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ありきたりな異世界での日常  作者: 自動壊腹
第一章 仲間との出会い
5/10

始まり

今回は長めです。

とは言っても6000位ですけどね

読んで頂けると幸いです


んじゃ、本編どーぞ!

 意識が戻っていく。遠くで鳥の囀りが聞こえる。


「んぅ…」


 瞼を上げる。状況確認、うん、どこだここ。

 自らがベッドの上に寝転がっている事を確認。見知らぬ天井にはシミ一つ無い程に綺麗だ。壁には高級そうな絵画が幾つも飾られている。開かれた窓からは日の光が差し、爽やかな風が吹いている。カーテンが翻り(というかカーテンまでもが高級そうなんだけれど)、一瞬、外が見えた。駄目だ、やっぱり知らん場所だ。なんか、豪邸の一室みたいだ。え?マジで異世界なの?わーお。


 突如、部屋中を響き渡る轟音。

 ……。

 自分の腹の音で驚いたのは、生まれてこの方初めてだった。


「ハラヘッタヨォー…」


 そういや、朝食も昼食も食べて無いやん。うわー、もう死ぬのかよ、餓死は嫌だなー。現代日本において餓死は無いだろ。あ、此処日本じゃないじゃん。知らない場所で食糧も何も無いとか、有り得ん。取り敢えず、起きた方が良いよな。

 改めて周囲を見渡す。綺麗に掃除されている部屋。ベッドも高そう。自分が着ている服も知らないものに変わっていた。

 部屋の外から足音が聞こえた。近づいて来ている。


「おー、起きたか。良かった良かった」


 部屋の中に入って来たそいつは僕に話し掛けてきた。

 艶のある茶髪を肩の下まで伸ばし、かなりラフな格好をしている。少し大きめのシャツを着て、ショートパンツを履いていた。身長は僕よりも高そうだ。年上のお姉さんといった感じだった。


「少年、調子はどうだぁ?腹減ってねぇか?」

「えーっと…」


 正直かなり腹は減っているが、見ず知らずの人から食べ物を貰うというのは気が引けるのだ。つーか少年って、対面早々馴れ馴れしいなあ、この人。少年って呼ばれるの初めてだわ。


