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突然魔法少女? 17

 打ち合わせに入ったようですぐに画面が闇に閉ざされた。おはぎに夢中な楓がちらりと誠の端末の画面を見たが、何も映っていないので飽きたと言うようにすぐに視線をおはぎに持っていく。そんな彼女におはぎを手渡す渡辺の表情がほころぶ。そして二人の女性士官はしっかりと見つめあい沈黙した。その有様を見てため息をつく要。彼女はおはぎに手を伸ばすこともなく、自分の机から追い出されつつある誠の肩を軽く叩いて暇を潰していた。

 端末からは何か争うような声が途切れ途切れに聞こえてくる。それがランと明華の悶着でそれを吉田とアイシャがなだめているものだとわかると誠も大きなため息をついた。

『それじゃあEの23番……スタート!』 

 ようやく落ち着いたようでアイシャの声がかかる。画面には青空が広がる町の公園の街頭の上に立ったランがゆっくりと顔を上げて微笑む光景が映される。

『これは……久々に暴れられそうだな』 

 そしてにんまりと笑うランに要が目を向ける。

「怖えなこりゃ。ちびも拡大するとすごいことになるじゃねえか」 

 要は三つ目のおはぎに手を伸ばした。そこで部屋に入ってきたのがカウラだった。

「おい、西園寺。出番だぞ……隊長?」 

「あ?俺が居るとまずいの?」 

「いいえそう言うわけでなく……餡が口についてますけど……大丈夫ですか?」 

「本当?ちょっと待っててくれよ」 

 カウラに言われて手を口に持っていく嵯峨。そしてすぐにカウラも皆が誠の画面を見ていることに気づいた。そしてカウラは画面を見ている誠達がおはぎを手にしていることを確認するとそのまま重箱に手を伸ばす。

「出番ねえ、分かったよ。それで……」 

「ごめんなさいね!」 

 要が立ち上がろうとするとお盆を持った春子が現れた。続いてきたアンの手にはポットが握られている。

「すみませんねえ。何から何まで……」 

 嵯峨の言葉ににこやかな笑顔を返すと春子は湯のみを並べていく。

「じゃあ行ってきまーす」 

 やる気の無い声を上げてそのまま部屋を出て行く要。

「ああ、要さんは出番?」 

「まあそんなもんです」 

 湯飲みにお湯を注ぎながらカウラにたずねる春子。その隣ではお茶が入るのを待とうと手におはぎを握りながら待っている楓と渡辺の姿があった。

「それにしても便利ですね、東和は。こんなものを簡単に作れるなんて」 

 感心しながら画面を指差す楓。休憩を取っているようでおはぎを食べているアイシャとシャムの姿が映されている。

「ああ、あの簡易型のヴァーチャル視覚システムのこと?普通は手が出るレンタル料じゃ無いが吉田のコネでね。あいつは映画関係とかに知り合いが居るらしいから」 

 春子が置いた自分の湯飲みを手に取ると静かに茶を啜りながら嵯峨が答える。

「そうなんですか……。それにしてもこのお茶、良い香りですね。どこのですか?」 

 自分の濃い緑色の湯飲みを手に取った楓が誠にたずねた。

「確かこれは……」 

「東海よ。惟基さんはあそこのお茶が好きだから」 

 誠をさえぎるようにして春子が答えた。楓は何回か頷くと茶を啜り始める。

「東海って遼南産ですか。隊長のコネかなんかでナンバルゲニア中尉がたくさん貰ってきた奴でしたっけ?隊員で分けても多すぎてあまさき屋にまでもっていったんですよね……」 

