表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
ありきたりな異世界での日常  作者: 自動壊腹
第一章 仲間との出会い
9/10

基礎知識講座(?)

第九話です!

ここで一応お知らせを。

この作品は、先日1000PVを超えました!

今まで読んでくださった皆様。

ブックマークを付けて頂いた皆様。

感想、レビューを書いて下さった皆様。

皆々様に盛大な感謝を!


と言うことで、本編どーぞ!

「バーカ」

「うぅ…」

「バーカバーカバーカ」

「うぅぅぅー…」


 屋敷に戻った僕はマナさんに魔法やら何やらを教えを乞うべく、彼女の部屋に行きお願いしたところ、『では、貴方の部屋に行きましょう』と言われ、言われるがまま僕の部屋に連れて行き(場所はもう覚えた)、現在机にと言うかマナさんと向き合っている訳なのだが(一文で読点入れ過ぎだろ)。


「はあ…全く、『教えて欲しいことがある』と言うから何かと思えば、まさかその程度の知識も持ち合わせていないとは思いませんでしたよ」

「すいません…」

「いえ、私が悪いんですよ。貴方にこの程度の知識があると思い込んでいた私の所為です、申し訳ございません」

「いや、お気になさら…」

「貴方が馬鹿で常識知らずと言うことを忘れておりました」

「そこまで言います!?」


 やはり、オレアとキャラが被っている気がするが気にしない、と言うか気にしたら負けな気がする。まあ、何に負けるのかは分からないけれど。

 机の上に白紙とペン(異世界モノでよくある羽ペンとかでなく、普通のボールペン。何でテレビどころかラジオすら無い上に機械系の物なんてダイニングの振子時計かオレアが持っていた物しかないのにボールペンなんだよ。世界観ぶっ壊すなよ)が置いてある。


「一応、確認として訊いておきましょう。文字の読み書きは可能ですか?」

「あ、えーっと…」


 やべえ、分からん。

 この世界の文字って何なんだ?日本語でおk?


「あのー、此処って常用語何語ですか?」

「馬鹿なんですか?」

「罵倒の前に質問に答えて下さいませんかねえ!?」


 マナさんと一緒にいるだけで早死にしそうだ。

 何か疲れるわ。


「書きは出来ないけれど、読みは出来るようになってるから安心して〜」


 突如として悪魔の登場。

 いや、何の前触れも無く現れられると反応に困るんだけれど。

 机の上に上下逆さまの状態で浮いている。逆さ好きなんだな、コイツ。浮いている所為で僕と目の高さが同じになっている。


「何でお前此処にいるんだ?」

「貴方から頼んでおいて、いい度胸ですね」

「いや、今のはマナさんに言った訳ではなく…」

「今、此処にいるのは貴方と私だけですよ。大丈夫ですか?頭、湧いてるんですか?」


 マナさんにはコイツ―――悪魔は見えないのか。なら、可笑しな事を言ったと思われても仕方ないのか。

 横で悪魔が笑っている。笑うな、この糞野郎!

 それでも流石にさっきから罵倒され過ぎてイライラしてきた。


「僕が湧いているのは、頭ではなくマナさんへの怒りですよ」

「ああ、海に沈めるやつですか」

「それは錨です」

「では行きましょうか、海に」

「本当に錨を沈めに行くんですか!?」

「いえ、貴方を沈めるんです」

「事件だ!」


 僕を海に沈める前に、怒りを鎮めてくれ。

 マナさんじゃなくて他の人に頼めば良かった。

 はあ…。

 まあいいか。

 気付けば悪魔が居なくなっていた。あの一瞬邪魔する為に出てきたのか。とことんムカつく奴だ。


「んじゃあ、もうこの際文字だの言語だのは良いとして」

「教えてくれないんですか」

「はい、面倒なので」

「……」


 理由が酷い。

 相変わらずだなあ。きっとこの人は根っからの捻くれ者で、相変わらずと言うよりかは相変われずといった感じなのだろう。仕方ない、どうやら僕が折れるしかなさそうだ。まあ、教わる側だしな。諦めよう。


