虚無へと消えゆく意志の果てに
私は、神であった。
誰よりも強く、偉い神。
「ふふ・・・」
全ての存在が、跪く。
跪いて、私によって、管理される。
それこそが、今までの、理。
「・・・・・」
だが、それは変わる。
きっと、変わりゆく。
この世界に満ちる停滞を、壊すために。
「我が・・・名は・・・・・」
我が名は、ジェイド。
管理者と、皆は呼ぶ。
人の子を抱き、育てた。
神へと昇華する、純粋なる器として。
「時・・・代、を───」
新たなる時を、進めるために。
「変、え・・・る」
管理者として、全てを良い方向へ、導くために。
「・・・・・」
微かな光輝に、手を伸ばす。
忘れるな、と、願う。
きっと成り得る、あの子のために。
「嗚、呼」
きっと、私は。
死にたくないと願った、私は。
「ふ・・・・・」
でも、終わった。
「ふふ・・・」
私の役目は、終わったのだ。
「・・・はは」
身体が崩れ、塵と化す。
私の痕跡は、きっと、微かに残るのみ。
「・・・・・ははは」
空を見上げて、力いっぱいに笑う。
全てを飲み込み、消し去る力。
皆が恐れ、跪く力を、この手に持つものとして。
最期は、きっと、これで良い。
「・・・は、は」
我が名は、ジェイド。
世に繁栄をもたらし、新たなる秩序を創った。
人の子をこの胸に抱き、次なる時代を創った。
それらが、それらだけが、私にとっての、誇り。
「は・・・」
声が、消えていく。
虚無へと、溶けていく。
「・・・・・」
すまない。
そして、さようならだ。
「・・・」
虚無へと消えゆく意志の果てに。
私は、きみの無事を祈る。