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歩行者  作者: 鷹崎徳
10/14

歩行者9 前編

 どうもー、突貫小説製作者の鷹崎です。一章の最終話前篇をお送りします。

 初期予定では前後なしで行くはずだったんですが・・・投稿者である自分の周りが一気にゴタゴタな状況になりまして、急遽応急処置として分けて書くことにしました事をご説明いたします。

 以上、一つの区切りを楽しんで下さい。

 恐ろしいニュースを知ってから十一時間後。

 日の長い夏の空もいい加減暗くなってきた。

 俺と、一之宮は相変わらず残業に追われ、終始キーボードーを叩く音が鳴りやまなかった。

 ったく、無限に湧いてくるゾンビか! いつになったら終わるんだよ。もう。

 心の中で、一之宮に聞こえないように叫ぶ。そして、気付かれないように隣にいる彼女を見た。

 俺と同ようにキーボードーを叩いていて、ディスプレイを真剣に見つめている。何時もの変わりない動作なのに、なんか・・・絵を見ているみたいな気分になる。

 『昨日の奇跡を起こした責任を取れ』と、言われて以来少し心境に変化が出てきていることに気付くのに一晩もかからなかった。

 変化じゃないかも、ただ気付くのが遅かっただけかもしれない。あんな、プロポーズさへ受けなければ、この気持ちになるまでそんなに時間がかからなかったのに・・・俺が鈍いのか、一之宮の暴走のせいか――。

 何か混乱しそうになったから考えるの止める。

 ゆっくりと姿勢を戻し、一之宮から自分の席に視線を戻し、小さく溜息を出した。

 ――しかし、何時俺が一之宮に奇跡を起こしたのか? 一体何の奇跡を起こしたのか?全く身に覚えのないこと、いくら思考しても思い浮かばない。ただの口出まかせ・・・の仮説を立てたが、あれ程ストレートに想いをぶつけてくるのに出まかせなんてありえない。 

 それでも分からない。

 やはり、本人に聞くしかないか。

 俺は再び仕事に戻る。一之宮とタイミングを合わせるためだ。多分、俺よりも先に進んでるだろうし、俺もやらないとダメだからだ。

 スパートをかけるべく、最後の集中力でディスプレイと睨みあう。


「おっ、佐々木も仕事終わったのか? なら一緒に帰ろう」

 普段なら二時間かける仕事を三十分で終わらせ、クタクタになりながら一之宮と同時に立ち上がり、声をかけてもらう。

 こんな無茶なやり方はしばらく出来ないだろ。必死だったからやり方が思い出せん。

「ああっ、良いぜ」

 荷物をまとめて鞄に入れ、二人同時に営業課を出てる。

 会社には誰も居ないのか廊下の電灯は消され、非常口を示すライトしか照らされていなかった為、薄暗い。

 そんな中を二人肩を並べ歩く。

 静かな社内に響く足音が二人しか居ない事を決定着ける。

 玄関を抜け、来た道を戻る。

「なあ、一之宮。俺、何したんだ? 何の奇跡起こしたんだ?」

 単刀直入に聞く。

「私と付き合えば教える」

 迷いも無く答える。

「・・・結婚じゃないのか?」

「ランクを下げれば、振り向くかなと思って」

 ニヤッと、微笑みながら答える。全然諦める気が全くない一之宮に恐れ入った。

「ら、ランクってオイ・・・全く、諦める気無いな」

「一度決めたら走りぬくのが私のやり方だ」

「やり方ね・・・まぁ良い。それよりもこの後、暇か?」

「私を誘うのか! 佐々木!」

 期待のの眼差しで俺を見る一之宮。先までの知的な感じは消え去り、完全に別人、今ままで一度も見せたことのない子供のような表情で俺に迫る。

「お、落ち着け一之宮。君が考えているような誘いじゃない。会わせたい人が居るから誘ったんだ。そんな表情で迫るな!」

 思わぬ展開に上ずった声で否定する。

「な、なんだ・・・期待して損した」

 子供のような表情から一転、肩を落とし、目を細め、ささっと先に行き始めた。

 凄い変化に驚き声が出せなかったが、まるで俺が全部悪いと言いたいみたいな喋りに次第に怒りが立ち込めてくる。が、何時こと、深呼吸して気分を整え、追いかける。

「期待させるような発言は謝る。だが、今の行動は――」

「人の気持ちを一方的に知っている奴が何がだ。それよりも、その会わせたい奴に会わせろ佐々木」

「ぐっ!」

 ――これ以上言ったら負ける。直感的に察した、

「・・・分かった。着いてこい・・・」

 

