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五人組で勝負!

 彼ら五人は、根っからの悪人ではなかったが、生活に行き詰まっていた。

 そのため、こんな計画に乗ってしまったのだ。



 彼らのリーダーの名は夏目正義。三十歳。正義と書いて、マサヨシと読む。

 名は体を表すと言うが、彼には全く当てはまらなかった。

 なぜなら彼は、世間的には無職のチンピラだったから。

 いい年齢してチンピラ……実に悲しい話である。

 と言うより、もっとはっきり言ってしまえば、ただのニートである。客観的な評価から言えば。

 しかし、彼はただのニートでくすぶっているつもりはなかった。

 彼はひそかに、身の毛もよだつ、恐ろしい計画をたてていた。

 その計画とは……。

 金持ちの娘を誘拐・監禁した後、身代金をいただこうという、凄く悪く、また危ない計画である。

 わかっていると思うが、悪いのは正義の頭で危ないのは正義の行く末である。こんな計画を聞かされたら身の毛もよだってしまうのも当然だ。



 こんな計画に乗ってしまったのが宮沢元気。二十五歳。元気と書いて、モトキと読む。

 この男も、名と体が一致していなかった。顔は青白く、体はガリガリ。全体から、不健康と無関心のオーラを漂わせている。おまけに、覚醒剤や大麻などもたしなむ薬好きの文学青年くずれである。

 この男は、とにかくやる気がなかった。大学も、卒業だけはしたものの、その後は何もせずにぶらぶら。金がなくなると、正義の仕事を手伝ったりして、何とか食いつないでいた。

 一応、このメンバーの知恵と知識担当……のはずなのだが、あまりのやる気のなさゆえか、意見を言ったことがなかった。

 そのため、正義から身代金目的の誘拐計画を聞いた時も、

「お前らがやるってんならやるよ」

 とだけ言った。

 彼はたぶん、

「ねえ、みんなで自殺しようか?」

 と言われても、同じ答えを返したのではないだろうか。



 メンバーの肉体派が北原勝利、二十歳である。こいつも勝利と書いてカツトシと読むパターンである。

 メンバー随一の肉体派だけあって、勝利はデカイ男だった。身長百八十五センチ、体重百十キロという体格を誇る。ちなみに体脂肪は二十%だと、本人は言っている。趣味、特技は格闘技とウェイトトレーニングで、頭にきたら総理大臣でもブン殴る、典型的な筋肉バカである。

 正義とは幼い頃からの付き合いで、小さかった勝利は正義を兄のように慕い、後を付いて歩き、よく遊んでもらっていた。そのせいか、成長してからも、未だに正義の言うことはちゃんと聞く。

 正義に誘拐計画をもちかけられた時も、

「いいじゃんいいじゃん、やろうやろう。で、オレは何する?フロントチョークで絞め落とすか?それとも右ストレート一発でKOするか?」

 そう言って立ち上がり、シャドーボクシングを始めた。

 家族連れとカップルの多いファミレスの店内で。

 巨体に似合わぬ、キレのある動きで、ジャブ、ストレート、フック、バックステップからのストレート……をファミレスの店内で披露する勝利。

 氷のように冷たい視線が、何ちゃら流星拳のような凄まじい勢いで正義と勝利を襲う。

 正義は恥ずかしさのあまり、

「てめえら!見せモンじゃねえぞゴラァ!」

 とわめき、勝利を連れて逃走した。

 食い逃げをしていたことに気付いたのは、しばらくたってからだった。



 メンバーのお色気部門を担当(正義が勝手に言っているだけだが)しているのが水原勇気。読み方は普通にユウキである。

 お色気担当のはずだったが、彼女に色気など、欠片もなかった。さらに、度胸もなかった。

 彼女は、ただの引きこもりだったからだ。

 正義の幼馴染み……なのだが、中学時代に女生徒たちからのいじめに遭い、学校に行かなくなってしまったのだ。

 以来、三十歳の今になるまで、ずっと引きこもりを続けている。

 正義のやっている、怪しげな仕事を手伝ったこともない。正義とは真逆のタイプのはずなのだが……。

 無職のチンピラではあるが、妙に面倒見のいい正義は、生活保護を支給され、一人暮らしをしている彼女の部屋に、足しげく通っている。

 放っておくと、掃除もしないわ食事もとらないわ、というダメ女な上、外に出たがらない。正義が無理やり外に連れ出すと、ニット帽にサングラス、マスクという、銀行強盗も真っ青な怪しい格好で、正義の後ろにピッタリくっついて歩くのだ。