「取り敢えず、魔法について教えなあかんのか」

「何で関西弁なんですか…」

「何やおどれ、うちの口調に何か文句あんのか?え?」

「キャラ崩壊すんなよ!」

「ナニソレ超ウケるー」

「真顔でウケんなや!」


 流石にキャラ崩壊し過ぎでしょ。

 諦め切れなかった。


「んで、関西弁って何なんですか?」

「知らないで言ってたんですか…」






「はあ…」

「……」

「全く、貴方がボケ過ぎて全然話が進まないじゃないですか」

「いや、ボケてたのはマナさんです」

「人の所為にしないで頂けませんか?」

「人の所為にしてるのはアンタだろーが!いやまあ、少なからず僕もマナさんの所為にはしてますけれど」

「ほら、やはりそうじゃないですか」

「僕に言う前に自分の間違いを正せ!」


 何はともあれ。

 心機一転。


「魔法に関してお教えする前に、まずは悪魔信仰についてお教えしなければならないですね」


 悪魔信仰か。

 元いた世界と言うか前世でも悪魔信仰があったな。まあ、詳しいことは全然知らないのだけれど。

 でも何で魔法の前に悪魔信仰を語られなければならないのだろうか?

 それに、悪魔。悪魔?あの悪魔か。彼奴、信仰の対象なのか。世も末だな。


「考えれば分かるでしょう?魔法、魔の法、つまるところ悪魔のものなのですよ。悪魔のみ成せる業、それが魔法。とは言え、『悪魔のみ』と言ってしまうと語弊というか間違いがある訳なのですけれど」

「つまりは、悪魔以外にも魔法を使える存在がいると?」

「何で勘が鋭いんですか。つまらない」

「毒を吐く前に続きを教えて頂けると嬉しいんですけれど」


 二回に一回は毒づかれている気がする。

 こうかはばつぐんだ!

 HPがどんどん減っていく。

 と言うか、これは別に勘が鋭い訳ではない気がする。普通に話の流れで分かるだろ。


「まあ、結局はそれが悪魔信仰者と言うことですよ。それでも、その内でも限られた人だけらしいですよ。まあ人伝なので確かとは言い切れませんけれど」

「限られた人…」


 それは、あれか。

 代表者的ポジションの人。

 例えば司教。例えば宣教師。例えば開祖。


「どうやらそう言う訳ではないようですよ」

「……」


 前々からと言うか、正確には昨日から思っていたけれど、マナさん、僕の心読んでないか?


「読んでいる訳ではないですよ」

「いや、読んでいるじゃないですか。言っていない台詞に対して返答しているじゃないですか」

「別に、貴方の心を読んでいる訳じゃないんだからね!」

「何故ツンデレ風に言い直した」


 真顔でツンデレされても反応に困る。

 と言うか、何で心読めるんだよ。

 もしかして、これが魔法ということなのだろうか。否、それは違う。少なくともマナさんは魔法が使えないことは確かだ。先程の口調。マナさんの台詞。あれは完全に当事者の言う事ではない。いや、マナさんが隠していたら分からないけれど。


「まあ、これでもメイドですからね。この程度当たり前です」

「メイドハイスペック過ぎんだろ」

「御主人様の思考を理解する。御主人様の護衛をする。御主人様の身の周りの御世話をする。また、これは御主人様に相当する方、屋敷の住人も含まれる。この程度当然でしょう?」


 それはもう、メイドじゃねえ。

 よもやSPすら超えている。

 メイド+SP。メイドSP。メイドスペシャルだ。何か凄そうだな。いや、実際凄いのだけれど。


「そう言えば、その、御主人様ってどんな人なんですか?」

「さあ?」

「いや、『さあ?』って…」

「最後まで訳の分からない方でしたから。現在地不明、消息不明ですよ」


 現在地不明。

 消息不明。

 ……。

 …………。

 深入りするのはやめよう。


「あ、そうだ。マナさん、話変わりますけれど」

「勝手に話を変えないで下さい」

「…話変わりますけれど」


 無視することにした。


「話変わりますけれど。オレア、彼奴強すぎません?」

「まあ、そうですね」

「あれも魔法なんですか?」

「知らないですよ。でもまあ、常人では有り得ないですよね。少なからず悪魔が関わっている可能性はありますね。悪魔の本質は魔法ではなく、あくまで『願いを叶える』というところですから。でも、もしもあれが魔法ならば、不器用さを何とかすべきだと思いますけれど」


