歩行者8
どうも突貫小説製作者の鷹崎です。
今週の話をとうぞ!
日本にやってきて一週間経った。
最初は駅で覚えた不安で、この国でやっていけるのかどうかと、何度も考えた。
でも、フリスが残してくれた言葉が私に勇気をくれる。アナタが住む事を憧れたこの国でやっていけるガイドが、何度も救ってくれた。
特に『日本人は礼儀正しいと、考える人は多いと思う。しかし、我々は人間だ。礼儀正しくない人もいる。忘れるなよ』と、考えてみれば当たり前な言葉でも私は嬉しい。
みんな同じだと言う例えが好きだ。
『うん。流石だアリサ。別の国だからって恐れることは無いよ。ただ言語が違うだけ、色が違うだけ、背丈が違うだけ、それだけだ。そんな人身の回りにたくさんいるだろ? 君もその中に入れ――大丈夫だ」
何度も繰り返される私への励ましの言葉。
私はまだやっていける――。
夜、私が最初にこの町で利用した駅へ向かう。
ノーマネーストリートミュージシャンの演奏を聴きに行くためだ。
不思議な演奏法で唄い、私を圧倒させた。芸術の街の出身者である私をだ。
地元に住む知り合い他、他人様でもすら芸術性が全くないものには絶対に関心を得ない。しかし、ギターの語り弾きならぬ、ロボットの語り弾き――並々ならぬパワーを感じだ。
ただし、聞いてから三日後に気付いた。
色々考えながら歩いてるうちに、例の駅に着いた。一週間の間に地理を固め、迷うわないようにしておいて良かった。
我ながら感心する。
更に近づくと、音楽が聞こえてくる。
間違いない、彼が居る。
少しワクワクしながら近づいた時だ――この世と思えぬ悲しい声と、今まで聞いたことない音楽が響いていた。
別な人かと思ったが、最初に出会ったロボットが立っている。間違いない。
あああっ! 俺うゎー! なんてここと、してしまったんっ、だ!
そんなつもり、全く、無かったの、に!
彼女を、彼女、彼女を、彼女を傷つけてしまったんだ~~~~俺は、やってしまった。
傷つけた! 傷つけた! 傷つけた!
心を~~~~やった! あああ~~~~!
俺は、彼女する資格がない! あの子幸せにする資格が無い!
彼女は俺が好き、俺は、分からない。答えが浮かばない。
確かに、側いれば楽しいのに、それは恋と呼べるのか~~~!
と、もはや唄ではない、ただの叫びだ。
本当なら離れても誰も私を非難する人は居ない。しかし、あまりにも悲痛すぎ声、あの夜とは真反対だ。
それに、泣き始めている。
嫌な事があったんだろう。泣き始めながら唄い続ける少年に近づき、ハンカチを差し出した。
「酷い唄ね。取りあえずこれで涙拭いて」
私を見て、少年は驚き演奏を中断した。
互いに目を合わせるように簡易椅子に座り、彼の相談に乗る。
声は何度も途切れ、日本人ではない私にはしっかり聞き取れなかったけど、恋で悩んでいるのだけは分かった。
「お、俺は・・・広美こと、どう思ってるのか・・・確かに、か、彼女だけど」
「・・・彼女! 恋人いたの!」
失礼ながら叫んでしまった。正直、こんなロボットを作るような人に恋人など居るはずがないと、先入観で判断していた。
「失礼な! 俺だって彼女いる! 悪かったな」
更に目に涙がにじむ。
「ご、ゴメンナサイ――で、その彼女と何があったの? 話を聞くくらいなら出来るわ」
また涙あふれそうな目で私を見ながら詳しく話し始める。
「確かに広美は優しいし、俺が気付かない所を助けてくれたりして・・・良い奴なのは分かっている。だけど――それが、俺にとって真剣に広美ことを愛してるのどうか、正直な分からない。現にも、今日の夕方広美が腕を組んできたけど、払ってしまった。そ、それで・・・お、俺は」
「ストップ。深呼吸して・・・ゆっくり話して」
混乱している。今日含め、まだ二回目しか会ったことしかない相手に色々話してくる。よほどため込んでいたとみる。
「す、すみません。
――今の気持ちが、広美に対してちゃんと愛してるか、してないか」
「話を裂くようで悪いけど、はっきりしたいんだよね? 愛してるか、していなか」
今の展開で行くと、無限に続きそうな予感がしたので、きっぱり言う。
「あ、そ、そうです。そうなんです・・・どっ」
「おっ! 幸一じゃないか、やっぱり居たか」
聞き覚えのある声が駅構内から聞こえてくる。
少年と私、同時に声がする方へ向いた。
「アニキ!」
