歩行者5
どうも鷹崎です。次の話を投稿します。
新キャラとして、亡き夫の遺志を受け継いで日本に引っ越してきたフランス人女性のアリサが今回から登場します。前回少し入れましたが、全然わからなくてごめんなさい。
佐々木と一之宮たちの仕事の仲間も出てきますのでそっちも楽しんでください。
この小説を楽しんでくれたなら幸いです。
――アリサ、私がやり残したことが君を守ってくれる。だから、出来るだけ早く私に追いつかないでほしい。ずっと夢見ていた国、日本へ行ってくれ。それが私の最後のわがままだ・・・。君ならまだできる。信じる・・・・。
『――駅・・・お忘れ物ないように』
夢に狭間に聞きなれないアナウンスが響いてくる・・・! 見覚えある駅と同じだ。
強引に意識を取り戻し、全ての荷物を持ち上げ、出口に飛び出した。
間一髪、私が出てすぐに電車の扉が閉まり、出発して行った。危なかった。
目の前にあるベンチに座り、息を整え、夫フリス残した2009年ダイヤリーのページをめり、目的地の駅名を確かめる。間違いない、ここだ。
私の知らないうちに、夫は日本移住計画を考えていた。癌で苦しんでいるはずなのにそんなことを無視して、「二人で暮らすんだと」笑顔で言ってた。
私は誓い、前々から夫が出張だと嘘で通っていた日本の不動産会社で借りた古く、いい感じの物件があるこの町に来た。本当ならもう少し早く来たかったけど、何時間も東京駅で苦しんでしまったし、乗り換えも間違えてしまった。
ダイヤリーのメモ欄に書いてある地図と住所を見て、ベンチにから立ち上がり、改札を目指す。
駅員さんの協力のもと自動改札機を突破した。
地図の道順だと、出口は南口からだと書いてある。まめな夫で良かったと安心する。
数歩南口に向かってる時、音楽聞こえてくる。唄は今まで聞いたことはないものだ。多分イギリス英語だ。日本人は頭は良く器用な人間が多いと聞いたことがある。だから、小国なのに世界と拮抗できるんだと。それを思い出し、音楽の出所に向かう。
エスカレーターで一階にたどり着き、耳を澄ます。
「左」
独り言いい、音楽が鳴り響いた方向を向く・・・・! ⁉
⁉ ⁉ ⁉ 何あれ? いくらロボット大国だからっと言っても、二足歩行で演奏できるんなんて聞いたことないわ! 凄すぎるわよ日本。
演奏するロボット、その傍ら男の子が一人英語で歌を歌い続けている。一見異様な雰囲気だが、なぜかその気にさせない謎だ。
男の子が歌いながら会釈する。気付かれた。
まさかあの子がロボットを作ったの?「器用だがら」と、言う夫の声が響く。可能性はゼロじゃない。
唄終え、男の子が方に歩いてきて再び会釈して、英語で私に話しかけてきた。思わぬ状況にうろたえてしまったが、
「私は日本語でも大丈夫よ」
と、言い返した。
「・・・よかった。凄いですね、日本語喋れるなんて。どこの国の人ですか」
「フランス、パリから来たわ」
「フランス! パリ! 初外国人お客様、フラン人の美人のお姉さんいただきました」
「お姉さんと言わない年よ。あまりからかわないで」
「・・・すいません。つい、ヨイショしてしまいました。お詫びに、一曲どうぞ」
男の子は笑いながらリモコンらしき物でロボットに向け、再び音楽を流し始め唄いだす。
目の前にある椅子に座るように右手を差出し、私に促す。
促された通り、簡易椅子に座りしばらく演奏会に耳を向けた。
「お付き合いありがとうございました。これにて、今夜の演奏会これにて終演です」
一曲きちんと唄って、私に向かって深く頭を下げる。