 確かに、それは同意。

 まあ、彼がどれくらい不器用なのかは知らないけれど。

 けれど、何というか。

 彼―――オレアのあの怪力は、魔法と呼ぶには相応しくない気さえ覚える。もっと、こう、根本的なと言うか肉体的な何かがあるのだと思う。全然強そうな身体していないけれど。

 なんて言える訳が無い。

 只の偏見だ。

 実際、強いんだし。


「可哀想ですよ、本当に。自分で壊した物を直せないなんて」

「自分で壊した物?」

「貴方が初めて会ったとき、彼、何か持っていたでしょう?」

「ああ、確かに」


 あれか。

 俯いて何かを作っていたように見えたけれど。


「あれは、作っている訳ではなく、直している最中なのですよ。最も、直せていないんですけれどね。なんでも、大切な物らしくて自分で直すと仰っていましたよ」


 マナさんが少し悲しげにそう言った。

 きっと、マナさんはそれが何か分かっているのだろう。

 他人の心を、読めてしまうが故に。


「大切な物、か」


 そんな物、僕にはあっただろうか。

 大切なもの、大切にしたいもの。

 自分自身の手で、命を賭けて成し遂げたいと思った何かが。

 そんなもの、僕には無い。

 今までも無かったし、今も無い。

 だなんて。

 大切なものを『そんなもの』と言っている時点で、僕はその程度の人間なんだ。

 大切なものなんて、何も無い。

 他人のことも、自分でさえも。

 彼女のことさえも。


『お願い、どうか―――』


 あのお願いを、約束を、僕は守れるだろうか。

 僕に、その資格があるのだろうか。


 僕は本当に、彼女のことが好きなのだろうか。


「あー」

「どうなさいましたか?いよいよ壊れましたか。輪唱ならしませんよ?」

「いや、輪唱はこっちからも願い下げですけれど。何というか、嫌なことを思い出したというか、自暴自棄になっただけです。よくあるんですよ、昔からの癖なんでしょうかね」


 彼奴―――悪魔は言っていなかったけれど、僕の経歴全部知っていたのだから、何故僕が自暴自棄、言わば自嘲癖である理由も知っているのだろう。何か嫌だな。


「そうですか」

「と言うか、僕の考えていること、分かるんじゃないんですか?」

「なんとなく察せるだけで、別にテレパシー能力がある訳ではありませんので」

「ふうん」


 悪魔の下位互換といったようなものか。

 よく分からないけれど。


「……」


 にしても。

 マナさん、胸、大きいな。

 いや、リラさんと比べるとそう思うだけであって、一般女性の平均が分からないから何とも言えないけれど。

 まあいいか。

 そんなに見ていたら変態だと思われてしまう。


「変態」

「……」


 手遅れだった。

 時既に遅し。


「そりゃあ、気付くでしょう。勘と察しは良い方ですので」

「勘と察しは同じ意味じゃないですか」

「はあ…。もう秋田んで帰っていいですか?」

「それを言うなら飽きたでしょうよ。まあ、いいですよ。魔獣のことは訊けていませんけれど」

「魔法によって強化・変化させられた動物の総称。高度な魔力によって圧力を受けているが為に強力にはなるが、死ぬと原型を保てなくなり土に還る」

「何で辞書みたいな口調なんですか」

「それでは還らせて頂きます」

「字が違います、天に召されちゃってます」

「それでは」


 マナさんは椅子から立ち上がり部屋から出ると、くるりと身体の僕の方に向きを変え。


「失礼致します」


 そう言って丁寧にお辞儀をして、僕の部屋を後にした。

 紙とペン、使わなかったな。

 まあいいか。知りたいことは知れた訳だし。

 魔法と魔獣、ついでに悪魔信仰。

 悪魔。

 悪魔か。


「おーい、タカシー」

「いや、タカシを公式の呼称みたく使わなないでよ〜」


 それでも、タカシで反応して出てくるのな。

 白装束の悪魔。僕を殺した犯人ならぬ犯魔。犯魔か。かっこいいな。


「前々から思っていたけれど、君のかっこいいの基準って結構低くない?」