 お陰で、表に連れ出すたびに警官から職務質問を受ける。

 だが正義は、そんなことはおかまいなしに、週に一度は勇気を連れ、外を出歩く。

 そんな正義の誘拐計画を聞かされ、

「え……ちょっと、そういうのは……」

 と、言葉につまり、最後の方は聞き取れなかった。

 常人なら、彼女をメンバーに加えるのは諦めるだろう。

 だが、正義はこの解答をYESと解釈した。



 もう一人のお色気担当が(これも正義が勝手に言っているだけだが)中島愛。これも普通にアイと読む、十六歳の家出娘である。

 神出鬼没で、普段はどこで何をしているのかわからない。しかし、宿無しであることは間違いなく、勇気の家にちょいちょい泊まりに来る。それどころか、正義や元気の家にも泊まりに来る。

 だが、勝利の家にだけは行かない。なぜか聞いたところ、

「あいつ筋肉つき過ぎで暑苦しいんだけど」

 と答えが返ってきた。

 ちなみに、正義や元気と肉体関係はない。


 普段は何かしらのバイトなどをしているはずだが、なにせ身分証明書が不要のバイトしかできない。家出娘は大変なのだ。

 生活費がなくなると、正義や勝利と組んで美人局をやったり、場合によっては正義が客引きに、勝利がボディーガードに扮した売春なんかをやったりもして、何とか食いつないでいる状態だった。

 この愛に誘拐計画を持ちかけたところ、

「面白いかもしれない。仲間に入れてほしいんだけど……」

 と、何も考えてなさそうな答えが返ってきた。



 かくして、三人のバカと一人のヤク好き、そして一人の引きこもりによる、日本の犯罪史上まれに見るアホな誘拐計画がスタートした。

 普通なら、全員逮捕されていただろう。

 しかし彼らは、並の犯罪者とは違っていた。

 さらに、自然の法則をもねじ曲げる奇跡が起きたのである。



 この五人が、勇気の部屋に集合した。

 勇気はかなり迷惑そうな顔をしている。

「オレはこの数日間、徹底的に調べあげた。そして、この計画をたてた」

 正義はここで言葉を止める。

 自信たっぷりの表情を作る。

 一人一人の顔を、じっくり見渡す。

 できうる限りの最強で最高のドヤ顔をする。

「ちょっとー、早く言って欲しいんだけど」

 愛が面倒くさそうに言った。

 正義はコホンと軽く咳払いをする。

「あー、まず、金持ち娘をさらう。その娘ってのが、こいつだ」

 正義は巨大な写真を掲げる。

 裁判所にたまにいる『勝訴』という紙を掲げて走り回る人のように、正義は誇らしげに掲げた。

 その写真には、どこか暗い目をした少女が写っていた。

 髪は金色、肌は透き通るように白い。瞳は青く、鼻は高い。だが、どこか東洋人の親しみやすさも兼ね備えた、不思議ではあるが魅力的な顔立ちだ。

 しかし――

「こいつの名は、ソーニャ・シコルスカ。ロシアと日本のハーフだ」

「シコルスカ……」

 勇気がなんとも言えない切なげな表情をする。

 次いで、

「は?シコルスカ?ちょっとー、それ本当?」

 愛も困った顔で、写真をまじまじと見つめる。

「いや、シコルスカ・ソーニャで、日本とロシアのハーフだったかもしれん。とにかく、この女を勝利が取っ捕まえて、オレが車でさらう。で、オレの見つけた田舎の空き家に監禁する。わかったな?」

