ち、向かって来る『神兵』達に放った。


 しかし最も最前列に居た『神兵』の二体が、エリクの放つ気力斬撃(ブレード)を自ら受け止めに入る。

 二体の身体は気力斬撃と衝突した事で弾け消えながらも、エリクの攻撃を掻き消す事に成功した。


「なにッ!?」


『チッ、避けろ――……いや、防げっ!!』


「!?」


 全力の気力斬撃(ブレード)が防がれた事に驚愕したエリクに、叱責するようにフォウルが叫ぶ。

 それを聞き再び目の前の状況に意識を戻したエリクは、迫り来る『神兵』達の一画が放とうとする魔力砲撃(こうげき)に気付いた。


 それが自分諸共に傍に居る創造神(オリジン)やケイル達も狙った砲撃だと理解したエリクは、回避の選択を止めてその場に踏み止まりながら生命力オーラを大剣に溜める。

 すると放たれた魔力砲撃を相殺するように、エリクは第二撃の気力斬撃(ブレード)を振り向けた。


「グッ、ウゥウウッ!!」


 数十を超える『神兵』の魔力砲撃とエリクの気力斬撃が衝突し、凄まじい衝撃を一帯に生み出す。

 そして生命力(オーラ)魔力(マナ)の相性によって、辛うじてエリクの気力斬撃が押し勝つ形で魔力砲撃を放った『神兵』の一画を吹き飛ばした。


 しかし迎撃を終えた余韻を与える暇も無く、別の方角から押し寄せる『神兵』達がエリクに迫る。

 二発の気力斬撃(ブレード)で多大な消耗を見せたエリクには、その迎撃までは間に合わなかった。


「ガ、ハッ!?」


 一体の『神兵』がエリクに迫り、凄まじい速度で身体を突っ込ませながら右拳を放つ。

 すると防御も回避も遅れたエリクの左顔面に直撃し、エリクの身体をその場から大きく吹き飛ばした。


 その一撃によって僅かに意識が朧気になったエリクだったが、吹き飛んだ先にある木に衝突した事で意識と身体を踏み留める。

 しかし新たに迫る『神兵』達は、木の幹にめり込みながら落下していないエリクに魔力砲撃を放った。


「ォアアアッ!!」


 エリクは薄れる意識と痛みを咆哮と共に吹き飛ばし、上体を前に傾けながら大剣を振り上げて魔力砲撃を斬りながら受け止める。

 切断と同時に放つ気力斬撃(ブレード)が魔力砲撃を左右に分けて斬り裂くと、その後方(うしろ)に広がる自然(もり)を薙ぎ倒しながら突き進んだ。


 そうした攻撃も辛うじて受け流せたエリクだったが、今度はウォーリスの得意としていた生命力の剣を作り出す『神兵』達が迫り襲う。

 それを受け流す事も防ぐのも難しいと咄嗟に判断できると、身体がめり込む木の幹に己の両脚を叩きつけて身体を前に飛ばした。


 すると生命力(オーラ)の剣を持つ『神兵』達は、エリクが居た木々を軽々と切断しながら周囲を吹き飛ばす。

 それを見て己の直感が正しかった事を認識するエリクは、乱れた息のまま唸るように叫び、落下中に大剣を振り構えた。


「このぉおお……っ!!」


『後ろだ、馬鹿野郎がっ!!』


「!?」


 生命力の剣を持つ『神兵』達に意識を取られていたエリクに対して、再びフォウルが怒鳴りを向けて警告する。

 それによって背後から迫る『神兵』達の存在に気付き、エリクは身体を捻りながら生命力(オーラ)を纏わせた気力斬撃(ブレード)を回転させながら放った。


 それによって前後左右から来襲して来る『神兵』達を一時的に退けたエリクは、地面に着地しながら膝を落として崩す。

 その時点で生命力(オーラ)を多大な消耗させられているエリクは、息を乱しながら肩を落とし揺らした。


「はぁ……はぁ……っ!!」


『情けねぇな。この程度の野郎共に』


「……一体一体(ひとつひとつ)は、それほど強くない。だが、あの数は……!!」


 エリクはここまでの戦闘で『神兵』の強さを分析し、それぞれの攻撃力が高くとも自身より反応速度が劣っている事を理解する。

 しかし圧倒的な数の多さによって不利が拭えない事を悟ると、現状が不利である事を正しく認識した。


 そして意識の無い創造神(オリジン)とその結界に留まるケイルやアルトリアの居る場所に意識を戻すと、『神兵』達がその部分に視線すら向けていない事に気付く。


「……俺しか、襲って来ないのか」


創造神(オリジン)の野郎だな。多分、安全装置(セーフティ)かなんか作動してるんだろう。創造神(しゅじん)は襲えないようになってんだ、神兵共(やつら)は』


「なら、あの結界の中に入れば……!」


『もう(おせ)ぇ。……囲まれてるぞ』


「……ッ!!」


 エリクはかなり距離が開いてしまった創造神(オリジン)達との場所を境に、『神兵』達が敷き詰められるように地面や空中に浮遊しているのに改めて気付く。

 再び創造神(オリジン)の結界に近付く事は難しい状況だと理解したエリクは、息を整えながら大剣を構えた。


「……アリアがどうにかするまで、持ち堪える……!!」


 自分が今やるべき事を判断したエリクは、この状況を持ち堪えアリアがマナの大樹()を掌握するまで時間を稼ぐ事を決める。

 そして再び遅い来る『神兵』達に立ち向かい、エリクは激闘の中に身を置く事になった。


 こうして事態は最悪の形に進み、創造神(オリジン)の兵器である『神兵』がマナの大樹()から起動する。

 それを迎え撃つエリクは、ただアリアを信じて夥しい数の『神兵』達に立ち向かったのだった。


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