精霊使いの冒険者(見習い)は何を思う。
1話 - 精霊使いの冒険者見習い
「はい!これ今回の分ですっ」
傷が付かないようにカウンターの上に置かれたのは森狼の牙と皮。5頭分。
カウンターの向かい側にいる小さな女の子がすごい?ほめていいよ?といった顔でこちらを見ている。
「ノエルちゃん、まだ8歳よね。その年で森狼ですか。。。」
「"もう"8歳なの!」
どう見ても冒険者と思えないワンピースのような服装に背負うタイプの小さな鞄。
あとは最近流行っているメガネをかけ、髪は綺麗な焦げ茶髪でポニーテール。
礼儀もしっかりしているし、読み書きも出来る。
どこかの貴族令嬢とかって言われてもおかしくはない容姿。
そんな子が腰に手をあてて怒った風のしぐさをしても、可愛さのほうが勝っているため全然怖くない。
このノエルちゃんは2年前にここ、アルファミラの街に学校に通うために来たらしい。
しばらく学校に大人しく通っていたんだけど、街の外に出ようといった授業で街の外に出て、比較的安全な平原で外での危険性や注意の仕方などを教わっていたときに、ゴブリンの群れに襲われたらしい。
突然現れたため、大人達があたふたしてるところを、ノエルちゃんが一人でさらっと退治しちゃってから自信をもったらしく、たまに学校に内緒でこうやってギルドに素材を買い取ってもらうために持ってくる。
年齢が若すぎるからギルドへの登録は出来ないし、させませんけどね。
このノエルちゃんはギルドにくるといつも私の所に来る。
えぇ、きっと他の二人のところは長蛇の列が出来ているのにここだけは空いているからだってのはわかってる。
それでも私の所に来てくれるこの子を可愛がるのはギルド内での私の唯一の癒し。
「森狼の皮5枚と牙が10本。程度は中。買い取り額は銀貨1枚になります。いい?」
「はい!」
カウンターから取り出した銀貨を受け取って受取書にサインをすると、にひーと笑い、「ありがとうございます!」と言うと酒場エリアで飲んでいる冒険者達の間を抜けて外に出て行った。
酒場エリアで飲んでいる冒険者共はその姿を微笑ましく見ている。
一部ハァハァと息を荒くしている変態もいるけどあまりあからさまになったら粛清しましょう。
「リオナ、嬢ちゃんの今日の獲物はなんだったんだ?」
エールが入ったジョッキをもったままカウンターの傍まで来て声をかけてきたのは、つい最近Aランクに昇格したボナンさん。
カウンターの上に置かれたものを見て私の返答を待っている。
「森狼ですって。それも5頭。」
「はー。森狼か。あれってたしか群れだとCランクだろ?」
「はい。8歳の女の子がソロで狩れるようなものではないはずなんですけどね。」
魔物レベルCランク。
Cランクの冒険者がパーティ1つでかろうじて勝てるという強さ。
それをソロで。
さっき見た感じ、洋服に返り血もついていないように見えた。
受け取った森狼の皮を手に取り思う。
傷がないこの皮。。。どうやって仕留めているんでしょうね?