「空き家?大丈夫なのか、そこは?」

 珍しく、元気が疑問を口にする。

「厳密には、空き家じゃないんだよ。知り合いに教えてもらったんだが、古い別荘があるんだ。貴族の屋敷みたいなデカイ家でさ。なんか知らんけど、地元じゃ幽霊が出るとかいう噂が流れてて、誰も寄りつかないんだよ。オレたちとしちゃ都合がいいだろ。もう完璧なんだよ、オレのたてた計画は」

 正義はそう言って、得意気に胸を張る。

 さらに、斜め四十五度の角度から、みんなの顔を見渡す。

 歌舞伎役者のような、意味不明の流し目をする。

 そして口を開く。

「タイタニック号に乗ったつもりで安心してくれ。お前らみんな、オレについてくれば大丈夫」

 沈んでるじゃねえか、面倒くさい奴だな、と、その場にいたほとんどの者が心の中で呟いた。

 一人を除いて。

「炊いた肉棒に乗ったゴスロリ?」

 勝利は首をかしげた。




 その会議の二日後。

 正義はまず、午前中に現地入りした。

 別荘の中を住みやすいように整理整頓しつつ、電気や水道などが使えるかも、きっちりチェックしておいた。

 言うまでもなく、無断で忍び込んでいる。

 もっとも、周囲には誰も住んでいないため、入るのは非常に簡単だったが。

 ちなみに、周囲は林に囲まれている。パッと見には、ホラー映画に出てきそうな屋敷である。


 午後からは、勝利が手伝いに来た。

 しかし――

 トラックにバーベルとダンベル、さらにベンチ台も積み込み、勝利は意気揚々とやって来た。

 そして言った。

「正義、これ運ぶの手伝ってくれ!」


「ったく、何でわざわざこんな物――」

「こんなものとは何だ!いいか、筋肉ってのはな、二週間トレーニングやらないと、見た目にはそのままでも、質が落ちるんだよ!俗に『見かけ倒しの筋肉』なんて言われるのはな、そういう状態になっちまった筋肉のことを言うんだ!覚えとけ!」

「知らねーよ、んなこと……」

 勝利は、正義に言われれば大抵のことはやる。

 が、筋肉がからめば話は別だ。

 筋肉がからむと、勝利はとたんに頑固者と化す。場合によっては、てこでも動かなくなる。

「……お前、いっそ川〇少年刑務所に行ったらどうだよ?トレーニングいっぱいできるらしいぞ。少年刑務所なんていうけど、二十六歳まで入れてくれるらしいしな」

「トレーニングいっぱいできるのか。いいなあ……もし逮捕されたら、そこに行かせてもらおう」

 勝利は真剣な顔つきでうなずいた。

「……でも、飯は少ないらしいぞ、お前が普段食べてる量に比べればな。それにな、刑務所行ったらプロテインもBCAAもクレアチンもグルタミンも飲めないんだぜ」

「何!それはイヤだ!いいか、筋肉を造るにも維持するにも、カロリーとタンパク質は欠かせないんだ!筋肉なめんなよ!」

 勝利は無人のはずの屋敷で吠えた。

 近所に民家はないが、通りかかった人がいたら、怪談として語り継がれたであろう。

「あ、あとな、川〇少年刑務所にはな、サ〇モト先生って看守がいてな――」

「ばかちんが!って言いながら警棒でブン殴るのか?それは怖いな」

 そう言うと、勝利はその場でシャドーボクシングを始めた。

 どうやら、振り上げられた警棒を受け止め、ストレートを叩き込む動きを想定しているらしい。

「……いや、そんなことしないから。ただ、ティッシュって言うと怒るらしい。『刑務所にはな、ティッシュなんてシャレた物はねえんだ!チリ紙だ!チ・リ・シ!覚えとけ!』って、怒鳴り散らすらしい」

