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歩行者  作者: 鷹崎徳
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歩行者 二章プロローグ

 どうも突貫小説製作者の鷹崎です。三シリーズ同時投稿のメインになる歩行者シリーズ二章のプロローグです。

 メインキャラの心境を書か着ました。

 佐々木一馬の夢を見てください。

「よく頑張った武市。あと一歩だ」

「ありがとうございます真理様」

「今更様嫌だ。同期じゃないか、宮崎先輩で良い」

「で、でも・・・」

「一晩で三十万以上も貢がせたって、私の名誉を穢したお前に逆らうこと許されない筈だが」

「申し訳ありません」

 広い屋敷の一室で、私の執事を任せれている武市が何度も頭を下げる。いくら、一之宮と佐々木に取り囲まれたからって、常識はずれの額を要求するような事があるか。酒代くらい私で出せる。

「謝る暇があるなら言え」

「でも、お――」

「直属の上司は私だ! お父様は関係ない」

「か、かしこまりました宮崎先輩!」

「良し! 許そう。私はこいう事を言ってくれる武市が好きだ。早く返事が聞きたい」

 数か月前、私は武市に愛の告白した。当時小さいころに患っていた病気が再発し、病院に入院していた。忙しい執事業の中武市は入院していた私の所へ毎日来て、私の世話をしてくれた。それで、良き夫は彼だと決め退院と共に車中で言ったのだ。

「私のような一介の執事に・・・そんな事」

「男だろ! 腹括れ! 今すぐ婚意届持ってくるぐらいの気合入れろ!」

「か、かしこまりました!」

 と、いい残し武市は慌てて部屋から出て行った。

 全く、若い執事としては上級なのに、男としてはいまいちだ。告白聞いて以来肉食動物に追い込まれた小動物如く、恐れおののく男に成り下がり、常にビクビクしている。ダメだな、私が居ないとな。

「ハハハハハっ――⁉ あれ?」

 笑い出した途端、妙な悪寒を感じ、まさかと思う。本当にまさかだよな?

 携帯ですぐに武市に連絡するもののかからない、悪寒感じているのに汗が出てくる・・・あっ、冷や汗か。

 何時もなら冷静でいられるのに、今日はなんか落ち着かない・・・先の発言が気になる。

 そして三十分後。恐れていた事態が現実になる。

 武市が差し出す紙には、『婚姻届』とはっきりと書き記されているものだった。コイツ本気で来た!

「・・腹括ります。僕もあなたが好きです。こんな僕ですが、結婚してください」

 ――この馬鹿野郎。持ってくるのが遅い! 早く括れ!

「・・・全く、遅いぞ。さっさと書いて役所行くぞ」

「ハイ、かしこまりました」

 と、一気に書き上げ、残すところは同意者名。この一項の二名表記さへ終われば晴れて法律上結婚だ。

 ――書かせるのはもちろんあの二人だ。これを起爆剤にする。

「良し、決行は飲み会前の日中だ。二人を探し出すぞ」

「ハイ」

 

 俺が気付かぬうちに、こんなことが起きてるなど知るはずがない。知るのは飲み会当日だから。


 

 