「良い演奏だったわ。隣にいるロボットも良いい相棒ね」
「いえいえ。まだ調整がいる奴で、二三改良が必要です」
「謙遜しなくてもいいわよ。おいくら?」
「・・・・! 別に、金とって演奏してるわけじゃないんで、お代はなしです。趣味で、無料です」
両手と、頭を同時に振りながら言う。
「あらそう。もったいないわよ。お金っても問題ない出来よ」
「それでもダダです。俺も、みんな楽しければ良いんです」
褒めたらきっぱり言われた。それなりのポリシーがあるなら仕方ない、お言葉に甘えてお金を払わずに行こう。
「わかったわ。それじゃ、また暇になったあ聞きに来る」
「それじゃまた今度で」
と、言い交し、男の子と別れた。
不思議な子とだと思ったけど全然普通の男の子だった。ただ、あのロボットが隣にいるだけで、大して変わらなかった。また会いに行こう。日本に来て早々楽しみができた。
夜は深けていた。日本時間で夜中の一時、完全に深夜だ。
夫は、「日本の安全神話はもう無い、夜中の一人歩きは危険だから避けろ」と言っていた。早速破っているけど、仕方ない。初めての町で、しかも夜、迷うわよ。嘆く。
ダイヤリーの地図通りだと、もうすぐなんだけど・・・・。にらみ合うように地図を眺めた時――。
ジャリ! ジャリ! ジャリ! ジャリ!
突如、得体のしれない音が暗闇から響いてきた。
「! だ、誰?」
音がする方を向いて、小さく叫ぶ。
「・・・ハァ、ハァ、ハァ、み、道に迷ったのですかぁ? お、俺、お、俺で良かったら、案内しますよ」
でっ、出た! 赤い血の付いたリュックサックを背負った長髪男!
思わず叫ぶ!
「いやぁー!」
ゴーストじゃなかった。
親切に道を教えてくれるはずの人を、警察送り寸前まで追いつめてしまった。
私が叫び、周りの家の人たちが飛び出してきて、私を襲うとしてるとしていると勘違いして、袋叩きしてしまった。冷静に考えれば、赤い血はただ赤い着色で、普通のリュックだった。
すぐに止めさせ、助けに来た人、間違いされた人に全力で謝って、大事にならずに済んだ。
そして、今になる。
「勘違いされるような現れかたした俺が悪いから気にするな」
「でっ、でも」
「いいよ。女運悪いの慣れてるから」
「そっ、それでも」
言い争い寸前まで来ていた。
「・・・明日仕事なんだ。早く帰って寝たい。だから、本当に気にするな、じゃ」
と言い残し、リュックを持ち上げ、さっさと切り上げて行ってしまう。
「せめて、名前だけでも」
「名乗る・・・佐々木一馬だ。名乗る者じゃないと言って、また変な形で再会したくない。きっと、また会うだろ、じゃぁな」
ジャリ! ジャリ! と、音を立てながら暗闇に消えて行った。
「また会うか・・・それまで」
その一件後、私は無事夫が用意してくれたアパートにたどり着いた。
『この部屋は古く、立てつけは俺達が住んでいる場所以上に悪い。だが、日当たりはこの町で最高で、綺麗な夜景が見えるんだ。病院を抜け出して、寒い夜空の下綺麗な夜景を見ながら君にプロポーズしたのを思い出して、それに近い環境のここ選んだ。気に入ってくれたかな?』
サビまみれの階段をのぼりながら再びダイヤリーに綴られたフリスの言葉を見る。
「あなたが選んだ場所ならどこでも気に入るわよ」
軋む外廊下。時間は深夜の二時。極力音を立てずにカギに書かれている番号の部屋着く。セキュリティーは完全に不備な木製の扉、私でも押し破れそうだ。
鍵穴にカギを差し込み回す・・・ガギ! ガギ! 回らない。壊れた?