 一之宮に会わせようとしている人は幸一と広美さんだ。面白いカップルだから、交流でも持たせようと思ったからだ。

 取りあえずこのこと伏せといて、何も言わず、近所の駅に二人で降り立った。

 何時もながら最終前は人が多い。人をかき分けながら階段を上り、改札を抜け、幸一がいる出口に向かおうとした瞬間・・・全身を震えさせるような音楽が耳を貫いた。

 ――昨日以上に破壊力が上がっている。

 周りにいる人達もどんな反応すれば良いか分からず悩んでいる。上手いと下手の中間を上手にとらえている以上、分からん。

「佐々木。まさか、この歌の元に会わせる訳じゃないだろ? そう言ってくれ」

「・・・そのまさかだ」 

 冷静な一之宮が恐れている。

 な、何故こんな・・・あっ! 昨日恋人の事で悩んでいたな。まさか上手く行かず、自暴自棄でこんな甘ったるい曲を唄ったているのか。

 可能性がでた同時に罪悪感が生まれる。アリサの無責任発言が最悪な事態を発生させたことになるなら、俺もその一人だ。せめて謝罪しないと。

「・・・行くぞ。何時もならこんな唄じゃないから安心して次会えるから」

 半ば強制に近い形で一之宮を連れて行く。

 不安の色が途切れない一之宮。俺もだ。

 二人同時に階段を下り、曲の根源を見た――え⁉ 

 何時ものロボを真ん中に、腕を組みながら陽気に唄う男女が見えた。幸一と広美さんだ。二人が一緒に唄っている。

 笑顔だし、すごく楽しそう。

 そして、この瞬間、やはり幸一の考えは杞憂だったんだと思えた――。

「あ、嗚呼! やっ、やっぱりまた会ってしまった。会ってしまった!」

 急に震えだし一之宮がうずくまった。

「ど、どうした?」

 突然の事態。一体何が起きたんだ?

 取りあえず手を伸ばした瞬間握られ、勢いのまま立ち上がった。

「大丈夫だ。ただショックで、びっくりしただけだ。あの二人とは間接的に面識がある。覚えてるかどうか分からないけど」

「えっ! あるの」

「最終逃した時、近場のネカフェでね。突然、後ろからロボを連れて来店したわ。流石の私でも逃げるしかなかったわ。また会いそうな予感はしていたけど・・・佐々木と面識があるなんて、ましては、私から会いに行くなんて」

 饒舌なる一之宮。よほどショックだったんだなと思える。しかし、一之宮とあの二人が面識があるなんて微塵にも思わなかった。世間は狭いという言葉も近場で使うものだな言える。

 ! あの人は――。

 震える一之宮から目を離した同時に、ロータリーに隠れながら二人を見ている人影を見つけた。

 金髪で、長身。目立つ服装。日本人ならぬオーラ。間違いない。昨日の事を心配して着たのか、たまたま通りかかって見てしまったのかは分からないけど、確かに居る。

 ラッキーと言う単語を使うならここだろう。

 これで皆紹介できる。

「紹介するから着いてきて」

 一之宮の手を引いて、階段を下りる。

「えっ」

 予想していない俺の動作に驚く一之宮。引っ切り無し凄い反応に、彼女も一般的な女性だとちゃんと思えた。

 この時だろう、決心ついたのは――。

 

「その感じだと、上手く行ったみたいだな」

 二人の目線に入る同時に話しかける。

「・・・アニキ!」

「さ、佐々木さん!」

 唄を中断し驚く。

「紹介したい人が居るから少し付き合ってくれ」

 俺の右に立つ一之宮に右手を差し出して、

「俺の同僚の一之宮・・・下の名前は?」

 俺としたことが、名前を聞いてなかった。慌てて聞く。

「結理。ゆは結という漢字で、りは、理科の理。それだけよ。ここでちゃんとした自己紹介させてもらうわ。

 私の名前は一之宮結理。佐々木一馬と同僚だ」

 笑顔で、凛とした顔で二人に言う。

「俺の名前は鮫島幸一。鮫島はそのまま、鮫、島の漢字で、幸は・・・全部そのままだ。大して変な漢字は使ってない。よろしく。隣にいるのが、俺の彼女・・・いや、恋人、大切な人の――」

