001
太陽の日差しが強8月。夏休み真っ只中で、町では子供たちが屯して遊んでいる。
男の子も女の子も涼しい格好をして虫取網などを持ち、山の中へと消えていく。日焼けはお構い無しなのだろう、ここの子供は。
同じく子供の京は他人行儀にそう思った。
彼女は今年の春に引っ越してきた小学五年生だ。親の仕事の都合で田舎に住むことになり、既に4ヶ月経つ。しかし、未だクラスの人には慣れていなかった。
わざわざ家の外の段々畑に上ってアイスをとろとろ舐める京は羨ましそうに走って行くクラスメイトの背中を憂鬱そうに見送って溜め息を吐く。思い出すのは引っ越しを言い渡された時の晩。
学校から帰って家族三人揃って夕食を食べていると、父が重々しく口を開く。
『8月にお父さん達の仕事の都合で引っ越すぞ。』
『・・・え』
あまりにも衝撃的で持っていた箸を落としてしてしまった。
『それって今の学校はどうするの?』
『とても通えない距離だから違う学校に転校する。夏休み前が最後だから、友達に言うなら言っておきな。』
『言っておきなって・・・。そんなぁ。』
親は簡単に言うけれど、折角つくって仲良くなった友達たちと離れるのは子供の京にとっては随分辛く、悲しいものだった。
そして今はこんな風に一人で惨めにアイスを食べねばならない。
俯き、ぼうっと回想に更けていると突然、ガツンと頭に衝撃がはしった。
「いたっ」
後頭部らへんにものが当たったらしく手探りで自分の後ろを、何があたったんだろうと探すと、小さな石が取れた。
目の前に持っていって見てみると、眼前から
「ヤーイヤーイ!一人ぼっちー!!なのおど、銀行員のんだりの!おおやげぇ!!」
「おーおやげ!!おーおやげ!!」
坊主の少年二人が現れ、からかうと気がすんだのか笑いながら去って行った。
「五月蝿いなぁ!!」
つい京もイラついて投げられた石を投げ返すが、石は少年らには届かずに土の道に落ちてしまった。
再び一人になり、カッとなって立ち上がったのが虚しくなる。
そのままずっと同じ場所に座っているのも、尻が痛くなるので京は立ち上がった体勢から歩き出した。脚が重いけれど、一度立ったのに座り直すのも面倒くさい。
麦わら帽子を深く被り、アイス片手に猫背で歩く。
「あっつい」