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【完結】虐殺者の称号を持つ戦士が元公爵令嬢に雇われました  作者: オオノギ
革命編 六章:創造神の権能

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臨むべき立場


 『天界(エデン)』へ辿り着いたウォーリス達は、青い空に浮かぶ巨大な白い神殿へ到着する。

 その背中(うしろ)を側近アルフレッドに託し、悪魔騎士(デーモンナイト)ザルツヘルムと共に『鍵』であるアルトリアとリエスティアを連れ出し、創造神(オリジン)権能(ちから)を手に入れ世界を掌握しようとしていた。


 一方その頃、魔鋼(マナメタル)の爆破を防ぎ『天界(エデン)』の直前である通路内部まで到着した箱舟(ノア)に乗る一行は、到着後の作戦を『青』から聞く。

 二組に別れ敵と対峙する内容を聞いた一行は、新たな装備(ふく)を身に着けながらそれぞれに思う表情を浮かべた。


 まずは一組目が、言わば戦闘の熟練者(プロ)で編成された組み合わせ。


 ケイルの師匠である武玄(ブゲン)(トモエ)、歴戦の実力を持つ魔人ゴズヴァール、そして元七大聖人(セブンスワン)のシルエスカとバリス。

 この五名でウォーリスを討伐する際に、障害となる側近達を排除を担う事になる。


 そして二組目が、彼等にとっても馴染み深い組み合わせ。


 『アリア』という一人の少女と深く関わって来た、傭兵エリクと青年マギルス、そして現在の七大聖人(セブンスワン)である『赤』ケイルと『青』。

 この四名でウォーリスの討伐を目指し、彼等の目論見を阻むという役割を与えられた。


 その組み合わせを説明した後、『青』は一組目の面々に対してある情報を伝える。


「テクラノス、記録していた映像を頼む」


「了解した」


 『青』はテクラノスにそう命じ、艦橋(ブリッジ)の操作盤を扱わせながら備えられた画面にある映像を映し出す。

 それは三人の男が映し出された画面であり、それを確認する面々と共に『青』は説明を始めた。


「この三名が、倒すべき敵の姿だ」


「……ッ」


「まずは、この黒髪の男。ウォーリス=フロイス=フォン=ゲルガルド。今回の目論見を企てた首謀者、恐らく敵で最も強大な能力(ちから)を持っている。生命力(オーラ)を用いた戦闘技術は勿論、魔法においては我すらも凌駕する技量の相手だ」


「……ウォーリス……」


「それだけではなく、奴は自分が得た共和王国(くに)の国民から集う求心力を利用し、今は到達者(エンドレス)になっている。しかも自分自身の意思で、『聖人(ひと)』と『悪魔(デーモン)』に変化できるようだ。聖人(ひと)の姿でも圧倒的な能力(ちから)を持つ事に加えて、悪魔化した際の能力(ちから)は未知数。……この男を倒すのが、我々の最終的な目標だ」


 ウォーリスとエリクが戦闘していた映像を映し出した『青』は、その能力と実力を搔い摘むように伝える。

 その映像で見える二人の戦いを改めて見せられた面々は息を飲み、その場に居るエリクがウォーリスの討伐に必要とされている理由を改めて理解した。


 しかしエリク本人は、自分がウォーリスと対峙し敗北した映像を改めて見ながら拳を握り締める。

 それを横目で確認するケイルだったが、映像が変化した後に『青』は次の相手に関する説明を始めた。


「次が、この男。ルクソード皇国の元騎士、ザルツヘルムだ」


「……ザルツヘルム。まさか奴が、生きていたとは……」


「それは違うな、シルエスカ。奴は死後に死体を回収され、死霊術によって現世へ呼び戻され、悪魔化したようだ」


「!」


「しかも奴は、己の肉体に『神兵の心臓(コア)』を取り込んでいる。それ故に膨大な魂と瘴気(オーラ)を持ち、恐るべき再生能力を誇る悪魔となっている。脅威だけで言えば、ウォーリスと同等の到達者(エンドレス)級と言ってもいい」