 ◇             ◇               ◇

 ――死への巡礼者は優しく微笑み、私事を好きだと言ってくれた。

 深夜病院から抜け出し、裏手にある小さな丘の大きな木の下、満月の夜で。

 そして、翌日。新しい診断がでた。

「診断だとあと三カ月だってさ」と、笑いなが私に伝え。何事も無いように接してくる。

 何故笑っていられるの? あっと言う間に死んでしまうのよ? 何で私に愛の告白してくるの? 理解できなかった。

 そんな私に彼は「死の予定が分かればペースが分かる。予定が作れる事は名誉なことだ」と、何度も何度も理解できない言葉を私に伝え続ける。

 そんな私を察したのか、寂しそうな表情で見て。

「予定せず死ぬ人間が多い世の中。こういった状況下の方が幸せかもなって、そう伝えたかっただけだ。理解しろって言うのが無理かもしれんが」

 確かに予定せず死んでいく人の方が圧倒的に多い。ニュースを見ていて、死亡と言う単語が出ない日は無い。あれば奇跡なぐらい。

 でも、それでも私は、

「理解できない」

 と、答えるしかない。

「――だろね。現にも君は僕手を強く握りしめてくれる。それだけで、それだけで理解してくれてないのは分かるよ。理解してくれない事は愛の印だ。逆に嬉しいよ」

 白く、細い右手を伸ばし、私の頬に優しく触れる。

 私もその手に両手で包み、彼の体温を感じ取る。冷たい。

「フリス、私はどうすれば良いの?」

「君は、まだ大丈夫だ。日本に行く勇気はあるか? あるなら、行ってほし。僕が夢見た街で君が、笑顔で生きてくれる。それが望みだ・・・」

「・・・わ、分かったわ。アナタが言うなら、私」

「住む部屋の手筈は済んでいる。あの街に住む為のマニュアルをこのダイヤリーに用意している。読めば大体は分かる筈だ」

 と、私の頬から手を離して白い枕から一冊の黒いダイヤリーと、小さな鍵を渡し。微笑みながら言う。

「僕が生きてる限り、この先日本で生きる為に必要な事を教えるよ。どんな些細のことでも全部」

 



 ◇                  ◇              ◇

 早朝四時半、鮫島工場第一区画、第一ライン。

 巨大ベルトコンベヤーとロボットワームが静かに佇むエリア。そこに幸一が寂しそうにそのラインを見つめている。

 ほんの数日前に、現場監督者と親父である社長との協議でこのライン取り壊しが決まったからだ。

 老朽化と基準を超える騒音。いくら改善してもなおらないし、酷くなる一方だった。それに、原因不明のラインストップ。非常停止プログラム誤作動にストップ。連日起きれば仕方ない事だ。保全の疲労と生産の事を考えればいずれこうなることなど想定出来た。

 でも、俺が物心着く頃からこのラインはあったから、U-02もこのラインで生まれたから・・・。

「寂しくなるね」

 と、後ろに優い高い声が聞けて来た。

「高坂班長」

 このライン作業者を統括する高坂さんだ。就職してすぐにこのラインの稼働になり、配属されて四十年。ラインと共に生きた人だ。油で黒く汚れた作業着とヘルメットが物語る。

「幸一も来たか」

「・・・ハイ」

「まだ現役なんだけど・・・仕方ないな。ああ五月蠅いと」

「声じゃなく手で合図してましたからね・・・あれで皆話せるから凄い」

「それに止まられると生産力落ちるからな。これも仕方ない」

「・・・仕方ないですね」

 そう仕方ない事だ。問題が改善されなければ一からやり直す。解体して新たな物を作る。これが流儀だ。安全第一、作業者の安全を守る事だから。

「稼働停止は八月中旬だ。多分週末の夜勤終了後だろう。見納めに来るか?」

「もちろん行きます。俺のロボを完成させてくれたラインですから」

「夜は眠いぞ」

「覚悟も上です」

 きっぱりと言い切る。

「だろうな、何時もの詰所来い。盛大にしやげるぜ」

 俺の顔を見ながら苦笑して、高坂さんが言う。まだ俺が小学校入学前に無理言って稼働中の工場に入る時に、許しを得る所で見せるのと同じだ。全然変わっていない事だ。

「ありがとうございます」

 頭を下げ、出来るだけの感謝を込めた。




 ◇              ◇                   ◇

 幸一はあの時以来から、付き合い始めた時よりも優しくなった。

 最初は絵や、小説に出てくるような程のぶっきらぼうさで。笑顔など全然見せてくれなかったけど・・・今はどんな些細な事でも笑ってくれる。

 ――たまに退くけど・・・。

 強引な所も露骨なまでに出て来て、二人っきりの時は要注意しないといけないな。力は私よりも圧倒的に上だか。でも、多少なら問題ないけどね。

 でも、最近少し寂しそう。

 演奏会後、佐々木佐さん達と話して解散してから訳を聞いたら、近々あの二足歩行型mP3を作ったラインが撤去されると言った。

 ――仕方ないと、呟いていたけど・・・全然仕方なさそうに見えない、納得してるように見えない。

 私の家に幸一が遊びに来た事を思い出す。

 一台のノートPCに描かられている新作のロボの説明されたっけ、あまりにも熱弁すぎて止めてなんて言えなかった。正直ウンザリしているのに・・・。

 今まで失敗を活かした力作で、軽くて丈夫で、配線も少なくして、ICUも最新機種を使用し、OSも万全だって・・・そこまで言っててあんな知らせ受ければね。私だってへこむ。

