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突然魔法少女? 15

 実働部隊の『詰め所』と呼ばれる事務作業の机に誠が倒れ伏したのは別に日課の3キロマラソンに疲れたからではなかった。

 実働部隊と警備部の隊員には特に任務が無い限り毎日3キロのランニングが課せられている。元々大学時代に野球部のエースだった誠からすれば軽いランニング程度のものだったが、今日のそれは明らかにつらすぎた。昨日アイシャと要と話し合ってどうなったのか分からないが、カウラがニコニコしながら誠の隣を走る。サイボーグであるためランニングに参加しない要は走り終えた誠にスポーツ飲料の缶を差し出してきた。

「誠ちゃん!」 

 そして突っ伏せる誠に笑顔のアイシャがいつの間にか背中に立っていて、彼の頭を軽く叩く。

「なんですか?ベルガー少佐まで……」 

 めんどくさそうに頭を上げる誠だが、一瞬でアイシャの表情が変わったのを見てびっくりして立ち上がる。カウラはその光景を見ながらただ困ったような笑みを浮かべていた。

「何よその顔。まあ良いわ。ちょっと来てくれない?」 

 そう言って誠は連れ出された。廊下を進み、いつもは倉庫になっている部屋をノックするアイシャ。

「神前が来たのか?」 

 中からの声の主は意外にも嵯峨だった。そのままアイシャはドアを開けて中に入る。カプセルのようなものが並んでいる倉庫扱いだったこの部屋。その中の一つから顔を出している嵯峨。その頭にはヘルメットのようなものをかぶっていた。

「隊長も覚悟決めてくださいよ。一応この話は隊長が去年……」 

「分かったよ、やれば良いんだろ?」 

 そう言って嵯峨がカプセルに横たわる。それを見て安心したようにカウラはカプセルの縁に立つ。

 誠が目を凝らすと他にもシャムとカウラ、そしてなぜか小夏やリアナまでカプセルの中で顔に奇妙なマスクのようなものをつけて横になっている。

「なんです?これ」 

 呆れたように誠が自分向けと思われるカプセルを指差す。

「撮影よ!セットなんて作る予算も無いからバーチャルで全部やろうと言うわけ」 

 そう言って誠にそのカプセルに横たわることを強制しようとするアイシャ。昨日要に聞かされた撮影方法を思い出して納得するがいま一つぴんとこない。

「まあ、いいですよ。変な効果は無いんでしょうね」 

「おい、神前。俺の技術に文句をつける気か?」 

 そう言うのは奥にモニターをにらみつけながら座っている吉田。さすがに誠は陰湿な嫌がらせが得意な彼に逆らうことは無駄だと悟ってシャム達の様子を観察する。アイマスクのようなものをつける彼女達の口元が笑っているように見えたので誠は覚悟を決めるとアイシャが指し示すカプセルに寝転んだ。

「はいこれ」 

 そう言ってアイシャがヘルメットを差し出す。徹夜明けと言うことでいつもより明らかに疲れているようで、笑顔がどこと無くぎこちない。

「分かりましたよ」 

 誠はそのまま体をカプセルの中で安定させるとヘルメットをかぶった。それに付属した視界を確保するためのバイザーをおろすとそこはどこかで見たような部屋だった。

『これ僕の部屋じゃないか!』 

 確かにこれは実家の誠の部屋だった。夏にコミケの前線基地としてアイシャ達を呼んだ時にアイシャが撮った部屋の内装なのは間違いなかった。きっちり本棚には誠が作った美少女キャラのフィギュアが並んでいる。