「安心しな、別に取って喰い殺そうって訳じゃねーから。そっちが警戒心バリバリだと接し難いだろ」


 取って喰い殺すって、表現グロ過ぎんだろ。


「ちょっと待ってろよ、一応、他の奴等にも起きたって伝えとかねーとだからよぉ」

「あ、はい。分かりまし…」


 言い終わる前に出て行ってしまった。ゲリラお姉さんだった。

 他にも誰か居るのか。どんな人だろう、何か少し怖いな。

 突然死んで、突然異世界行くことになって、突然知らない人が出てきて、なんつーか…


「ありきたりだな…」


 ありきたりと言うか、有り触れていると言うか、有り余っていると言うか。

 ラノベや漫画で良く有る展開って感じだ。

 どうせ、この後何かしら事件が起きたり、争いになったりするんだろ?面倒くせー。僕、チートみたいな能力持ってないんですけど…。

 そういえば、彼奴はどうしたんだ?あの白ラン野郎、何処行きやがったんだよ。


「ここだよ〜ん」


 壁に掛けられた絵画から首だけ出てきた。ホラー映画かよ。まあ、別に驚かないけど。あんまり怖くないし。

 うわ、全身出てきた。なんかそっちの方が怖いわ。

 相変わらずの服装だな、やっぱり白ランとハットは合わない気がするのは僕だけなのだろうか。


「え〜、そんなに合わないかな〜。仕方無い、今度ネットで買っとくよ」

「ネットかよ」


 こいつがネットで買い物とか、違和感しかない。まあいいか。

 結局こいつは何者なのだろうか。変なとこから出てきたり、心を読んだりするし。つーか、さっきから物理的に浮いてるし。やっぱ人間じゃないのだろうか。


「うん、違うよ。天使か悪魔か、はたまた神か」

「なるほど、悪魔か」

「…ボクってそんなに印象悪いかな。まあ、その通りだよ」


 マジかよ、適当に言っただけなのに。当たってしまった。

 なあんだ、つまんねーの。


「酷い言い草だな〜。でもまあ、皆が皆、悪魔はボクみたいな奴って訳じゃないからね」

「もしも悪魔が皆、お前みたいなのだったら死にたくなるわ」

「もう既に一回死んだじゃんよ…」


 そうだ、僕は死んだのだった。

 こいつに、この悪魔に、殺されたのだ。

 死因は、えっと…


「そういや、僕の死因って何なんだ?別に痛く無かったし、苦しくも無かったけど」

「死因?う〜ん、何て言えば良いのかな…まあいいよ、そんな事」

「人の生死に関わることを、よくもまぁあっさりと…」

「説明がめんどい、また今度教えるよ」


 テキトーだなぁ。

 せめて、天井からぶら下がるのを止めてくれたらなあ。なんか、めっちゃ話しづらい。上下反転してるし。頭に血上らないのか。


「ボク、懸垂が得意なんだ〜」


 突然、話題を変えてきた。というか、逸らしてきた。

 …まあ、いいか。


「そりゃそうだろ、浮けるんだし」

「ありゃ?バレたか」

「当たり前だろ、そんなん幼稚園児でも分かるわ」

「え〜っとさ、幼稚園児って懸垂知ってるの?」

「…」


 盲点だった。確かにそうだよな。

 少なくとも僕が懸垂を知ったのは中学生になる前頃だった気がする。と言うことは、幼稚園児が懸垂を知っている可能性は低い。ならば、することは唯一つ。


「当たり前だろ、そんなん小学生でも分かるわ」

「お、幼稚園児からランクアップした〜」

「当たり前だろ、そんなん小学生でも分かるわ」

「完全にさっきまでの会話を無かった事にしようとしてるな…」

「当たり前だろ、そんなん小学生でも分かるわ」

「あ、うん、そだねー…」

「当たり前だろ、そんなん小学生でも分かるわ」

「分かった!分かったから止めて!壊れたラジカセみたいで流石にボクも心配になってくるから止めて!」


 無かった事になった。やったー。

 詰まらない会話内容だった。いや、会話自体は面白かったけれど。

 部屋の扉の方から足音がした。


「お?もう戻ってきたのかな〜?、くれぐれも死なないようにね。んじゃ頑張って〜」


 消えた、消えやがった。というか逃げやがった。

 死なないようにって、そんなに危ない場所なのかよ…

 乱雑に扉が開かれる。ドアが壊れるのではないかと思う程に大きな音だった。怖いです。

 そいつは、さっき来た人では無かった。黒髪ロングでポニテ、軍服のようなスーツのような服を身に纏っている。目つきが鋭いというか、なんか睨まれてる気がする。

 僕の事をじっと見つめ(睨み)ながら近づいて来たそいつは、靴を履いたまま(ここ室内土足OKなのか)ベッドの上に乗って来て僕に跨った。流石にベッドの上に靴を履いたまま乗るのは駄目だろ。ずっとこっちを睨んでるし。何なんだろう、この状況。

 ジャケットの中から、何かを取り出した。

 何だかは分かる。輝いてて、尖ってて、危ないもの。

 あれですね、剣ですね、はい。

 剣先を突きつけられた僕は動くことができない。あ、死ぬの?僕、もう死んじゃうの?いやいやいやいや、早すぎません?だって、え?もう何なの?急展開どころじゃ無い。そんな急展開は要らない!第五回で即他界の急展開なんて要らないって!

 …ん?何か今変なこと言った気がする。気のせいか。


「貴様、一体何者だ」

「え、あ、いや、えっと…」

「何者かと訊いている、答えろ。さもなくば…」


 僕の耳スレスレのところを刃が通る。ベッドに剣が突き刺さった。駄目だ、ヤバイ。やばいヤバいヤバイやバイヤヴァイヤバイヤバイバイバイバイバイバイヤバイ!死ぬって、本当に!

 ジャケットの中からは、もう二本剣が出てきた。剣何本入ってんだよ、アンタのジャケットの中ぁ!