「五月蝿えよ、喰い殺すぞ」

「グロテスク過ぎるでしょ!」


 あー、やっぱコイツと喋っている方がマナさんと喋っているときよりは楽だ。やりやすい。


「いや、やりやすいって。それ絶対暴言吐きやすいだけでしょ…」

「僕はお前のこと、好きだぞ」

「一応訊こうか、ど〜いう意味で?」

「言葉の暴力に使うサンドバッグとして」

「だと思ったよ!」


 良いわ。この感じ、うん、とても清々しい。気持ちが穏やかになっていく。マナさんはボケまくっていたからな。正直、かなり辛かった。


「はあ〜…サンドバッグってサンドバッグってサンドバッグって!もう、どんどんボクの扱いが酷くなっていっているじゃないか〜!」

「五月蝿えなあ、焼き殺すぞ」

「なっていないなっていない全っ然気持ちが穏やかになっていない!」

「サンドバッグと土のうって殆ど同じようなものだよな」

「絶対に伏線にならないような発言をよくもこう次々と」

「後にこの発言が伏線となることを、このときは誰も思わなかったのであった…」

「筆者さえ思っていないに一票」


 もう、メタ発言連発しまくる二人であった。

 土のうだのサンドバッグだのが、後々どう物語に関係してくるのか。今後に期待するぜ。


「あ、そ〜だそ〜だ」


 何かを思い出したかのように、悪魔が喋り始めた。


「言い忘れていたけれど、このボクと『悪魔信仰』は関係無いからね〜」

「ふうん」

「悪魔信仰はあくまでも『この世界』のものであって、前の世界の悪魔信仰とは別物だし、ボクは神様みたいなものだからね」

「神様?」

「そ、神様。この世界は勿論だけれど、君のいた世界も言わばボクの『所有物』みたいなものだからさ。この世界の『悪魔信仰』で言う悪魔とは次元が違うんだよ。レベル1とレベル100くらい違う。まあ、実際ボクって神様と同じくらい凄いだけであって、結局は悪魔だけれどね」

「世界が所有物、か」

「ま、分かりやすく比喩するならば、それぞれの世界がボクのスマホだとして、君というスマホゲームのデータを移したようなものなんだよ。『悪魔信仰』はスマホのシステムのうちの一つようなものだと思ってくれれば、分かりやすいんじゃないかな?」


 分かりやすいけれど。

 いや、分かりやすいけれども。

 何というか、例えが酷くないか?所有物って。まあ、分からなくもないけれど。僕のことをいとも容易く殺せる訳だからな。データ消去よろしく。


「だから、この世界の悪魔は悪魔以下の悪魔、言わば小悪魔といった感じかな」


 もうそれ意味変わっちまうじゃねえか。

 コイツのことをタカシって呼べば解決するだろ。


「一応、ボクの性別は分かっていないっていう設定なんだけれどね〜…」

「知るか」


 どうでも良かった。

 神レベルの相手に対して何という態度だと自分でも思う。このままだと本当に消去されかねないというのに。

 神レベルか。全知全能のようには見えないけれど。

 試しに一つ質問。

 この質問は遅かれ早かれ訊かなければならないんだ。なら、今でも別にいいだろう?お互いのテンションが下がることなんて知ったことか。


「おい、自称悪魔の中二病野郎」

「ガチ悪魔だけれどね。んで、何?」

「僕の父親―――一人目の父親と二人目の父親。あの二人、何で死んだんだ?」

「……」

「一人目の父親は、僕がいない間に書斎にて首吊り自殺。二人目の父親は一人で自動車に乗って運転していたところ、トラックとの衝突で死亡。でも、本当にそれだけか?」

「……」

「一人目と二人目、一回目と二回目の共通点は、その場に―――自分の父親の死に際に僕が立ち会っていなかったこと。いや、違う。そうじゃない。『僕が』いなかったんじゃない、『誰も』いなかったんだ。その場に、その空間に誰一人いなかった。これは偶然か?何の前触れも無く、二人が死んだんだ。あの二人は、何で死んだんだ?」

「……」


 何の前触れも無く。

 何の理由も無く。

 そんなこと、本当に有り得るのか?

 そんなこと、本当に有って良いのか?

