表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

67/78

第67話 見えない守護神、涙の再会

 フォート・オメガ上空。

 カトレア率いる防衛艦隊は、壊滅寸前だった。

 シールドは消滅し、装甲は剥がれ落ち、ヴォイド・デーモンの鉤爪が艦橋に迫る。


「くっ……これまでか……!」

 カトレアは覚悟を決め、剣を抜いた。

 せめて一匹でも道連れにしてやる。


 敵の『斬撃将軍』が、巨大な鎌を振り上げた。

 死の刃が振り下ろされる。


 ――ドォォォォォォン!!


 凄まじい衝撃音。

 だが、カトレアに痛みはなかった。

 目を開けると、目の前の空間で、斬撃将軍の鎌が「見えない壁」に弾かれ、ひん曲がっていたのだ。


「な、何だ!?」

 斬撃将軍が狼狽する。

 何もないはずの空間に攻撃が当たり、火花が散っている。


『……お待たせしました、カトレア提督』


 通信機から、懐かしい声が響いた。

 アランの声だ。


『これより、貴艦隊の護衛に入ります。……背中は預かりました』


 シュゥゥゥン……。

 カトレアの目の前で、空間の揺らぎが解け、全長10キロメートルの巨艦『アーク・ノヴァ』が姿を現した。

 それは文字通り、敵と味方を分断する巨大な盾として立ちはだかっていた。


「主よ……! ご無事で……!」

 カトレアは膝から崩れ落ち、涙を流した。


「カトレア艦隊、全速後退! アーク・ノヴァの陰に入れ!」

 アランが叫ぶ。


 アーク・ノヴァの側面から、無数の砲塔が展開される。

 それは通常のビーム砲ではない。ルナと博士が開発した『聖銀散弾ミスリル・ショット』だ。


「撃てぇぇぇ!」


 ズドドドドドドッ!!

 青い光の雨が降り注ぎ、群がるヴォイド・デーモンたちを浄化していく。

 斬撃将軍もまた、予期せぬ猛攻を受け、舌打ちしながら後退した。


『チッ、小賢しい……! 一旦引くぞ!』


 敵軍が一時撤退していく。

 フォート・オメガに、束の間の静寂が戻った。


***


 基地の格納庫。

 ボロボロになったカトレアが、アランの胸に飛び込んだ。


「うわああああん! 主よぉぉぉ!」

 普段の凛とした姿はどこへやら、子供のように泣きじゃくる。


「よく頑張ったな、カトレア。……留守を任せて悪かった」

 アランは優しく彼女の背中を撫でた。


「お帰りなさい、CEO!」

 リズも駆け寄ってくる。彼女の目にも涙が光っている。

「本当に……心配しましたよぉ……」


 再会の喜び。

 だが、状況は依然として絶望的だ。

 基地は半壊し、多くの兵士が負傷している。そして敵の本隊は無傷だ。


「……喜んでいる暇はないな」

 アランは表情を引き締めた。

「俺たちは『マスターキー』を手に入れた。だが、これを使うには、敵の中枢『魔城パンデモニウム』に直接打ち込む必要がある」


「パンデモニウムへ……?」

 カトレアが顔を上げる。

「しかし、敵の包囲網は鉄壁です。どうやって近づくのですか?」


「正面突破だ」

 アランは言った。

「ただし、俺たちだけじゃない。……全銀河の戦力を結集した、最初で最後の総力戦だ」


 アランは振り返り、サレクとクローネ博士を見た。


「解析と改造、あとどれくらいかかる?」


「不眠不休でやって、あと3日です」

 サレクが即答する。


「よし。……3日だ。3日間、ここで敵を食い止める。その間に準備を整え、反撃に出る!」


 リサイクル・ユニオンの、そして銀河の命運をかけた、最後の3日間が始まった。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