表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

76/78

第76話 スパチャは弾薬、コメントは魔法

 銀河外縁部。

 創造主が送り込んだ白い巨人『エディター・レギオン』の大軍勢に対し、リサイクル・ユニオン艦隊が布陣していた。


「カメラ回ってるか!? 俺の勇姿を撮り逃すなよ!」

 ガルドが専用機『ブラック・ジャック・カスタム』のコクピットで叫ぶ。

 彼の機体には、無数の小型カメラドローンが追従している。


『ガルドさん頑張れー!』

『海賊王かっこいい!』

『スパチャ(ミサイル補給)送ります!』


 配信画面に流れるコメントの数々。

 それらは単なる文字ではない。

 ルナとサレクが開発した『想念変換システム』により、応援コメントは物理的なエネルギーへと変換され、ガルドの機体に供給されるのだ。


「うおおお! 力がみなぎるぜぇぇ!」

 ガルドがトリガーを引く。

 普段の3倍の出力で放たれたビームが、エディターの群れを薙ぎ払う。


「見ろ! これが『人気パワー』だ!」


 一方、カトレアも負けていない。

 彼女は優雅に剣を振り、敵を斬り伏せながらカメラにウインクする。


『カトレア様尊い……』

『騎士道精神に乾杯!』

『投げ銭(バリア強化)します!』


 彼女の機体を包むシールドが、黄金色に輝く。

 鉄壁の防御。


「主よ、見ていてください! この身が砕けるまで、貴殿と民衆を守ります!」


 戦場は、巨大なライブ会場と化していた。

 視聴者の熱狂が、そのまま戦力になる。

 創造主の冷徹な論理に対し、人間たちの熱い感情が対抗する。


 だが、敵も黙ってはいない。

 エディターたちが合体し、超巨大な砲塔へと変形する。

 狙いは、配信の中継サーバーとなっている『ネオ・アーク』だ。


『……ノイズ源ヲ断ツ。……サーバー破壊』


 極太の消滅光線が放たれる。

 直撃すれば、配信が止まり、俺たちの力も消える。


「させないわ!」

 パンドラがネオ・アークの艦上で歌う。


 ♪私を信じて! みんなの声が、盾になる!


 彼女の歌声に応え、銀河中から膨大な「祈り」が集まる。

 それが物理的な障壁となり、ネオ・アークを包み込んだ。


 ズドォォォォォン!!


 光線が障壁に激突し、弾け飛ぶ。

 無傷だ。


「すげぇ……。みんなの想いが、物理攻撃を防いだ……」

 アランは震えた。

 これが、リサイクル・ユニオンの真の力。

 ゴミ溜めから始まった俺たちが、いつの間にか銀河中を巻き込み、神様さえも驚愕させるほどの「絆」を築いていたのだ。


『……理解不能。……計算外ノエネルギー増幅』

 創造主の声に、初めて焦りのようなノイズが混じる。


「計算できるわけないだろ!」

 アランが叫ぶ。

「これは『感情』だ! 効率も論理も関係ない、ただの熱量だ! ……お前の計算式には、最初から変数が足りなかったんだよ!」


 戦いの流れが変わった。

 押されているのは創造主の方だ。

 だが、追い詰められたシステムは、なりふり構わぬ最終手段に出ようとしていた。


 銀河の中心核コア

 そこにある超巨大ブラックホールを利用し、銀河全体を物理的にリセットする『強制初期化プログラム』の起動だ。


「……まずい。奴ら、銀河ごと自爆する気か!?」


 次なる戦場は、銀河の中心。

 時間との勝負が始まる。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