「アホだな、そいつ」

 勝利は動きを止め、呆れた顔でそう言った。

 お前にだけはそれを言う資格はない、と正義は心の中でツッコミを入れた。



 なんやかんやで面倒見のいい正義は、勝利のトレーニング機器を全て運び入れると、二人で掃除を開始した。

 屋敷の中には、今までテレビの画面でしか見たことがないような物がたくさんあった。シャンデリア、西洋式の甲冑、実物大の虎皮の敷物、白雪姫の魔女が愛用していそうな鏡などなど……が、ほこりをかぶったまま放置されていた。

「なあ、ここは誰が使っていたんだ?」

 勝利が不思議そうに聞いた。

「聞いた話だけどな、とある華族の末裔の一家が別荘として使っていたらしいんだ。だけど、その連中も最近では全然泊まりに来ないらしいんだよ。で、維持費ももったいなくて、管理人も置かずにほっといてるってわけだ。いずれ取り壊しになるんじゃないか。さらに最近では、幽霊も出る、なんて噂も流れているらしい」

「ふーん。なあ、誘拐がうまくいったら、あの鎧もって帰っていいか?」

 勝利は壁に飾られている甲冑を指差した。

「……構わんが、どうする気だ?」

「着るに決まってんじゃんか。これ着て闘いたいな……」

 勝利はうっとりした目で甲冑を眺めている。

 お前はそれを着て、何と闘うんだ、と正義は言いたかった。



「さて、ようやく終わったな」

 綺麗になった室内を見渡し、正義が誇らしげな顔で言う。

「終わったな。じゃあ帰ろうか」

 そう言って、勝利はトラックに乗り込む。

 正義も続いて、トラックに乗り込んだ。

 二人が屋敷から出ていった後――

 屋敷にある大きな洋服ダンスの中から、不気味な物音がしていた。




 その頃――

 元気は最後の一発を、左腕の血管に射ち込もうとしていた。

 今時の病院では使っていないかもしれない、オレンジのキャップの使い捨て注射器。

 中には既に、覚醒剤が目盛り十まで詰めこまれて、水で溶かされるのを、今や遅しと待っている。

 元気はその針の先を、あらかじめ用意しておいたミネラルウォーターのペットボトルの中に入れる。

 注射器の中に、水を吸い上げる。

 そして、細かく丹念に降ったり回したりして、中の結晶を溶かす。

 元気は、注射器を静脈の血管に突き刺した。

 少し引いてみて、血が入ってくるのを確認する。

 元気は一気に、血液の中に薬を注入する。

 頭に何かが昇ってくる感覚。

 そしてもたらされる、凄まじい快感。

 元気は仰向けになり、しばらくのあいだ起き上がれなかった。



 帰ってきた正義と勝利は、勇気の部屋に集まり、元気と愛が来るのを待っていた。

 愛はあと三十分ほどで現れるらしいが、元気とは連絡がとれない。

「クソ、元気の奴、ケータイ切ったままだよ」

 勝利がケータイを握りしめたまま、正義に言う。

「あんの野郎……またネタ喰ってやがるな……」

 正義はあきらめ顔で呟いた。

「……ねえ、大丈夫?」

 勇気が不安そうに、正義に尋ねる。

「何が?」

「元気……」

「大丈夫、ではない。ではないが……あいつも必要……かもしれないから入れとく」

「えー……」

 勇気は、かなり困った顔をした。

 計画から抜けたい、と言いたげな表情もしていた。


「ま、いいや。二人にはあとで説明しよう。では、ミーティングを開始する」

 正義はできるだけ重々しい顔を作り、できうる限りの渋い声で言った。

 しかし――

「そういや前々から思ってたんだけどよお、みーてぃんぐって何だ?」

 勝利が真剣な表情で質問する。

「あ?あのな……ミーティングはミーティングだよ。あとでググれ。とにかくだな――」

「ぐぐれ?なんだそりゃ?そういや一発屋芸人でそんなのいたな」

