第1章 手続き
♪ポーン……
「お待たせいたしました。番号札19番の方、3番窓口までお越しください」
蒼汰は、受付番号が書かれた電光掲示板と手元の番号札とを見比べ、ビジネスリュックとコートを持って窓口へ向かった。
「こんばんは、お掛けください。本日はどのようなご用件ですか?」
男性スタッフがカウンターテーブル越しに声を掛けてきた。同世代くらいだろうか。
「あの、えっと、電話番号を変更したくて」
「かしこまりました。番号変更ですね。現在ご契約のプランは変更せず、番号のみ変えることになります。念のため、ご本人確認書類をお預かりしてもよろしいでしょうか?」
「はい、免許証あります」
「ありがとうございます。確認いたしますので、そのままお待ちください」
(パソコン入力)
「お待たせしました。田尻蒼汰様ですね。一度電話番号を変更しますと、これまでご利用されていた番号には戻せなくなります。また、変更手数料として、税込4,950円かかりますが、よろしいですか?」
「戻せないんですね…。はい、手数料も問題ないです」
「ありがとうございます。また、変更後の番号は、こちらでランダムに割り当てられたものをご使用いただくか、下4桁だけにはなりますが、もしご希望がありましたら、いくつか候補をご提示できますので、お好きな番号をお選びいただけますが、いかがいたしますか?」
特に新しい番号にこだわりはなかったが、折角なら選ぶのも良いかなと思った。
「下4桁、選べますか?」
「承知しました。それでは、こちらの用紙にご希望の4桁の番号をご記入ください」
選びたいとは言ったものの、数字が思い浮かばない。自分の誕生日はないよな。元カノの誕生日なんか論外だし… んー、これといって好きな数字もないし。
ふと、どこかで使ったことのある番号が思い浮かんだ。蒼汰は番号を書いた紙を渡しながら言った。
「下4桁『1833』の番号はありますか?もしなければランダムなもので構いません」
「『1833』ですね。少々お待ちください」
「お調べしたところ、3つございました。どちらをご希望ですか?」
「真ん中の番号をお願いします」
「承知しました。ではこちらの番号への変更手続きを進めますね」
手続きを待つ間、蒼太は待合席で暫く何もせずに過ごした。
金曜の夜だ。退勤後、仕事のメールが、いくつか来ているだろうが、おおよそ終わらせてきたし、急ぎの案件は無いだろう。そんなことより、最近は色々とあった。この変更をさっさと終わらせて、今夜くらいはゆっくりしたい。
「田尻様、手続きが完了しました。新しい番号はただいまからご利用いただけますが、機種によっては電源の入れ直しが必要な場合があります。念のため、今再起動していただけますか?」
再び窓口に戻った蒼汰は、問題ないことを伝えるため、あえてわざとらしく再起動後の画面をスタッフに向ける。スタッフも同意を示すようにしっかりと頷いた。
クレジットカードで支払いを済ませる。
「その他、ご不明点などはございますか?」
「大丈夫です。ありがとうございました。」
「こちらこそ、ありがとうございました。また何かございましたらお気軽にご相談ください」
店を出る頃にはすっかり夜が落ちていて、秋から冬へ移る気配が、気づかぬうちに空気の中へ満ちていた。
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