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Rotten world  作者: ムック
序章:『侵入』
10/12


姿を現したゼルは(いた)って冷静な顔をしている。

ルッソの顔が険しくなる。そして、ゼルの持っている銃に指を差した。



「お前がもっている銃をこっちに投げろ!」



ルッソは銃を構えながらそう言い放つ。

だが、ゼルは一向(いっこう)に銃をこっちに渡す素振りを見せない。



「さっさと!こっちに銃を渡せと言ってるんだ!人質がどうなっても良いのか!



ゼルは表情を変えずに漆黒の瞳をルッソに向けた。



「殺すなら殺せば良い。初めからそいつは仲間でもなんでもない、ただのイカレた殺し屋だからな」



ゼルは思いもよらない言葉を口にした。

ルッソは動揺を見せるが再び言い放つ。



「まあ良い。お前が例えこの女を見捨てたとして、その後はどうするんだ?

こっちは二人でお前は一人。

更にこっちには武器も揃ってる。

もう少し考えてものを言うべきだぞ」



ルッソはゼルに対しての警戒心強めていた。



「ルッソ!その男が殺して良いって言うなら、このイカレた女をぶっ殺せばいいだろ!

この女は俺たちの仲間を殺したんだ!絶対に生かしちゃおけねぇ!」



仲間は声を荒げそう叫んだ。



「そんなに怒ったって貴方の仲間は帰ってこないよ」


欄は無理やり二人の会話に割って入ってきた。

出血している肩を押さえている。



「なんだと!」



銃口を欄の頭に強く押しつけた。



「女っ!今の状況わかって言ってんのか!」


「もちろん、わかってるよ。私の頭に銃口を突き付けられて、すぐにでも撃ち殺されてもおかしくない状況ネ」



欄は自分の今の状態をきめ細かに説明する。

顔を真っ赤にした男の怒りは頂点に達したようだ。



「そうか!ならさっさと殺してやるよ!」


「馬鹿野郎っ!挑発に乗るな!」



ルッソは止めようとするがもう既に遅かった。あいつはこっちを見向きもしていない。


男は銃を欄に向けた。

銃の引き金に指を引っ掛ける。

『この女を殺せる』という喜びに満ちた顔で引き金を引いた。



「…………」



引き金を確かに引いた。おかしい、何で弾が出ないんだ。安全装置もはずしてる弾もあと3発は撃てるはずだ。

なのになんでこの女を撃ち殺せないんだ。



女の足元に何かが転がっている。

ゴツゴツした丸い球体。その丸い形。

黒い色をした栓のような物が球体の(そば)に落ちていた。



その球体からは何やら煙の様な、何かが立ち(のぼ)っている。



男がそれに気付いた時には既に遅かった。

男の上半身と下半身は真っ二つに切断されていた。



欄の左手に握られた剣はその男の血がべっとりと付いていた。



仲間の声が消えた……。

何が起きた。一体何があった。あいつは無事なのか。銃を向けていたルッソは、ゼルから目を(はな)せない。



「クソが!!」



ルッソそう吐き捨て、我慢出来ずに欄の方へと首をひねった。



そこにはさっきまで生きていたはずの人間が下半身だけの状態になっていた。


血を浴びた欄のチャイナ服は更に真っ赤に染めあがっていた。



ゼルはその隙を見逃さなかった。

すぐさまルッソの懐に入りこんだ。


ルッソも手にもっていた銃を構えるが間に合わない。ゼルは拳を作りルッソの腹部を殴った。



ルッソの大きい体でも、体がのけぞる程の強い衝撃。ルッソは意識を保とうと必死に両目を見開くが、意識を失って倒れた。



「いやいや、危なかったよまさか銃を二つ持ってたとは予測できなかったネ。

おかげで片腕撃たれちゃったよ」



欄はそう言って笑いながらゼルの目の前まで歩いて来た。



「いい加減にしろ。お前の芝居に付き合う気はない。さっき撃たれてないことがばれないとでも思ったか?」



ゼルは弾が無くなった銃を床に放り投げた。

欄はそれを聞きキョトンとした顔でゼルを見る。



「もしかして気付いてた?私結構上手く撃たれたように見せ掛けたと思ったのに」



ゼルは腕を組み言った。



「ギリギリの所でお前が弾丸を回避していた。

そのあとすぐに、床に溜まっている血の水溜まりを自分の右肩にへばりつけ撃たれたように見せ掛けた……違うか?」



ゼルが問うと、欄は剣についた血痕をハンカチで拭き取りながら答えた。



「あれぐらいのスリルがないと面白くないよ。それにゼルからもらった『物』も使えたし」



そう言って床に転がっている黒く丸い球体に視線を向けた。



「あれは元は護身用や防犯用に使われる物だからな。一時的に特殊な水蒸気を放出し、銃を短い間撃てなくする。

細かい仕組みは知らないが列車に積まれていた物を使っただけだからな……」



なるほどといった顔で欄は何度も頷く。



「ゼル、なんでこの男を生かしとくネ?

こいつは盗賊達の親玉かもしれないよ」



ゼルは欄の言葉に首を横に振る。



「いや、それはないな。こんなに客の少ない列車をジャックすることがおかしい。

大富豪を人質にとっている可能性も考えたがそれも見当たらない。

だとすると、残る目的は一つ、『物』とりだ。

しかもこれだけの人数でジャックするぐらいだ。相当金になるやつなんだろうな」



再び欄は納得した表情で頷いた。


それにしても持っていた列車の地図と列車の中の構造がまるっきり違う……。

俺が持っている地図では列車は5両編成のはずだが……この列車はそれ以上の車両がある。

だとすると、俺とダフが持っていた地図は完全なデマだったということか。

ゼルはそう考えると少し眉間にシワを寄せた



するとゼルは倒れている男の方に視線を向けた。



こいつからこの列車の地図を探す。

ジャックする列車の地図ぐらい持ってるだろうからな。

そう思いゼルは男を自分の背中におぶる。



「とりあえず隣の部屋に移るぞ。ここは空気が悪い」


血に染まった車両を見てゼルはそう言った。



「えー。こんなに空気が美味しい所は無いのに」



欄は残念そうな顔でそう言った。



「お前は一生ここにいればいいだろうが」


「冗談よ!冗談!チャイナジョークネ!本気にしないでよ!」


「お前の変なお遊戯(ゆうぎ)に付き合ってる暇はない。さっさと先を急ぐぞ」



「了解ネ♪」



そう言って二人は隣の車両に向かった。

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