「佐々木一馬!」
日本に来て最初の夜に化け物と間違えた人と思わぬ再会をした。別れ際にまた会うと言ってたことはあながち嘘ではないと、震えと同時に感じた。
「シャツを着ている事は、どこかで務めているの」
「貿易の方で、ちょっと」
「ぼ、貿易!」
「営業だけどな、アニキ」
「・・・確かにちょっね・・・」
話が脱線しけど、少年の顔色が良くなったので良い休憩だと思う。しかし、あの男と面識があったなんて世の中狭すぎよ。ビックリしたじゃない。
「俺みたいな能じゃこれが限界だ。でも、それよりも先顔蒼ざめていなかったか? 何か切羽詰まるような話し方しているみたいに見えたけど。俺でも良かったら話聞くぜ」
「っ! アニキ」
思わぬ申し出に驚く少年。一見、何も出来そうには見えない男だけど、それなりに何か見ているのだと思った。
ゆっくりと口を開け、男にも話し始めた――。
「そゆう事か。面識薄いけど、俺は十分に広美さんを愛しているように見える。俺は大丈夫だと思う」
曖昧な答え方はしない、この状況では正しい判断。
「私もよ。それでも判断がつかないなら、いい方法あるわ・・・聞いて」
確認する意味で、アニキと言う男に話している少年言葉を聞きながら思いついた事を言う。正直、成功する可能性は低いけど、やったら意外と成功する可能性もあるから。
「判断するいい方法?」
困惑する少年に向かって、私は今出せる最高の笑顔で答える。
「彼女の顔スレスレまで近づいて、頬っぺたを両手で触りながら更に近づく・・・それで、ダメなら、そこで別れて。ダメじゃなかったら、あとは自由よ」
「はっ?」
男二人呆けた声で言う。
だから男は! 男の馬鹿さは万国共通なの?
「用に、アナタは彼女に触れたこと無いでしょ? 付き合ってるなら少しなら良いでしょ、それでもなら別だけど・・・ねっ」
少年は黙り、考え始める。
今まで感じたことのないこと無いのか? 男緊張した、顔で少年を見続けている。
「・・・良し。あいがとございます、明日早速試してみます・・・それではこれで」
と言い、素早く荷物を集め、ロボットとこの場を去った。
私と男、二人残されて男が先に口を開いた。
「確信あるのか?」
「無いわ。どっちにしろ、あの子が決める事よ」
「子供に向かって根拠のない話を、酷いな」
「思い悩んでいたのよ。重症なのを応急処置したのよ」
静かな言い争いが少し続いて、先に喧嘩を売った男から話を切り上げた。
「・・・悪かった。俺が悪い。確かに・・・俺だけじゃ、ちゃんと言えなかった。ありがとう。
それで、申し訳ないが聞かせてくれアナタの名前?」
切り上げがてら私の名前を聞くなんて、礼儀の正しくない人。
名前は長いからこれだ言う。
「アリサよ。私を呼ぶときはこれで言って。一応言っとくけど、私は結婚してるわ」
「安心しろ、間違ってもそれはない。人生史上最悪に女運ない俺にそんな気はならん」
きっぱり言われるとなんか嫌だ。
「なら安心ね。遅いから帰るわ」
「おう。また会える日まで」
佐々木一馬から離れる際に、フリスの言葉を思い出す。
『フランスでも世間は狭い。なら日本なら・・・恐ろしいぞ』
佐々木に気付かれぬように、微笑んだ。
◇ ◇ ◇
一睡もせず朝を迎えた。
夜中広美に『朝早く来てほしい』と、短いメールを送って以来眠気が全く来なかったからだ。
怖い。昨日したことで愛想尽かれるていないかどうか考えるだけで頭が痛い。それに、もし尽かれていなくとも、俺がダメだったら・・・・。
昨日相談に乗ってくれたフランス人のアリサさんと、アニキ。二人は問題ないと言ってくれたけど、それでも完全には不安が消しきれない。
広美自身と俺自身同時に考えないといけないなんて、嗚呼この苦しみから解放されたい、早く楽になりたい。
時計が午前5時を回ったのを確認して家を出る。父も母も誰もいない。二人とも忙しいし、兄は製薬会社で新薬の研究で遠い田舎で暮らしている。行ってきますと言ったのはいつの日か。
ぼやいても仕方ない。家のカギを締め、ズボンに入れて走り出した。
到底歩いて行く気分じゃなかったから――。
早朝の校内は静かだ。
何時もなら何かしら喧騒な声が響き、先生たちが大声出したり、逆に先生に対して大声出したり・・・あの状況なら広美は輝いているし、優しい。けど、ちゃんとした二人っきりだったとき、俺は広美を見て愛してると言えるのか?
