エクステなんてするか! バカッ!
いつもは木曜日に組まれる事が多い合コンが今回は金曜日だって?!
それとはなしにメンツを見てみると…『持ち帰り』されたと装って実は『逆持ち帰り』を仕組みそうな手練れが二人…その一人が…いつもは“無縁”な私に声を掛けて来た。
「妙子さんもどう? せっかくの週末なんだし…飲み会気分で参加しない?(どうせアンタなんか何の予定もないんでしょ!)」
私の容姿は…一重まぶたの薄い顔に薄い胸…背の高さだけは有り余る…可愛いところのカケラも無い合コンには不似合いな『でくの“棒”』だ!
数合わせとしての価値すら付けられた事が無いのに今日に限っての声掛けは…
あわよくば“撒き餌”にしてやろうという腹積もりに違いない。
「せっかくお声掛けいただいたのに申し訳ないんですけど、今日はちょっと用事が…」
「そんなもったいない事、言っちゃダメ! 今日のお相手は、世界を股に掛ける商社マンよ! ウチの男ドモとはてんで違うんだから!!」
「そんな方々なんて、ますます気が引けてしまいます。それに私なんかいつものユニク●の上下ですし…」
「あら、素敵じゃない! スリムでカッコいいわよ! そうねえ~あちらは大学ラグビーやってた方もいらっしゃるから、きっとお似合いよ!」
「いえいえいえ、そんな方にタックルされたら怖いから…結構です」
私は時計を見るフリをしてそそくさと場を離れ、遠く物陰に隠れてから振り返ると…
彼女たちのクスクス笑いが見える。
きっと彼女たちは…私にはオトコのオの字も居ないと思っているのだろう。
確かに居ない!
でもヤル事はヤル。
今日、用事があるのも事実!
ヤル用事がある。
その相手も…最近は決まっている。
今着てる…黒のハイネックに、歳に洗われて色が褪せた“アンダーヘア”をくっ付けたヤツ!
いわゆる“ロマンスグレー”からは程遠いヤツだ。
このアンダーヘアをさっきの女どもに目ざとく見つけられた時は「ウチの犬のかしら?」なんて白々しく言ったけど、おおかた『父親のがくっ付いた』とでも思われているのだろう…「実家暮らし」って事にしてるから…
そうこうしているうちに私はデパートのお気に入りのトイレの前。
ここの入り口には…本物のジュエリーが飾られているショーケースがあり、大ぶりの花瓶には…今日は匂い立つカサブランカが活けてある。
その“個室”の中で…私は一種の背徳のスリルに恍惚を覚え…しばし“潤い”の前準備を行い…足りない分はローションで足して、男から支給されていたTバックのペーパーショーツに履き替える。
ここからは御用達のブティックホテルまで一駅。
きっと男は
待ち構えているはず。
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部屋に入ると、ドア陰に居たオトコに背中から抱きすくめられた。
オトコの手は…私の胸はほぼ素通りして、着丈が少しだけ短いベージュのコットンバギーパンツのボタンを外しジッパーを下ろす。
そう、ヤツはバックが専門で…
それがヤツとの“付き合い”が続いている一番の理由。
ややこしくも煩わしいやり取りは抜きで…
そのうちTバックの封を切られ…ヤリ、ヤラれるだけ。
顔を突き合わせて心を波立たせる事もなく…カラダの具合はバックが合ってる。
私はヤツに何の興味も無い。
ヤツの私への興味は“受け入れる”オンナの部分とサラサラの後ろ髪。
それだけの為に…
元々がネコ毛の私はケアできる限界として、おかっぱに近いショートボブでサラサラを維持していた。
どうやら世間の相場からは随分安い私の“代金”はヤツにとっては当然メリットだが、実は私にとってもメリットだ。
そもそもが…つじつま合わせの“快楽の享受”なのだから
私は“新月”のような顔を出さないオンナで居たいのだ。
ただそんな風にしか考えていなかった私には
そのずっと後に振りかかった想定外の“リスク”についてはまるきり無知だった。
その頃の私の…
体に関する悩みのタネは…
一重まぶたのまつ毛でしょっちゅう目をやられる事!
雑踏の中で手渡しされたポケットティッシュに印刷された広告に
『まつ毛エクステなんてするか! バカッ!』
と、毒づいていた。
ちょうどその時、ほんの100mほど向こうのホールで、『HPV』に関するフォーラムが行われていた事を
ずっと後に…
我が身に降りかかってから知り
「“着けたり着けなかったり”のアイツが16型だったのかもしれない」
と、悲嘆にくれた。
少なくともリスクについては考えて欲しいなって思います。
すべてを女の子任せにするのは絶対やめて欲しい!!
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