「……ッ」


「奴に関して勝機があるとすれば、その魂の貯蓄(ストック)を全て使い果たさせるしかない。マギルスとの戦いでかなり消耗しているようだが、損傷(ダメージ)を与え続けられるかが倒す為に必要な手段となるだろう」


 映し出されるザルツヘルムの姿を確認し、見知っている皇王シルエスカと老執事バリスが渋い面持ちを浮かべる。

 そして映し出されている画面は同盟都市で戦っていたマギルスとザルツヘルムの戦闘であり、幾度も肉体を破壊しても即座に再生する能力と下級悪魔(レッサーデーモン)を武装として身に着け、盾と剣を主軸にした防御型の戦い方は全員に厄介さを感じさせた。


 更に画面の映像が変化し、次の男が映し出される。

 しかし他のように戦っている映像とは違い、ほとんどが静止画となっているその映像に全員が訝し気な表情を浮かべた。


「この茶髪の男は、アルフレッド=リスタルという名らしい。ウォーリスが表に姿を見せ始めた時から共に行動し、影武者として元ベルグリンド王国の王として掌握していた人物でもある」


「……戦っている映像(すがた)が無いな。この男の能力(ちから)は?」


「分からぬ」


「なに?」


「この男の素性や能力については、詳細な情報を得られなかった。恐らく『聖人』だとは思うが、他の二人と同じように悪魔化するのかも、何を得意とした戦いを出来るのかも、ほとんど情報が無い。……だが、奴に与えられていた役割は予測できる」


「予測?」


「奴はウォーリスの手駒としていた、死体(グール)合成魔獣(キマイラ)達を操っていた。その数から言っても、一人で全てを操作していたとは考え難い。こちらのテクラノスと同じように、操作機構(システム)自律支援(サポート)を受けながらの操作技術に特化した者だろうというのが、我等の見解だ」


(じか)で戦える状況ならば、恐れるに足らないと?」


「それでも、油断はしない方がいい。何せ表舞台に姿を見せたウォーリスと、最初から繋がりを持っていた男だ。影武者や裏の仕事も任せていたとすれば、ウォーリスにとって最も信用の厚い者だと言える」


「なるほど……」


 アルフレッドに関する情報を『青』は伝え、その顔を眺め見るゴズヴァールは神妙な表情を浮かべる。

 そうして三名の男達を三方向の画面に映し出すと、『青』は改めてそれぞれに伝えた。


「このアルフレッドとザルツヘルムの側近二名の障害を排除し、ウォーリスを討つ必要がある。到着までの間、必要であれば戦闘映像を各画面から確認しておいてくれ」


「……二つ、(よろ)しいですか?」


「何だね?」


「一つ目ですが……敵の首魁(ウォーリス)に付いている者は、この二人だけなのですか?」


 画面に映し出されたアルフレッドとザルツヘルムの二人を確認した(トモエ)は、抱いた疑問を口にしながら問い掛ける。

 それを聞いた『青』は頷き、確かな確証を持ちながら答えた。


「この二人だけが、今はウォーリスに付いている」


「何故、そうだと断言できるのです? 他にも伏兵を忍ばせている可能性もあるはず」


「仮にそうだとしても、『天界(ここ)』には連れて来ていないだろう」


「……どういうことです?」


「奴等の目的は、創造神(オリジン)権能(ちから)を掌握する事にあるはず。であれば、信頼できぬ者をぞろぞろと連れて来る事はあり得ない。……欲している権能(ちから)、あるいはその『鍵』を、奪われてしまう可能性があるからな」