「さすが二面剣鬼の娘だな。行く末が恐ろしい。」
「へぇ。有名な方じゃないですか。。。って!カムイさんの娘さんなの!?」
衝撃の事実が発覚し口をあんぐりとあけてしまう。
比較的大きな声で叫んでしまったため、周りの冒険者達がなにごとかと私を見る。
やめて、みないで。。。
「なんだ、知らなかったのか?」
「むしろボナンさんが何で知っているのかが不思議ですよ。」
「普通に嬢ちゃんが教えてくれたぞ?」
「わたし、教えてもらってないのに。」
「ははは。まぁ落ち込むなや。このままだとそのうち舞姫の息子とかも出てきそうだな。」
カムイさんの娘さんなら。。。まぁ理不尽な強さでもわかる気がしますっ。
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「おじちゃん!出来てるっ?」
店番のモネと展示してある武器を磨いたり、配置を変えたりしていると、小さな子が元気よく扉を開けて入ってきた。
最近、魔法の補助用の杖が欲しいと注文をしてきた嬢ちゃんだ。
付与効果はすごいものはいらない。見栄えをとにかく"かっこよく"して欲しい。といった変な注文だった。
「おう。要望どおり、付与効果は魔力回復促進(中)と魔力消費軽減(小)だけだ。だが本当にこれでいいのか?」
カウンターの奥から取り出した杖は、魔法銀と黒鉄の混合。ミスリルと黒鉄の風味がいい感じで混ざり合って黒光りしている。
身長と同じくらいの1mほどの長さで、先端から1/3くらいのちょうど握るくらいの場所に魔法文字を掘り込んだコブシほどの長さの大きな水晶がはめ込んでそれを網状にした杖の部分で包んでいる。
そして上に来る先端にはなんの効果もない赤、青、緑、茶の4色の長めの房をつけている。
これはこの嬢ちゃんが付けて欲しいと要望を出し、持参したものだ。
杖の先端は両方とも丸く加工をして、石突きのような形状にしてある。
これなら周りを怪我させることもないだろうしな。
「うんっ、完璧っ。さすがおじちゃん!」
新しく自分のものになるであろう杖を受け取ると、むふーと鼻息を荒くして興奮している。
店の中の比較的広いスペースで杖をかざしたり構えを取ったりとしているが、この嬢ちゃんは本格的な訓練は受けてないようだな。
そのうち杖がすっぽ抜けそうだ。
「嬢ちゃん、手直しとかは大丈夫か?」
「はいっ。ありがとうっ!金貨一枚でしたよねっ」
鞄の中から1枚ずつ数えながら出してきたのは銀貨20枚。
換算すると金貨1枚になる。
「頑張って貯めたの!これで合ってるよね?」
最初は貴族かなにかが見栄のために作るもんで金貨をぽんと出すものだと思っていたが全然違った。
銀貨を貯めるのですらこの年ではきついだろうに、それを20枚も。
頑張ったんだのう。
「おうおう。ちょうどだな。じゃあそれは嬢ちゃんのものだ。」
「嬢ちゃんじゃなくてノエルです!」
ノエルと自己紹介した嬢ちゃんがいい笑顔で杖を脇に抱える。
「手で握る場所はその水晶のところ。そこを触れていると魔力回復促進の効果が発生する。杖の真ん中に水晶を埋め込んであるから打撃なんかをしたらすぐ折れるから注意しろよ。あとは。。。」
杖の注意点を思い出しながら説明しようとすると、「大丈夫です!」といって店から飛び出していってしまった。
説明がまだ終わってなかったんだがなぁ。。。
まぁ試したくてうずうずしてたのかもしれんな。
わからないことがあったらまた来るだろう。
「親方、顔が、スケベ」
「なにがだ」
「可愛い、女の子と、もっと話して、いたかったと、顔に書いてある。」
「そんなことはない。」
あくまで孫を愛でるように接しているだけだ。失礼な。
けしてこの年で『おじちゃん』と小さな子に言われて喜んでいるわけじゃないぞ。
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「ただいまー!」
ノエルちゃんが帰宅したようですね。
いつものことだけど元気がいいことです。
玄関が開いたあと、しばらくして部屋の扉が開き、私のところにニコニコしながら来る。
後ろに杖っぽいものを隠しているようだけど全然隠れてないからね?
「ねぇねぇ、ミーナ先輩!」
「なぁに?その後ろに隠してる杖のことでも教えてくれるの?」
ばれてる!といわんばかりのびっくりした顔で私の顔を見るノエルちゃん。
「びっくりさせたいのなら部屋に隠してきなさいよね。。。まったくこの子は可愛いんだから。」
そう言いながらノエルちゃんの頭を撫でる。
むー。といった頬を膨らませるノエルちゃんは見てて和みます。
「はい、まずは帰ってきたなら手洗ってうがいして。そして部屋着に着替えたらいらっしゃい。」
「わかった!」
「あと、話を聞きながら課題終わらせちゃいましょう。」
「わかったよ!後で課題持ってくるね!」
パタパタと部屋から出ていく後姿を目で追いかける。
いくら寮だからといって、もう少し落ち着いて動きなさいよ。まったく。
この子犬っぽい動きはもう少し年齢を重ねれば落ち着くのかしらね?
