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【完結】虐殺者の称号を持つ戦士が元公爵令嬢に雇われました  作者: オオノギ
革命編 六章:創造神の権能

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覚悟の火


 天界(エデン)の神殿内部に広がる聖域(ばしょ)において、状況は混迷とした様相を見せ始める。


 創造神(オリジン)の魂に影響され始めたアルトリアは、ウォーリス(ゲルガルド)の手によって心臓と共に魂を切り取られた。

 その後に亡骸となったアルトリアを発見したエリクは、精神の()るべきところを失い、様々な感情を抑制できずに再び赤い鬼神(オーガ)へと姿を変える。


 それと並行するように、息子(ウォーリス)肉体(からだ)に宿るゲルガルドは世界を支配する為に自身の計画を進めていく。

 創造神(オリジン)に成り代わるべくその『魂』と『器』を『マナの樹』に養分として捧げ、抽出し集められた権能(ちから)を『マナの実』から吸収するという手段を用いようとした。


 しかしそれを阻んだのは、今まで信用していた息子ウォーリスの裏切り。

 『マナの樹』に捧げるはずだった『魂』と『器』は逆に合わさりながら、不完全にも創造神(オリジン)を復活させてしまったのだ。


 復活した創造神(オリジン)は、『(アルトリア)』に蓄積していた負の感情を殺意としてウォーリス(ゲルガルド)に向ける。

 同じ到達者(エンドレス)にも関わらず圧倒的な実力(ちから)を明かす創造神(オリジン)によって、ゲルガルドは抗えぬまま拷問染みた蹂躙を味わった。


 その途中、ゲルガルド(ウォーリス)への興味を失せた創造神(オリジン)(ゴミ)を燃やすかのように焼き尽くす。

 そして新たに現れた未来のユグナリスに魂内部に介在する負の感情が刺激されると、今度はそちらを襲い始めた。


 復活しながらもアルトリアの抱く負の感情に思考を染めている創造神(オリジン)と、鬼神(フォウル)の力を感情のまま暴れるエリク。

 手に負えない巨大な力を持つ二人が暴走している状況を知ったマギルスは、青馬(ファロス)精神武装(アストラルウェポン)の足として身に着けた。


 そして自身の魔力で展開する物理障壁(シールド)を足場にし、創造神(オリジン)に追跡され攻撃を受ける未来のユグナリスまで一気に近付きながら伝える。


「――……お兄さん! アレ、創造神(オリジン)みたいだよ!」


創造神(オリジン)!?」


「よく分かんないけど、復活しちゃったみたい! お兄さんだけで、創造神(アレ)の相手できるっ!?」


「君はっ!?」


「僕は、ちょっとおじさんのところに行って来る――……うわっ!?」


「ッ!!」


 『器』となっていたリエスティアが既に創造神(オリジン)となって復活している事を知った未来のユグナリスは、驚愕した表情を浮かべる。

 それを伝えたマギルスは暴走し始めているエリクの場所まで向かおうとした瞬間、二人の周囲に大多数の属性魔力を宿した球体が出現した。


 それは創造神(オリジン)が放った魔力球であり、無動作(ノーモーション)で転移させた球体(それ)を起爆させる。

 すると様々な属性が交じり合う光が上空(そこ)に満ち、二人を巻き込みながら巨大な爆発を引き起こした。


 転移魔法を使えない二人は、その爆発を上回る速力で上空(そら)を飛翔する。

 そして密集した状況を防ぐ為に違う方向へ別れると、マギルスは赤鬼(エリク)の魔力を感じ取れる方角へ向かい始めた。


 それを逃さぬように創造神(オリジン)はマギルスにも赤い瞳を向けたが、その直後に上空を飛翔する赤い閃光(ユグナリス)が反転する。

 すると今まで逃げ続けていた状況から転じるように、未来のユグナリスは『生命の火』を纏いながら逆に接近しようと試みていた。


「!」


 急旋回して迫る未来のユグナリスに赤い瞳を向けた創造神(オリジン)は、直後に周囲の水球から凄まじい水圧噴射(ウォータービーム)を放って迎撃する。

 それは未来のユグナリスに命中したが、その身に纏う『生命の火』によって魔力で形成された水を瞬く間に蒸発して見せた。


 創造神(オリジン)は僅かに赤い瞳を見開き、未来のユグナリスが両手を開きながら両腕を伸ばす。

 そして創造神(オリジン)の張った障壁(バリア)に激突するように触れながら、それすらも『生命の火』を用いて溶かして見せた。


「ッ!!」 


「――……リエスティアッ!! ……いや、そこに()るのはアルトリアかっ!!」


 障壁すらも突破し創造神(オリジン)の両腕を掴んだ未来のユグナリスは、そうした呼び掛けを行う。

 するとその声を聞いた創造神(オリジン)は更に苛立ちと嫌悪の表情を浮かべながら、掴まれた両腕から相手(ユグナリス)の手を振り払うように内側から外側へ拳を振り向けた。