 そんな誠のあいまいな質問に呆れたような顔をする嵯峨。

「シャムちゃんのはすぐ使っちゃって……今いれてるのは私が持ってきたんだけど……」 

 春子の言葉が誠に追い討ちをかける。誠は少しへこみながら美少女キャラが書かれたマグカップに入ったお茶を啜りつつ、画面が切り替わった自分の端末に目を移した。

 ランの右の握りこぶしが掲げられた場面が転換して夜のような光景になった。懐中電灯を照らしながら山道を歩くシャムと小夏が見える。

『魔法を使っちゃ駄目なの?』 

 肩に乗った手のひらサイズの小熊のグリンにたずねるシャム。

『だーめ!勝負を決めるのは魔法の力だけじゃないんだ。瞬間的な判断力や機転、他にも動物的勘や忍耐力。まだまだ魔法以外に学ばなければならないことが一杯あるんだよ』 

『うーん。アタシは難しいことは分からないけど……』 

 そう言って苦笑いを浮かべるシャム。『難しいことは分からない』と言うシャムの言葉に画面の前に居る誠達が一斉に頷いた。

『つまり私達自身が強くならなきゃ駄目ってことね』 

『そう言うこと。それにこの森の波動は僕が居た魔法の森の波動と似ているんだ。きっと修行には最適の場所だよ!』 

 そう言いながら二人は山道を進む。そして画面が切り替わり、夜中だと言うのにサングラスをかけた大男が映し出される。

「あ、明石中佐ですね。来てるんですか?」 

 蛍光オレンジのベストに手に猟銃を持った明石清海中佐の姿がアップで映る。

「ああ、何でも管理部の提出資料の確認に来たらしいんだがアイシャに捕まってな」 

 カウラの言葉に納得しながら誠は画面の中の明石を見ていた。

『この気配……』 

 そう明石が言うとすぐに画面は広場に出たシャムと小夏のアップにさし代わる。

『じゃあいいかい。まず目を閉じてごらん』 

 グリンの言葉でシャムと小夏は目を閉じる。シャムの視界のイメージ。真っ暗な世界。

『君達には見えるはずだよ、この森の姿が。そして生き物達の波動が!』 

 その言葉が終わるとシャムの視界を表現していた真っ暗な画面が白く光り始める。光の渦は木の形、草の形、鳥の形、獣達の形。さまざまに変化を遂げながら中心で微笑む全裸のシャムの心のイメージを取り巻くように流れていく。

『そう!そうすれば分かるはずだよ。そしてそうすれば生き物達の力が君達に注がれるんだ』 

 グリンの言葉とともにシャムの姿はさまざまな森の生き物達に取り巻かれるようにして森の上空へと飛び立っていく。急に暗雲が空に立ち込める。

『見つけたぞ!熊っころとおまけ共!』 

 突然響いたのは要の声だった。現実に引き戻されたシャムと小夏はもみの木の巨木の上に立つ女性の影に目を向けた。それはランではなく胸の膨らみを強調するような衣装を纏った魔女の姿だった。

「ああっお姉さま!」 

 楓が叫んで画面に身を乗り出す。月の光に照らされながらもみの木の枝に立って唇を舐め上げるタレ目の女幹部の表情が拡大されていた。

「やっぱり鞭ですか、武器は」 

 渡辺も興奮気味に画面に吸いつけられる。カウラと誠は二人の上昇していくテンションについていけないというように顔を見合わせた。

「おい、あいつ嫌だとか言ってた割にはのりが良いな」 

 そう言って茶を啜る嵯峨。春子は空になった嵯峨の湯飲みに緑茶を注ぎながら様子を伺っていた。

「要さんはお祭り好きですからねえ」 

 そう言って微笑む春子。だが、誠は狂気をたたえたタレ目でシャム達を見下ろしている要。いつも射撃レンジで銃を取ったときの近づきがたい要の姿を髣髴とさせて背筋に寒いものが走る。