 もしこの二人の死に、第三者による人為的な何かがあったとするならば、それは。


「それは、お前しかいないんじゃないのか?」

「……」

「まあ、お前は悪魔だから『人為的』とは違うのかもしれないけれど。それでも、もし誰かが何らかの意図で自殺や事故に見せかけて殺したとするならば、僕はお前しか思いつかない」

「……」


 一組目の両親。

 そして二組目の両親。

 共通点、繋がりは唯一つ。


 僕が、彼らの一人息子だったこと。


 それに限られるのだ。他に関連性は無い。親戚関係だとか旧友だとか、そういう訳でもないのだ。僕がいただけ。ただそれだけなのだ。だったら、コイツしか有り得ないじゃあないか。なんてったって。


「お前は、お前は僕のこと、全部知っているんだろう?なあ、どうなんだよ。僕の経歴は把握済みなんだろ?僕は二人に少なからずと言うか、返しきれない程の恩があることも承知してんだろう?お前、悪魔なんだろう、神様みてーなもんなんだろう?だったら答えてくれよ。何であの二人は死ななくちゃいけなかったんだ?」

「はあ…。仕方ないね、教えてあげるよ」


 意外とすんなり教えてくれるんだな。

 もっと巫山戯たり誤魔化したりするものかと思っていたけれど。


「でも、残念だけれどボクは君の望む答えを教えられないよ」

「は?」

「だって、アレはボクの仕業じゃないもん」


 は?何で?いやいや、可笑しいだろ。だってコイツしか有り得ないじゃないか。もしもコイツじゃ無かったのならば、一体誰の仕業だ?


「全く、君は馬鹿だな〜。端から結論は出ているじゃないか。だから、あれは事件であれは事故なんだよ。あれは自殺であって、あれは交通事故なんだってば。ただそれだけなんだよ。他に何があるってのさ」

「いや、でも」

「でも何?まだ分からないの?あの二つの出来事に関しては人為的もクソもないよ。ボクが干渉していないのも事実だ」


 だけれど、本当に、本当なのか?

 僕は、信用してもいいのだろうか。

 この悪魔を。

 この人でなしを。

 この人殺しを。

 コイツを、信じてもいいのだろうか。

 否、そうじゃない。僕は、コイツを、コイツの言葉を―――戯言を信じられるのだろうか。


「けれどさ、ボクは君が、と言うか人間がかな?人間がそこまで故人に執着する理由が分からないんだよね。だってさ、そんなこと、ど〜でもいいじゃない」


 どうでもいい?

 どうでもいいだと?

 人が死んだことを『どうでもいい』だなんて言い切れるものなのか?自分の大切な人が、命の恩人が、死んだことを。

 ああ、そうか。

 僕は忘れていた。

 コイツは悪魔。

 本当に悪魔なのだ。

 神様なんかじゃあない。

 只の悪魔だ。

 コイツにとっては、人間なんて只の所有物、遊び道具に過ぎないのだ。

 只の遊び道具。玩具だ。

 遊び。遊戯。悪戯。悪ふざけ。

 所詮はその程度にしか思っていないのだ。


「ああ、そうかもな」


 おざなりに僕はそう言う。

 コイツはその程度にしか思っていなくとも、僕にとっては大事なことで。僕にとっては大事な人達で。僕にとっては大事な記憶なんだ。

 執着しない訳、ないじゃない。

 執着するななんて、不可能だ。


「だからさ〜、君はこの世界でこのまま、着の身着のまま、生きていけはいいんだよ。昔のことなんて忘れてさ」

「……」

「ボクは君を不幸のどん底から助ける為に、この世界に連れてきた。その代わりと言っては何だけれど、君にミッションを課そうじゃないか」

「……」

「ミッションは唯一つ、この世界で生きること。君の寿命が来る、その日まで」

「……」


 悪魔は両腕を広げて、僕に言う。


「さあ、生きろ!ここが君がいるべき世界だ!足掻け、藻掻け、苦しめ、幸せになれ!ボクを憎みたければ、幾らでも憎むがいい!君が生きる為ならば、憎まれたって構わない!嫌われたって構わない!ただ、精一杯、一生懸命、必死に生きろ!」


 だなんて、巫山戯たことを言っている。

 悪役振って、黒幕振って、支配者振って。何が楽しいのか。

 生きるさ、当然だろう。

 僕は心の中でそう思った。

 悪いが前言撤回させて貰う。

 どうやら僕は、永遠にコイツのことを好きにはなれなさそうだ。




 なあ、悪魔。

 僕はお前が嫌いだよ。



如何でしたでしょうか?

最近、読んで下さる方が増えた反面、プレッシャーが凄いです…

まあ、何はともあれ、今後も読んで頂けると嬉しいです!

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