「始動するわよ!」 

 アイシャの声が響くとカプセルのふたが閉まる。そして誠の意識はバイザー越しの見慣れた部屋に吸い込まれていった。

 誠の着ている服が寝巻きに変わる。

『このまま開始5分で着替えて食堂に下りる』 

 目の前にに指示が入る。昨日の渡された台本を思い出し、カウラの幼馴染で大学に通うために下宿していると言う後付設定が加筆されたのを思い出しながら頭を掻いて見せた。

「凝りすぎでしょ、アイシャさん」 

 誠はそう言いながら東都の実家と同じ間取りの部屋のベッドから起き上がり、かつてのように箪笥から服を取り出す。

『誠ちゃん。ちゃんと着替えるのよ』 

 天の声のように響くのはアイシャの声だった。誠は急かされるようにジーンズをはいてTシャツを着込む。そしてそのまま誠の実家と同じ間取りの階段を下りて出番に向けて食堂の入り口で待機した。

 視界に入る台本にはすでにシャムと小夏、そして嵯峨とリアナが食堂で食事をしていると言う設定が見えた。カウラは炊飯器からご飯を盛っているということで誠の視界の外にいる。誠はそのままカウントが0になったのを確認して食堂に入った。

「お兄ちゃん遅いよ!」 

 そう言って叫ぶシャム。

「ごめんな、ちょっと……うわっ!」 

 誠は台詞を読むのをやめて叫んだ。シャム、小夏、嵯峨、リアナさらにカウラ。そして自分の席にも明らかに不審などんぶりが置かれていた。

 嵯峨がその中身を摘み上げる。芋虫である。どんぶりの中にはうごめく芋虫がいっぱいに盛られていた。シャムは誠から関心をどんぶりに移すとそのまま一匹の芋虫を手にしてそのまま口に入れた。

「なんですか?これは!」 

 思わず絶叫する誠。だが、シャムも小夏も嵯峨もリアナも何も言わずにどんぶりの中の芋虫を手に取ると口に運んだ。

「なにって……リョウナンヘラクレスオオゾウムシの幼虫だろ?」 

 嵯峨は何事も無いように一匹の芋虫を取り出すと口に運んだ。

「これってグロテスクだけど癖になるんだよね」 

 同じよう口に二匹の芋虫を入れて頬張る小夏。リアナもシャムもおいしそうに食べ続ける。

「待った!タンマ!」 

 叫ぶ誠に目の前の彼の家族達が冷たい視線を投げてくる。

『どうしたの?誠ちゃん。何か不都合が……』 

 アイシャの明らかに笑いをこらえている声がさらに誠をいらだたせた。

「これ……マジっすか!勘弁してくださいよ!」 

 ほとんど半泣きで叫ぶ誠。

「仕方ないわね。でもこれをクリアーできないと出番が少なくなるわよ」 

「出番はどうでもいいから!これ何とかしてください!」 

 どんぶりを指差す誠にテーブルに付く人々が冷たい視線を送る。

「予定通り誠ちゃんは寝坊と言うことで……カウラちゃん。B案で行きましょう。じゃあ誠ちゃんはしばらく休みね」 

 アイシャの言葉とともに視界が黒く染められる。誠はバイザーをはずしてそのまま生暖かい視線をにやけるアイシャに向けた。

「ああ、そういえば誠ちゃんは遼南レンジャーの資格は持ってないわよね。まあレンジャー資格試験の時にはあれを食べるのは通過儀礼みたいなものだから……でも結構おいしいのよ」 

 そう言ってアイシャは自慢の紺色の長い髪を掻き分ける。そのまま誠は仕方がないというように立ち上がろうとした。そしてすぐに先ほどのうごめく芋虫を頬張る嵯峨達を思い出して口を押さえた。

