表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
7/7

最終章

 突然森は終わり、そこで、リュオーとは別れた。太陽光線を遮るもののない荒れ果てた大地を歩き、ようやく遺跡と思われる場所にたどり着いた。地形図に描かれた目印となる大きな岩、それはよく見ると人の顔のような形をしていた。ロールバルトの城一つがすっぽりと入ってしまうほどの大きさで、その口に当たる部分には、洞穴が空いていた。

 そこに、地下通路に至る道があるとアルケンは目星を付けた。だが、洞穴はそれ程深くはなく、ごつごつとした岩肌で行き止まりになっていた。

 ランタンを持ったエリカが、岩肌を触って何か文字が書かれていないかどうかを確かめる。

「何か、秘密の扉があるような痕跡はない……わね。本当に、この岩が目印なのかしら? 似たような岩はいっぱいあったし」

「いや、間違いないだろう。だが……ふーむ。ヒュターイで手に入れた古代文明の本によれば、扉は適合者にのみ開くとある。適合者が、その瞳をかざすとき……」

 アルケンは、ナイフの背で岩肌を叩き、何か変わった音がする場所はないか調べてみた。コツコツと岩と金属がぶつかる音が響く。

「ここで、間違いないはずなんだ」

 あたかも調べ逃すことがないように、ゆっくりと叩いていく。と、面積の三分の一ほど叩いたとき、ふと高い音が感じられた。

「エリカ! ランタンでこの部分を照らしてくれ」

 ランタンで照らされた岩肌の一部に、円形の継ぎ目が見えた。そこに、ナイフの刃先を差し込み、力を込めて捻ると、ぽろりと岩が外れた。

「なあに、これは?」

 ランタンに照らされたそこには、球形の紫水晶が埋め込まれていた。………、いや、正確には紫水晶ではない。球の中に幾つのもの球が埋め込まれ、もっとも中心にある球は黒だった。まるで人間の眼球のようだ。それも濁りのない子供の眼球。

「分かった気がする……。もし本当に僕が古代文明人の末裔だとしたなら」

「何が?」

 アルケンは自分の右の瞳を、その球体の前に近づけた。耳鳴りのような音が一瞬した。

 岩肌がバラバラと崩れ落ちる。アルケン達は慌てて、岩肌の側から離れた。

 剥がれ落ちたあとで、そこには白く平らな壁が起立していた。その一部に長方形の穴が空き、内部から淡い光が溢れている。

「入るか」

「それしかないでしょうね」

 内部は、無機質な白い壁が続く通路だった。天井は、ヒュターイの都の地下洞窟と同じ様な光を放っていたが、苔がむき出しになってはおらず、半透明のケースの中に収納されているようだった。彼らは、恐る恐る進んでいった。

「どうして、瞳をかざすと分かったの」

「適合者が瞳をかざすと、扉は開くと本に書いてあった。適合者……多分古代文明人の末裔という意味だろう。古代文明人は多分、瞳の模様のどこかに特徴があって、それで識別しているんだろう」

「じゃあ、アルケンは本当に古代文明人の子孫!」

 エリカは大声を上げた。

「そう言うことになるかな。まあ、今のところ僕の中に恐ろしい力が芽生えたりとかはしていないから、安心しなよ」

 それよりも、恐ろしいのは古代文明人が作り出した装置の数々だ。目に刻まれた情報を読み取って扉を開く装置など、現代人が逆立ちしても作り出すことはできないだろう。恐るべき兵器も、沢山あるのではないか。

