表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

55/78

第55話 銀河サミットと、私の席がない

 アランが3日間の爆睡から目覚めると、世界は少しだけ変わっていた。

 プラネット・イーター撃破のニュースは銀河中を駆け巡り、『リサイクル・ユニオン』の名声は頂点に達していたのだ。


 本社ビルの大会議室。

 今日は、銀河中の国家代表や種族の長が集まる「第1回・銀河防衛戦略会議」が開催されていた。


「……えー、本日の議題は『対ヴォイド・イーター共同戦線の恒久化』および『戦時物資の配給計画』についてです」


 議長席に座らされたアランは、緊張で胃薬を握りしめていた。

 目の前には、鳥人族の王、機械生命体の代表、そして商業連合のミレーヌ理事などがズラリと並んでいる。

 彼らは皆、ヴォイド・イーターの脅威を目の当たりにし、ユニオンの傘下に入ることを求めて集まってきたのだ。


「アラン総裁! 我が国にも『フェイザー・ライブ・システム』の供与をお願いします! 次の襲撃に備えたい!」

「いや、まずは避難民への食料支援が先だ! 我が星系は限界だ!」

「ユニオンへの加盟を申請したい! 審査はまだか!」


 矢継ぎ早に飛んでくる要望。

 戦争は終わっていない。むしろ、これからが長期戦の本番だという認識が、会場全体をピリピリとさせていた。


 アランは助けを求めてリズを見たが、彼女はさらに大量の書類に埋もれて死んだ目をしている。


「……だめだ、処理能力を超えている」


 その時、会議室の扉が開き、意外な人物が入ってきた。

 連邦艦隊のケーク艦長だ。

 彼は軍服ではなく、ラフなスーツを着ていた。


「やあ、アラン。……困っているようだね」


「ケーク艦長? なぜここに?」


「我々連邦艦隊も、正式にこの銀河への定住を決めたよ。……そこでだ、君に提案がある」


 ケークはアランの隣に立ち、マイクを取った。


「諸君! リサイクル・ユニオンは、もはや一企業ではない! ……この銀河を守る『盾』であり、物流を支える『血管』だ! ならば、その運営も銀河全体で支えるべきではないか?」


 会場がざわめく。


「我々連邦は、行政システムのノウハウを提供する。商業連合は資金を、各惑星は人材を出せ! ……アラン総裁一人に全ての負担を押し付けるのは、非効率的だ!」


 スペック副長が横から補足する。

「計算上、現在の業務量はアラン総裁の許容量を400%超過しています。……過労死リスク、極めて大」


「おお……確かに」

「我々も甘えすぎていたか……」


 参加者たちが納得し始める。

 アランは感動で震えた。

 (こいつら……俺の残業を減らすために……!)


 こうして、リサイクル・ユニオンは、単なる組織から「銀河連邦政府(仮)」へと進化することになった。

 各国の代表が役割分担し、アランの負担を減らす……はずだった。


「では、新体制の初代・銀河大統領を選出します。……満場一致で、アラン・スミシー氏!」


「は?」


 拍手喝采。

 アランは呆然とした。

 CEOから大統領へ。肩書きが豪華になっただけで、責任はさらに重くなった気がする。


「……逃げたい」


 アランが呟くと、背中に張り付いたパンドラがクスクスと笑った。


「諦めなさい、マスター。……貴方はもう、この銀河の『象徴アイドル』なんだから」


 パンドラは、復活してから少し大人びた表情を見せるようになっていた。

 彼女自身もまた、精神世界での対話を経て、ただの兵器から「心を持つ存在」へと成長していたのだ。


「それに、大統領になったら給料も上がるんでしょ? ……ハンバーグ、毎日食べられるわね」


「……そこかよ」


 アランは苦笑し、覚悟を決めて立ち上がった。

 新たな時代の幕開け。

 だが、平和なサミットの裏で、銀河の外縁部から、またしても不吉な報告が届こうとしていた。

 ヴォイド・イーターの創造主。

 古代文明を滅ぼした「真の敵」の影が、揺らめき始めていた。


(続く)

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