ダイヤリーを見る。
『カギは回りにくい。できるだけ早く修理した方がいい』
・・・私が着く前に手配して欲しかった。
再び慎重にカギを入れ、ゆっくり回す。ガチィン。開いた。
扉を開き、重い荷物を入れ閉める。そして、深呼吸。木の香り私の周りに集まる。
夫は私が好きなの物を全部覚えてくれた。
感謝しなくてちゃ。
部屋の窓から夜景が少し見える。「靴を脱ぐのを忘れるなよ」と、警告が頭を過ぎり、靴ひもを外して、靴を脱いで、部屋に入り、夜景が見える窓に向かう。
「・・・ありがとうフリス。最後までアナタを愛すわ」
プロポーズを受けた時よりは劣っているけど、窓一面に日本の夜景がはっきりと写し出せれている――。
◇ ◇ ◇
「佐々木! この段ボールあそこに運んでくれ」
「了解」
目の前で佐々木が、同僚の武市頼まれた資料入れの段ボールを運び何往復している。
朝から経理部の要請で、資料整理の手伝いに営業の私と佐々木、武市、一つ先輩の宮崎さんが選抜され、走り回されている。
一段落して、佐々木と武市が資料庫から出て行ったのを確認して、宮崎さんが好奇の目を輝かせ、私に迫ってきた。
「聞いたよ。佐々木からケーバンと、メアド手に入れたって! よくやった。褒めてやる」
と言い、私の頭をなでる。
「や、止めてください」
「おっ、ご、ゴメン。息子たちのにする癖やっちまったぁー」
ケラケラ笑いながら両手を合わせる。
「でも、進展ありで良かったよ。あのプロポーズ事件で全部終わったと思ったけど、前以上に仲良くなってるように見るね。まさか婚姻届を持って押しかけた?」
「そこまでやってない」
「やりかねないから言ってるの。したら捕まるわよ~」
茶化すように笑いながら言い続ける。
この人はいい人なんだけど、時には誰以上に付き合いにくい。
「本気で怒りますよ」
「悪い悪い今度おごるから許して。ついでに、佐々木君付きで」
完全に乗せられてしまい、数分間で疲れてしう。なんでこんな人に相談してしまったんだ。迂闊だった。
「そんなに露骨に嫌な顔しないで、本当に悪かった。今度困った相談して、援護してやる」
一気に頼りになる女性になる。最初からボケてる人として会いたかった。絶対に弱い所見せなかったのに。
十分間の小休憩を取ったのち、再び作業が始まる。
男性陣は引っ切り無しに段ボール運びに専念している。
到底佐々木には近づけない。
「佐々木、武市。さっさと仕事片付けてこっち手伝え」
「無茶言うな! あと三十箱以上あるんだぞ、整理と一緒に考えるな」
宮崎さんが言うと、武市が言い返す。
「わかった。頑張れよ。
・・・だって、今の速度だとあと二十分程度で終わるはず。それから手伝ってもらう」
ニヤッと、私に顔を向けて小さく笑う。お詫びつもり?
