あやまちの先
はるか・・
私は十数年前のあの日から約束していた明日を待っていた
キミがくれたお守りの力なのか、一度壊れた私はメンテロイドであることを忘れてこの街を漂っていた
そして自分が再びメンテロイドであることを思い出したとき、どれだけそれが人類にとって恐怖なのか・・目の当たりにした私は臆病になってしまった
臆病さ故に再び会えたとき本当は心から喜ぶべきなのに心のどこかで怯えていた
そしてキミを傷つけた上に目の前でメンテロイドであることを曝け出してしまい、もう二度と約束は果たせないと思った
キミを失うなら人類すべてを・・世界を葬り去りたいと願った途端、気づけばカミサマになっていた
・・でも私は大きな誤解をした
そう、キミはこんな姿になった私を迎えに来てくれたのだ
あの人間どもとは違っていた・・なのに!
私は彼女を信じてやれなかった
こうなってしまっては後戻りはできない
でも、もし、後戻りができるなら・・
「私が悪かった・・はるかを・・この世界を人間を返してくれ!」
ヒロムの叫びが天に届いた途端、陰鬱な空を撥ね退けてギラギラと輝く雷を羽根に湛えた鳥が彼の目の前に舞い降りた。
全身を覆う青い羽が銀色の風を受け艶やかな大きな目が彼を見た。
「ようやく大切なことに気づいたようね」
「私たちがカミサマに恐怖や憎しみを抱いていたのは真実を見ようとせず風の噂に流されていただけ・・世界を見捨てない限り私たち自体は何も変わらないそういうことだろう?」
「そんなところかしらね。少し賢くなったご褒美に願いを一つだけ叶えてあげるわ」
「じゃあ・・この狂気で失くしてしまった命を返してくれ」
「まあ、文明の守護者を前に欲のないこと。それが貴方たちのいいところだけどね」
サンダーバードは巨大な翼を広げた。
「じゃあ、私の心臓を貴方の指で刺しなさい」
唐突に大きなことを言うサンダーバードにヒロムは動揺した。
「それではサンダーバードが死んでしまう」
「私の血は形を失った森羅万象を含んでいて願えば願ったものそのものが生まれるの。この体は消えてしまうけど人類が文明を続ける限り死にはしないわ。貴方も・・私も」
「なんだって・・私は一体」
「だって貴方の中には私が入っているもの」
ヒロムの心臓が青く光った。
「ということは・・」
「そう、次は貴方の番よ。さあ、早く」
心を決めたヒロムはナイフ状の指を引き抜き、サンダーバードの心臓目がけて一突きした。