「……なるほど。逆に言えば、敵の首魁(ウォーリス)がその心配を抱かぬ者は、たった二名しかいないと?」


「その通りだ」


「……それでもやはり、伏兵の警戒だけは勝手ながらさせていただきます」


「その点については、各々の裁量に任せる」


「それと、二つ目ですが。捕まっている二人の女性の姿絵も見せて頂きたい」


「分かった、画面に映しておこう。――……さぁ、今から二十五分後に到着だ。全員、心構えをしておいてくれ」


 敵側の情報を伝え終えた『青』は、残り時間を各々の為に使用する事を伝える。

 すると熟練者である一組目の面々は画面側へ近付き、敵が戦闘している様子を確認しながら各能力と実力の分析に取り掛かり始めた。


 しかし一方で、その場に留まっている者達もいる。

 それは二組目の組み合わせである、エリクとケイル、そしてマギルスの三名だった。


 すると先に口を開いたエリクが、頼むようにケイルへ言葉を向ける。


「――……ケイル」


「……なんだ?」


「奴は、ウォーリスとは俺が戦う。だからお前は、その間に捕まっているアリアを……」


「嫌だ」


「!」


「こんな所まで来て、また御嬢様の御世話なんて……。死んでも御免だ」


 エリクの頼みをケイルは拒絶し、顔を逸らしながら別方向を見る。

 それを見下ろすエリクは渋い表情を浮かべながら、敢えて忠告を向けた。


「ウォーリスは強い。だから……」


「……アタシは足手纏いだって、そう言いたいんだな」


「そうは言ってない」


「言ってるも同然なんだよ。……アタシは、お前等に守られる為でも、ましてや御守りをする為にここに来たわけじゃない」


「……ッ」


 刺々しいケイルの態度に、流石のエリクも色濃い動揺を浮かべる。

 そんな二人のやり取りを傍らで見ていたマギルスは、溜息を漏らしながらその口論に言葉を挟んだ。


「じゃあさ。ケイルお姉さんが僕らと一緒に戦えるようになったか、証明すればいいじゃん」


「証明……?」


「あの貨物室でさ。どうせ降りるんだったら、貨物室(あそこ)に行くんだし。先に行って二人で決めてきなよ」


「だ、だが……」


「……いいぜ」


「!」


 マギルスの提案にエリクは躊躇いの声を漏らしたが、ケイルはそれに応じながら艦橋(ブリッジ)の扉側に身体を向ける。

 そして背を向けたケイルは、エリクを横目で睨みながら声を向けた。


「来いよ、エリク。……今のアタシが足手纏いかどうか、自分で確かめな」


「……分かった」


 そうした言葉を向けたケイルに、エリクは渋々ながらも応じる。

 すると二人は扉へ歩きながら出て行き、艦橋(ブリッジ)から去った。


 それを見送ったマギルスに、歩み寄って来る『青』が話し掛ける。


「……この状況で、仲間割れか?」


「僕等にとっては、いつもの事だよ」


「そうなのか。……アルトリアも、随分と愉快な者達を集めたようだ」


「それよりも、僕も二組目(こっち)でいいの? ……あのザルツヘルムのおじさん、未来のアリアお姉さんより強いよ。僕が戦わなくて平気かな?」


「彼等もまた、戦闘に関して卓越した者達だ。……それに『赤』の血を引くシルエスカがいれば、対抗できるかもしれん」


「シルエスカお姉さんが?」


「『赤』の血族が生み出す『火』は、悪魔の瘴気に対抗できる手段の一つでもある。シルエスカもまた、その『火』を扱える一人だ」


「そっか。でも、僕がちゃんと首を取りたいんだよねぇ。あの悪魔のおじさんは」


「この組み合わせも、実戦でどうなるか分からんのは事実だ。あるいは予想外の事が起きた時に、その機会(チャンス)もあるのかもしれんな」


「そっか。じゃあ、その時は僕が()るよ!」


「その時は、お前の裁量に任せる」


「うん! ――……あっ。僕も二人が戦うの、見て来ていい?」


「構わん。時間が来た時には、設備を通じて伝える」


「はーい」


 『青』とそうした会話を行った後、マギルスは二人を追うように扉から出て行く。

 そして艦橋(ブリッジ)に戦いに備える面々を他所に、エリクとケイルは互いの主張をぶつけ合う形で決闘を始めようとしていた。


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