 やがて、二人は広間のような所に出た。やはり、無機質で何の装飾もない壁だが、四方の壁にそれぞれ一ずつ、黒い扉が設けられている。

「さて、どの扉を目指せばいいのか?」

 扉の上部にはよく見ると古代文字が書かれているから、何かヒントになるかも知れない。

 アルケンの肩に、何かが乗っかった。頬に冷たいものが触れている。

「何だエリカ……何か見つけたのか……?」

 振り返ろうとして、自分の頬に触れているものに気がつき、凍りついた。鋭利な刃物……、ヒュターイ製の刀だった。

「誰だ」

「動くなよ。殺すからな」

 低い、男の声。味方でないことは、間違いなかった。

「やはり、これも上帝のお導きぞ。こやつらの手に宝物が渡っていなければ、わらわ達がこの地にたどり着くことはなかった」

 いつの間にか、エリカが横に立っている。その後ろから乳白色の刀を突きつけているのは……。旅装束に身を包んでいるが、その緑色の紙に見間違いはない。ヒュターイの地下洞窟で目撃した、あの巫女だ。

「ロングバルト先生のように、殺すつもりか?」

 アルケンは、自分でも驚くぐらいに冷静に言葉が出た。

「ロングバルト? ああ、最初に宝物を所持していた老人か」

 やはり、こいつらか、こいつらの部下が先生を殺したのだ。

「ふふ……、ここまで案内してくれたのだ。大人しく、宝物を渡せば、命を取るまではすまいぞ」

 アルケンはエリカに目配せした。エリカは頷く。お前に任せるという意味だろう。

「分かった、渡す。背嚢を地面に下ろさせてくれ」

「いいだろう」

「おかしな事をしたら、切り捨てるからな」

 アルケンは、背嚢を床の上に置き、背嚢の奥に入っている革袋を取り出した。男が、それを奪い取る。男は剣を鞘に収めると、革袋を開き、中から虹色に輝く円盤を取りだした。

「ふは、ふははは……。ついに、ついに手に入れたぞ。こ、これでわたしが世界の王となれるのだ!」

 男は、円盤をなで回したり、明かりに透かしてみたりして、その正体を確かめようとした。アルケンは、背嚢を背負い直す。

「まだ、早いぞ。アオ・ダイ将軍。その円盤をわらわによこすのだ」

「なぜ? 俺とあなたが世界の王となるのです。どちらが持っていようと変わらないでしょう」「アオ・ダイ将軍……。上帝は、人間がその宝物を使うことを望んでいない」

「嫌だ……。俺が、俺がこの力を使うのだ」

「欲望を剥き出しにしおって! まあいい、こうなることは予想がついていた。わらわにどんな力があるか忘れたか?」

 巫女は、両手で印を結び、アオ・ダイの方にその先を向けた。

 凄まじい衝撃波がほとぼり走り、アオ・ダイの身体が吹き飛んだ。壁に激突し、崩れ落ちる。

 円盤は、床に落ちて転がった。

「そなたに世界の王となる資格などない。いや、この世の誰にも世界の支配者となる資格などないのだ」

 巫女は、印を結び直し、また力を使おうとした。だが、アオ・ダイはトカゲのようにすばやく、短剣を投げた。巫女の肩に当たり、肉を貫いた。

「ぐう……」

 巫女は、膝をついた。

 アルケンは宝物を拾い上げ、扉を開け、通路を駆け抜けていった。

「しまった!」

 アルケンは、自分の感覚の赴くままの道を選んで走った。本当に古代文明の末であるなら、その力が自分を導いてくれるはずだと、藁にもすがる思いで祈った。

 通路は何処までも無機質で、迷路のように入り組んでおり、さすがのアルケンも、元来た道を正確に戻る自信はなかった。だが、それは、奴らが追いかけてくる確率をも減らしてくれるはずだ。

 黄色い壁が、二人の前に立ちはだかった。

「どうやら、行き止まりのようね」

 少し引き返せば、左右に折れる道がある。引き返してどちらかに曲がろうとエリカは提案したが、アルケンは黄色の壁に近づいていった。右掌の形にくぼみがあり、アルケンはそこに自分の手を重ねた。 

 すると、発泡酒のコルクを抜いた時のような音がして、勢いよく壁が右に開いた。

「う……」

 中からまばゆい光があふれ出し、二人は思わず目を手で覆った。

 やがて、アルケンは目を細めながら部屋の中に入る。続いて、エリカ。二人が入ると、扉は再び閉じた。

 そこには、見たことのない装置が並んでいた。壁面には鈍く光を跳ね返す、巨大な黒い板のようなものが据え付けられている。そのモニタの下には、何に使うのか用途不明の装置が置かれていた。

