歩行者6
どうも突貫小説製作者鷹崎です。
今回も無事に投稿できました。いやー疲れた。
幸一と広美の話をメインに書きました。一馬たちの話も入れてますのでどうぞ楽しんでください。
「フッフ~ン、フフッ~」
朝から訳の分からない鼻歌を歌い続ける幸一。偉くご機嫌だ。
クラス全体から異様な目線を集めていても気にせず、(気付いていない方が良いかも)一節、一節違うパターンで奏でる。
「広美さん。ちょっと良いかな?」
担任の吉野上先生が私肩を慎重に突っつきならが言う。小心者先生じゃないけど、こういう少し変な事態に弱い。
「ハイ? 何ですか」
振り向きざまにこたえる。
「確かた鮫島君と付き合ってるて聞いたんだけど・・・それ本当?」
「ええっ事実です」
校則には男女交際を禁止する事項はないからはっきりと言い返す。別に隠してる訳でもないし、聞いてくるなら答える。しかし、なぜ今?
「それなら良かった。じゃぁ聞くよ、鮫島君頭でも打った? 広美さんがショックな――」
「打ってもいませんし、ショックなこと言ってもません。言ってもあんな風になりません! 私だって付き合い始めて、初めて事態で混乱してるですから変な事聞かないでください」
「ゴメンナサイ。なら良いけど、何時もなら朝から職員室にきてロボ話していくんだけど、今日は来なくて・・・気になって教室に来たら・・・あーなってた」
先生も混乱している・・・じゃなくて、幸一、先生にそんなことしていたの? いくらロボ好きだからって、迷惑かけないでよ。恥ずかしい。あとでとっちめてやる!
混乱からさーっと、冷静になり、即座に怒りに変わる。
「先生ありがとうございます。なんで幸一が朝から私と登校しないかわかりました。あと、数分で幸一を正気に戻しますので少々お持ちください」
笑顔で言う。
「だ、ダメです。正気に戻るのは広美さんアナタです。れ、冷静に!」
先生の話たぶん聞こえていない。それよりも、一刻も早くあのロボオタクを目覚めさせなくては。
なお、上機嫌続行中の幸一には私の心の怒りには気付いてない――。
「き、起立! 礼!」
恐怖に震えながら先生はホームルームを終わらせ、教室から逃れて行った。
「幸一。何時も朝からしていることと、なぜ上機嫌なのか説明して」
静かに言う。
幸一は青ざめたまま静かに答える。
「そ、そんな怖い顔で言うなよ。吉野上先生怖がっていたぞ。先生怖がらせるなんて――。」
「答えて」
「ひっ! き、昨日新しいお客さん来て、俺の事を褒めてくれたんだ。そ、それ、それだけだ。別に浮気とかしてる訳じゃない」
「・・・幸一にそんな度胸ない。そーか、新しいお客さんね。だれ?」
「綺麗なフランス人のお姉さん。良いじゃねーか、きれいな人に褒められて嬉しがるくらい」
両腕ばたつかせながら必死に訴える。これぐらいなら、別に問題ない。大事じゃなくて良かった。それに幸一の立場が私なら、カッコイイフランス人のお兄さんが来ればたぶん同じ行動起こす気がする。
本当に頭打ってなくて良かった。
「そう。良かったじゃん。てっきり、頭でも打っておかしくなったと思ったから。それぐらいなら許容内」
「許容内って言っても既に手遅れじゃねか! いきなり拳骨一撃は無いだろ! マジで痛いだから」
「それぐらい勘弁して。帰りおごるから」
笑顔で言う。
「ぐっ! ・・・それなら、それなら、許してやる。次がら気を付けろよ」
単純な奴。笑顔と、おごるぐらいで許してくれた。
でも、いい人だから喧嘩したときぐらいしか使わない。利用してるとか思われたくないから。
放課後。
駅施設内ある小さな喫茶店に私と、幸一といた。ここ最近できたばかりで、おじいさんンが経営していて、日中は結構繁盛しているけど狭い。
そこでアイスコーヒーを飲みながら話していた。
「まぁ高いの言えないし、これが妥当だな。ここ気に入ってるし」
「許して。まだお小遣いの日まで少しあるから」
「・・・別に」
ぶっきらぼうに言う幸一。
「幸一。どするの? 夏休み」
それに対して、目の前に迫ることを聞く。
「夏休みか・・・何も考えてなかった。遊ぶことも、受験の事も」
「・・・ダメじゃん。それは」
せめて遊ぶことぐらい考えてほしい。まるで昔のことを思い出す老人みたいな発言は止めてほしい。
「ただ暑いだけ。俺、暑いの苦手なんだよ、冬のが好きだな。熱中症覚悟で遊ぶ気がわからない」
真面目な顔で話し出す。