 勝利の話はブロック崩しの球のようにあちこち飛ぶことがある。

「お前は筋肉と格闘技以外のことは何一つ知らんようだな。だったら交番のお巡りブッ飛ばして、川〇少年刑務所行って聞いてこい。少しは賢くなるだろ」

「なにい?なんでオレが――」

「ちょっと待って!もういい!正義、話続けて」

 勇気が割って入り、流れを断ち切る。

「……すまん。あー、現地に行ってきたが、まさにオレたちにとって理想通りの環境だ。周りに人がいない上、屋敷は広い。電気や水道もまだ使える。長期戦にはもってこいだ」

 正義はそう言って、胸を張る。

 勝ち誇ったドヤ顔で、二人を見る。

 勇気はげんなりした顔で見返す。

「……とにかく、あとはソーニャをさらうだけだ。さらった後の取り引きは元気に任せる。あいつはポン中だがな、喋りは下手じゃない。しかも、仲間内じゃ一番高学歴だ。あいつに任せりゃ大丈夫」

「そうかなあ……」

 勇気はまだげんなりした顔をしているが、正義は気づかなかった。

 その時――

「ふう、やっと終わったんだけど。すっごく疲れたかもしれないけど」

 愛が入ってきた。

 油だかペンキだかの汚れのついたツナギ姿でずかずか入ってきて、座り込む。そして、勇気に紙袋を差し出す。

「ドーナツ買ってきたんだけど、美味しいかもしれない。みんなで食べてほしいんだけど」

「あ、ありがとう……」

 勇気はひきつった笑顔で礼を言う。

 実は、勇気と愛は知り合って間がない。

 人見知りの勇気にとって愛は未だに、ちょっと距離をおきたい人であった。年齢は十歳以上も下なのに、勇気はそんな小娘が相手でもコミュニケーションをとるのに苦労する。

 もっとも、当の愛はそんなことはおかまいなしに、勇気の家にずかずか入り込み、泊まってしまうのである。

「で、計画はどうすんの?どうやってさらうの?教えて欲しいんだけど」

 愛はもぐもぐとドーナツを食べながら言った。

 しかし――

「お前……こんな物ばかり食べてんのか?将来は三段腹間違いなしだな!」

 不意に勝利が立ち上がり、愛に向かって吠える。

「ちょっとー、あんたには聞いてないんだけど!」

 愛は口をとがらせて抗議する。

 だが、勝利は走り出したら止まらない。

「いいか、ドーナツってのはな、小麦粉を油と砂糖で揚げた物だ。こんな物をまともに喰えば、三段腹間違いなしだ。そこでオレはドーナツを食べる時、熱湯に放り込み、油と砂糖を抜いて、さらにプロテインをかけてからでないと口にしないんだ。どうだ、違うだろうが?」

 勝利は勝ち誇った表情でみんなの顔を見る。

「……そんなの、知らないんだけど……」

 愛はものすごく疲れた表情でそう答える。

「……あー、とにかく、決行の日は来週の金曜日だ。いいな」




 みんなが集まり、まがりなりにも会議らしきものをしていた、その頃――

 元気はゲンキに、ゲームに興じていた。

 血走った目で。

 ケータイは切りっぱなしである。

 あえて切りっぱなしにしているのだ。覚醒剤が効いている間は誰からだろうと、電話は無視する。来客も無視する。仕事学業すべて無視。さらには、状況にもよるが大地震すらも無視する。

 これは元気に限らず、ポン中全ての傾向である。

 こういう事をやらかすので、ひどいポン中はアウトローからも信用されなくなる。

 結果、まともな生活が送れなくなるのだ。

 ポン中の元気は結局、丸二日間ゲームをやって過ごした。

 一睡もせず、食事もとらずに。


 かくして、日本の犯罪史上でもトップクラスのテキトーな誘拐計画は幕を開けた。




 しかし、屋敷にある洋服ダンスの中では、不気味な物音が続いていた。





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