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戦争の見通し

 ホルスへ向かう予定の戦力が、ムスペルヘイム中央、首都フェンサリルのある方面へ向けて進軍を開始した。

その指揮を執るのは皇帝アルフレート本人だ。

最初の戦闘は旧アルフヘイム領で行われることだろう。


 ホルスでの好戦的な姿勢などを見る限り、国内奥深くに引き込んで補給線に負担をかけてくるような戦略は採らないだろう。

旧アルフヘイム領で大規模な戦闘になる。

アルフレートはそのように踏んだ。


 ムスペルヘイムでは宣戦布告を受けた頃、動員をかけた上で作戦会議がおこなわれていた。

会議に居並ぶ面々は若手の将軍が多くを占めている。

ヘルツォークといった、革命前からアルトゥールが目を掛けていた人の他に、革命直後の旧イルダーナ領でアルトゥールに加勢したリリエンタール、ケーヴェス両将軍のような人もいる。

彼らもまた若手の将校であり、アルトゥールに注目されている。


「不逞なニブルヘイム帝国が我が国に卑しくも宣戦を布告した。そこで侵攻してくる敵に対してどのような作戦を立てるべきか、忌憚なく述べてもらいたい」

「首都前面での主力決戦はいかがですか?」

挙手してアルトゥールが述べた。

「革命から間もない我が国が、そこまで敵を深入りさせることに世論が許容できるでしょうか」

挙手することなくリリエンタールが言う。

そしてさらに話を続ける。

「純軍事的な視点だけでは戦争はできないのです。戦力を速やかに集め、旧アルフヘイム領を戦場とすべきでしょう」

「十分な戦力が集まる頃には、アルフヘイムを突破しているだろう」

ケーヴェスが反論した。


 アルトゥールは彼らの議論をしばらく聞いたのち、ようやく口を開いた。

「ケーヴェス将軍、現有戦力でもってアルフヘイムで交戦するとして、しばらく持ちこたえることはできるか?」

「時間稼ぎならできます。戦果のほどはなんとも言えません」

「それで構わない。リリエンタール将軍とアルフヘイムで交戦しつつ後退せよ。その間に首都に戦力を集め決戦に望む。旧イルダーナでは山岳地帯で敵を牽制しろ。こちらは攻勢の必要はない。ホルス方面はエゲリアにいる戦力をレンツ将軍の増援とし、進軍して敵国の後方を脅かす。主戦場は首都近郊になる。アルトゥール將軍に決戦を託そう」

「必ずや勝利を届けます!」

アルトゥールは力強くそれに応じた。


******


 アルフレートと作戦に参加したマックス・ベーレントの艦隊は、旧アルフヘイムの都市ラウムに布陣した。

近辺にムスペルヘイムの大軍が展開しており、彼は開戦初の大規模な戦闘を覚悟した。

「敵の布陣について教えてくれ」

アルフレートは傍らのアイラ・アロネンに尋ねた。


 今回の遠征に参加できたことを、彼女は嬉しく思っている。

トゥオネラ人のクーデターがあっても、処断することはなかった。

しかも今回は参謀として彼の傍らにいる。

なんとしても恩に報いたい。

そう彼女は心の中で決意した。


「我が軍より敵は少数です。前方の高地を中心に地上軍は円陣を、艦隊は三重の横列陣を敷いています。地上軍は対空砲を前面に集中しており、高地の反対側に野戦砲を多数配備しているものと推測されます」

敵に露出した場所に野戦砲を設置した場合、狙いやすく攻撃しやすいが、それは相手も同じなので、破壊されるリスクが高い。

そこで砲撃を受けにくい反対側にも設置することで、接近した敵に有力な反撃を加えることができる。

「円陣の後方に回り込みたいが、相手はそうすることを予測しているだろう。ともかくまず艦隊戦力を排除するべきだろう」


 目前の敵を睨んで作戦を立てつつ、自分の見立てが違ったのを痛感している。

ニブルヘイムは好戦的な行動をしているので、国境にすぐ戦力を用意できるかと思っていたがそうではなかった。

対峙する戦力はこちらより少ないだけで、大軍といえる数を揃えている。

上手くいけば主力との決戦前に、痛打を与えられる。


 アルフレートは艦隊に攻撃命令を下した。

赤い光線が空で交えられた。

両軍の艦載機が乱舞する。

数で勝るニブルヘイム軍が押し始める。


 劣勢の中、難しい戦闘指揮を余儀なくされているのが、ケーヴェスであった。

彼と指揮下に入ったリリエンタールは今回の戦闘が艦隊指揮官としての初陣である。

「第1陣は左右に展開して翼包囲を試みろ。第2陣は正面に出て敵を拘束しろ。第3陣は翼包囲が成功したときに退路を遮断できるようにしておけ」

数で劣る側の包囲など、そう簡単に成功することはないと、心の中で自嘲した。

こちらの包囲の意図を感じて後退さえすればいい。


「包囲行動が早すぎる。敵を高地の陣地に誘い込んで、地上と空から総攻撃をかけるべきではないのか?」

リリエンタールがモニター越しに作戦に疑義を呈した。

「こっちは時間を稼げさえすればいいんだ。少しずつ後ろに下がればいい」

「それまで戦力が持つのか? 消耗戦を挑まれればジリ貧になるのは明白だ」

「その通りだが、ここで我らをすぐに撃破して、各個撃破の形を取りたいだろうさ」

各個撃破は速さが重要になる。

ここで長く戦えば戦うほど、ニブルヘイムの作戦が崩れていくということだ。

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