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歩行者  作者: 鷹崎徳
3/14

歩行者2

 三話目をお送りします。今回は幸一視点です。心労の一馬に対して二人はどう動くか・・・。


アニキが倒れて一時間が経過した。

 その間何か恐ろしい夢でも見ているみたいに「うー!」とか「止めてくれ!」を幾度も連呼、俺と広美は異様な不安にさいなまれ続けた。勘弁してくれ。

「広美、無理して残らなくても良いよ。俺が、アニキが起きたら連れて帰るから」

 時計は二十二時を回っていた。

 夜間徘徊の汚名を広美につけたくない思いで言う。

「気にしないで、無理言ってきたんだから最後まで付き合わせて。それに佐々木さんと話したいことあるし」

 笑顔で言い返す。

「・・・ったく、何時になっても知らないぞ」

 と言うものの。勝手に意味の分からないことを、わめいて寝てしまった酔っ払いが起きるまで一人で待つのもつまらないし、俺一人と酔っ払いとロボ・・・通報される要因すべてそろっているが、広美がいるだけで状況は少しは良くなる気がする。

「ありがとう」

「どういたしまして」

 

 

 それからさらに十分後。

 何度も冷たい視線さらされながらも耐え、死んでる可能性も出てくるこの酔っ払い。正直苛立ち始める俺たち。いい加減起きないものかな?

「・・・幸一。ロボに殴らせれば、起きるかな」

「・・・当たり所によればな。しかし、コイツにはロボット三原則が・・・」

「そんなもんないでしょ。それとも置いていく? 隣町でおやじ狩りあったけど」

 苛立ち始めてるのか、それとも冗談で言ってる? 駅の入口におやじ狩り多発と書かれているポスターに自然に目が行く。まだ犯人捕まっていなくて、集団だって聞くし・・・。

「起こそう。ロボじゃなく、俺たちの手で」

 先の良い雰囲気はどこに行った。長丁場を決め込むと思った気持ちはどこだ。

 悔やんでも仕方ない。

 スーッ、スーッといびき出しながら寝ているアニキ、佐々木さん。俺と広美一気に立ち上がり、彼の胴体シャツを掴み勢いに任せ上下左右に動かす。

「起きてください! 明日仕事遅刻しますよ!」

 

「――遅刻!」


 死人が目を覚ます中国ホラー映画のキョンシー如く、目を覚ますアニキ。よほど遅刻が怖いのだろう、正気を失いかけ、目線が入り乱れている。

 「きゃっ!」と大きく叫び思いっきり逃げ出した広美。無理もない。俺でもマジ怖い。てか、俺の彼女になんてことしてくれんだ!

 恐怖から一転怒りに変わり、アニキの顔面に右ストレートを食らわした・・・。

「ぐッ⁉」

 と、声かどうか分からない一言いい放ち、俺の正面。アニキにとって後方に倒れて行った。

「俺の広美に・・・・しっ、しまった。アニキ大丈夫ですか!」

 アニキをノックダウンさせた同時に、目を覚ます。

 一気に身体全体から熱が消え、今度は恐怖と後悔が身体全体に広がり始める。なんてことしてしまったんだ。俺は、犯罪者に・・・。

「遅刻ですよ佐々木一馬さん」

 罪に苦しむ俺を無視して、伸びてるアニキに遅刻と言う単語を混ぜて広美が言う目覚めの呪文じゃあるまいし・・・!


「遅刻! 起きなくては!」


 目の焦点が滅茶苦茶のまま倒れた人間とは思えぬ回復力、本当に俺の一撃で倒れたのか信じられん。人間じゃない!  

 理解を越えた事態に更に混乱する俺を、更に無視して、広美は遅刻という目覚めの呪文で気絶を解かれ、更に正気を失いそうなアニキに近づき一言。

「お目覚めよろしでしょうか?」

「当たり前だ! 遅刻しそうなんだぞ!」

「それじゃ、時計を見ないといけませんね。正確な時間の確かめないと」

「おう! ありがとう・・・・・⁉ うん? 日付が変わってない? これは一体何が起きたんだ」

「それは佐々木さんが寝てから一時間弱しか経っていないからです。起こすための口実です」

 パニック寸前の佐々木さんを簡単に治めた。

 状況を飲み込めず、ハトに豆鉄砲食らったように呆然と広美を見ながら、何か関考えている。

 

