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この作品には 〔残酷描写〕が含まれています。
苦手な方はご注意ください。

カンノコノヲ[前編]

作者: アマギユウ

前編、後編の二部構成になります。




今年で結婚して6年を迎える。


夫は商社マンで、海外出張が多いため家に居ることはあまり無い。


子どもは居ない。


私も女として、欲しいと思っていた時期もあったが、今の生活に満足しているのか、そこまで欲しいとは思わなくなっていた。


それに私も今年で42歳。


既に遅いのだ。


結婚記念にと買った4LDKのマンションは、私独りでは広すぎる。

夫が居ない間は、リビング、キッチン、寝室しか行き来しない。

ひどい時には半年以上も入らない部屋もあるくらいだ。


不思議と寂しさは感じないし、夫とも3日に1回くらいは電話で話す。





ある日の事。


妹から連絡があり、2、3日泊めて欲しいと言うのだ。


夫も出張中で居ないので了承したが、妹の泊まる部屋を掃除しなければないない。


そこで、普段は夫のお土産や貰い物を置いている部屋を使う事にした。


「だいぶ散らかっちゃってるなー…… 」


物置小屋と化した部屋を眺めながらため息をつく。


窓を開け、お土産などをクローゼットの中に次々と押し込んでいく。

かなり片付いた時だ、コロッと足元に何かが転がってきた。


小さな木箱。


かまぼこ板ほどの大きさで、しっかりと封がされ、紅白で編まれた紐が結ばれている。


御札のようなもの封には「カンノコノヲ」と筆で書かれていた。

不意に不安な気持ちが、私の中に湧き上がってくる。


「なんだか気持ち悪い」


私はその木箱を仕舞おうと、クローゼットの奥に手を伸ばした時だった、どこから這い出たのか、20センチは有ろうムカデが私の腕をゾロゾロと這っているのだ。


「ひぃいっ!!」


びっくりして悲鳴をあげ、ムカデを振り払おうと腕を振った時に、手に持っていた木箱を床に叩きつけてしまった。


「ムカデ! ムカデは!? 」


振り払ったはずのムカデは部屋のどこにも見当たらない、消えていた。


木箱はというと、叩きつけた拍子で壊れている。


ため息をつきながら、私は壊れた箱を片付けようとすると、中から紐のようなモノをが出てきた。


「何これ……へその緒?」


それは10センチほどの、カラカラに干からびたへその緒のようだった。

もしかしたら夫のかも知れないと思い、そっとティッシュに包み、別の容器に移す。





その夜、夫に電話で話すと、自分のへその緒は実家に保存していると言われ、私はゾッとし、何か悪いものを解放してしまったのではと思ってしまった。


「カンノコノヲ」と書かれていた事を話すと、夫がこの木箱をくれた人に話を聞いてみると言う。

だが、いつどこで貰ったか覚えてない為、時間がかかるかもしれないとも言われ、私は自分でも調べてみることにした。


夫との電話も終わり、布団に入りウトウトしていると、ふっと耳元を風が撫でた。


窓が空いてる? 起き上がり窓を見るが、しっかりと鍵が掛かっている。


気のせいと思いまた横になると、今度は均等感覚で、ふっ、ふっ、と私の耳元を風が撫でる。


まるで、呼吸のように。


気持ち悪くなり、リビングに行くとそれはピタリと無くなった。


その夜は、明かりをつけリビングで朝まで過ごした。





翌日、明かりのついたリビングで目を覚ましたが、ソファーで寝たためか、身体が重い。

重いというか肩こりのような感覚だ。


昨日のことが気になり、インターネットで「カンノコノヲ」を検索してみると、何件か関するであろう記事が出てきた。

ある地域では「カンノコノヲ」とは「神の子の尾」と読むというらしい。


とても神聖なもので、昔は神事や祝い事などに使われたという。


ある村では、双子が産まれた時、双子は神聖なものとして崇められ、その子らのへその緒を祀り「カンノコノヲ」とした。


こういう記事を読み、悪いものではないんだなと、胸を撫で下ろし安堵する。


むしろ神聖な物なら、しっかり祀ってあげたほうがよいのでは? そんな気持ちにもならなくはなかった。


私はその後、「カンノコノヲ」を神棚の横に祀り、手を合わせては毎日拝んでいる。


だだ、1つ気になることがあるのだが、それは身体の不調だ。


妙にだるいというか、微熱もずっと続いている。


お風呂に入ろうと、服を脱いでいた時に鏡で気づいたが、肩に痣ができていた。


別にどこかにぶつけた訳でもないし、まず痣の位置が両肩にある時点でぶつけようが無い。


しかもよく見てみれば、それは小さな手形のような痣なのだ。


何かの病気かも知れないと思い、病院で検査をして貰ったが、3つほどポリープが見つかった以外に大した異常は無かった。


その痣は日を増すごとにハッキリとしてきて、今では、私の両肩を掴むような手形になっているのだ。


多分原因はあの木箱だ。


「カンノコノヲ」が何らかの影響をもたらしているのだろう。


私は夫に電話し、今日までの事を全て話した。


ちょうど夫も電話しようとしていたみたいで、どうも木箱の持ち主と連絡が取れたようなのだ。


「あの箱は神の子の尾じゃないみたいだ、持ち主に詳しく聞いたらあれは【間の子の尾】と読むらしい。」


夫によれば、昔とある集落で疫病が流行り、次々と住民が死んでいった。

最初に疫病を発症したのが3歳の子供だったばかりに、住民たちは子供が病を運んできたと噂し、集落はある策をした。


それは3歳以下の子供の間引きだった。





後編は8月上旬に掲載予定です。

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