「壇ノ浦広美。苗字は、壇ノ浦の合戦に使われるものだからそのままで、広美は一般的な広と、美しいの美です。こちらこそよろしくお願いします」

 次々に自己紹介を進め、広美さんの紹介が終わった同時に幸一が持っていたマイクを取りロータリーに隠れているアリサに向けて一言。

「アリサさん。隠れているの分かっていますよ。出てきてください」

 きゃっ! と小さく叫び、顔を出す。

「な、何で分かったの?」

「バレバレです。アリサさんも自公紹介して下さい」

「わ、分かったから、マイクで言わないで!」

 車に気を付けながら俺達の所に駆けてくる。

「ハァハァ・・・まったく。私の名前はアリサ、フランス・パリ出身で・・・ハァ、何もないわ・・・ゴメンナサイ」

 呼吸が乱れている。自己紹介に少し酷だったからこれ以上聞き出せなかった。


 

 俺、一之宮、幸一、広美さん、アリサさん。円を描くように簡易椅子に座り皆で話し合うことにした。

「えーと、何話しましょうか? 別に議題決めて討論するわけじゃないんで・・・」

「あっ! 思い出した! あのネカフェいた人でしょ? 一之宮さん」

 一之宮が先話した事と同じだ。広美さんも思い出したんだ。

「ええっ、そうよ。あのときはロボで驚いてしまったわ、あのロボ何なの?」

「幸一はU-02と言ってますが、正式名は二足歩行型MP3です。二足歩行出来て音楽記憶媒体備えたロボです。ただ単純に音楽を覚えるだけの何でもない奴ですよ」

「広美、その言い方はないだろ。これ作るのにどれだけかかったか知ってるのか」

 一之宮の質問に正確に説明する広美さん。ロボ関係には興味なさそうに見えるけど、それなりに知識はある。それだけ幸一ことを見ているんだと思う。

 それに反して幸一は不服そうだ。

「知ってるよ。中三からだったからって言ってたでしょ。約三年の集大成、私が忘れると思う?」

「忘れてないなら良い・・・じゃなくて、何も出来ないみたいな言い方をよせって言ってるの」

「何も出来ないじゃない。何時もトラブルだらけで――、昨日はリモコントラブル、一昨日は安全装置トラブル・・・三日前が」

「や、止めてくれ広美ぃ!」

 目を閉じ、記憶の中からロボトラブルを思い出していく広美さん。必死に制止させようとしている幸一。

 それを端から見る俺、一之宮、アリサさん。三人目を合わせ頷く。

 ――若いねー。

 と、思った同時に、一之宮とアリサさんが話し始めた。

 二組が話し出したので俺は取り残されてしまった。しまったと思った時、幸一と広美が俺に手招きしてくる。動き見て小さい、アリサさんと一之宮に気付かれないようにしているみたい。

 二人に近づく。

 小言で広美さんが話してくる。

「あれが悩みの種の一之宮さん?」

 理解した。

「・・・そうだ」

「結構美人ですよ。中性的な所が魅力的です」

「中性的・・・男混じりとも言うが」

「・・・鈍いって言われます? 典型的ですよ」

「仕事の面なら一之宮に鈍いと言われている」

「・・・・」

 しばらく沈黙する広美さん。顔に出すくらい考えて再び話し出す。

「私は一之宮さんと一緒になっても問題ないと思います」

「一回だけしか会っていないから言えると思う。同じ仕事場で、同じ会話をしていれば相手の良し悪しが分かる。結構くせのなる人だぞ」

 キッパリ答える。が、これは嘘の事だ。大事な想いは簡単には話さない。

「ううっ。そんな考えじゃ、誰とも付き合えませんよ」

「心配ありがとう。でも今は気分じゃない。仕事が忙しいから――それよりも、上手く行ったみたいだな幸一、この感じだと」

 二人を見ながら微笑む。

「あっ――そ、そうだ。昨晩は相談に乗ってくれてありがとうございます。ただの考えすぎだったみたいです。杞憂で良かった」

 幸一の目線が広美さんに注がれる。

「あっ、そうだったんだ・・・こちらこそありがとうございます。ここの所様子が変だと思っていたら、そういうことだったんだ」

 納得するように頷き、幸一と目を合わし、同時に二人も微笑む。

 小さな幸せが周りを包み込もうとした時、一之宮が話の輪に入ってきた。

「何話してるんだ?」

「恋愛相談の結果を聞いている」

「何! 佐々木お前、そんなこと出来るのか?」

「成り行き上昨日、相談会になったんだよ。な、アリサさん」

 一之宮が俺達の話に割ってきた事は孤立している。一人にならないように、素早く話を振る。

「そうよ。この世と思えぬ唄で叫んでいたから・・・するしかなかったのよ」

 やれやれと言うか、仕方ないと言うような言葉を言いながら幸一を見るアリサさん。その視線を感じた幸一は頭を下げる。

「すいませんでした・・・あの時は気が悩んでいたもので」

「謝るのは私じゃないわ、隣にいる広美よ。間違えないで」

 頭を下げたまま広美さんの方を見る。

「俺の気の間違いで多くの人に迷惑をかけました・・・ゴメンナサイ」

 アリサさんに話を振った途端幸一の反省会になってしまった。頭を下げ続けるその姿には自責の念を感じ、哀愁までも見て取れる。不味い、このままじゃ公開処刑だ。話を変えよう。

