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王たる自負

「予は自らの意思によって判断を下してきた。それを傀儡だと申すか! 身の程を弁えろ!」

「えっ……」

予想だにしない発言に、ラッシはたじろいだ。


「ならばなぜぽっと出の大ルーン主義などというものに振り回され続けるのですか! あれは講和会議を有利にするための方便ではなかったのですか! 方便に引きずられて戦争の道をひた走ることはないのです!」

「ルーン帝国はもとは統一国家だった。その過程の思想に過ぎない」

「大陸統一を志向するというのですか!」

アルフレートは頷いた。


 イレーネとの会話を思い出した。

ヒルデブラントはアルフレートを傀儡にするために、トゥオネラ人との分断を図るため、クーデターの存在をイレーネを介して示唆させた。

真に傀儡を目論んでいるのは、ヒルデブラントだけじゃなかった。

忠義の名において事を起こしたラッシもそうではないか。


 誰も信用できず、誰もアルフレートの真意を理解しない。

「予はひとえに大陸を平和にしたいだけだ」

もう二度と祖国を追われるようなことが起きないように。

イレーネに苦難を味合わせたくなどない。


 ラッシは忠義を誓った赤心に基づいて行動した。

それを真っ向から否定された。

何かが壊れる音がする。

忠誠とは、社稷とは何か。

股肱でいるとはどういうことか。


「どういたしましょうか」

戦車から配下の兵士がラッシに指示を仰ぐ。

ここまで乗ってきたサイドカーに戻るべきか、それとも戦車か。

自分の社稷の道を否定された以上、もはや逆賊でしかないのはわかりきっている。


「撤退!」

ラッシはサイドカーに乗り込み指示を出した。

「撃て」

アルフレートは静かに命じた。

サイドカーは消えた。

鉄くずがただ燃えているだけ。

ラッシの指示を受けていた戦車はエンジンを停止して降伏した。


 その頃もう一人の首謀者ヒルヴィは、ラッシが放送していた放送局に陣取っている。

「トゥオネラ警備艦隊の首尾は?」

今回のクーデターは、帝都エーリューズニルだけでなく、旧トゥオネラ王国の首都ポポヨラでも蜂起が計画された。

トゥオネラ軍だった者たちで構成されたトゥオネラ警備艦隊が蜂起する手筈である。


「ポポヨラの掌握に成功したそうです」

「あとはブルーメンタールの確保と、陛下の保護か。どちらも計画通りにいかないものだな。ところでアハティラはどこへ行った? 連絡は取れるか?」

「いえ、音信不通です」

ヒルヴィは思わず舌打ちした。

計画を立案したのはラッシだ。

肝心の立案者本人が、連絡も取れずにどこかへ出かけるとはどういう了見か。


 連絡が取れず当初の作戦計画も頓挫しつつある。

ならば自分の判断で動くのが最善だろう。

そもそもラッシよりヒルヴィの方が階級が上だ。

ヒルヴィが自分の判断で行動して、誰が咎めることができようか。

ラッシがいないのが悪いのだ。


「要所の守備部隊以外は宮殿の包囲に向かわせろ。もはや強硬策しかない。俺も出撃する」

ここは勝負所と踏んで、ヒルヴィ自ら出撃することにした。


 ヒルヴィ率いる機甲師団が、迅速に宮殿の出入り口を封鎖した。

宮殿にいる少数の首都駐留軍に、歴戦の機甲師団と戦える戦力はない。

包囲してブルーメンタールを圧力によって引きずり出そうというわけである。

中にいるブルーメンタールの命運は天に委ねられた。


******


 アルフレートもまた宮殿を目指していた。

主力が宮殿を囲んでいると知っては、うかうかしていられない。

3輌の戦車が現場に急行する。


 マックス・ベーレントの艦隊にも援軍に来るよう指示を出したが、自らの力のみで鎮圧を望んでいる。

これを機にこの帝国に君臨するのは他でもない、アルフレートであることを誇示しなければいけない。

臣下の誰かの言いなりではない、自らが考え、自らが決定する。

それこそが上に立つ者であり、イレーネが望む世界へと至る手段。


「陛下、賊軍が見えてきました」

戦車兵の報告を受けると、手元の拡声器を手に取り、体を車外に出した。

「予はニブルヘイム帝国皇帝アルフレートだ! 帝国の旗に忠義を誓った者ならば話を聞け!」

空気が凛と張り詰める。

「此度の行動は帝国に対する明らかな叛逆行為だ。もしも帝国軍人としての誇りがあるのなら、速やかに原隊に復帰せよ。さもなくば予自ら鉄と血の裁きを下す!」


 アルフレートの発言を受けて、ヒルヴィは恐怖した。

佞臣を討つはずが自分たちが叛逆者に成り下がったではないか。

しかし宮殿にアルフレートがいないのはわかった。

ならば包囲軍を突入させてブルーメンタールを討ち取ることもできる。

ただし事後の処刑は免れない。


 それとも反乱軍が占拠したポポヨラに退却すべきか。

エーリューズニルとポポヨラの距離は離れているため、それは無理だ。

ならば突入するしかない。

自分のたまと引き換えに目的成就が叶うなら、何を恐れることがあろうか。

ヒルヴィは腹をくくった。

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