もう2年一緒にいるけど全然変わらないのよね、この子。
最初に私の所に来たのが私が12歳のとき。そのときノエルちゃんは6歳だった。
この学校は6歳から15歳までの9年間通うことが出来る。
11歳までの子は12歳以上の人と寮で同室になり、一般常識や生活知識を学ぶ。
決まってるわけではないけど、大体5歳くらい上の子の部屋に入ることになることが多いみたい。
私も12歳になって下の子の面倒を見なくてはいけなくなったときに来たのがノエルちゃんだった。
天真爛漫だけど行儀もよく勉強も出来る。
初めて面倒を見る子としては手がかからなくて正直助かったと思う。
他の部屋の子で下の子たちに『おねえさま』と呼ばせている部屋もあるらしく、下の子たちの中で『おねえさま制度』なんて呼ばれている。
男の子達のほうではなんて呼んでるのかはしらないけどね。
あ、私はそういう趣味はないのでちゃんと先輩と呼んでもらっています。
「ミーナ先輩!持ってきましたー」
教本と提出用の紙を持って部屋に入ってくるノエルちゃんを見ると、やっぱり後ろには杖が備え付けられているのが見える。
そんなに聞いて欲しいのね。わかったわよ。
課題終わらせた後にね。
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課題は鐘一つ分くらいで終わりました。
ノエルちゃんの課題は算術で、今は引き算をやっているみたい。
うんうんと悩みながら、問題がかかれた本を3枚ほど終わらせていた。
問題を見ながら答え合わせをして、間違えているところではどこが間違っているかを考えさせて、なぜ間違えたのかを考えさせる。
大体が単純な間違いだったからすぐに気がついて直している。
私の課題も終わり、片づけをしたあと、テーブルに紅茶を用意してノエルちゃんの話を聞く用意をする。
お菓子はクッキーでいいかしらね。
「それで?その杖は新しく買ったのかしら?」
テーブルについて紅茶をふーふーとしながら飲んでいるノエルちゃんに尋ねる。
さっきからずっと身体から話さないようにしているのよね、この子。
「はい!1年貯めたお小遣いで買いました!かっこいいですよね!」
椅子に座ったまま、杖を構えている。
部屋の中で振り回すのは危ないからやめなさい。
「。。。なんで女の子でかっこいいものを求めるのかしら。」
まぁ凛々しいとか見ればいいかしらね。
「それで、ノエルちゃん。その杖は『なんのために』買ったのかしら?」
「欲しかったからです!」
「私は知っているわよ。隠さないで言ってごらんなさい」
そう、私はこの子がたまに街の外に一人で出て、魔物を狩ってきているのを知っている。
門を抜けたのを見たのは偶然だったけど、門番さんにも結構な頻度で外に出て、魔物狩りをしていることを聞いている。
ノエルちゃんはほえ?ときょとんとした顔で首をかしげているが、一応上級生として言わなきゃダメだよね。
「学園生は在学中、授業と帰省以外での街からの外出を禁じる」
ばれた!といった顔をしているノエルちゃんにさらに畳み掛ける。
「学園生は在学中、緊急時を除く授業以外での剣術、魔法の行使を禁じる」
どんどん顔が青くなっていくノエルちゃん。
でもごめんね。
「上記を破ったものは二ヶ月の学園通学を禁じる」
ノエルちゃんははふぅ。とテーブルにつっぷしてしまった。
あぁ罪悪感。
「あのね、ノエルちゃん。なんで魔物狩りとかしてるのかはわからないけど、危ないのよ?」
「はい。。。」
「なにをそんなに焦っているのかわからないけど、もっと大きくなってからじゃダメなの?」
「はい。。。」
「理由を聞かせてもらえるのかな?」
「はい。。。」
「今日の夕飯は緑袋ね」
「はい。。。っていやです!」
やっぱり聞いてなかったのね。
突っ伏してた体勢から緑袋と聞いてガバッと起き上がり、涙目になっている。
まったくもう。
「やるならちゃんとバレないようにやりなさい。門番やギルドへの口止め、簡単なものでいいから変装とか。」
「え?」
「そうね、髪の色は珍しい濃い焦げ茶だからこの幻影の髪留を使いなさい。人によって違う色に見えるはずです。」
「え?」
「あとは、さっきみたいなワンピースではなくて、ローブをかぶりなさい。あとで私が使っていたお古を渡すからそれを使うように。」
「え?」
「杖も今日ここに帰ってくるまで何人にも見られているだろうから、今後外に出るときには魔法の鞄に入れて行動しなさい。」
「え?」
「もう。見逃してあげるって言ってるのよ。」
きょとんとした顔で私を見ているけど察して欲しいわ。
うん、私も通った道です。
まぁ私の場合は魔物狩りじゃなくて、薬草集めだったけども。
街にある薬剤店に直に卸してお小遣い稼ぎしたっけなー。
街歩くときは制服だし、休日はそんなに出歩かないから私服もそんなに必要じゃないけど、いろいろな魔道具を買うのにお金が必要だったのよね。
一応将来は魔道具師目指してるわけだし!