 ――三分ほど沈黙が続き、この状況を理解したアニキが先に動く。


「ああっ! 思い出した。先までヤケ酒飲んでいて、気付いたら部屋の近く駅の改札抜けてて、女の子を連れて来ている幸一を見つけて・・・・ここからは思い出せない。許してくれ」

 広美に頭を下げるアニキ。

「いえいえ。気にしないで下さい」

「そうだ。気にしないで」

 と、視線を下げている間に平然と広美の隣に立ちアニキに言う。

 場が少し落ち着いた時だ・・・。

「うん? 奥歯に・・・何か違和感が・・・! ぺっ。 嗚呼っ! 奥歯折れてる!」

 何か吐き出したアニキの手には、少し血がつい奥歯らしき大きな歯が乗せられていた。間違いない、あの一撃だ。歯を折っていたのか? やってしまった。

 心の中で叫びまくる。

 そんなこと知らず、アニキは歯が折れた状況を思い出そうと考え始めた時、再び広美が動く。

「もしかして、佐々木さんが私たちにからんだ時、おもっきりよろけてそこ電灯に顔面ぶつけましたよ。痛くなさそうなので、言わなかったですけど・・・大丈夫ですか」

 何一つ表情を変えず広美が嘘をついた。鮮やかすぎて何も突っ込めず、ただ広美のお芝居を見るしかできない。

「・・・大丈夫じゃねーよ。でも、気かけてくれてありがとう。明日病院でも行くよ・・・って、聞き忘れていたけど君、コイツ、幸一とどんな関係? 初めて会うし」

 広美の演技に気付かず、さっさと話を変えるアニキ。機転の利く彼女をもって良かったと思った同時に、俺の尻拭いさせてしまったと新たな罪悪感が湧き上がってくる。正直に言えば良かったなと思うが後の祭り。広美とアニキ、俺はこの二人に借りを作ってしまった。からなず返さなければ。

 と、思ってる事などつい知らず広美は笑顔で言う。

「今年の春から付き合い始めたばかりの恋人です」

「へぇー! 恋人か・・・・あっ⁉ 恋人? 幸一、お前彼女いたのか!」

 いつものアニキらしく冷静さを取り戻したと思ったとたん。広美の「恋人です」と発言した同時に、また先みたいに目を見開いて、信じられない物を見るような、とにかくヒドイ。

 ぐざ! と、心に鋭利な物が刺さる。

「・・・いますよ。いちゃいけないんですか?」

「いや、そんなこと言ってないぞ。ただ純粋におまえみたいなロボ人間に、彼女がいるんて全く思わなかっただけのこと」

 前言撤回だ。アニキに返す物などない。

「・・・そうですか。まあー良いです、こんなこと多々ありますから」

 嘘だ。一応学校じゃお似合いの二人だと常に注目の的、アニキみたいな鈍い奴にはわからないだろうけど・・・。

「そうか。なら良いか」

 顔が引きつってるアニキ。多分、今俺、相当怖い顔をしてるか、嫌な顔をしてるんだろうな。


 取りあえず落ち着いた。 

 俺含め、広美、アニキ。俺がお客さんが来た時のために用意していた茶色い簡易椅子に座り、互いを見る形で事の経緯を聞くと驚いた。なんと、今日アニキは同僚の女性にプロポーズされたのだ。一見嬉しい展開だと思ったが、場所と相手が可哀そうなぐらいひどかった。

「会社で、アニキよりもできる女性に、貴方にはその人以外に相手になる人は居ない。だから、私と付き合えか・・・完全に拾い物宣言ですね。アニキ、御愁傷様です」

「気にしないでください。今の話聞いた感じだと、悪意ないですよ。ゆっくり考えていきましょう」

 と、二人でアニキを慰める。

 しかし前例がない話、どこまで慰められるか全然わからない。まして、俺達高校生の考えで大人の考えに太刀打ちできるか? 不慣れな状況に不安が消えない。

「ありがとう。聞いてくれて・・・・。あとは、歩いて考えるよ」

 お礼を言い、立ち上がるアニキ。相談した効力か、酒が抜けたか、先より表情が良くなってる。

「一人で大丈夫ですか?」

 広美も一緒に立ち上がる。

「大丈夫。本当にありがとう。折角の二人っきり時間だろ、俺なんか構うより一緒にいた方がいい」

 そんな寂し言い方ないだろ。

 寂しく、頼りない足取りで、両手で通勤鞄を包みながら帰る姿を見送るほど俺達は冷たくない。目線を広美と合わせ、全会一致、送ることにした。事故なんかに巻き込まれたら気分が悪い。