「さあ、答えろ、今すぐに。貴様は一体何者だ!」


 どう答えろっつーの?「僕、異世界から来ましたー」って言っても信じねーだろ。て言うか、そっちこそ何者なんだよ。


「ちょっと、何しているの⁉」


 また新キャラかよ、しかもまた女性ですか。

 腰の辺りまで伸びた金髪が風に靡いている。髪長えー。フリフリのワンピースを着ている。如何にも女の子らしい見た目だ。身長は少し低い程度。


「あ、お嬢。如何なさいましたか?」

「剣をしまいなさい。全く、何しているのよ」

「不審者をこのままこの屋敷に入れている訳にはいかないでしょう?責めて、彼が何者なのかを吐かせようかと思いまして」

「だからって別に脅す必要は無いでしょ⁉」


 うん、その通り。確かに脅す必要は無いよな。と言うか、脅されたくない。怖いもん。

 お嬢だの屋敷だの、マジで大金持ちの家みたいだな。


「おいおい、なーに言い争ってんだよ」


 さっきの茶髪が現れた!

 まさか、この屋敷って女性しかいないのか?

 …流石にそれは無いか。


「ったくよぉ、客人の目の前でギャーギャー言ってんじゃねーよ」

「あ」

「あ」


 いや、「あ」じゃねーよ。何だよその「忘れてたー」とでも言いたげな反応は。まあ、殺されるよりはマシか。


「見つかんねーなぁと思ってたら…お前ら、仲良いのか悪ぃのかハッキリしろよ。大丈夫か、少年」

「はい、大丈夫、です」

「敬語はよせよ、接し難いだろ」


 ギリギリだけど、大丈夫だし。殺されかけたけれど。まあいいか。


「先程の無礼、申し訳無かった」

「わたくしも、申し訳ありませんでした」


 二人が僕に謝った。ぺこりと。

 礼儀正しいな、こいつら。


「御取込中の所、失礼いたします」


 またしても新キャラの登場、しかもまた女性ですか。こうもポンポンと新キャラが出てくると、何かと面倒だな。

 メイド姿で左目にはモノクルを付けている。黒髪のサイドテール。冷たい印象だ。


「皆様、お食事の準備が完了致しました。ダイニングにお集まり下さい」

「ういー、んじゃ行くか」

「お嬢、行きましょう」

「そうね」


 三人が部屋から出ていった。取り残されて仕舞った。

 あー、何か食べたい…


「お客様も御一緒に如何でしょうか、準備致しますので」

「はい、お願いしますぅぅぅ…」


 流石に我慢の限界だった。

 いや流石に餓死とまではいかないけれど。


「御案内致します、どうぞこちらへ」


 部屋を出ると、長い廊下があった。何メートル位なのだろうか。

 流石、屋敷と言う程はあるな。

 幾つもの部屋がある。綺麗に掃除が行き届いているようだ。


「…」

「…」


 無言のまま、僕達は廊下を歩いていた。

 長い廊下の突き当りに、大きな扉があった。


「こちらがダイニングになります」


 モノクルメイドが両手でドアノブを引いた。

 目の前に広がるダイニングらしからぬ風景。

 ダイニングと言うにはあまりにも広すぎた。

 絢爛豪華、風光明媚。何もかもがキラキラしている。

 家具の一つ一つに装飾が施されていた。ザ・貴族といった感じ。

 僕の場違い感が半端ない…


 長テーブルが一つ、椅子が11脚。

 長テーブルには料理が並んでいる。良く分からないものもある。

 まあ異世界なんだし当然っちゃ当然なんだけれど。

 椅子は11脚のうちの6脚がうまっている。さっき部屋に来た3人と、見たことのない人が3人。その3人は男だった。


「おー、やっと来たか、遅ぇぞ少年。早く喰おうぜ、こちとら腹減って仕方無ぇんだよ。ほら、早くこっち来いよ」


 ゲリラお姉さん、もとい腹ぺこお姉さんが僕を急かしてきた。

 僕は言われた通り、彼女の隣に座った。


「んじゃぁ、食いますか」






 食事を終えた後で僕は、僕やモノクルメイド含め総勢8名は、部屋に戻らずダイニングに残っていた。


「んで?」


 話を切り出したのは腹ぺこお姉さんもとい満腹お姉さんだった。

 …流石に面倒臭いな。呼称を固定しよう。

 話を切り出したのは茶髪のお姉さんだった。


「んでよぉ少年。別に脅しゃぁしねぇけどよぉ、お前さんが一体何者なのかってのは気になる訳よ」

「…まあ、ぼくは気にならないけれど…」


 僕の事が気にならない人間が一人。一番小さい男の子、推定年齢十五歳。特に変わった見た目では無い、と言うか普通な感じ。椅子に座りながら何かを作っている。どうやらカラクリの類いのようけれど。