「ちょ、長期休暇だよ。せっかくだから――」
「犠牲の上の休暇だと思ってる奴どれぐらいいるんだろうな? 広美」
だんだんブラックな表情に変化していく幸一。悪い性格が出てきている。
すぐに私は話題を変える。
「そ、そうだね。それよりも、昨夜のフランス人女性の話聞かせて」
「あ、聞きたい?」
「うん。聞きたい」
急遽転換。上機嫌だった朝の幸一を思い出し、例のフランス人女性の話に不意を衝くように聞く。効果てきめんだ。華やかな表情になり、重苦い話から一気に楽しくなった。
良かったことだけど、なんか複雑。
「俺がいつもの場所で演奏会をしていたら、金髪の背の長い女性が階段から降りてきて、真っ先に俺を見てくれたんだよ。ほっそりしていて、中々の美人だった・・・気、持ってないから! 持っていないから!」
「大丈夫、わかってるから続けて」
「何曲か唄いたかったけど、バッテリーと無理ばっかりしているし、とりあえず一曲だけ唄って終わった。そして、その人からお金取れるって言われて嬉しくなったわけ。
俺は金取ってる訳じゃないし、ただ楽しんでやってるだけだから・・・それだけ。また来るって言ってたぐらいかな」
それだけだった。何かあるかと思ったけど、何もなかったし、今の幸一の話だけじゃねぇ・・・。表情にも先と同じく曇りなく、嘘をついてるようには見えない。この話は紛れもなく本当の話だとみた。
「精進しなさい。他の客層も掴めるかもね」
励ます。
「お、おう。精進させてもらうぜ」
驚いた顔で言い返す。別に、大したこと言ってる訳じゃないのに。
「べ、別に、驚かせること言ってないでしょ。なんで驚くの?」
「いや、初めてだったから・・・広美に励まされるの。てっきり、励まさないタイプだと思っていて・・・それで、驚いた」
・・・えっ? 私励ましていなかった? 出会ってから、今日までの出来事を思い浮かべてみる。あっ! 全然褒めてもないし、ましては励ましてもいない。ただ習慣でしか見ていなかった。
「・・・ゴメン。結構すごいことだけど全く励ましたり、褒めたりしてなかったね」
「・・・謝られることしてないよ。むしろ、特殊な俺に付き合ってることに対してゴメンって言いたいよ」
「と、特殊じゃないよ、才能だよ。胸張って幸一の彼女だって言える」
右手を胸に押し当てて言う。
「・・・ありがとう」
それを少し複雑そうに、見てるけど見ていないような、別な何かを見ているような、変な視線で私を見ながら言う。
「そ、そんな悲し顔でありがとうって言わないでよ。ほら、いつものように楽しくいこう」
久しぶりに見る幸一の悲しい顔、原因はまだわからないけどたまに変なことを急に言いだして、遠い何かを見ているような視線で私を見る。まるで、近いけどかなり遠い所に私がいるみたいに。
まるで私が無理に幸一のそばにいて、邪魔なのに付き合ってくれる。と、考えてしまうほど。
「あ、あ、そうだな。悪かった。もうこんな時間だし、帰るか」
店の時計は十九時を回っていた。門限自体は無いけど、やっぱり早く帰ってた方がいい。
「そうだね。帰ろう」
二人分のアイスコーヒーのお金を払い、一緒に店を出た。
タッ、タッ、タッっ、二重に足音を立てながら並んで帰る。
空はまだ明るいけど、太陽は完全にビルの向こう側に沈んでしまった。
互いに喋らずに黙々と歩き続ける。
無意識に幸一の左腕に私の右腕を絡ませようとした時、さっ、と左腕を離されてしまった。
――拒否られた。
「ゴメン。気分じゃない」
先以上に悲しいそうな顔で私を見ながら言う。
「う、うん、わかった」
そのあと、一度も会話を交わさずに別れた。
多分、明日はよくなって会うはず。こうして一日が終わったことは何度もある。明日を信じて私は誰も聞こえないように、幸一が作った唄を奏でながら家路についた。
◇ ◇ ◇
「ど、どするんだよ! あの魔王をそのきにさせて」
「わ、悪い。許してくれないと思うが、許して」
倉庫整理後の帰宅途中、俺と一之宮は言争い寸前で状態で、酒飲み魔王の宮崎さんについて話し合っていた。
このままじゃ俺と一之宮、今月は完全に死ぬ。財布的に死を受けることになる。
新入社員歓迎会後の二次会、そのた飲み会、営業課長以下ほぼ全員被害、魔王の餌食になている。一番慕っている一之宮も例外ではない。むしろ最大の被害者だ。
「許して言ってもな・・・」
許せても、先は決まっている。