「広美先に行って。荷物まとめたらすぐ行く」

「うん、わかった」

 小走りで、駅から国道の歩道へと進むアニキへ追いかける。

 俺もすぐに簡易椅子や楽器類をかき集め、ロボに背負わせ、リモコンで演奏モードから移動モードへ変更する。

 ウィーン! 正常に稼働してる音がロボから聞こえる。――よし! 行ける。

 昨日の失敗で不安があったが、なんとかなりそうだ。すぐに歩け、と、指示をだし二人の後を追う。

 最大速度で追いかけたいが、バッテリーの面やプログラムが処理できない危険性がある。音楽型で全力で動く必要がないからだ。想定外すぎる事態だ。

 泣きそうな気分になるがこれも俺自身が起こした顛末、最後まで付き合うしかない。

 でも、しかし、早い。なんであんなに早く歩けるんだあの二人。俺が国道沿いの歩道に差し掛かり、進行方向の右を向いた時には一個先の交差点の横断歩道を二人で歩いている。

 距離を詰めるの大変ななのは明白。でも、やらなきゃ。覚悟を決め俺の相棒、ロボUー02に更なる前進をリモコンで指示し、歩き始めた。



 追いかけ始めて約二十分。怒涛の前進のおかげか、連続の赤信号おかげか、なんとか追いつけた。疲れた。相棒のバッテリーも気になる。

「お疲れ様。はいタオル」

「ハァー、ハァー、ハァーっ、ありがとう。歩くのも疲れるな」

 息を整えてる俺にハンドタオルを渡してくれる広美、ありがたく借りる。

「悪いね。家まで送ってくれて」

 と、少し先に進んでいるアニキが心配そうに言う。

 心配できるような顔はしていない、まだ完全に昨日までのアニキの姿はない。

「どういたしまして」

 日常的な、なんのへんてつもない言葉で返す。これが良いと思ったからだ。

 ・・・とにかく全員そろった。社会人一人、高校生二人、ロボ一台の珍走団ならぬ、珍歩団。時間帯的にあまり人気はないが、警察に出会ったら即職務質問のされる。危険な集団だ。

 全然笑えない。・・・そんな状況なのに、なんかいい雰囲気に話が弾み、色々質問し合う。

 詳しく俺達の関係を聞いてくるし、この先どうするのかまで聞かれた。赤裸々に話さなかったが、結構赤面しそう質問してくるアニキに対して何回女性と付き合ったか? なんで今の仕事してるのか? とか聞いた。

「・・・だよ」

「・・・・・・スミマセンでした」

 聞いてはいけない事を聞いてしまった。話すどころか思ってもいけない、完全忘却必至、忘れないと。

 二人で頭を下げ、忘れることをアニキに宣言した。


 それから数分後。街灯が立ち並ぶ明るい道の先に、どこにでもありそうな二階建ての部屋の集まりが見えてきた。

「ありがとう。ここだから俺の部屋」

 まだ生気の感じられない声で言ってくる。

「・・・そうですか、それじゃお休みなさい」

 と、また簡素な言葉で返す。

「本当にあまり考えないで下さい。考えすぎは良くないですから・・・お休みなさい佐々木さん」

 広美も何か言いたそうだが、言わないまま話を切る。

「・・・大丈夫。一晩寝れば落ち着くから・・・多分だけど。それでも、楽しかったよ、色々話きけたし。それじゃ、お休み」

 手を振って、無理に笑顔を作って駆け足で部屋に入っていった。




 


 

 

 

 整理のつかない一馬。明日はどうなるか? そんな終わり方です。本当ならいい感じで広美と一馬は出会う予定だったのに、あまりにもひどい・・・。

 先の見通しがつかない状況ですが、楽しいで書いていくので皆さんも楽しんで見て行ってください。


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