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第66話 ただいまと言える場所は、火の海だった

 長いワープの旅を終え、アーク・ノヴァはついに銀河系内へと帰還した。

 座標は、リサイクル・ユニオンの最前線基地『フォート・オメガ』の近海だ。


「……やっと帰ってきたな」

 アランは操舵席で大きく伸びをした。

「長かった。……まずは熱いシャワーを浴びて、リズの淹れたコーヒーを……」


「総裁! 前方に高熱源反応! ……戦闘中です!」

 オペレーターの悲鳴が、アランのささやかな希望を打ち砕いた。


 モニターに映し出されたのは、地獄絵図だった。

 難攻不落を誇ったはずのフォート・オメガが、紅蓮の炎に包まれている。

 周囲には無数のヴォイド・デーモンが群がり、基地のシールドを食い破ろうとしていた。


「なっ……! 防衛ラインが突破されたのか!?」

 ガルドが叫ぶ。


「通信回線、開きます! ……誰か応答してくれ!」


 ザザッ……。

 ノイズの向こうから、カトレアの声が聞こえた。だが、その声は荒く、爆発音に掻き消されそうになっている。


『……こちらフォート・オメガ……! 総員、退避しろ! ……基地はもう持たん!』


「カトレア! 俺だ、アランだ!」


『主よ!? ……戻られたのですか! ……いけません、ここへ来ては! 敵の数が……桁違いです!』


 画面の端で、カトレアの乗る旗艦が被弾し、大きく傾くのが見えた。

 彼女たちは、俺たちの帰りを待って、限界を超えて戦い続けていたのだ。


「……間に合わなかったのか」

 アランは拳を握りしめた。

 マスターキーはある。だが、解析と改造には時間がかかる。

 今ここで使えば、味方もろとも吹き飛んでしまう。


「どうする!? このままじゃカトレアたちが全滅するぞ!」

 パンドラが叫ぶ。


 アランは瞬時に思考を巡らせた。

 撤退か、突撃か。

 いや、どちらもダメだ。

 必要なのは「時間」だ。マスターキーを完成させるための時間と、カトレアたちを逃がすための時間。


「……スペック。アーク・ノヴァの『クローキング装置』はまだ使えるか?」


「稼働可能です。ですが、戦闘中の使用はエネルギー消費が激しく……」


「構わん! ……やるぞ、『オペレーション・透明な盾』だ!」


 アランは叫んだ。


「アーク・ノヴァ、最大戦速で突入! 敵と味方の間に割り込め! ……そして、クローキングを展開したまま『物理的な壁』になるんだ!」


「はぁ!? 見えない壁になって敵を弾くってこと!?」

 ルナが驚く。


「そうだ! 奴らは目に見えない攻撃には弱い! ……カトレアたちを背に隠し、見えない要塞となって敵を食い止める!」


 無茶苦茶な作戦だ。

 だが、リサイクル・ユニオンの真骨頂は、常識外れの応用力にある。


「総員、衝撃に備えろ! ……ただいまの挨拶代わりだ、派手に行くぞ!!」


 アーク・ノヴァが加速する。

 透明な巨体が、燃え盛る戦場へと躍り込んだ。

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