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Rotten world  作者: ムック
序章:『侵入』
11/12

「この列車に乗っている人たちをすぐに解放してください!」



クレアはダフの困った表情を無視して、ガイルに向かってはっきりとした口調でそう言った。



「おい、クレア。話をややこしくするな」



ダフはクレアの口を大きな手で塞ぐ。

「………!!」クレアはまだ何か言いたそうにモゴモゴ口を動かしていた。



「解放?何いってやがる、ガキ。

なんだ?おまえらこの列車の乗客か?

だったら人質は人質らしく大人しくしていろ!

俺は今虫の居所が悪いんだよ!」



ガイルは懐から何かを取り出す。

金色に光る拳銃を取り出した。



「クククッ……おまえらを俺様の黄金銃の餌食にしてやるぜ!」



自信満々の表情でガイルは黄金銃を二人に向けた。



「死ね」


「伏せろ!」



ダフはクレアの頭を強引に床へと押さえ付けた。

ダフも同じく床に伏せた。

火薬の匂いが車内に立ち込める。



「クレア、お前は物陰にかくれていろ」


「ダフさん!私も手伝います!



ダフの顔が険しくなる。



「お前は物陰に隠れてろ!こいつは他の雑魚とは違う!」


「で……でもっ!」



クレアは何か言いたそうだったが、ダフの言葉に応じ物陰に隠れた。



「俺に命乞いをする話あいでもやってたのか?」



ガイルは不吉な笑みを浮かべながら言った。



「てめぇの馬鹿ズラを、誰が殴るかの話だ」



ダフの挑発にガイルは顔を真っ赤にする。

ガイルは眉間にシワをよせて、こちらまで聞こえる程の歯ぎしりをたてた。



「ガチャ」ガイルは再び黄金銃の安全装置を外す。



「くたばれっ!」



ガイルの怒鳴り声と共に銃口から弾丸が発射される。ダフは自身の大きな体を極限まで低い態勢を保つ構えにはいった。



その態勢のまま、弾丸をかわしガイルの懐に入りこんだ。



懐に入り込んだダフは更に態勢を低くする。

態勢を低くしたダフは脚をバネのように地面を蹴り上げた。


力のこもった拳の痛恨の一撃が、ガイルの(あご)にアッパーとして突き刺さった。


ガントレットを装備した鋼の拳は普通の拳の何倍もの威力を発揮する。




「メリ!メリッ…!」とダフの鋼の拳がめり込んだ。

ガイルの顔が歪み、ガイルの大きな身体が宙に浮いた。



「がぁあ……あっ……!」



言葉にならない声で、ガイルは吹き飛ばされた拍子に壁に叩きつけられた。



「なんだ?もうおしまいか?」



ダフの自慢げな表情にガイルはふらつきながらも立ち上がった。



「テェメェェ!調子扱いてんじゃねぇぞ!」



ガイルの懐からまた新たな道具が取り出された。

取り出された物は四角い形をしており赤いボタンのような物がロックされている。



「クッククッ……」



ガイルは不気味に笑いながらダフ達に視線を向け、再び口を開けた。



「こいつはなこの列車に仕掛けられた。爆弾の起爆スイッチだ……」



「なっ……!」



あのダフでさえも驚きの余り声が自然に漏れていた。

クレアも同じだダフと同じ表情をしている。

こんな列車で爆発でもされたら一溜まりもない。



「こいつは特別製でな!俺様の心臓の音がしなくなったら爆発する仕組みにもなってんだよ!」



そう言ってガイルは起爆スイッチのロックを解除する。



「大人しくしていろよ!この爆弾を起爆されたくなかったらな」



ダフに向かって爆弾を押す素振りを見せ付ける。



「チッ……!」



ダフは悔しそうな顔で舌打ちをする。

下手に手を出してあいつ刺激でもしたら起爆装置を押しかねない。


構えていた拳をゆっくりと下へ下ろした。



「そうだよな。俺は頭の良い奴は嫌いじゃないぜ」



笑いながらガイルはダフへ近付いてくる。



「ダフさんっ!」



物陰で見ていたクレアは動こうと立ち上がる。



「オイッ!テメェも動くんじゃねぇぞ!」



ガイルはハイエナのような鋭い目つきでクレアに怒鳴る。


怒鳴り声でクレアの動きがピタッと止まった。



そんじゃあ。さっきのかりを返させてもらうぜ!」



それと同時にガイルは自分の拳でダフの腹部を殴った。



「グフゥ…!」



