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007

 扉を開くと、大理石の地面にはステンドグラスによる七色の光が反射され、高い天井は所々崩れており、そこから指す月と太陽の灯り、壁には割れた窓が幾つも並び、蔓が這っている。木の数人掛けの椅子が沢山あって、赤い絨毯が大理石に敷かれ、大きな銀で出来た十字架には見覚えのない人物がかけられていた。青と白に金箔が散りばめられた高級そうだけれど欠けてしまった壺は祭壇の前で線対称になるよう配置され、美しい百合の花が生けられる。瑠璃や紺を基調とした室内は幻想的で京は思わず感嘆してしまった。

 自分等が出てきた扉は祭壇から見て通路の右側み有り、前には入り口と思われる一番立派な装飾が施された扉、左はまた別の扉、祭壇の奥、つまり後ろ、十字架の下には三つの白い扉がある。

 他の扉と比べれば地味な只の白い戸。

「此処って教会?」

「いいや俺らの家だよ。皆今は寝てるんだ。何せ一時だからな」

「夜の?」

「そうだよ、当たり前じゃねーか、空見ろ、夜だろ」

「ああ、そっか・・・って待って!此処が家!?あり得ないよ!こんな豪華な家!」

喚く京を放って頌は白い戸の右側を開けた。中は円柱になっていて、まず目の前に木戸があるが、それは無視して石造りの螺旋階段を上っていく。すると踊り場があり、2つ目の木戸があったが、それも無視して、やっと三つ目の踊り場にある木戸の前で立ち止まると、錆びた金の取手に手を翳し戸を開けた。

「俺の部屋」

キィイという軋む音と共に開く戸の先には変な光景があった。

「片付けた方が良いね」

「なっ、何だと、ふあぁあ・・・あー眠い」

部屋に着くなり眠いと言い出しがらくたの山を掻き分け、遠くの窓辺へ行く頌。金色の星がぶら下がっていたり赤いカーテンが垂れ幕みたいになっていたり、ベッドの枕からは残念なことに羽毛が飛び出し、床にはマジックハンドやらクッションやらが転がって纏まりのない空間だ。

 どうすれば良いのか分からず木戸の前で突っ立ったままの京に

「ベッドがあるだろ。お前は其処で寝ろ。枕は反対にして使えば何とかなるし、布団はビードロの下に埋まってる、あ、あと本棚の上の箱から毛布はみ出てるだろ、取って」

と頌は投げやりに言った。

 京は辺りを見渡し本棚を見つけて宝箱の様な箱から出る、糸が解れてボロボロの真っ赤な毛布を見つけ、近くに積まれた本の上で爪先立ちをし、力の限り引っ張った。

「うわああっ」

しかし、そのまま後ろに倒れ込む。一緒にガラガラと箱に入っていた物も落ちてきて毛布を被った京に容赦なく落ちてくる。

「ぎゃっ!うあっ、いたっ、いってぇっ」

足と手を無茶苦茶に動かし漸く起き上がると目の前で本棚がグラグラと揺れていた。中の本も小刻みに揺れている。

 京は青ざめて本棚を押さえたが、かなり重い。彼女の細腕では支え切れない重さだった。すると窓辺で眠りかけていた頌が京の「うっぎいぃ」という呻き声を聞き、目を覚まして走って来た。

「ったく何してんだよぉ・・・」

 そして頌も一緒に本棚を押し、やっと元の位置に戻った。難を逃れた京は一息吐くと目を擦って大欠伸をする彼に毛布を渡した。

「はい、ねぇ片付けたほうが絶対に良いって」

「あー?了解了解・・・そう、だ。明日に色々説明するから、今日はさっさと寝な」

適当に返事をした頌は毛布を取って窓辺で目を閉じた。寒くないのだろうか、首を傾げながらも今度は床に落ちたビードロ探しを始める。

「そう言えば此処に来ちゃった理由とか考えるのも忘れてた」

忙しすぎて走ってばかりだったので全くもって頭に無かった。やっとのことで布団を見つけてベッドまで引き摺ると枕を反対にして羽毛の出てない面に頭を乗っける。

「はぁあーぁぁあ・・・疲れた」

こうして彼女もやっと眠りにつくのだった。

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