 しかし持ち手を素早く変えながら両拳を抑え込んだ未来のユグナリスは、『生命の火』を全開にしながら創造神(オリジン)と拮抗して呼び掛け続ける。


「攻撃して来るのは、俺を嫌いだからだろう! アルトリアッ!!」


「……ッ!!」


「俺も、お前の事なんか嫌いだけど……でも、これだけは言わせてくれっ!! ――……ありがとう!」


「!」


「この現世(せかい)で、リエスティアと俺の子供を助けてくれて、本当にありがとう……!!」


 過酷な未来(せかい)を経験しているユグナリスは、変わった現世(せかい)で生きているリエスティアと自身の子供(シエスティナ)を生かした恩人(アルトリア)に改めて感謝を伝える。

 それに対して僅かな動揺を示す創造神(オリジン)を、未来のユグナリスは森の地面へと押し戻しながら再び自分の決意を明かした。


「だから俺は、そこに()るお前も助けたいっ!! 勿論、リエスティアも! それが、現世(ここ)に俺がいる理由のはずだっ!!」


「……ッ!!」


「俺の『(いのち)』を使ってでも、きっと助け出してみせるから! ――……聖紋(せいもん)よっ!! 俺の覚悟に応えろっ!!」


『――……』


 表情を強張らせながら動揺する創造神(オリジン)に対して、未来のユグナリスは右手に宿る七大聖人(セブンスワン)聖紋サインを赤く輝かせる。

 するとその赤い光が『生命の火』に溶け込み混ざり、勢いを増した炎が創造神(オリジン)の身体も包み始めた。


 そうして『生命の火』を伝いながら、聖紋から放たれる赤い光が創造神(オリジン)の右手に集まり始める。

 創造神(オリジン)の手の甲に聖紋の赤い光が伝っていくと、一つの赤い印を描くように定着し始めた。


 逆に未来のユグナリスが扱うケイルの肉体から、『赤』の七大聖人(セブンスワン)としての聖紋が消失していく。

 そして『生命の火』が創造神(オリジン)の右手に浮かぶ赤い印を通じて流し込まれながら、二人の肉体派地面へ激突するように着地し、その周囲に大きな土埃を舞わせた。


 それからしばらくすると、土埃の中から一つの影が動き始める。

 それは創造神(オリジン)や未来のユグナリスではなく、彼の依り代となっていたケイルがその姿を戻しながら立ち上がった姿だった。


「――……なんだ、ここ……。……アタシに、いったい……何が……?」


 土埃で視界が悪く、更に見覚えの無い森の中で目覚めたケイルは、上位悪魔(ザルツヘルム)と戦って以降の記憶が無い事を思い出す。

 そして右足を動かしながら後退ろうとすると、何かに踵を取られて姿勢を崩しながら尻を地面に着く形で転んだ。


「うおっ! ……クッソ、なんだよ……!?」


 自身の足を引っ掛けた何かが分からず、ケイルは右手を這わせながら土埃の中を探る。

 すると人肌のような触感を右手に感じ取り、ケイルは土埃の中を凝視しながらそこに倒れている創造神(じょせい)を見て驚きを浮かべた。


「これは、人間の足……? ……おい、この顔……もしかしてクロエか……!?」


「……」


「いや、でも髪の色が違う。それに、耳が尖がってるし……。……息はしてる。気絶してるだけか?」


「……」


「エリクやマギルスは……えっ、なんだアレ……!? ……アタシは今、何処にいるんだよっ!?」


 ケイルはここまで起きた状況が分からず、また目の前に居る創造神(じょせい)が何者かも分からぬまま困惑する。

 更に目の前に見える巨大な大樹が『マナの樹』である事も理解できぬまま、周囲にエリクとマギルスがいないかを目で探し始めた。


 こうしてケイルを依り代としていた未来のユグナリスは、創造神(オリジン)の『魂』と『器』になっている二人を救う為にある行動を始める。

 それを知らされぬまま意識を戻したケイルは、自身の右手から『七大聖人(セブンスワン)』の証である『赤』の聖紋が消えている事にも気付けぬまま、見知らぬ状況に困惑を浮かべるしかなかった。


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