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歩行者  作者: 鷹崎徳
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歩行者7

 突貫小説製作者の鷹崎です。

 今回は宮崎さん活躍の回です。前回、前々回ともに職場内では悪評高き人ですが、仕事は人一倍できます。一応、設定だと超名門大学卒になってます。あとは、想像にお任せします。

 佐々木だけの視点ですが、どうぞ見てください。

 皆さんに楽しんでもらえれば幸いです

「一之宮。この仕事上手だろ、私の代わりにしてくれないか? 手が空いたらの話だけど・・・あっ、ハイ、こちら営業一課の、宮崎です。はい、先日の件御受けに・・・ありがとうございます。

 佐々木、手空いてる? 午後二時だけど?」

 電話右手、左目は一之宮、右目は俺。人間ができる範疇を大きく超えてる・・・ひ、左手はパソコンのキーボードを叩いてる。

「その時間なら、会社に帰る時間・・・空いてます」

「良し! 井上課長。例の一件、横波運送に話しつけました。二時に話し合いをしたいと今連絡きてます。課長にも話したいと言ってますので、回線まわします」

 課全体がざわめいた。超大手の横波運送、中東方面に大きく展開している最強の貿易会社だ。毎日『小さな引っ越しから、大型郵送まで全部お任せ。まず電話一本から』と、一分近くのCM放映してるほどの巨大企業。

 俺達の会社よりも圧倒的な低価格、定時運送、絶対的信頼で高い業績を誇っている。しかも、シーレーンの力なく独力航行で海賊地帯を幾度も突破していて、幾度も返り討ちにしているとも聞く。逃げ出すと言われる・・・沢山の逸話が横行する会社だ。

「ほっ、本当か? 宮崎」

「ええっ、今日佐々木と一緒に挨拶に行ってきます。私は、沢山仕事があるから、この先佐々木に任せるつもりだから、顔を覚えさせる為にね」

 思わぬ宮崎先輩の一言、思わず立ち上がらずにいられなかった。

「えっ⁉」

「おっ、いい反応。見ての通り手一杯だ、結構手空いてる風に見えたから・・・そろそろ、胃に穴が開きそうな仕事任せても問題ないてね」

「そ、そ、そんな! 俺は・・・」

「私の尊敬してる人の一言だと、三か月以上働ければ、大きな仕事こなせるってね。だから、根性ある佐々木に任せた。それに、結婚前提だからな・・・クビになったら捨てられたらたまらんし」

 真剣な眼差しの向こうに見え隠れしている下心と信頼、同時に察しとれる。ここは逃げたらお終いだ。

「・・・俺できますか?」

「出来そうだから言ってるじゃない」

「・・・わかりました。俺やります」

 小さく笑い。課長の向けて一言。

「聞きましたね課長。今後横波の一件佐々木をリーダーにしてやります。容認できますか?」

「宮崎さんが言うなら・・・良いでしょう。佐々木、任せたぞ」

 即答で俺に向けて言う。

 この時点で俺はとんでもない位置に立ってしまった。まだそんなに会社に来て日が経ってないのにリーダに選ばれた。快挙か、それとも何かしらの悪いこと? それとも夢? 全員に見られないように右足で左足を踏む。