「あの、ミーナ先輩?」
あら、物思いにふけっちゃったわね。
じゃあノエルちゃんに渡す道具の選別をしなきゃね!
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「おはよーございます!」
「はい、おはようございます。」
今日もみなさん元気ですね。
席に座っている25人の生徒の前で、いつものように教壇の前に立ち、朝会を始める。
今、目の前にいる子供達は2年目の子達。3クラスある中での真ん中のクラス。
実力的には一番上なんですけどね。
学校内では権力は関係ないとはいいつつも貴族の諸氏だけを集めたクラスを便宜上『一番上』と言っています。
そうでないと貴族である親がうるさいのですよね。
プライドばかりで実力なんか一番下もいいところなのにですよ。
この子達と比べて、なんて憎たらしいのでしょう。
ことあるごとに教師の事を『平民の癖に』という子などばかりですよ。
おっと、愚痴になってしまいましたね。
この子達もあと一ヶ月もすれば3年目になります。
着々と大人への階段を上っていくこの子達を見ていくのはとても楽しみです。
あ、私、少女を愛するものじゃないですよ。
小さな男の子も等しく可愛がります。
「さてみなさん、来週からはお待ちかねの街外学習ですよ。今回は2泊3日で平原からちょっと先に行った森の入り口まで行きます。」
おおー!といった歓声が教室から沸きあがるのを目を細めてみる。
やはりこのくらいの年の子達は素直で可愛いですのう。
「おやつは銅貨1枚まで。黄柔棒はおやつに入りません。詳しい説明は後で冊子を配りますので寮の先輩に聞いて準備をしっかりしてくださいね」
はい!と元気よく返事が返ってくる。
去年の実習では突然現れたゴブリンの群れに襲われ大変だったが、今年は護衛に冒険者を雇うことになっている。
そういえばあの時ゴブリンの対応を行った生徒はこのクラスでしたか。
そう、たしかノエルさん。
今年は彼女のお世話にならないようにしないといけませんね。
大人の面子にかけて。
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「ちゃんと用意したものは持った?雨具は?水筒は?」
「持ちました!確認も5回しました!」
「なら行ってよし!楽しんでおいでー」
片側だけのサイドテールにした焦げ茶の髪をフリフリと揺らしながら集合場所の門に向かっていくノエルちゃんの背中を見えなくなるまで見送る。
時折振り返ってこっちに手を振ってくるところがまた可愛い。
「森の入り口かぁ。懐かしいなー。来年になると森に入るのよねー。こっそり抜け出してそこで薬草集めたっけ」
もう5年も前のことなのよねぇ。
って年取った風な台詞を言うには50年早いとかローラさんに言われちゃうわね。
10歳を越えてそれぞれに適した技能を習得するための職業訓練なんかを始めるまではこうやって街の外に出られるのが楽しかったのよねぇ。
そういえばローラさんの所に最近全然顔出してないわ。
たまには顔出して薬剤店のお手伝いでもしてきましょうかね。
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「はいー、じゃあ各自揃ったかー?」
先生の間延びした声での点呼が始まり、事前に決められた班ごとに集まって各自遅れている人がいないかを確認する。
僕の班には委員長の僕の他、3人がいる。
剣術が得意で喧嘩っぱやいカルロス、おっとり系のイズーさん、そしてクラスのアイドルの元気活発なノエルさん。
ノエルさんはイズーさんと一緒に入る班を探しているようだったので声をかけたら僕を入れてくれた。
この班に入ることになってからの残り一枠の争いがすごかった。。。
ノエルさんもそうだけど、イズーさんの人気も高い。
クラスの中の1,2を争う美女が二人も入っているから競争というか、鬩ぎあいというか。醜い争いはお察しくださいといった感じだった。
結局腕力に物を言わせて勝者となったのはさっきも紹介したけど、カルロスだった。
こいつは我侭、自己中、自分勝手の三冠王。しかもどこぞの貴族の一人息子らしく態度がものすごい悪い。
学校内では家名を名乗ることを禁止されているし、権力を振りかざしたら退学という学則もあるからそういった面ではまだ救いがあるけどね。