「割り勘でなんとかなれば良いけど。あの人の飲み方異常だからな――」
「あえて高い店で、ざるでレベルで飲むことないのに」
苦笑する二人。
互いに新入社員歓迎会後の悪夢を思い出す。
全国チェーン店の居酒屋で夕方から夜まで歓迎会して、大体閉めに近づきだした時だ。井上課長が、
『本日はお開きで! 全員解散!』
と、いきなり叫んだ。
てっきりこの後二次会でもあるかと思っていた俺等は、思わぬ発言に驚いてしまった。
ほかの人と社員も一斉に立ち上がり、課長の後を追うように個室から出ていく。これが、この営業のやり方か? と、出ていく一人を捕まえようと立ち上がった刹那、宮崎先輩が俺の手を掴んだ。
「皆忙しいからね。一之宮さん、武市君。私達だけでやろう――」
運が尽きた瞬間だった。
帰れたのは朝方、始発から三本過ぎた時だった。これほど電車の定期券があって良かったと思ったことはない。それほど彼女はヤバイ。ヤバすぎる。
「ハァー」
二人同時に溜息を出す。
そんなこんなで、駅に着く。
自動改札に定期を入れ中に入る。
降りる駅は違うものの、路線と、方向は一緒だ。ともに階段を上り、ともにプラットホームに並んだ。
「なんで着いてるんだ?」
「定番な一言いうな。方向が一緒だからだ。それに、この時間は快速の本数が多いからだ。文句ある?」
「・・・ない。悪かった」
そのあとしばらく会話を交わさず、数分後に定刻通りに流れ込んでくる電車に二人同時に乗り込んだ。
出発まで三分後。時間調整と、特急通過の為だ。
意外と空いている車内。椅子に腰かけ、互いに向き合い、宮崎先輩の件について再び話し合う。
「もう一度聞くが、どうする? 宮崎さん」
「・・・飲み放題で勘弁願うしかない。逃げた武市もとっ捕まえて、道連れにしてくれる。それで三分の一、万事解決」
「良案だが、奴の腕時計見たか? 新品になってるぞ」
「な、何! ・・・あっ! そう言えば、休憩中に他の課の女子社員と時計見せびらかして・・・。ったく、これが逃げ出した理由か。逃がさん」
逃げずにいればよかったものを、逃げたこと後悔させやる。
「私も協力しよう」
一之宮も乗り気だ。これで勝てる。
席から立ち上がり、右手で握手する。
「共線だ。いっちょやるか」
次の日。
一之宮の誘いに乗った武市を倉庫に呼び出し、二人で囲んだ。
「ぼ、暴力反対!」
「手を出すつもりはない。財布に対しての暴力は行使するが」
倉庫の角っこ追い込まれてい武市に不気味な笑顔でささやく一之宮。これがお前の性格か?
「その暴力に対してだ。嫌だ、死にたくない。あの夜のこと思い出させないで! こんなことになるなら、時計なんか買わなかった」
半狂乱になりかけ、叫びまくる。
――ここまで追いつめるつもりはなかった。そこまでトラウマになっていていたとは。
「・・・だから、協力求める。被害を最小に防ぐためにも、武市の参加が重要なんだ。少し前、宮崎さんのこと気になるって言っててじゃない。取り持ってあげる」
普段言わない言葉を際限なく言う。尊敬できる人、嫌な人の境目にたつ人だけに一之宮は混乱していると思う。
単純に断れば済む筈なのに・・・。何故ここまで?
「一瞬の気の迷いだ。酔いと同時に覚めたよ」
「そこを何とか」
「無理だ。断れよ。三人でも持たない」
だんだん泣きそうな顔になってくる。いたたまれなくなってきた。
「一之宮ここまでだ。止めよう」
止めようとする気持ちに持っていくのに迷いは無かった。これ以上やったら脅迫になりかねない。
「佐々木・・・だな。――せめて、教えてほしい。なんで、そこまで嫌なんだ?」
壁に追い込み、ぎりぎりまで迫っていた一之宮は二歩下がり、何時もの冷静な言い方で話す。
「さ、三十万ぐらい飲みに行って、貢ぎまくったのに・・・・全然振り向いてくれないからだ」
――本当にいたたまれない。ダメだ。
この時だけ、俺と一之宮の気持ちが一つになった。
武市を解放し、倉庫で二人壁に項垂れる。
「可哀そうなことした」
「俺もだ」
――逃げるな誰も。
そして、仕事始めチャイムがなり二人仕事場に戻った。
一章の後半に入ります、急いで書きたいんですが全く落ち着かねぇ! 書ける時間が一日一時間あれば良い状態です。十月からは出来るだけペース上げたい(願望)。
今書いてる話以外にも何作品か書いています。クリスマス前までに投稿予定です。楽しみにしてください。
楽しんでもらえれば幸いです。