「気にするな。頭を上げろ。反省会はこれにて終了だ」

 手を叩き幸一の頭を上げさせる。

「アニキありがとうございます・・・そうだ。お礼に何にか奢りますよ、アリサさんも、一之宮さんも、皆奢り――」

「断る。俺達は子供じゃない」

 幸一の申し出を断る。未成年に金出させたら立場がない。

「嬉しいが、俺達は大人だ。出す方はこっちだ」

 笑顔で理由を言い、丁重に断った。

「ありがとうございます。なら、俺が店用意しますよ。ちょっと、待ってて下さい」

 これで話を終わらせようとしたが、幸一は携帯を持って立ち上がり、俺達から離れる。こんなつもりじゃなかったから、俺は慌てて立ち上がり追いかけた。

「ま、待て! 俺達はそんなつもり――」

「会社御用達の店に話しつけました。皆集まれる日が正式に決まったらまた連絡してくれと言われました」

 な、なんてことを! 

 笑顔で俺達に手を振る。

「会社御用達って、鮫島君・・・鮫島! ここの辺で」

 一之宮が立ち上がり幸一に人差し指を向ける。

「遅かったですね。改めて言いますよ。鮫島重工の社長で父、鮫島幸喜の次男鮫島幸一です」

「やっ、やっぱりだ! 何か引っかかると思ったら――ぐっ!」

「気になる所だが話を変えるな一之宮! 幸一、俺達はお前にお礼をさせるつもりはない、店に断りの電話を入れろ」

 話が混乱する前に一之宮の口を右手で押えなが、幸一に言う。

「で、でも・・・」

「掛けろ。混乱する前――」

 力を込め、再び言うした時、宮崎先輩の飲み会の事を思い出した。やらなくても良いと言われた物の一応頭の隅で考えていた。これで、安い料金で満足させられる! 魔が出るってこう言うものか。

「撤回。電話するな! 丁度良かった、厄介事回避できる。飲み会だ。飲み会が安くで出来るぞ一之宮」

 口を塞がれ不服そうな顔で俺を睨んでいた一之宮が、今の俺の言葉で眼が輝き始めた。同じ気持ちで過ごしていたからこその幸福感。

 俺の手を跳ね除け、幸一に迫る一之宮。

「ありがとう! 君は私達の希望だ!」

 先の話は無かったかのようにはしゃぐ。

 理解できない幸一と広美さんとアリサさん。三人とも俺達の見たことのない動きに恐れ、あわあわしながら口々に言う。

「じゃ、やるってことで良いですね?」

「何があったか知らないけど、良かったわね」

「良かったじゃん幸一。二人に喜んでもらって」

 解放感と幸福感に包まれている最中、一気に現実が着た。

「えーと! 何の集まりだが知らないがそろそろ解散した方が良いぞ」

 俺の背中に威厳のある気配を感じる。

 すぐさま振り返り見た――。

 初老と中堅らしき二人の警察官が立っていた。初老の方は笑顔だけど中堅は笑っていない。初老の方が喋る。

「夜分も遅くなりそうですし、明日も早い、帰った方が得だと私は思う。楽しい会話は明日に取っときましょう」

 軽く言ってるが間違いなく警告だ。

 残り全員一斉に立ち上がり、荷物をまとめる。

「すみせんでした。今離れます」

 代表で俺は警察官に謝り続ける。

 