ほんとなら貴族クラスに行くはずだったんだけど、入学式の時になにかやらかしたらしく、あっちのクラスには入れなかったと噂を聞いている。
トラブルの元にしかならないだろうから班には入れたくなかったのだが、女子二人からの「べつにいいんじゃない?」の言葉で参加が決まってしまった。
はぁ、正直出発前から気が重い。。。
「はーい、4班は全員揃ってまーす!」
僕が気落ちしているとノエルさんが変わりに先生へ点呼の結果を伝えてくれた。
いかんいかん。
「ごめんね、ありがとう。」
「いいよ!楽しくやろうね!」
本来点呼の報告なんかは班長をすることになっている僕の役割だったのでそれを行えなかったことを詫びると、ノエルさんは笑顔でいいよと言ってくれた。
やっぱり可愛いなぁ。
みんなが可愛いっていってるのもわかる。
カルロスがさっきからこっちを睨んでいるのは無視しよう。そうしよう。
そうこうしてると護衛をしてくれる冒険者さん達との打ち合わせが終わった先生から今回の遠征授業の説明が始まった。
今回は森の入り口まで行くということで、街の外に出た時点で武器の装備を許可される。
鎧などは街の中でも装備することは問題ないけど、武器は騎士か冒険者でないと街中で装備してはいけない決まりなんだそうだ。
門を出たところでそれぞれ持参した武器を用意する。
僕は布で包んでいた鉄の短剣を出してベルトを使って後ろ腰に装着する。
周りの平民階級の人達は同じような武器を持ってきている。
普通はこれくらいだよね、買えるのなんて。
それに比べてうちの班の異様さったらない。
カルロスはなんか煌びやかな両手剣。そんな重いの振り回せるのかな?
僕らと同じ8歳なのに体格はいいから多分振り回すことはできるんだろうね。
でも周りとかみなさそうだから戦闘になったら近くに寄るのはやめよう。
イズーさんは自分の身長の倍ほどある赤い長弓。
そのまま使おうとすると身長のせいで、地面に付いちゃって使えないので、横や斜めにして使うとのこと。
弦の張力は子供向けにしてあるみたいで、イズーさんでもちょっと頑張れば引ける程度にはなってるんだって。
元々はお母さんが昔使っていたものをイズーさんに合わせて調整してもらったらしい。
どうせなら長さも調整してもらえばよかったのにね。
そしてノエルさん。
棍に似た形状の黒光りした杖で先端には4色の房が付いている。
手に持つところには綺麗な水晶が埋め込まれているのを見て綺麗だ。と思ってしまった。
あれ、相当高かったんじゃないかな。。。
杖を両手で持って、周りの人にぶつからないように身体を動かして身体をほぐしている。
武器の点検をしていた周りにいる別の班の人達もそれを見て同じように身体を動かし始める。
「よーし、じゃあ準備が出来たならいくぞー。歩いていくから途中で気分が悪くなった奴は先生に言えよー。」
護衛の冒険者さんが大きな声で生徒達に声をかけてくれた。
出発ですね!
生徒が並んだ長い行列の先頭と最後尾に冒険者さんが数人配置され、3台ある馬車が列の中心に。その周りにも冒険者さんが1名ずつ付いている。
先頭の冒険者さん達は筋肉がムキムキな男の人が4人、その他に2人、ローブを着た魔法使いのような格好をしているがついている。
最後尾にいる冒険者さんたちは女性のグループのようで、全員が弓を装備している。
完全に後衛のグループなのかな。
馬車の横についている人達は二人とも短剣を2本、僕と同じ様に腰の後ろに刺し、周りを警戒している。
斥侯職なのかな。
やはり斥侯職はかっこいいよね!
僕みたいな一般人は学校を卒業しても冒険者になるかどこかの工房に弟子入りするしかないからね。
出来ることなら冒険者として活躍したい。
ただカルロスのように前衛を出来るわけでもなく、魔力も少ないから魔法をメインで使う後衛火力職もできず、弓に至っては明後日の方向に飛んでいってしまう始末。
先輩に「臆病なお前は斥侯職がちょうどいいぞ」と言われてしょぼくれていたが、その後調べてみると斥侯職のあまりの奥の深さに飲み込まれていた。
もういまでは斥侯職しか目にはいらない。
せっかく傍にお手本となる先輩がいるんだからじっくり目に焼き付けないとね!
というわけで外伝集第一弾。はじめました。
まずは5話くらいでノエルちゃんの話は終わる予定です。