 あのラインでこれを作りたいのは明白、それを知ってるのは私だけだと思う。

 でも、私だけ知っていても仕方ない。それじゃ意味がない。

 このまま幸一はこれを抱えたまま終わらせるかな? ううん。そんなはずがない。望んではいないはず。

 ――仕方ない。また幸一の言葉が浮かぶ。

 決められたルールを越える事は許されない。

 安全第一は絶対尊守。

 現場の絶対理念だよ。これらを破ることは作業者の安全を損なうからいくら愛着のある機械だからって、認められない。

 社長なんて継ぐ気ないって言ってる割には、ちゃんとした事を言ってる。まぁ、物心着く前から工場に行き来してるって笑顔で教えてくれた時に、完全に工場の人間になるなと思ったけど。

 一度でもないのかなチャンス。

 せめてあのロボ作るぐらい稼働させてもいいのに。

 別にどうでも良い筈なのに真剣に悩む私は、幸一に毒されてしまったのかな? 腕組みしている自分の姿を等身大の鏡を見て思う。

 

 ――彼氏の夢を応援するのは彼女の役目。


 昔読んだマンガの一節を思い出す。

 野球弱小校が甲子園目指し、日本一を目指すベタベタなスポ根作品で、主人公はピッチャーで、ヒロインは案の定のマネージャー。

 暇つぶしに古本屋でパラパラと適当に見ていたら、この言葉だけ私を引き込ませた。

 友達、教師、親、近所の人達が、ヒロインを囲み「もう諦めたらどうだ? 練習試合三回もコールド負けして、予選も大敗をするだけだ。彼らを説得できるのは君だけだ」と、皆が言い浴びせてる。

 のに、彼女はケロっと笑い。「彼等と、彼氏の夢を応援するのが彼女の役目。そう、私は応援している以上、止めろなど言えない。私から言わせたいなら覚悟して下さい」と、朗らかにあの仲間に私の大切な人が居て、それを妨げるなどしたら何をするか分からないと全員に脅しをかけたのだ。

 思わぬ発言に驚き、野球部にアンチ等が消え去り、予選を迎える。けど、弱小は弱小、コールド負けではないが負け一回戦敗退するものの、強豪とたった一点差の0対1で、最終回まで翻弄させるメンバー達。

 私は、この言葉だけは忘れないようにしようとした。

 そして今思い出す。

 はぁーっと、溜息を出して鏡の私を見て、マンガに出てくるマネージャーのキャラと合わせてみる。あの凛とした顔、劣勢の時も監督と共に突破口を見つけだそうとする姿、私にそれが出来るのか? 幸一を導けるのか?


 ――野球は出来ないけど、出来るように手伝えるのは私しか居ない。当たり前だけど。

 

 最後の試合時に当たり前こと彼女は言うが、好き事をするには色々犠牲がつく事を理解したメンバーは一丸となり、全ての感謝を込めて戦う。

 ――この言葉を思い出した瞬間、私は決心した。彼の夢を叶えようと。

 導こうと。



 ◇                  ◇             ◇

「ど、どの服が良いかな?」

 飲み会当日。その日中にどこか出かけないかと佐々木に誘われた。今その準備の為、衣類系のタンスやクローゼットからあらゆる服を取り出し、鏡の自分に照らし合わせる。

「露出行くか? いや、焼けるの嫌だし・・・清楚系で、薄い長袖で・・・フリル、好きかな。白? 黒? スカート? デニム?」

 考えれば考える程組み合わせが分からなくなる。

 こうなるならさり気なく好み聞けば良かった。なんて策なしだ。

 携帯を取り出し、宮崎さんに応援求めようとするが、先日のランチの時に独り立ち宣言したし・・・もう、頼れない。こうなるなら・・・・、はっ! と、思い甘えが残る自分の顔を叩き、活を入れる。

「もう、一人で出来る。誰も頼らないし迷惑かけない」

 慎重に服を両手に掴み、合わせ、冷静に考える。

 何時もは仕事用にシャツ系で、黒いパンツだ。急なお呼びがかかっても即時に動けるように構えている。休みの時も、佐々木と居る時も・・・男みたいに、緊張を・・・あっ! その逆を行けば、意外性でイケるかもしれない。

 意識して、集中して・・・・これだ!