「…気にならないっていうか、正直どうでも良い…貴方のことを知らなくても、別にぼくは生きていける訳だし」

「初対面の人に対して、相変わらず酷い言いようだなあ。でも、どうでも良いは流石に酷くないかい?ちょっと位は興味持とう?ね?」

「…分かったよ…」

「うん、よろしい」


 二人目の男。イケメン。多分女子が憧れる理想の彼氏はこんな奴なんだろうな。イケメンで長身でしっかりしていて…。止めよう、何だか段々悲しくなってくる。正直、羨ましい。まあ別段、女子にモテたいという願望がある訳でもないのだけれど。


「ケッケッケ、俺はコイツのこと、結構気になっけどなァ。オイオイ姐御、面白そうな奴連れてきたじゃねェか、ケケッ」

「コイツはこれでも客人なんだ、客人の前で姐御って呼ぶんじゃねぇよ」


 三人目の男は、何というか、不気味だった。ボサボサに伸びた黒髪、目の下の隈、服の襟は伸びきっている。…何かさっきからずっとニヤニヤしている。


「客人ねェ。ケッケッケッ、オメェ等さっきからコイツのこと『客人』だの『お客様』だの呼んでッけどよォ、俺様たちゃァコイツのことを助けた側なんだぜ?いちいちそんなに畏まんなくて良いだろォよ」


 ん?助けた?助けたってどういう事なんだろうか。


「確かにそうだが、初対面の相手に対してはある程度の礼儀と言うものがあるだろう?まあ、かく言う私も、先程、『貴様』などと言って仕舞ったから、そう責めることは出来ないがな」

「本当よ、彼のことを剣で脅したりして。もう、あんな事したらめっだからね?分かった?」

「お嬢…は、はい、申し訳ありません」


『めっ』て…。子供かよ。


「私としちゃぁ、コイツをこのまま此処に住まわせるってのもアリだとは思うんだけどよぉ、そうなると、身元位は分かっといた方が良いだろ」

「此処に住まわせるって、流石に急過ぎないかい?それに、そんなことを勝手に決めたらマズいんじゃ…」

「もしもコイツに行き場が無ぇんだったらそれもアリかなっつー話だよ。それに私達は食糧や金に困ってる訳じゃぁねぇだろ?寧ろコイツの分を含めりゃ丁度良い位なんじゃねぇのか?なぁメイドさん、そこんとこ、どうなってんだ?」

「確かに食糧的にも金銭的にも余裕は有りますし、部屋も余っている訳ですので、一人どころか二三人増えても大丈夫かと。それに、『規則』に反しない限りは基本的に自由にして構わないと、御主人様からは仰せ使っておりますので」


 規則?御主人様?訳が分からん。

 まあ、普通の家じゃあ無いことは確かだが。


「だそうだが、誰か異論はあるか?」

「良いんじゃねェか?」

「…どうでもいいや」

「わたくしは賛成です」

「お嬢が言うなら、私も」

「じゃあ仕方無いね」


 …何か、僕が此処に住むことになった、らしい。

 実際、行く宛も無かったから、これで良かったような気がするが。何はともあれ、衣食住は何とかなりそうだ。


「ありがとうございます、僕も少し困っていたところなので、助かります」

「だーかーら、敬語、やめろっつってんだろぉよ」

「あ、うん。分かった」

「分かりゃぁ良いんだ、分かりゃぁ」


 妙に馴れ馴れしい茶髪のお姉さん、何故か剣を沢山持っているポニテ、少し子供っぽいところのあるお嬢、僕に全く興味の無い少年、王子様的キャラの好青年、何だかとても不気味な奴、片眼鏡をかけた屋敷のメイド。

 全体的にキャラが濃い気がするのは置いといて。

 何故だが不思議と。


「皆、よろしく」


 何故だが不思議と、此処でなら上手くやっていけるような、そんな気がした。

書いていて思ったことを言わせて頂くとですね…


女の子キャラ視点の方がやりやすい!


まあ、仕方無いんですが…

取り敢えずはこのまま男主人公でいきますがね


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