「ああ、誠ちゃんも見たいんじゃないの?そのバイザーで吉田さんのカメラと同じ視線でストーリーが見えるはずよ」 

 気が進まないものの誠は嬉しそうでありながら押し付けがましいアイシャの言葉にしぶしぶバイザーを顔につける。

 そこには食事を取るカウラ達が映し出されていた。カウラも平然と食卓に並ぶ芋虫を食べている。

『マジ?あれ本当に旨いの?』 

 そのおいしそうに芋虫を頬張る姿に背筋が寒くなる誠。

「じゃあ行って来るね!」 

 普段の食事の時と変わらず一番多い量を真っ先に食べ終えたシャムが椅子にかけてあった赤いランドセルを背負って走り出す。

 そのまま誠はカメラを移動させてシャムを映す画面を見続けた。

『私の名は南條シャム。遼東学園初等部5年生。どこにでもいる普通の小学生だったんだ』 

 シャムの声で流れるモノローグ。いつもの実業団野球でも屈指の走塁で知られる陸上選手のようなスマートな走り方ではなく、あきらかにアニメヒロインのような乙女チックな走り方をするシャム。誠は笑いをこらえながら走っているシャムを映し出す画面を見つめていた。

「おはよう!」 

 バス停のようなところでシャムを待つ小学生達。見たことが無い顔なのでおそらくは吉田の作った設定なのだろう。そこで誠は周りの景色を確認した。どう見ても豊川市の郊外のような風景。住宅と田んぼが交じり合う風景は見慣れたものでその細かな背景へのこだわりに吉田のやる気を強く感じる。

『はい、カット!』 

 アイシャの声で画面が消える。バイザーを外す誠の前で起き上がるシャム達。

「誠ちゃん、なんで食べないの?あれおいしいんだよ!」 

 開口一番そう言って拗ねるシャム。だが、誠はただ愛想笑いを浮かべるだけだった。

「神前の兄貴は食わず嫌いなんすよ。まあ母さんもそうだけど見た目で食べ物を判断すると損ですよねー」 

 そう言って芋虫を食べるポーズをする小夏。その手つきに先ほどの芋虫の姿を重ねて誠は胃の中がぐるぐると混ぜられるような感覚がして口に手を回した。

「あのさあ、俺もう良いかな?」 

「ああ、お疲れ様です。しばらく出番はなさそうですから」 

 アイシャにそう言われて嵯峨はカプセルから立ち上がる。

「レンジャー資格は取っといた方が後々楽だぞ」 

 嵯峨はそのまま誠の肩を叩くと部屋を出て行った。

「しばらくはシャムちゃんだけのシーンなんだけど……」 

「僕はちょっと……気分を変えたいんで」 

 誠は自分の顔が青ざめていることを自覚しながらアイシャに声をかける。

「そんなに嫌な顔しないでよ。良いわ。これからランちゃんのシーンを取るから呼んできてよ」 

「おい、上官にちゃん付けは無いんじゃないの?」 

 吉田はずっとバイザーをつけたまま首の辺りに何本ものコードをつないだ状態で口だけがにやけたように笑っている。

「はい、それじゃあ呼んで来ます」 

 誠はそう言ってよろよろとカプセルだらけの部屋を出た。

 アイシャに言われるままに倉庫を飛び出すとそのまま駆け足で法術特捜の分室や冷蔵庫と呼ばれるコンピュータルームを通り過ぎて実働部隊の部屋に戻る。そのあわただしい様子にランや楓はものめずらしそうな顔をしていた。

「クバルカ中佐!出番ですよ」 

 誠は机に向かって事務仕事をしているランに声をかけた。

「面倒くせーな。ったく……」 

 そう言いながら椅子から降りるラン。彼女の幼児のような体型では当然足が届かず、ぴょいと飛び降りるように席を立つ。

「なんだ?神前。文句でもあるのかよ」 

 ランが不思議そうに誠をにらむ。実際何度見てもそんな態度のランのかわいさに抱きしめたくなるのは仕方の無いことで両手がふるふると震えた。そんな誠の様子を見て噴出しそうになる渡辺の口を楓が押さえている。その様がこっけいに見えたらしく噴出したアンをさらにランがにらみつける。