「これにて失礼します」

「夜道に気を付けて」

 初老は終始笑顔で、中堅の方が終始無言のままだった。

 適当に荷物を集めた俺達は一旦駅を離れ、荷物を確認し合う。

「忘れ物ないな」

 皆頷く。良かった。

「取りあえず解散しよう。あの二人私たちが離れるまでずっと見ていたから、長居しているとまた来る、今度こそややこしくなるぞ」

 冷静に一之宮が言う。

「賛成だ・・・幸一、携帯貸せ。俺の番号教えるから。アリサさんは持っています?」

 ここまで来たからもう何も教え合わないわけにはいかない。せめて、連絡手段は確保しときたい。

「良いぜアニキ、ほら」

「ゴメンナサイ。まだ、この国の連絡手段持っていないの。番号だけ教えて頂戴」

 幸一は高校生だけにちゃんと持っていたが、アリサさんはまだみたいだ。赤外線通信で交換し互いに情報を共有し、アリサさには俺と幸一と一之宮の番号を書いたメモを渡した。

「何かしら連絡手段が決まったら連絡してください」

「ありがとう」

 これで全員連絡手段を確保した。

 軽い知り合いから、それなりの知り合いになった瞬間でもあった。

 それからすぐに解散し、幸一は広美さんとアリサさんと一緒に帰り、俺は一之宮を送ることにした。

 駅までで良いと言ったが、家まで送ることにした。

「何故送る?」

「俺の勝手だ」

「来なくていい」

「勝手に着いて行く」

「ストーカー」

「お互い様だ」

 妙な言い争いをしながら一之宮の家を目指す。

「寒い。近づくな!」

「お前から近づいて来るのに、俺からはダメなのか?」

「ダメだ!」

「無視発動」

「無視するな!」

「・・・・・」

 誰が異様な視線を向けようが関係ない、誰かが俺達を止めようとしても関係ない。俺はこの状況を楽しむ、止めれるなら止めてみろ。

 と、心の中で豪語した時一之宮の歩みが止まり振り向く。

「私が佐々木を困らせから復讐してるのか?」

 真剣な表情。目つきが鋭い。これは冗談で言ってる様子はじゃない。

「違う、好意でやっている。そなことで復讐する時間などない」

 俺も真剣に返す。

「そ、そうか・・・好意・・・! 好意だと」

 二度好意と言った同時に急に走り出す一之宮。予測不能の事態に後れを取った俺だが、中学の時から鍛えた足で追いかけ、一分経たずに確保する。

「早すぎだ。少しはゆっくり来い」

「悪かったな」

 互いに息が荒く、立って息を整える。 

 異様な光景なのか? 通りかける人はヒソヒソ話しながら、おもっきり避けながら行く。「完全に不審者だな私達」

「お前、一之宮が走ったからだ」

 この場に残っていてもまた警察来る可能性がある。完全に回復していないが、再び歩きだす。

 今度は無言のまま、肩を並べながら歩く。

 一定に響く足音。

 気付けば周りには誰もいな、二人だけだ。

 先の喧騒は嘘のようだ。

 このまま――。

「ここだ」

「はっ? あっ、ああ」

 人差し指を宙に向けて言う。

 すぐに指の先を見る。小さな木造の建物が建っていて、静かに引き戸の玄関の豆電灯が光っている。

「実家だ。ここまで来れば気が済むだろ? 帰れ」

「・・・分かったよ。じゃぁ、また会社で」

 強引に任務完了、一之宮で良かった。他の奴だったら間違なく通報される。

 背中を向け振り替えらないふりして歩き、十歩進んで一之宮の実家の方を見たら玄関に入ろうとしていて、振り替えてった一之宮と目があった。

「振り向くな!」

「お前もだ! ・・・また明日」

「ああっ、言われなくても」

 と、いい残し十歩離れた場所でも聞こえる程のピシャ! 大きな音を出しながら閉める。

 相変わらず愛想のない奴だ。奴に振り向く男は簡単にはいないだろ。近くにいる俺が言うから、確かだ。そんな中俺を除いて。

 やっぱりだ。今夜一之宮と過ごして分かった! 俺は間違いなく惹かれだしてる。最近ではない、ずいぶん前からこの兆候は出ていた。あの口調と行動が、そんなわけないと俺自身で気持ちを封じ込めていた。

 ちゃんと整理して向き合えば、あのプロポーズ事件も難なく乗り越えれたのに。

 一之宮の家から離るにつれ、更に何かが込み上げてくる。やっぱり、近くにいるだけでこれだけ違うんだ。近くに居てもらわないとそんなわけないと思えないし、否定できないし、何も言えない。

『いずれそうなる』決め台詞が浮かんでくる。

 そうなりましたよ。全く、ちゃんとしてれば――。そろそろ決着つけないと、俺の気持を出さないと堂々巡りなどしたくない。

 最終が駅のプラットホームに流れ込んで、改札を走りながら通過した時、決意した。

 

 ――向き合おう。一之宮結理と。

 どうでしたか? 念願の総力戦が出来て、自分なりに満足していますが・・・やっぱり何か足りない気がします。もう少し、会話文増やそうかな? まだ計画、途上段階を常に行き来しまだ不安定な状態ですが、どうぞ次回楽しみにしていてください。通常通り週一で投稿します。

 楽しんでもらえれば幸いです。

 

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