『貴様達などメイリーン様の手を煩わせるまでも無い!行くぞ』 

 そう言って鞭を掲げて飛び降りる要。シャムと小夏がその鞭に弾き飛ばされる。

『シャム!』 

 何とか鞭をかわしたグリンがバリアのようなものを展開する。その中で足に怪我を負いながら立ち上がろうとするシャム。

『結界……愚かだな!その程度の魔力でこのイッサー大尉の鞭を防ぎきれると思ったのか!』 

 そう言って鞭を振り下ろすイッサー大尉こと要。

「こいつ実は好きなんだな。こういうの」 

 おはぎを口に運ぶカウラ。誠は画面の前でうっとりと要に見とれている楓と渡辺に苦笑いを浮かべながら茶を啜る。

「本当に良くお似合いで……ああ……」 

 楓の脳内がどうなっているのか、それを想像して寒い気持ちになりながら誠は再び画面に目をやる。

『シャム、小夏!願って!』 

 絶え間なく振り下ろされるイッサー大尉の鞭を受けながらグリンは必死になって叫ぶ。

『何を願うのよ!シャム。逃げましょうよ!』 

 小夏がそう言ってよろよろと立って、鞭を振るうイッサー大尉をにらみつけているシャムの手をとる。

『逃げないよ、私は!』 

 そう言うと手を天にかざす。彼女の手が輝き魔法の杖が現れる。高らかなファンファーレと共にシャムの体が光りだす。

『森の精霊、生き物の息吹。私に……力を!』 

 その叫び声と共にシャムの全身が光り始める。そのまま来ていたTシャツが消え去り、素肌を晒したシャムが画面の中でくるくると回る。

「あのさあ、神前。なんでこういう時ってくるくる回るの?」 

 嵯峨が誠の耳元で囁く。驚いて飛びのいた誠は珍しく純粋に疑問を持っている顔をしている嵯峨を見つめる。

「そのー、まあお約束と言うか、視聴者サービスと言うか……」 

「なるほどねえ」 

 そう言って嵯峨は口の中の餡の甘みを消そうと茶を啜ってそのままぐちゅぐちゅと口をすすぐ。

「父上、そう言う下品なことは止めてください!」 

 画面に張り付いていた楓も父親の行動に気づいて振り返る。

「すいません。根が下品なもので」 

 謝る嵯峨。彼を見て微笑む春子。画面の中では要の鞭に次々とシールドのようなものを展開して攻撃を防ぎ続けるシャムの姿があった。

『シャム!守ってばかりじゃ勝てないわよ!』 

『お姉ちゃん!そんなこと言っても!』 

 いつの間にか変身した姿で手に鎌を持って宙に浮く小夏。質問したいことがいくらでもあると言うような顔で誠を見つめているカウラにどう説明したら良いかを考えながら画面に目を移した。

 そこには火炎の玉を目の前に展開するシャムの姿が写っていた。

『森、木々、命のすべて!私に力を貸して!』 

 そう叫ぶとシャムが杖を振り下ろす。何度か変則的に曲がって飛ぶ火の玉。そしてその周囲の空間がそれ自体が燃えているように画面を赤く染める。

『なんだと!これは……うわー!』 

 そう叫んでイッサー大尉こと要はその火炎を受け止めるべく鞭を握って結界を張るが、勢いに負けて吹き飛ばされて崖へ追い詰められる。

『こんな……こんな筈では……私ともあろうものが……』 

 あちこちコスチュームがちぎれて非常にきわどい姿を晒す。それにあわせて画面にさらに近づく楓と渡辺。誠は二人に呆れながらおはぎを口に運ぶ。

『私が……負ける……?』 

 アップにされた要の姿を良く見ると腕やふくらはぎから機械の様な色を放つ内部構造が見える。

『そこまでだ!機械帝国の手先め!』 

 突然要のわき腹のむき出しの機械の部分に猟銃を突きつける明石。あまりに唐突な登場に誠は目を覆った。

「これもアイシャの狙いか?」 

 再び口におはぎを持っていきながら嵯峨が誠に尋ねてくる。誠はさすがにこの展開はないだろうと思ってただ苦笑いを浮かべるだけだった。そんな状況を知らないだろう要ことイッサー大尉は静かに手にしていた鞭を投げ捨てた。