俺と広美関係。広美からの告白から始まった。
ちゃんとし二人っきりじゃなく何人か隠れていて、俺が良いよと、言った瞬間数発のクラッカー音が俺達を歓迎した。
よく考えれば、二人きりになれた記憶がない。
いや、俺が避けていた。恐れていたから。最近よく分かったんだ。
遅かったけど、気付けた。
冷静に考えれば考える程避けていた・・・。ひょっとして、おれ広美見ていない?
見ているけど、見ていない。
深い絶望と、恐怖。あの優しい笑顔を振りまく広美を、振り回している可能性がある。傷つけた可能性がる。
腕を組むのを拒否した時、俺は絶頂に困っていた、不安だった。
俺は決意する。
アリサさんが教えたことをして、何も起きなかったら俺別れる。これ以上、広美を傷つけないため、最小に食い止めるために!
「さ、幸一。お、おはよう」
決意を改めた時、広美の声が教室内に響く。
いつもなら俺に挨拶した同時に、広美の友達が集まってきて『朝からお熱いですね~』
とか言ってきて、冷やかすのに今日は居ない。
完全なる二人っきりだ。
「な、何の用?」
「ちょっと近づいてくれ」
「? 良いけど」
首を傾げ、困惑した表情で俺に近づいてくる。
短期決戦。長期戦にもつれ込めば絶対に不可能、覚悟を決める。
俺の近くに着た瞬間、体勢を屈め、身長を広美の高さにして、目を合わす。
驚いて、のけ反ろうとしている広美を逃さないため両手を頬っぺたに固定して広美を見た――。
大きな黒い瞳に、ちゃんと整えた眉、両手に伝わる頬の暖かさ・・・俺が好むセミロング髪形、俺が一回しか言わなかった事をちゃんと覚えていて、実行している。
アリサさんが言ってくれた通、問題なかった。杞憂だった。
――俺は広美を愛している。心から。
心の中で笑い、戸惑ている広美に言う。
「広美愛してる。まだ長い道だけど、一緒に歩いてくれ」
悩み晴れ、すっきりした気持ちで広美に気持ちを伝えた。
困惑していた広美も理解してまぶたに涙を浮かばせた同時に、唇を合わせた――。
誰もいない教室で、プロポーズみたいな愛の告白をした。
まぁ――このままでプロポーズにしても問題ないか。
と、思い、外から何時もの喧騒がやってくるまで唇を合わせ続けた。
◇ ◇ ◇
次の日何時ものように出社し、社員証がタイムカードになっているのでそのままタッチする場所にタッチして、ピピっと、小さな音を鳴ったのを確認して下駄箱へ入った。
内履きに履き替え、社内に入って休憩所差し掛かる前よりも前に、騒いでいた。
何事だと、急いで俺も休憩所に向かう。
休憩所は四方形の空間に作らていて、小さな円形のテーブルと、小さな椅子が四つずつテーブルに合わせ設置されている。そこになるまだアナログ表記されている小さなテレビが一台。そこに食い入るように、全テーブル、全椅子に座りながら各署の人が集まりテレビを見ている。
「佐々木こっち来い、詳しく話してやる」
宮崎先輩が小さな声で俺を呼ぶ。
「何があったのですか?」
「横波のタンカー。ロケット弾数発受けたそうだ。昨日の緊急な、意味はこれだったんだ。納得だわ」
ろ、ロケット弾!
「でっ、船は?」
「安心しろ、魚雷二発受けても沈まないと言われる横波のタンカーだぜ、ちゃちぃ装備しか持っていない海賊の攻撃などかすり傷だぞ」
業界内での噂話、あながちウソではなさそうだ。
笑っている先輩を横目で見ながら胃痛を覚えるのであった。
そして、その日から一之宮を見る度に、今まで感じたこのない気持ちを覚えるようになった。
多分、昨日の奇跡を起こした責任を取れと言われたせいかも――。
申し訳ありません。今の実力じゃこれが限界です。更なる向上のため、努力していく所存です。
次回は、一章の最終回です。今まで以上のボリュームで行く予定のため、再来週に投稿します。楽しみにしてください。
楽しんでもらえれば幸いです。