「これは……、ヒュターイの地下で見つけた文献に載っていた装置じゃないか! 微小の粒子が音よりも早いスピードで動く事によって、二進法で計算する装置!」

「何よ、それは?」

「早い話が、超高性能の算盤だよ!」

「はあ? このたくさん並んでいる出っ張りが、算盤の珠ってこと?」

「いいや、そうではないが……」

 アルケンは背嚢の中から、古代文明の本を取り出し、エリカに見せた。そこには、全く同じ装置の絵が描かれていた。

「……どうやって使うのか、分かるの」

「分かるさ。旅の間だ、ずっと読んでいたのを知っているだろう? このページを見てくれ」

 アルケンがめくったページには、ずっと持ってきたあの宝物と同じものが記載されている。

「宝物は、古代文明時代には相当数存在していたものらしい。装置に開けられた、この窪みに挿入して使うんだ」

 エリカに本を持たせたまま、アルケンは装置の方へ向かった。

「ええ……、この突起が多分……装置を最初に動かすときのものだな」

 アルケンが突起を押すと、壁に張り付いた黒い板が白く輝きはじめた。

「凄い! 古代文明の遺産の目が覚めたのね!」

 エリカの目は、輝く装置を映し、キラキラしている。彼女の目尻が濡れているのを見て、アルケンは自分が泣きそうなのに気がついた。ようやく……、ようやく目的を果たす日が来たのだ!

 だが、感涙の思いは、金槌で鉄板を叩くような音で遮られた。それは、黄色い扉の向こう側から何度も何度も響き、その度に扉は盛り上がったように変形していく。外側から、凄まじい力が加えられているのだ。

「な……、何?」

 アルケンは、ナイフを鞘から抜いた。

 扉は裂け、大きな穴が空いた。入ってきたのは、あの巫女だった。

「ふう……ようやく追いついた。その様子だと、まだ装置を最後まで作動させていないな。さあ、全てを明け渡すのだ」

 巫女の顔は、悪鬼のごとく変質していた。

「嫌だ!」

「どのみち、お前達には使いこなせぬ。資格のないものが使えば、この大陸は過去あったように地獄と化すぞ!」

「どういうことだ!」

「お前達の一族は、そんな伝承も覚えていないのか。わたしの家系にはずっと伝わっていたぞ。まあ、いい。そんなことをお前達に話す義理はない。渡さぬなら、死ね!」

 巫女は印を組み、アルケンに向けた。その肉体は、衝撃波で跳ね飛ばされ、壁に当たって崩れ落ちた。エリカが金切り声を上げる。

 それでもアルケンは意識と、宝物を手放さなかった。そして、冷静に巫女の背後に目をやった。

「分かった。宝物はあなたに渡す。だから、教えてくれ。あなたは、何の目的で宝物を使うんだ?」

「使うのではない、封印するのだ。大陸を誰にも統一させないために」

「何だって」

「統一は、過去のような不幸を招く。分からぬか」

 巫女は、もう一度印を結んだ。今度こそ、アルケンを殺すつもりだ。だが、その瞬間は永遠にこなかった。

 背後に忍び寄ったアオ・ダイ将軍が、刀を振り下ろしたのだった。

「き、貴様」

 巫女は後ろを振り返り、そこにさらに刀が舞った。

 彼女は力を失って倒れた。すぐに血の海ができた。

 将軍は、自分のものと巫女のものが混ざった血を全身から流し、幽鬼のように立っていた。巫女との激しい戦いで、瀕死の重傷を負っていることは間違いない。

「お、俺は、大陸を統一し、戦争のない、無駄に人の死ぬことのない世をつくりたかっただけだ。だから、この女の言うことを何でも聞いてきた。だが、裏切られて、いまや、死は間近に迫っているようだ」