『おじさん!その人から離れて!』 

 そこにシャムが現れる。彼女が要に止めを刺そうとしていると思って手を握り締めて画面を見つめる楓と渡辺。

『駄目だ!こいつはこの世界を崩壊に導く機械だ!壊してしまわなければ』 

 そう言って猟銃の引き金に指をかける明石。だが、シャムから放たれた小さな火の玉に銃を取り落とす。

『イッサー大尉。本当にそれで良いの?世界を機械で埋め尽くして……それが願いなの?』 

 歩み寄るシャムに再び鞭を取ろうと立ち上がろうとするが、腕や足から機械音がするばかりで体を動かせずにいる要。

『シャム!近づいたら!』 

 小夏の制止を無視して歩いていくシャム。要の腕や足から煙が上がる。

『大丈夫、あなたを壊したりしないわ』 

 そう言うとシャムの両手に暖かいクリーム色の球体が浮かぶ。それはゆらゆらとゆれて要の壊れた体を修復していく。

「便利だねえ。俺も魔法を使えないかな?」 

 そう言いながら明らかに無理をしておはぎを口にねじりこむ嵯峨。しらけた顔で楓が父の顔を覗いているのがつぼに入って必死になって笑いをこらえる誠。

『情けを……貴様……敵に情けをかけたつもりか?』 

 悔しそうに唇を噛む要。なぜか出てきた猟師っぽい明石が再び銃を手にしてイッサー大尉に向ける。

『この借りはいつか返すぞ!』 

 そう言って消える要。そのまま森に残されたシャムと明石は顔を見合わせていた。

「すごい組み合わせだな」 

 おはぎを手に取るとカウラは呆れたようにそう言った。画面は銃を取り上げて再び要のいた場所に照準を合わせる明石の姿がある。

『あなたは……なぜ機械帝国のことを?あなたは……魔力も無いのになぜ?』 

 シャムの肩に飛び乗ったグリンを明石が見つめる。

「それよりこの奇妙な動物に突っ込むな、俺なら」 

 そう言いながら明らかに無理をしておはぎを口に運ぶ嵯峨。

「惟基さん、お嫌いでしたか、甘いものは」 

「いやあ、そんなこと無いですよー。僕は大好物ですから……おはぎ……」 

 明らかに春子に気を使っている様子にカウラと誠は苦笑いを浮かべると再び画面を覗く。答えることもせずシャムに近づく明石。明らかに変質者とコスプレ少女と言うシュールな絵柄に突っ込みたいのを我慢しながら誠は画面を見つめていた。

『知っている人は知っているものさ、どこにでも好奇心のある人間はいるものだからね』 

 明らかに関西弁のアクセントで無理やり標準語をしゃべる明石。誠はとりあえず突っ込まずにそのまま黙っていた。

「やはり明石中佐は訛りが強すぎるな」 

「そうですね、播州コロニー群の出身だそうですから。あそこの出身者の訛りはなかなか抜けませんよ」

 楓と渡辺は要が姿を消して関心を失ったと言うようにそのまま自分達の席へと戻っていく。

『でも、あなたは魔法を見ても驚かなかったじゃないですか。この世界の人がそんなに簡単に魔法を受け入れるとは思えないんですが』 

 グリンの言葉ににやりと笑って禿頭を叩く明石。

『確かにそうだ。俺はある人物から話を聞いてね』 

「そのある人物がお前か……でもどう見ても……プリンスには見えないな」 

『マジックプリンス』と言うなんのひねりも無い役名の誠の顔を見つめるカウラ。その吐息がかかるほどまで接近している彼女にまじまじと見つめられて、誠は鼓動が早くなるのを感じたが、カウラはまるで関心が無いというように再び画面に目を移す。

