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ある日のこと。俺、月成龍聖は死にました。
運が悪かったのか。運命だったのか。どうやって死んだかなんて知らない。
自分が死んだという確信だけが頭にある。
死んだ後もなぜだか意識は残っている。
いろんな理由を考えたが、死んだ後のことなど生きている間に知ることはないだろうという結論に至った。
辺りを見る。まず肉体が残っているかも分からない。だけど無意識に目で周りを見ようとした。
辺りは暗闇が広がっている。それは死んだオレに目がないから暗いのか、本当に暗いからなのかは分からない。
そもそもここはどこだ?
「ようこそ我が世界。時空界へ」
不意に声が響く。それと同時に暗闇だった視界が真っ白に埋めつくされる。
まず始めに気づいたのは自分の肉体があるということ。次に気づいたのは見知らぬ男が椅子に座っていたこと。
「何をしている? こっちに来るといい」
オレは言われたまま何も考えずに男のほうに足を進める。
「まあ、座ってくれ」
なにも理解できないまま席に座った。ここはどこなのか? お前は誰なのか? そして、オレは死んだのか?
言いたいことは幾つもある。
でも声が出せない…
「おいおい、いくら今の状況が理解不能だとしても声が出せないほどか?」
男は笑っている。その顔をオレはどこかで見たような気がした。
「まあ、落ち着け。こっちも話したいことがあるんだ。君は聞くだけでいい、話してもいいか?」
俺はゆっくり首を縦に振る。
「いいかまず、君は地球という星で暮らしていただろう? 君はそこで死んだ」
頭ではなぜか理解していた。でも直接言われて始めて死んだ実感が湧いた。死んだのに実感というのはおかしな話だが。
「ボクは死んだ君の魂を捕まえ肉体を再度与え、ここ時空界…つまり時空の狭間に連れてきた」
魂、時空、狭間。全く意味が分からない。これがファンタジー系の主人公の気持ちかなんだろうな。
「なぜ……俺を連れて…きた?」
俺は一番の疑問を投げかける。
「やっと落ち着いて声が出たか」
「いいから…答えは?」
やっと声が出るようになった。なぜ声が出なかったのか? 男の言うとりこの状況にパニックを起こしたからか?
「そうだな。君が一番、ボクの求めていたものを持っていたからさ」
「求めていたもの?」
「君自身には分からないことさ。で、本題なんだが………君に頼みがある」
男は真剣な顔で俺を見ている。
頼みだと? わざわざ俺に肉体を与えてまで頼みたいことなのか? 自分でいうのもなんだが、俺は普通の人間だぞ?
「異世界で少女たちを救って欲しいんだ」
「………………は?」