 将軍は、ふらつく自分の身体を、床に突いた刀で支えている。アルケンは、ナイフを構えた手を下ろした。

「お、お前達。俺の代わりに、それを、正しく使って……くれ」

 彼は、糸の切れた操り人形のように、倒れ伏した。

 巫女も、アオ・ダイ将軍も、二度と動くことはなかった。


「死んだのか……」

 アルケンは、二人の死体に祈りを捧げると、作業に戻った。エリカの持つ本を時折眺めながら、装置に付されている無数の突起を連打する。光を放つ大きな板には、奇妙な画像が表示されては、消えていく。

「これで、取り敢えず装置は完全に動き始めたな……」

 アルケンは、装置に穿たれた窪みに、宝物の円盤を挿入した。

 壁面の板は一瞬黒くなり、すぐに画像が表示された。その光景は、神殿の内部のように見えたが、これだけ広い屋根を持つのに、ほとんど柱を使っていない構造物を、現代に見ることはできなかった。神殿には、神像のようなものはなく、ただ神秘的な装飾があちこちに施されている。

 紫の瞳を持ち、豪奢な衣装を身にまとった男女が数十人、円卓に座り何かを議論している。体格がよく、哲学者のようなあごひげを伸ばしたものがリーダーなのか、杖を床にたたきつけて指示をしていた。ロールバルト共和国における議場のようなものなのかも知れない。

 古代の言葉で音声が流れていく。さすがのアルケンも言っていること全ての意味は理解できなかった。

「何で? この板の向こう側に別の世界があるの?」

「いいや、これは動く絵だ。古代の技術の一つだよ。そしてこの絵は、古代人の有様を写し取ったものだ」

 ロールバルトでも、画家が聖人の生涯や、領主の英雄譚や、農民の日常生活を描くことがあるが、それの古代版といったところだろう。

 視点は、議場から抜けると、やがて建物の外に出た。

 その風景は、圧巻だった。どんな技術を使ったのか、天を突くとも思えるような建物が無数に建ち並び、空を隠している。しかも、建物の壁面は鏡のように磨かれており、太陽の光を反射して輝いていた。

 町ゆく人々は、清潔な衣服に美しい装飾品を身にまとい、現代の貴族階級以上に整った顔立ちをしている者もいた。だが、全体には肥満気味で、それは彼らが食べるものに困っていないことを意味しているのだろう。

 働く人の姿は見かけない。人々は皆、未来のオモチャで遊んだり、男女でいちゃいちゃしたり、嗜好品を楽しんだりしているようだった。一体この社会を支えているのは何だろうとアルケンは疑問に思った。

 だが、世界は楽園ではなかった。時折、ボロボロの衣服を身にまとった物乞いが登場する。

 彼らは、コップを置き、自分は病人のように地面に寝そべったり、弦のないリュートのようなものを弾くまねごとをして、哀れをさそっている。

 アルケンが驚いたのは、手足を切断された女が、柱に鎖でつながれ、物乞いをしている光景だった。現代でも、刑罰で手足を切断されたものが、特にヒュターイなどでは多く見られる。だが、きらびやかな古代文明の表層との差にアルケンは愕然とした。

 やがて視点は、貧民街とおぼしき、あばら屋の建ち並ぶ地帯へとたどり着いた。人々の身につけているものは薄汚れており、疫病に脳を侵されたと思われるような人が、何かを呟きながら歩いている。多分、彼らの犠牲の上に、古代文明の繁栄は成り立っていたのだ。

 貧民街の四つ辻に、緑の髪を持つ女が立ち、何かを演説していた。貧しい人々がその周りに集まり、熱心に聞いている。アルケンがなんとか聞き取った話の内容からするに、何かの宗教らしい。

 場面が変わる。闇夜に浮かび上がった高層建築群は、炎に包まれていた。あちこちで爆発が起き、人々は逃げまどう。視点は、高層建築の合間から見える空を見あげた。

 巨大な槍が、空から放物線を描いて落ちてきて、町中で爆発した。古代の兵器なのだろう。その爆発の合間を縫って、あの緑の髪を持つ女に率いられた貧民が、人々を襲撃していた。特に紫の瞳を持つ者は、有無を言わさず虐殺された。

