ツノとしっぽと羽根とウロコ
「ねぇ、私のツノ、受け取ってくれない?」
今にも息絶えようとしている獣人の老婆が、
美しい光沢を持った黒いツノを、ゆっくりと私の方へ差し出してきた。
「もちろん、必ず待ってるからね」
私がそう言うと、彼女は安心した様子で優しく目を閉じた。
友人はいつも、私の10倍早く歳を取る。
そのため、私よりずっと早く死んでしまう。
しかし、彼または彼女は、命を終える度に違う種族となって生まれ変わり、必ず私の所に訪ねてくる。
そして、合い言葉を言うのだ。
「しっぽと、羽根と、ウロコ!」
今回は山羊の獣人として生まれてきて、そして亡くなった。
その前はペガサスで、尻尾の一部を、
さらにその前は白鳥で、羽根を1枚、
さらにそのまた前は竜人で、ウロコを1枚くれた。
それより前は忘れてしまった…
毎回100年ほど一緒に過ごせるが、亡くなると10年は会えない。
赤子が這ってくるわけにもいかないので、当然だ。
この世界には私と友人の2人しか存在しておらず、
友人がいない間は、暇を持て余しているので、友人のための日記と詩を書きためている。
もう出会った時のことは覚えていないし、なぜいつも一緒にいるのかも分からない。
だが、気が付くと隣にいる。
今日は、君との何度目の別れだろう。
次の出会いを信じて、今日は君のために何を書き残そう。
私は黒く美しい光沢のツノと、枯れ枝のように細くなった手を優しく抱きしめ、
友人との100年より長く感じる10年をどうやって過ごそうか思案していた。