 痛い。夢じゃない。

「・・・ハイ、頑張らせてもらいます」

 と宣言した同時に一斉に拍手が起こる。一之宮、武市もしている。

 武市は越されたなと、少し鋭い目で見るがすぐに優しい何時もの目に戻り、一之宮は尊敬の眼差しで俺を見つめてる。

 拍手はしばらく止まなかった――。


 怒涛の朝は過ぎ去った昼下がり。暑さが支配する時間帯を宮崎先輩と一緒に、先方先の横波運送へと足を進めていた。

 巨大ビルが建ち並ぶオフィス街、弱小企業の俺達じゃ到底一フロワー借りるのも不可能な場所だ。そこに先方の会社がある。

 覚悟してきたものの、やっぱり胃が痛い。対等に渡り合え存在なのか不安になる。

「緊張してるのは佐々木だけじゃない、私もだ」

 察しられたのか、ただ自分の不安をもらしたのかどうかわからないけど・・・少し不安が消えた。

 そしてデカい自動ドアを潜り、目的地へと進んで行った。



 顔合わせは十五分程度で終わった。当初の予定では三十分だったんだが、何かしら緊急の知らせが入ったので要点を言い合う形で終幕した。

 終始腰が抜けそうな状況、隠すのがやっとだった。それに引き換え、宮崎先輩は恐れることなく、自分よりも二倍の身長差のある担当の人と渡り合っていた。

 ――正直、本当に一年違いの人なのか? 本当は年齢誤魔化して、数年やってじゃないか? と、思う。

「それにしてもあの担当、図体デカかったな。厄介専門でも回してきたと思った」

「・・・厄介専門?」

「そのうち嫌でも分かる」

 もう慣れたよって、言いたそうな小さな笑み。

「はぁー、わかりました」

 それなりに宮崎先輩も気なっていたんだなと、それだけ印象的だと思った。


 そして俺達の会社に戻り課長に内容を知らせ、各自自分達の席に戻った。

「どうだった? 先方先」

 溜息を出しながら椅子に座る同時に一之宮が顔俺に向け、乗り出してきた。

「どうもなにも、互いに協力しながらやっていくみたいな話だよ」

「・・・つまらんな。上手くやっていけるか心配だよ」

 左右に顔を振る。

「・・・悪かったな」

 と言い、今日やり残した仕事を終わらせるべくPCを立ち上げ、作業に入り込んだ。

「まぁー良い、時期に上手くやるか」

 励ましたか、けなしたのか分からん事を言って一之宮も作業に戻った。


 それから二時間後。

 残業かけてやっと終わった。

 荷物をかき集め席を立ちあがった時、宮崎先輩も同時に立ち上がり俺に話しかける。

「終わったか佐々木? 終わったならちょっと来てくれないか」

 手招きしてくる。

 取りあえず無言のまま宮崎先輩の席に行く。

「例の飲み会の件なんだが・・・・」

 不意を突かれた。予測していた筈なのに、先輩の活躍に感心していて忘れていた! 迂闊だった。

「は、ハイ?」

「無理してしなくていいよ。私も少しは自粛しないと思ってね。やりたいんなら、いつでも誘ってくれ、楽しみにしおく――、あっ、一之宮が帰ろうとしてるよ。送ってやれ」

 荷物の整理を済ませ、立ち上がる一之宮を指さす。

「えっ、で、でも」

「先輩命令だ。ちゃんと送るんだぞ」

 顔を目の前にまで近づかせ、念を押すように言う。今まで見たことのない気迫に負けて言う。

「ハイ。送らせてもらいます」

 宮崎先輩に見送れて一之宮と同時に会社を後にした。

 一之宮も思わぬ事態に驚き、何時もの活発な話し方はせず、終始無言のままだ。俺も同様。

 駅が近づく。

 やっぱりこの状況は嫌だ。俺は思わずこんなことを聞いた。

「一之宮。なんで俺の事を好きになったんだ?」

「っ!」

 声までは出さなかったかった物の、反応は大きかった。

「・・・遂にその質問が来たか」

「気になってな。そこまで俺に執着するする理由を聞きたい」

 何かしら進展させないと、今後も一緒に仕事をしていく仲としてぎこちない関係は避けたい。せめて、理由ぐらいなら。

「・・・佐々木が歩いてるからだ。それだけ――」

 一之宮は恥ずかしがる様子も見せず、堂々と俺に向けて告げる。何事も揺らがぬその想いを隠すことなく。

「えっ? それだけ? それだけなのか?」

 思わぬ理由に足が崩れそうになる。意味が分からない。当たり前の事で、なんで俺が対象者になるんだ? 一之宮は俺を馬鹿にしているのか? 怒りが立ち込め始めた刹那。彼女が言う。

「色んな人が居るんだよ、この世界には」

 最初意味がわからなかったが、俺も子供じゃない。一之宮が言った言葉、その思いはすぐに理解できた。

「おっ――、一之宮、お前、まさか」


 

「佐々木と歩くために、私奇跡を起こしたんだよ。歩き始めて約三か月、それ以前は絶対に歩けないと言われた少女」


 俺達を避けるように歩く人ごみ。

 まるで俺達だけ時間が止まったみたいだ。

 そんな中、一人笑顔で俺に告げる一人の女性。

 俺は、そんな一之宮を静かに見るしかなかった。

 こんな不甲斐ない俺が、彼女の対象者に、そ、そんな馬鹿な。

「い、一之宮・・・・」


「奇跡を起こさせた責任取ってくれ、一馬」


 と、言い残し、一之宮は人ごみに紛れるように改札を抜けて行った。今追いかければ追いつくのに、その場で動けなくなった。

 



 宮崎先輩の一言で大きな仕事をもらった佐々木。仕事頑張れっと、言いたいです。 

 一之宮の思わぬ告白。佐々木の心が少し揺れました。どうなる事とでしょう・・・。

 二章めから本格的に歩く話になっていきます。皆で力を合わせていくメンバー達に応援をお願いします。

 以上鷹崎徳でした。

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