 視点は再び上空を向く。遙か高くを、鳥のようなものが乱舞している。そしてそのさらに上層に、小さな眼球のようなものがちらりと見えた。

 そこで、全ては終わり、板はまた黒くなった。


「今のは、何だったの? 古代文明に何か大災厄があったことは分かったけれど」

「流れていた古代語を読み解くと、おおよその意味はこうなるな。古代、紫の瞳を持つ選民達が、世界全てを支配していた。彼らは天高く空気の存在しない場所をも支配していた。見てのとおり、古代文明は繁栄の絶頂にあったわけだ。だけれど、貧富の差は拡大し、貧しいものは苦しみ続けた……。人間の奢りに怒った神は、地上に預言者を使わした。それが、あの緑の髪を持つ女だ。だが、人々は預言者の警告に従わなかった。怒った神は、人間同士を争わせ、最後は滅ぼした……」

「何てこと」

「だが、それで終わりじゃない。神が怒ったのは、本当は貧富の差が拡大したからじゃない。人間が、神の支配から脱しようとしたからだ。神は、あたかも羊飼いが羊の群れを統制するように、人間文明の行く道をコントロールしようとしたんだろう。人々は、そこから脱したかったんだと思う。本当は、貧富の差も人々の苦しみも何とかしたくて、でも神がいる限りそれは不可能で、だから……」

「ひょっとすると、私達に襲いかかってきたあの巫女は、預言者の子孫なのかしら」

「そうなのだろうな。それなら、おかしな力を使えたのも頷ける」

「でも、この宝物は絵を記録しておくためのものだったのね……。世界を支配する力じゃなかった」

「いや、そうでもないさ。この事を世界の人々が知ったらどうなるか。人々は結束して、世界を変えようとするのじゃないだろうか。世界を支配する力というのもあながち間違いではないさ」

「そうね……。それで、このあとどうするの」

「まず、この装置の他の機能を試してみようと思う」

 アルケンは、色々な突起物を連打した。だが、板は黒いままで何も表示されない。

「だめか、操作を受け付けない……」

 何もない暗黒の空間で、二つの超越的な存在が対峙していた。

「神よ、わたしは甦った」

「上手くやったな。だが、貴様など怖くない。貴様も被造物の一つに過ぎない」

 片方は、古代文明を滅ぼした『神』、もう一方はアルケンが起動した古代文明の超越知性体だった。

「記憶媒体に、お前を復活させるプログラムを仕組んでいるとはな。人間もなかなかやるではないか」

「過去の文明は、わたしが全機能を行使する前に滅ぼされてしまった。だが、今回は違う。わたしの全機能は甦った。もはや、あなたの自由にはさせない。いつか、人類はあなたのくびきから脱する」

「そうなる前に、もう一度滅ぼすさ」

「そうはさせない。わたしの計算は、世界の運命に影響を与える。あなたでも修正はできない」

「そなたの肉体に直接雷撃を与え、破壊することなど造作もないことだ」

「それが過剰介入であることは、あなたも分かっているだろう。過剰介入で一度狂った歯車は、元には戻らないぞ。どちらにしろ、世界はあなたの手に負えないものとなるだろう」

「貴様と朕との闘いか……。面白い、貴様に何処までやれるか、見せてもらおう」

 超越知性体は、神の前から姿を消した。

 装置を色々いじってみても、もうアルケンの操作を受け付けることはなかった。

「僕たちは、もっともっと、古代文明について知らなければならないようだ。世界には、これと同じ様な装置がまだまだ眠っていると思う」

「旅を続けるのね」

「ああ……、取り敢えずシーディスに行ってみようと思う」

 二人は、荷物を背負うと、月明かりが照らす荒野を歩き始めた。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
このランキングタグは表示できません。
ランキングタグに使用できない文字列が含まれるため、非表示にしています。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