ゴミ屋敷
気がつくと、日が暮れていた。
昼を寝て過ごしてしまったとか気絶していたとか、そういうことではなくて、本当に、気がついたら日が暮れていた。
この頃こんな日が多くなった。おかげでバイトは首になったし、本当に家でぼうっとしている時間が多くなった。いや、もしかしたら首になったからぼうっとしているのかもしれない。こんなこと考えても何にもならないのは分かってるけど、楽しいから仕方ない。
こんな日は酒でも飲もう。そう思ってソファに寝転がっていた身体を起こして床に足をつけた。
最近、埃が積もるのが早くなったと思う。
冷蔵庫を開けると中身は空に近かった。ビールだけが、二缶転がっていた。ビールを持ってソファに戻り、プルタブを引きちぎって口に運ぶ。もしかしたらこんな生活が続いているはこれのせいなのかもしれない。そう考えながらもう一口飲んだ。
酒を飲み終わって、暇を持て余した僕の指はタバコの箱を開けた。タバコは酒と違って酔うことはできないけど煙が出るのは楽しい。
タバコにライターを近づけたところで火災報知器のことを思い出した。僕はタバコを戻した。前はベランダに出て吸っていたけど、最近はそれが億劫で仕方ない。そうだ、最近吸っていないのはこれのせいだ。
やることがなくなったので、ソファに寝転がった。こうしている時が一番心地良い。
瞼が重くなってきて、眠ろうと思った。でも風呂に入っていない。それどころか顔を洗ってもいない。嫌なことを思い出した。
ニキビが増えるから洗顔くらいはしよう。そう思ったけど、やっぱり僕は眠りについた。
スマホの振動で目が覚めた。一瞬、目覚ましかと思ってスマホを手に取ったが、そんなことはなかった。もっと、嫌なものだった。
誰かからのラインだった。公式アカウントだと良いな、なんて思いながらスマホを開く。
『最近来てないけど大丈夫か?』
大学の知人からだった。返すのも面倒だし、時間を確認してもう一度目を閉じた。時間は正午だった。
次はノックで目を覚ました。誰かと思ってじっと次のアクションを待っていると、ドアの向こうから声がした。
「いないのか?」
知人だった。押しかけてくると知っていれば、返信したのに。そう考えているとニ度目のノックがされた。
「寝てるのか?」
バイクは駐輪場にしっかりあるはずだから、居留守使っても無駄だろうなと思って、三度目が来る前に声を出した。
「いま……あ、あける」
予想していたより声が出ず、少し驚いた。聞こえていたかは分からないけど、とりあえず起き上がってドアを開ける。
「お、久しぶりだ……大丈夫か?」
「なに?」
ドアから顔を覗かせると、知人は驚いていた。
「だいぶ顔色悪いぞ」
そう言って、彼は部屋に入ってきた。
「うわ……」
部屋を見てそんな声を上げていた。確かに、足の踏み場を選ぶくらいには色々なものが床に落ちているし、テーブルにはビール缶が何本もあったから仕方がない。
「最近来てないけど、なんかあったのか?」
勝手にソファに腰掛けた知人は、同じことをまた聞いてきた。
「何もないよ、行くのが面倒なだけ」
そう言って立ち尽くした、どこにも座れる場所がない。
「ここ座れよ」