『いずれ君達と一緒に戦う日が来るだろう。それまではお互い深いことは知らない方がいい』 

 そう言うと猟銃を握り締めて立ち去る明石。

「あいつ、本当に訛ってるな」 

 そう言いながら嵯峨がお茶を啜っている。その時、再び詰め所のドアが開いた。そこに立っていたのはパーラだった。

「ああ、春子さんここでしたか。アイシャが呼んでますよ」 

「ごめんなさい。じゃあ行ってきますわね」 

 そう言って立ち上がる春子。その後姿を目で追っている嵯峨。

「隊長……」 

 突然誠に声をかけられて頭を掻きながら嵯峨は口の中のあんこを飲み込もうと再び出がらしになった茶の入った急須に手を伸ばす。

「父上、口をゆすぐのはやめてくださいよ」 

 自分の席の端末を開いて仕事を再開した楓の警告が飛ぶ。苦笑いを浮かべながら嵯峨はそのまま口に入れたお茶を飲み下した。

「あのー……」 

 春子達と入れ替わりにドアから顔を出したのは西とレベッカだった。誠達はその顔を見てそれぞれ時計に目をやった。

「ああ、もう昼か」 

 十二時を少し回った腕時計の針を確かめながらげっぷをする嵯峨。乾いた笑いを浮かべながら誠はおはぎに手を伸ばす。

「ああ、シンプソン中尉!見ての通りなんで昼の買出しはいいですよ」 

 カウラが苦笑いを浮かべながら答える。西とレベッカはロナルドのデスクに置かれた重箱を目にしてそのまま入ってきた。昼の買出しは誠が隊に配属になったころから各部の持ち回りで行われるようになっていた。以前は隣の菱川重工の食堂を利用できたそうなのだが、要が暴れ、シャムがわめき、嵯峨がぐだぐだと味に文句をつけたため出入り禁止を食らっていた。仕方なく昼食は菱川重工の生協で弁当を買うというのが普通のことになっていた。

「僕好きなんですよ、おはぎって」 

 そう言いながらすぐにおはぎに手を伸ばして食べ始める西。レベッカもすでに両手におはぎを持って食べ始めている。

「ああ、神前さん何を見ているんですか?」 

 西は不思議そうに誠の端末が黒く染まっているのに目をつける。

「あれだよ、例の映画」 

「ああ、クラウゼ中佐の奴でしたっけ?でもまあ吉田さんも大変ですよね」 

 そう言いながら今度は西とレベッカが春子が居た場所に陣取る。アイシャが二人を出さなかった理由がシャムが書き上げた今度のコミケ向けの少年を襲う女教師の出てくる18禁漫画が原因だとは知ってはいるが口に出せずに愛想笑いを浮かべる誠。

 再び画面に目を戻すと、そこには鎖に縛られた要の姿があった。誠とカウラは目を見合わせた。間違いなく楓達が動き出す。

『うわ!ふっ!』 

 鞭打たれる要の声。誠が目を向ければ予想通り楓と渡辺が立ち上がっている。恍惚とした目で鞭打たれる要を見つめる二人。そこに割って入ろうとするレベッカだがすぐに楓が鋭い視線でにらみつける。

「シンプソン中尉!君達は買出しの任務があるんだろ?」 

 そう言って西とレベッカを追い散らす楓。

「すみません。楓さん達はお昼はどうします?」 

 頭を下げながらおずおずと楓に尋ねるレベッカ。

「ああ、あっさりとぶっかけうどんがいいな」 

「私はミックスサンドで。中身は任せる」 

 力強くそう言うとそのまま画面で拷問を受ける要の姿を目に焼き付ける楓と渡辺。

「よく食べますね」 

 誠が思わずそう言うと楓と渡辺に殺気を込めた視線を投げられて言葉を失う。

『よくもまあ恥ずかしげも無く生きて帰ってこられたものだな!』 

 サディストと言われる明華がまさにそれを証明するかのように要から取り上げた鞭を振り下ろしている。要の悲鳴とにんまりと笑う明華の表情が交互に映し出される。

「これは……ちょっとやりすぎじゃあ……」 

 誠は苦笑いを浮かべるが楓達の反応はまるで違っていた。

「素敵……」

「私も……要お姉さま……」 

 ほんのりと頬を染めて楓が今にも身悶えそうな雰囲気で画面を見ている姿に誠とカウラは頭を抱えた。

「じゃあ、失礼します!」 

 引き時を悟った西とレベッカはそのまま部屋を出て行った。

「賢明な判断だな」 

 西とレベッカが消えたのを見てそう言うとカウラは再びおはぎに手を伸ばした。

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