「そ、そうですか? わかりました」
合わせて私も返した。
そして、宮崎さんの予想通り二十分程度で二人は仕事を終え、私達の手伝いに来た。
「手伝いに来たぞ。これでいいだろ」
「ああっ、皆で一気に仕事をすまそう」
それから整理のスピードは上がり、たちまち仕事は終盤までこぎつけた。その間、私は出来るだけ佐々木の側で仕事して、数回手伝った。いつもの嫌がる表情はなく、つね黙々と作業していた。少なからずとも進展している気がした。
ゼロからのスタートじゃない、最悪のマイナススタートでの始まり。常に劣勢下の状況の中で必死にだった。
その時、宮崎さんに苦しんでるのを見抜かれてしまい、全て話し終えた同時に計算機を取り出してマイナス100を二乗した答えを見せた。
――マイナスからプラス変換成功。今のペースのまま突き進め。
励ましてくれた。
すごく嬉しかった。
そして、少し進展した今がある。
「これにて終了。胸張って定時で帰れるぜ」
武市はバンザイして資料庫内をゆっくり歩く。
「そうだな、久しぶりに定時も悪くない。今日も長い時間練習ができる」
「佐々木は歩くのが好きだな、ほかに活動している奴居ないのか?」
「居ない俺一人だ。仲間集めたいけど、どうすればいいと思いますか? 宮崎先輩なら」
「ホームページ作って募集かけるとか、関係サイトで探すとか」
二人で相談会始める。宮崎さんは始めたすぐに私を見て、参加させようとしているのがわかるけど上手く入り込めない。
「そうだな・・・それも悪くないけど、できたら身近な――」
宮崎さんの目が光った、
「なら一之宮がベストよ! 最近太ったって私に相談してきたばかり、痩せる歩き方教えてあげて」
待っていましたと思うような勢いで話す宮崎さん。援護してあげるってこいうこと? せめて予告ぐらいしてほしい。
出口に向かっていた武市も思わぬテンションに驚き、軽く滑る。
「えっ? そ、それって――」
佐々木も思わぬ奇襲に、次の言葉を選べずにいる。更なる追撃を入れる。
「折角佐々木の事慕ってる人の申し出を無視する気。いい物件よ! イエス、ノーどっち? はっきりしろ」
「・・・イエス。一之宮が良いと言えばの話だけど」
更なる進展のチャンス。ありがとう宮崎さん。
「確かに。佐々木の歩きには私も興味がある、参加させてもらおう」
何時もの話し方でイエスと答える。これで、佐々木と一緒にいられる時間が増える。嬉しさで飛び回りたい。
「成立だね。報酬として、今度おごれよ二人とも」
「え⁉」
私と佐々木同時に言う――し、しまった! 大酒悪魔に頼ってしまった。巻き添えを食らった佐々木。
言わせてはいけない、言わせる事態を作らない最前提忘れてしまった。すでに、武市はいない、おごれの単語が出た同時にタッ! と駆け出す音が聞こえた気がした。逃げた。
軽い気持ちで宮崎さんを誘えば、半月分の給料をたった一晩で飲みつくされる!
「じゃ今度ね」
鼻歌歌いながら佐々木と私肩を叩いて、スキップしながら資料庫から出て行った。
今月は地獄入り決定の瞬間だった。
◇ ◇ ◇
広美とネカフェで一夜を過ごした。
俺が起きた時はまだスヤスヤと寝ていて、起こさないように慎重に毛布から抜け出し、斉宮さがいる事務所に向かう。
「鮫島工場の幸一です。斉宮さん居ますか?」
ガチャと扉が開き、時間帯責任者の人と、斉宮さんが出てくる。
「いるよ、中に入って」
「応急処置完了だよ。予備の配線で動くようにしといた。無理に動かしたから過度に電力が流れたとみる、その影響で回路が数か所焦げてるよ。帰ったらプログラムチェックしたほうが良い。帰る分なら問題ないよ」
中に入るなり斉宮さんの説明が始まる。流石元、親父の工場本ライン保全責任者だ。定年退職しても腕に落ちはない。俺が整備するよりきれいだ。
「ありがとうございます。早速整備してみます」
「うむ。それがいい、困ったらいつでも連絡してほしい。ちゃんと整備すればあと四五年は持つよ」
夜勤明けとは思えぬ笑顔。俺達より格が違いすぎる。
二人にお礼を言い事務所をロボと一緒に離れる。そして、起きたばかりの広美に斉宮さんが説明したことを話て荷物をまとめて、会計で料金を払い、店を離れた。
最後までお付き合いありがとうございます。
レギュラー陣全員集合させました。一か月かかったりました。疲れた。
ここから、ここから自分にとって本当のスタートラインです。いよいよ話が本格的に行ける。楽しく書ける。
途中リタイヤがないように全力尽くします。全話終了までお付き合いお願いします。