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ああ、なんて美しい人間なのだろう。これほどまでに命を燃やして生きている者は今まで見たことがない。この者を手に入れることができたら、どれほどの幸福であろうか―――
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ああ、なんて美しい天使なのだろうか。こんなにも美しい翼を持った天使は今までに見たことがない。この天使に自身の全てを捧げることができたら、きっと自分は人類のなかで一番の幸せ者であろう―――
◇◇◇
幾年ぶりに光が差した牢獄の中で、一柱の天使と一人の少年は、互いに奇跡を見出した。光が天使を照らす。天使は少年を光の中へと静かに導く。これまでに受けた苦しみからそっと掬い出すように、穏やかにその翼でそっと少年を包み込む。
なにも心配いらないんだよ。なにも怖くないんだよ。まるでそう囁きかけるように、優しく、優しく包み込む。母のように。少年が堪えていたものがあふれ出してくる。ひたすら天使の存在に縋り付くように泣き喚いた。
なにも、言葉は交わしていない。ただその時間は、初めて出会ったお互いの存在を奇跡のように感じ、味わうだけだった。
少年はすぐに気を失い、天使が少年を抱き上げる。少年を抱き上げた天使は少年と共にそっと姿を消し、光の満ちた牢獄をあとにした。腕のなかで眠る少年を見つめるその目は、慈愛に満ちていた。
◇◇◇
少年を城に連れて帰ったとき、城の者たちはたいそう驚いていた。天使は基本的に人間とは関わらない。それが天使の王ともなればなおさらだった。文句を言う者こそいなかったが、何人かは人間を城内に入れることに不満を持っている様子だった。
他でもないセラフィナの決定で、少年を城――カテドラル城に住まわせることになった。
部屋を即座には確保できなかったため、少年のことは自室のベッドに寝かせることにした。驚くほど軽い少年の体を優しくベッドに横たえ、治癒魔法を施す。肉体的な傷は癒えたが、精神的に受けた傷には何の効果もない。
この少年があの牢獄でどんな仕打ちを受けていたかを想像するだけで吐き気がする。わずか十歳ほどの子どもを相手に、言葉では表現できぬような悍ましい拷問を繰り返し、少しの食糧しか与えていなかった。きっとあと少し遅ければ精神が崩壊していたことだろう。
何度繰り返してもこの状況に慣れる気配はない。この終わりのない人生の繰り返しで、何度自分とこの少年が死んだかなんて数えられない。少年の名はレイゼルと言って、人類の中でもトップレベルの実力をもつ魔法剣士へと成長する。
黒い艷やかな髪に灰色の瞳を持ったこの美少年は、二十歳になる年に必ず、命を落とす。その時同時にセラフィナも命を落とすことになる。何の因果かは分からないが、毎回そうなるのだ。ある時は味方の裏切りで暗殺され、ある時はレイゼルが操られセラフィナを殺害し、自らも自害した。死に方は様々だが、共通しているのは他人の干渉によって死亡するという点だ。裏切りや操りは、他人の干渉だ。レイゼルやセラフィナ自身によって死が招かれたことは一度もない。




