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第14章 論争

こんなふうに大勢でコロを連れて歩くのは、いったい何年ぶりだろう。

いつもより注目を浴びているせいか、コロは背筋を伸ばし、足取りもどこか誇らしげだ。

首輪の淡い青光は、コロの注意を散らすこともなく、ただ静かに彼を守り続けていた。


「あら、それは素敵なお誘いね。お母さんが代わりに受けてあげたいくらいよ。なぜ蒼ちゃんは遠慮するの?」


「親しい友人とかなら分かるけど、まだ一度会っただけだよ?それに無料って…怪しんでるんじゃない。普通に考えて高額じゃん。僕たちは赤の他人なの分かってる?」


「ねえお母さん、佳澄ちゃんってめっちゃ優しいし、しごできだし、なんと言ってもオシャレで品があるの!

今回のお誘いだって、そんな佳澄ちゃんだからこそ得られたものだと思う。私じゃそんな機会は一生訪れない自信あるもん」


「そこは自慢するところじゃないだろ。一歩譲って佳澄さんは無料で良いだろうけど、僕たちまでわざわざ払ってもらう必要ある?

『老人ホームに入居する高齢女性が初対面の20代の男女に旅費を全額負担』ってタイトルの記事でもあった暁には、誰が見ても詐欺まがいの犯罪ニュースって捉えるでしょ。あ、加害者側はもちろん僕らね。


「そんな悲観的にならなくても良いんじゃない?そうだ。たしか、蒼にぃも有給休暇、使い切らないといけないんでしょ?3月末ならタイミングバッチリじゃん」


「そうそう。雪乃の言う通りよ。タイミングってあるわよね。人生は全てがタイミング。私がお父さんと出逢ったのもね」


「なんでお母さんまで……」


「あなたがコロが捨てられているのを見つけられたのはなぜ?その日だけ、部活帰りにいつもと違う帰り道を通ったからよ?そのチャンスはあなた自らが掴み取ったの。それに、やらぬ後悔よりやる後悔よ。あとは、この年数生きてきて分かってきたことがあるわ。相手の親切心を素直に受け入れる心も大切ということよ」


兄妹に旅をさせたい一心の母は、もはや教祖さながらの口ぶりで“誘いを受けるべき理由”を説き始めた。


母に名前を呼ばれた瞬間、コロは斜め左後ろへ小さく視線を送った。

二、三度“確認”したものの追加指示はなく、どうやら用無しと悟ったらしい。

コロはきっぱりと気持ちを切り替え、パトロールの任務へと戻っていった。


「……じゃあ、こうしよう?週末だけ行くのも弾丸旅行になって翌日の仕事に響くから、いっそのこと2泊3日で十分な日数取って行く。ただし、佳澄さん含め3人とも無理なく予定があった場合に限る。僕は翌日も念のため休暇を取ろうと思う」


「了解!私、無理しても予定合わせる!」


「雪乃、いい調子!新年度に向けてリフレッシュしてきなさい!熊本、ご飯も美味しくて良いところよ!」


対話の糸が切れた親子を前にして、蒼汰はもはや何を指摘しても空しく散るだけだと悟った。


こんな大所帯を引き連れて歩くのは、いったい何年ぶりだろう。

終始にぎやかだった3人を無事に家まで導いたコロは、任務終了と言わんばかりに、報酬としてのおやつをちゃっかり受け取っていた。




蒼汰は雪乃と佳澄をグループチャットにまとめ、招待へのお礼と希望日程だけを簡潔に送った。

幸か不幸か、佳澄も職業柄、比較的自由に休暇の設定ができるようだった。


候補日が固まると、佳澄からはアツ子へ、蒼汰から福岡にいる兄へ連絡を入れた。

どちらも大歓迎という返事で、細かな旅程まで驚くほどあっさりと決まってしまった。

航空券やホテルは、佳澄と雪乃が相談して手配することになった。

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