表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。

なろうだけよ-短編

来年年賀状

作者: ササデササ

 一月一日。

 新年。

 年が変わる日。

 干支が変わる日。

 

 一月一日。

 お年玉がもらえる日。

 年賀状が届く日。

 

 そんな一月一日。

 ポストが変わる。

 

 一月一日の午後4時44分。

 ポストが変わる。

 

 私がそのことに気がついたのは、中学一年生の時だ。

 

 送ってくるとは思っていなかったクラスメートへのお返し年賀状を書き終え、ポストに出し行った。

 時間は4時44分。

 すると、ポストが変だった。

 最初感じた違和感は、「え? 人の顔?」だった。

 ポストが人の顔に見えた。

 近づいてみると、ポストの入り口が3つあった。

 いつもある2つの入り口が目に見えて、増えた入り口が口に見えたのだ。

 増えた入り口にはこう書かれていた。


 来年賀状、と。


 くるとし年賀状?

 はてな。何のことやら。全くもって分からない。

 テレビ番組にあったな。『ゆく年くる年』

 それのことかな。

 ならば、何かの企画かな。

 とりあえず、私は普通じゃない経験をしている事は分かった。

 だから、つい、出来心で、持ってきた年賀状を入れてしまった。 

 今にして思えば、呪いとかじゃなくて良かったと思う。

 

 私は年賀状を出して直ぐに、出したことは覚えていても、誰宛のを出したのか、どんな年賀状だったかも忘れてしまった。

 辛うじて覚えているのは、不思議なポストに年賀状を出したことだけ。


 一年後。

 クラスメイトから電話が来た。

 普段話さない、男子からだった。

「おい。年賀状を送り返さないのは良いけどよ、一年遅れで届くのは腹が立つぜ?」

 との事だった。

 私には何のことやら分からなかった。

 誰かが私の名前を使ってイタズラしたのだと思った。

 一年のタイムラグは、不思議な力とは無関係に、私の記憶をあやふやな物にしていた。

 でも冬休みが終わって新学期。

 その男子が年賀状を学校に持ってきていた。

 それを見て、すべてを理解した。

 来年年賀状。

 あれは、くるとし年賀状じゃなくて、らいねん年賀状だったのだ。

 

 この事は誰にも言ってない。

 私だけの秘密。

 なんとなく一人占めしたくなった。

 

 以降、私は来年の自分への年賀状を送り続けている。

 今日もまた、来年の自分宛に年賀状を出した。

 だから、内容は忘れてしまった。

 毎年の行事にしているから、かろうじて自分宛なのは予測できる。

 そして、悲しいかな。

 内容も予想できる。

 もう4枚になった自分への年賀状は、全て同じ内容だからだ。

 全く。

 毎年毎年、うるせ~な。私。

『もう流石に彼氏できたんでしょ? いいな~。うらやましいな~』

 じゃないんだよ。馬鹿。

 まだ、彼氏はいね~よ。

 ふん、だ。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