「そう言うわけでは無いんですけど……」 

 口を濁す誠を慣れているとでも言うように右手を振りながら扉に向かうラン。ドアを閉める直前でじっと大きめに見える目で部屋をくまなく眺めた後戸を閉めて姿を消した。

「神前先輩、どうでした撮影は」 

 自分の椅子に腰掛ける誠に手にコーヒーを持ったアンが擦り寄る。

「ああ、俺が出る幕も無かったよ」 

「おう、神前。アンに対するときは俺でアタシ等には僕か。微妙な言い回し……もしかして……」 

 それまで呆然と目の前のモニターを眺めているように見えた要がにやけながら二人を見つめる。そこにアイシャのような腐った妄想が広がっているのがわかってさすがの誠も動揺した。

「何を言うんですか!要さん」 

 タレ目を見開いている要に、誠は思わずそう叫んでいた。

「そうですよね。僕は……」 

 いじけるアンの後ろから鋭く光る楓と渡辺の視線が誠に突き刺さる。

 あえて要と楓、そして渡辺にかかわるのを避けるように誠は端末を起動させる。誠はとりあえず先日砲術特捜からの依頼を受けた仕事の続きをすることにした。法術との関係が疑われる事故や犯罪のプロファイリング。写っているのは不審火の現場。これ以外にも三件あった。

 法術特捜の主席捜査官の嵯峨茜の誠達へ出されたこうした宿題は分量的にはたいしたものでは無かったが、その意味するところは実戦を経験してきた誠にも深刻であることが理解できた。無許可の法術使用、特に炎熱系のスキルを使用したと思われる事件の資料。無残に焦げ付いた発火した人々の遺体ははじめは誠には目を向けることもできないほど無残なものだった。

 そんな事件のファイルを見ながら鑑識のデータを拾い報告書の作成を始める誠。だが、すでに提出を終えている要は暇そうに部屋を見回して誰かに絡もうとしていた。

「お姉さま、コーヒーでも飲まれますか?」 

 誠の隣の席で暇そうにしている要に楓が声をかける。

「別にいらねえよ……、神前。そこの資料は同盟司法局のデータよりも厚生局の資料を見てから書いたほうが正確になるぞ」 

 要の言葉に誠はそのまま厚生局の法術事故の資料のフォルダーを開いた。

「ありがとうございます……ああ、あそこは法術犯罪のケースのまとめ方がうまいですね。参考になります」 

 そう言いながら資料に目を通す誠。そんな彼の横から明らかに敵意をむき出しにした楓の視線が突き刺さる。

「ったく暇でしょうがねえな。こういう時に限って司法警察の連中の下請け仕事も無いと来てる」 

 退屈そうにくるくると椅子を回転させる要。

「第四小隊はM10の新動作プログラムの試験に出たっきり……うらやましいですよね」 

 楓がしみじみと語る。保安隊実働部隊。アサルト・モジュールでの実力制圧活動を行う部隊は四つの小隊で構成されていた。

 東和陸軍の教導部隊のエースであるクバルカ・ラン中佐の指揮する第一小隊。彼女は保安隊副長でもあるので実働部隊全体の指揮官とも言えた。そこには遼南救国の英雄とも言われるナンバルゲニア・シャムラード中尉、伝説の傭兵と語り継がれる『電脳の悪魔』の二つ名の吉田俊平少佐が所属し、事実上の保安隊のエース部隊といえるものだった。

 誠が所属するのは第二小隊。隊長はカウラ・ベルガー大尉。そして隣でぶらぶらしている西園寺要も隊員の一人である。

 そして胡州・遼南の混成部隊第三小隊。ここには胡州四大公の爵位を持ち、保安隊隊長嵯峨惟基特務大佐の次女の嵯峨楓を隊長とした部隊である。まだここに配備される予定のアサルト・モジュール『烈風』が到着していないために実質的には今は事務処理要員扱いを受けていた。

 そして最後の第四小隊になるわけだが、その部隊はこれまでの部隊とは少しばかり性質の異なる部隊だった。第四小隊の小隊長ロナルド・J・スミス上級大尉の席に視線を移す誠。彼の席も部下のジョージ・岡部中尉、フェデロ・マルケス中尉の机もどれも住人はいないと言うのに端末の電源は入りっぱなしでさらに通信まで行われている。