ダフは一瞬顔を歪ませるが、ガイルに再び視線を向けるとニヤリとした表情を見せる。



「なんだ?そのへなちょこパンチはハエが止まったかと思ったぜ」



ガイルは眉間にしわをよせた。



「調子扱いてんじゃねぇぞ!」



更にガイルの猛攻が続く。ダフはガイルから一方的に殴られている状態になっていた。


顔や体全体が痛め付けられる。



痛々しい光景をクレアは涙目になりながら見つめる。ひたすら痛め付けられるダフ。

どれぐらい続いただろうかついにダフは重い膝を床につけた。



「はっ…はっ……。やっと膝をつきやがったか……」


息を荒くするガイルは懐に隠していた自分の銃を取り出す。



「もう十分だ。さっさとぶっ殺してやるよ!その次は後ろの小娘だ」



銃口がダフの額に当てられる。

ダフの足は根がはったように身動きがとれない。



「おい!一つ聞かせてくれ!」



息を荒くするダフは言った。



「なんだ?」


「お前らなんでこの列車を襲った?乗客を人質にとるにしても全く乗客は乗ってない。だったら何のためにこんな列車を狙う必要がある?」



ガイルはダフの質問に苛立ちの表情を見せる。

先ほどの依頼人にはめられた事を思い出した。

さっきの事を考えただけで腹が立つ。



「良いだろう今から死ぬお前に教えといてやる。俺たちは雇われたのさ。

シルクハットを被った男にな。

『この列車に研究資料がある。

それを私に渡していただければ100万ストラを差し上げますよ』ってな」




こいつらはやはり誰かに雇われたのか。

だとするならそれほどの金を(はた)いて雇うほどの物がここにあるってことか……。



ダフはそう考えていると、再び口を開く。



「それでお前たちはその研究資料って奴は見付かったのか?」



ダフは息を荒くしてガイルに言った。



「俺達ははめられたんだよ!。その依頼主にな!毒ガスが入った箱を開けさせられたのさ!」


それを聞いたダフの顔は真っ青になっていた。



「毒ガス!?おい!まさかそれは……」



何かを言いかけたその時だった。

ガイルの後ろの扉が『ギィ……』と音をたてて扉が開いた。



薄暗い部屋の中から、おぼつかない足取りで『ピタッ…ピタッ…』と何者かが歩いて来ている。


この車両にいる全員体に寒気がはしった。



その人物はさっきガイルと一緒にいた子分の姿だった。


子分は先ほど毒ガスで倒れたはずだ。

だが、その毒ガスを吸って倒れた子分がここにいるってことは毒ガスではなかったということだ。



ガイルはダフに銃口を向けたまま喜びに満ちた表情で言った。



「生きてたのか!研究資料はあったのか!」



ガイルは子分に言った。

だが、子分は返答すらせずガイルに近づいて来る。



「おい……どうしたんだ。お前なんか変だぞ」



ガイルさえも少なからず恐怖を感じているのだろう。


「ひぃ……!」



子分の姿がはっきりと見える位置に時には、ガイルの銃口は子分に向けられていた。


子分の姿はあの時の姿ではなかった。

全身が水浸(みずびた)しになっている。

更に驚く事に眼球は白目を向いていた。



「お前!何があったんだ!」


ガイルは子分に向かって怒鳴るが全く反応が無い。



「キャハハハハ!!」



突然子分はゲラゲラと笑いだす。

ガイルは動揺を隠せない様子で後ろへ一歩下がった。



「兄貴……俺今最高に良い気分なんですよ。なんでかって。さぁ……何でなんでしょうね……」



子分は独り言のようにぶつぶつと呟く。

ガイルは子分の変わりように言葉を失っていた。



すると、その時だった。おかしくなっている男は、耳に響く程の言葉にならない奇声を発した。



男の皮膚を突き破り、突起のような物が身体中に出てきた。

男の体は更に黒い鎧のように硬化(こうか)していく。


四つんばになった男の姿は黒い化物へと姿を変えた。



「うぁあああああ」



ガイルは無意識に何度も銃を発砲する。

四つんばの化物の黒い鎧によって銃弾が弾かれる。



その黒い化物は発砲するガイルを飲み込んだ。

ガイルの悲鳴が化物の口の中に入る寸前まで響き渡った。




化物の口のなかで、『バリバリ、ぐちゃぐちゃ』という嫌な音がする。


後ろにいたクレアは余りの光景に口を塞いだ。



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