 全色白固めで、久々にスカート(ロング)で、長袖だけど・・・日頃、ファッションのこと考えてないことが裏目に出た。しかし、アイツだって同じだ。これだけで十分だ。

 根拠なき自信で安心する私。

 どうなる?



 ◇                ◇                 ◇

 一之宮、幸一、広美さん、アリサさん。中々個性的で、面白い人達だ。

  出会えて良かった。

 気を付けてないとすれ違い、すれ違う事もなく終わるような関係。出会う可能性が限りなく低く、殆ど奇跡。

 先日の駅でのお話会は確実に奇跡だ。ロボオタ、その彼女、会社で俺にプロポーズした女、フランス人・・・奇跡だ。絶対にありえない。

 そんな奇跡に近い出会いをタダのお友達関係で終わらせる気は俺にはない。数年に渡る歩行経験で常に思っていた事、超長距離歩行チーム結成である。

 国と国を渡り、長い道を数日かけて、数名のチームで歩いて行く。

 一見地味に見え、ただ歩くだけ、簡単じゃないかと思うが――、人間は常に二足歩行という無理な動きをしている。

 本来なら四足歩行だったのを二足で動いてる。バランス取るのに力を使い、更に歩く負担倍増だ。

 そんな状況で百キロ以上歩くんだ。体力と精神力が共に必要になる。それに、孤独でそれをやるのは辛い。同じ目標を持ち、同じ境遇であればどんな困難にも立ち向かえる筈だ。

 そんなチーム作るには理解させるのが重要だ。しかし、幸一と広美さんは未成年だし学生だから無理は言えないし、一之宮は知的派だし、アリサさんはまだ日本に来たばかり・・・そして、俺は馬鹿でかい共同プロジェクトの会社代表だし。

 結束出来そうだが、全員事情がデカい。下手すれば法に触れる。

 結束したとしても俺の構想に乗るとは思えん。

 奇跡で出会たとしても、現実では奇跡は起きない。

 俺的にも惜しい人達なのに、無理がありすぎる。

 チャンスなのに、夢なのに、手に届きそうになると遠くなる。まぁ、それが夢なんだよね。分かっている。

 分かっているのに悲観的になりそうだ。

 

 ――いずれそうなる。顔を上げ夜空を見たら、一之宮の言葉が聞こえてくる。どこまで入り込むんだ? お前は?

 いずれそうなるか、俺の夢も頑張ればいずれ夢は叶う、そうなるか・・・。


 いずれそうなる。

 いずれそうなる。

 いずれそうなる。


 一旦思うと簡単には消えない。脳内で反響する。

 くっ! 消えやがれ! 声までストーカーか。

 そんなに言わなくてやるよ。せめて話すぐらいなら問題ないだろ? 相談ぐらい、問題ないだろ?

 目線を夜空からアスファルトの地面に下げる。夢から現実に戻すように。

 現実を歩く。

 夜空に描く夢を歩く。

 為にも・・・嗚呼、前途多難だな。

 また考えると気が重くなる。

 

 ――でも、行くしかないか。前へ・・・。


 結局眠れなかった。今日は一之宮とデートなのに、飲み会なのに、夜空は少しずつ太陽の光で追いやられ少なくなって行く。

 ここに居るのも何だし、待ち合わせの駅に向かう為プラットホーム入る為に階段を駆け上がる。

 ほぼ一晩中駅に居たと正直話したらどうなるだろう? 笑うだろうか、馬鹿にするだろうか? それとも心配してくれるか? せめて驚くだろうか?

 こうしてる間にも彼女の事を思う。

 俺も相当毒されてるな、小さく微笑む。

 定期で改札を抜け、始発が流れてくるプラットホーム歩く。

 どうでしたか? 新章からは皆の夢と、佐々木の計画を書きて行きます。夢は夢のままで終わらせない、強い意志で叶える姿見てください。

 投稿者である自分も今後も頑張ります。どうか、応援お願いします。

 他の作品も頑張るのでそれもよろしくお願いします。

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