 彼等は現役のアメリカ海軍の軍人である。彼等と技術部の整備班で最新鋭アメリカ海軍採用のアサルト・モジュールM10シリーズの整備を担当しているレベッカ・シンプソン中尉の配属には強い政治的配慮がなされた結果のものだった。

 保安隊隊長、嵯峨惟基特務大佐はどの軍隊でも敵に回したくない人物の上位に顔を出すやり手として知られていた。さらに遼州星系の最高の権威である遼南王朝の皇帝の肩書きを本人は返上したと言ってはいるが、遼南の議会は全会一致で彼の退位を無効とする決議をしていたので彼は遼南皇帝の位も持ち合わせている。

 この星遼州の外を回る第四惑星胡州では胡州貴族の頂点である四大公。家督を娘の楓に譲ったとは言え未だに数多くのコロニーを領邦として所有する有数の資産家として知られ、遼北、西モスレム、東和、大麗、ゲルパルトと言った遼州同盟の主要国に血縁や外務武官時代に作った独自のパイプを持つ人物として知られた。

 そのような人物であればその動静を抑えておきたい。同盟の成立に不快感を隠さない地球の超大国アメリカの意向を遼州同盟は受け入れる決断を下した。

 立場が強いうちにこそ妥協ができる。それが座右の銘ともいえる嵯峨がアメリカ海軍からの部隊員出向を受け入れる見返りに司法機関実力部隊として活動することで得られるさまざまなデータを引き渡す。第四小隊の結成を遼州同盟の政治機構が認めたのはそんな流れからのことだった。

「でも、あいつ等も色々あるんだろうねえ」 

 ポツリと要がつぶやく。05式での運用データの収集がひと段落着いたと判断した開発元の菱川重工業はその稼動データを元に改修してテストを進めていた。より癖の無いプログラムに仕上げるため、テストパイロットは05式の操縦経験の無い第四小隊が担当することになった。しかし、それは最新のアサルト・モジュール開発国である東和のトップシークレットをアメリカに流すと言うことを意味していた。

 そのような上層部の判断は誠にはどういう結果をもたらすものかは理解できなかった。明らかに技術流出につながるこの政治的取引が何で補填されるか。それはランなどの部長級の人々の関心事ではあっても一隊員の誠には分かるはずも無かった。誠は隣の空いた机を見て苦笑いを浮かべながら再び画面に集中する。

 楓は姉の茜から割り振られたデータの整理の仕事を渡辺、アンに振り分けているようで無駄話をやめてそれぞれの事務仕事をはじめていた。そして沈黙が部屋を支配することになった。ただキーボードを叩く音、画面が切り替わるときの動作音、そして端末の放熱ファンの音だけが響く。

「うわー!っ退屈だー!」 

 そう言って要が立ち上がるとそのまま誠の後ろに回りこみ首に腕を回しこんで極める。意外にも事務仕事の得意な要が手持ち無沙汰なのは分かるが、急にそんなことをされては誠はじたばたと暴れるしかなかった。

「なに!なにすんですか!離して……」 

「つまんねえ!つまんねえよ!」 

 叫ぶ要を背負いながら楓達に目をやるが、明らかに要を押し付けられるのを恐れて視線を合わせようとしてくれない。

「アイシャさん達のところに行けば良いじゃないですか。僕は仕事を……」 

 誠がそう言うと要は気が付いたように誠から手を離す。

「そうか、じゃあちょっと待てよ」 

 そう言うと要は首の根元からコードを取り出して誠の端末に差し込む。

「あっ!報告書消えちゃいましたよ!」 

「ああ、後でアタシがやってやるよ……ちょっと時間が……」 

 何度か要が瞬きする間にすさまじい勢いで画面が転換されていく。

「これで、行けるは……ず!」 

 そんな掛け声をかけた要の前にシャムの顔があった。その目の前には子犬ほどの大きさのどう見ても熊と思われる動物が映っていた。

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